StudyMed医師国家試験

おでこの真ん中の線はどこへ消える?―乳児頭蓋で学ぶ前頭縫合と縫合の一生

第116回医師国家試験 C問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第116回 C問題 第4問

頭部CT画像から三次元再構成して得た乳児頭蓋の画像を下に示す。  成人するまでに消失する縫合線はどれか。

第116回 C問題 第4問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、乳児の頭蓋骨の縫合線の中で、成人までに消えてしまうものを選ぶ問題だ。まずは三次元再構成画像で、それぞれの線がどの骨とどの骨の境界なのかを読み取ることがスタート。名前と位置が一致すれば、あとは「いつ癒合するか」の知識で解ける。
医学生医学生
解剖実習で成人の頭蓋骨を見たときは、矢状縫合や冠状縫合がギザギザの線としてはっきり残っていました。
ドクタードクター
いい経験だね。それがこの問題のヒントでもある。では画像を見ていこう。前面像で額の両側から頭頂へ向かい、上面像で頭蓋の前方を左右に横切る線は何かな。
医学生医学生
前頭骨と頭頂骨の境界なので、冠状縫合ですね。
ドクタードクター
正解。上面像と後面像で頭頂の正中を前後に走る線は、左右の頭頂骨の間の矢状縫合。後面像で逆V字、つまりギリシャ文字のλの形をとるのが、後頭骨と頭頂骨の間のラムダ縫合だ。左側面像で側面を前後に弓なりに走るのは、側頭骨鱗部と頭頂骨の境界の鱗状縫合になる。
医学生医学生
残るのは、前面像で額の正中を縦に走る線ですね。前頭骨は1枚の骨だと習ったので、そこに縫合があるのが不思議です。
ドクタードクター
そこが核心だ。生まれたときの前頭骨は左右2枚に分かれていて、その間にあるのが前頭縫合、英語でmetopic sutureだ。上端は大泉門につながっている。この縫合は頭蓋冠の縫合の中で最も早く、乳児期から幼児期早期、おおむね1〜2歳までに癒合して、左右の前頭骨が1枚になる。だから成人では通常見られないんだ。
医学生医学生
解剖で前頭骨が1枚だったのは、すでに癒合した後だったからなんですね。答えは前頭縫合ですか。
ドクタードクター
その通り。ほかの縫合がなぜ違うかも確認しよう。冠状縫合はどうだろう。
医学生医学生
成人の頭蓋骨でも見えていたので、成人までには消えないと思います。
ドクタードクター
そう。冠状縫合が骨性に癒合するのは中年期以降だ。矢状縫合は前頭縫合を除けば比較的早く癒合を始める縫合だけど、それでも成人後、おおむね30〜40歳代以降になる。ラムダ縫合はさらに遅れて中高年期以降だ。
医学生医学生
鱗状縫合は、側面で骨が重なり合うような形でしたよね。
ドクタードクター
よく観察しているね。鱗状縫合は最も遅くまで残る縫合で、高齢になっても癒合しないことも多い。順序はおおむね前頭縫合、矢状縫合、冠状縫合、ラムダ縫合、鱗状縫合と覚えるといい。ただし個人差が大きく、生涯癒合しない部分もあることは知っておこう。
医学生医学生
そもそも、なぜ乳児の頭蓋骨はこんなに分かれているのでしょうか。
ドクタードクター
理由は二つある。一つは分娩時に骨が重なり合って産道を通りやすくするため。もう一つは、乳児期の脳の急速な成長に合わせて頭蓋が広がれるようにするためだ。骨同士が線維性の縫合と泉門でつながっているから、それが可能になる。
医学生医学生
小児科実習で、乳児の大泉門を触らせてもらいました。指導医の先生が「膨らんでいないかを必ず見る」と言っていました。
ドクタードクター
大事な所見だね。大泉門は前頭縫合・矢状縫合・冠状縫合の交点にある菱形の泉門で、通常1歳半ごろまでに閉じる。小泉門は生後数か月以内だ。膨隆は髄膜炎や水頭症などの頭蓋内圧亢進、陥凹は脱水を示唆する。閉鎖が遅れる場合はくる病、甲状腺機能低下症、水頭症、21トリソミーなどを考える。
医学生医学生
逆に早く閉じすぎると、頭蓋縫合早期癒合症ですね。
ドクタードクター
そう。癒合した縫合と垂直方向の成長が妨げられるので、特徴的な頭の形になる。矢状縫合なら前後に長い舟状頭で最も多く、両側冠状縫合なら短頭、前頭縫合なら額が三角に尖る三角頭蓋だ。クルーゾン症候群やアペール症候群のように複数の縫合が癒合する症候群性のものもある。
医学生医学生
縫合の場所と頭の形がつながると覚えやすいです。
ドクタードクター
最後に臨床での注意点をひとつ。成人の数%では前頭縫合が残ることがあり、前頭縫合遺残と呼ばれる。救急で頭部外傷の画像を読むとき、額の正中の線を骨折線と見誤らないよう気をつけよう。
医学生医学生
本来消えるはずの縫合が残っていることもある、と頭に入れておきます。

