検査・研究・研修・情報の4本柱―地方衛生研究所と保健所の役割分担を整理する
第116回医師国家試験 C問題 第25問
国試問題にチャレンジ
地方衛生研究所の業務でないのはどれか。
- a.人口動態統計に係る統計
- b.疾病予防に関する調査研究
- c.地域保健関係者の研修指導
- d.衛生微生物に関する試験検査
- e.公衆衛生情報の収集・解析・提供
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
地方衛生研究所は都道府県や指定都市に置かれ、地域保健行政を科学的・技術的に支える機関で、その業務は調査研究、試験検査、研修指導、公衆衛生情報等の収集・解析・提供の4本柱に整理されます。一方、人口動態統計その他地域保健に係る統計は地域保健法第6条に定められた保健所の事業であり、地衛研の業務には含まれません。地衛研は保健所では難しい高度な病原体検査などを担い、多くの地域で地方感染症情報センターとして感染症サーベイランスの中核を担っています。保健所・市町村保健センター・地方衛生研究所・国の機関の役割分担を整理しておくことは、公衆衛生の出題対策だけでなく、感染症発生時に臨床医として行政と連携する際の基盤になります。
解答・解説
正解はaです
問われていること
地方衛生研究所(地衛研)の業務内容を、保健所の業務と区別して理解しているかを問う問題である。「業務でないもの」を選ぶ形式である点に注意する。
地方衛生研究所とは
地方衛生研究所は、都道府県と指定都市(一部の中核市などにも設置)に置かれ、地域保健対策を科学的・技術的に支える中核機関である。厚生労働省の「地方衛生研究所設置要綱」では、関係行政部局や保健所と緊密に連携しながら、次の4つを行うことが目的として示されている。 ①調査研究 ②試験検査 ③研修指導 ④公衆衛生情報等の収集・解析・提供
解き方
選択肢をこの4本柱に当てはめると、b は①、d は②、c は③、e は④に当たる。一方、人口動態統計その他の地域保健に係る統計は、地域保健法第6条で保健所の事業として定められている。したがって地方衛生研究所の業務でないのは a である。
選択肢考察
- ○a. 人口動態統計に係る統計
人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項は、地域保健法第6条に列挙された保健所の事業である。人口動態統計では、市区町村に提出された出生・死亡・死産・婚姻・離婚の届出をもとに人口動態調査票が作成され、保健所が受理・審査して都道府県を経て厚生労働省へ送付する。この統計事務は地方衛生研究所の4つの業務(調査研究・試験検査・研修指導・公衆衛生情報の収集等)には含まれないため、本問の正解となる。
- ×b. 疾病予防に関する調査研究
調査研究は地方衛生研究所の中心的な業務の一つである。感染症・食中毒の発生要因、生活習慣病などの疾病予防、環境と健康、食品・医薬品の安全性などについて、地域の実情に即した調査研究を行う。したがって地方衛生研究所の業務に該当する。
- ×c. 地域保健関係者の研修指導
研修指導は地方衛生研究所の業務の一つである。保健所職員をはじめとする地域保健に携わる人々に対し、検査技術や疫学的手法などの研修・技術指導を行