まとめ

乳児の頭蓋冠には前頭縫合、矢状縫合、冠状縫合、ラムダ縫合、鱗状縫合があり、それぞれ骨の境界の位置で同定できます。このうち左右の前頭骨の間にある前頭縫合は乳幼児期(おおむね1〜2歳まで)に癒合して消失し、成人では通常見られません。他の縫合は成人後も残り、骨性癒合は中年期以降にゆっくり進み、鱗状縫合が最も遅いとされます。大泉門の閉鎖時期や膨隆・陥凹の意味、縫合ごとの早期癒合症による頭の形もあわせて整理しておくと、小児の診察に役立ちます。成人で前頭縫合が残存することもあり、頭部画像で骨折線と誤認しないための知識としても重要です。

解答・解説

正解はbです

画像の読み取り

乳児の頭蓋を頭部CTから三次元再構成した画像で、前面・左側面・後面・上面の4方向から縫合線が示されている。 ・①:前面像では額の両側から頭頂へ向かい、上面像では頭蓋の前方を左右に横切る線。前頭骨と左右の頭頂骨の境界であり、冠状縫合である。 ・②:前面像で額の正中を縦に走る線。左右の前頭骨の間の縫合であり、前頭縫合(metopic suture)である。上端は大泉門に続く。 ・③:左側面像で頭蓋の側面を前後に走る弓状の線。側頭骨の鱗部と頭頂骨の境界であり、鱗状縫合である。 ・④:後面像で逆V字(ギリシャ文字のλ)の形をとる線。後頭骨と左右の頭頂骨の境界であり、ラムダ縫合(人字縫合)である。 ・⑤:上面像・後面像で頭頂の正中を前後に走る線。左右の頭頂骨の間の縫合であり、矢状縫合である。

考え方

新生児・乳児の頭蓋骨は、脳の急速な成長に合わせて拡大できるよう、骨と骨の間が線維性の縫合と泉門でつながっている。大部分の縫合は成人後も縫合線として残り、骨性に癒合(閉鎖)するのは中年期以降である。これに対し、前頭縫合だけは乳幼児期の早い時期(おおむね1〜2歳まで)に癒合し、左右の前頭骨が1枚の前頭骨となるため、成人では通常認められない。したがって、成人するまでに消失する縫合線は②の前頭縫合である。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は冠状縫合で、前頭骨と左右の頭頂骨の間にある。成人でも縫合線として残り、骨性に癒合するのは中年期以降(おおむね40〜50歳代以降)である。成人するまでに消失する縫合ではない。

  2. ○b.  ②

    ②は前頭縫合で、左右の前頭骨の間を正中で縦に走る。頭蓋冠の縫合のなかで最も早く癒合し、乳児期から幼児期早期(おおむね1〜2歳まで)に閉鎖して左右の前頭骨が一つの前頭骨になる。このため成人では通常見られず、成人するまでに消失する縫合線にあたる。なお、成人の一部(数%程度)では前頭縫合が残存することがあり(前頭縫合遺残)、頭部画像で骨折線と見誤らないよう注意する。

  3. ×c.  ③

    ③は鱗状縫合で、側頭骨の鱗部と頭頂骨の間にある。鱗状縫合は頭蓋冠の縫合のなかで最も遅くまで残り、高齢になっても癒合しないことも多い。成人するまでに消失する縫合ではない。

  4. ×d.  ④

    ④はラムダ縫合(人字縫合)で、後頭骨と左右の頭頂骨の間にある。成人でも縫合線として残り、骨性癒合は冠状縫合・矢状縫合よりさらに遅れて中高年期以降に進む。成人するまでに消失する縫合ではない。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は矢状縫合で、左右の頭頂骨の間を正中で前後に走る。前方は大泉門で冠状縫合・前頭縫合と、後方は小泉門でラムダ縫合と接する。前頭縫合を除けば比較的早く癒合を始める縫合だが、それでも骨性癒合は成人後(おおむね30〜40歳代以降)であり、成人するまでに消失する縫合ではない。

頭蓋冠の主な縫合

・前頭縫合:左右の前頭骨の間。乳幼児期に癒合して消失する。 ・矢状縫合:左右の頭頂骨の間。 ・冠状縫合:前頭骨と頭頂骨の間。 ・ラムダ縫合(人字縫合):頭頂骨と後頭骨の間。 ・鱗状縫合:頭頂骨と側頭骨鱗部の間。 骨性癒合の順序はおおむね「前頭縫合(乳幼児期)→矢状縫合→冠状縫合→ラムダ縫合→鱗状縫合」とされ、前頭縫合以外は成人後、中年期から高齢期にかけてゆっくり進む。個人差が大きく、生涯癒合しない部分もある。

泉門

・大泉門:前頭骨と左右頭頂骨の間(前頭縫合・矢状縫合・冠状縫合の交点)にある菱形の泉門。通常1歳半ごろまでに閉鎖する。 ・小泉門:左右頭頂骨と後頭骨の間(矢状縫合とラムダ縫合の交点)にある三角形の泉門。生後数か月以内に閉鎖する。 ・ほかに前側頭泉門・後側頭泉門があり、乳児期に閉鎖する。 大泉門は乳児の診察で重要で、膨隆は頭蓋内圧亢進(髄膜炎、水頭症など)、陥凹は脱水を示唆する。閉鎖の遅れはくる病、甲状腺機能低下症、水頭症、21トリソミーなどで、早すぎる閉鎖は頭蓋縫合早期癒合症で問題となる。

頭蓋縫合早期癒合症

縫合が本来より早く癒合すると、その縫合と垂直方向への頭蓋の成長が妨げられ、特徴的な頭の形となる。 ・矢状縫合:舟状頭(前後に長い頭。最も頻度が高い) ・両側冠状縫合:短頭(前後に短い頭) ・片側冠状縫合:前頭部の斜頭 ・前頭縫合:三角頭蓋(額が三角形に尖る) ・ラムダ縫合:後頭部の斜頭 クルーゾン症候群やアペール症候群など、症候群性に複数の縫合が早期癒合することもある。

POINT

・前頭縫合(左右前頭骨の間)は乳幼児期に癒合し、成人では通常見られない唯一の主要縫合である。 ・矢状・冠状・ラムダ・鱗状縫合は成人後も残り、癒合は中年期以降(鱗状縫合が最も遅い)。 ・縫合の名称と位置(冠状=前頭骨と頭頂骨、矢状=左右頭頂骨、ラムダ=頭頂骨と後頭骨、鱗状=頭頂骨と側頭骨)、泉門の閉鎖時期(大泉門1歳半ごろ、小泉門生後数か月)を押さえる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。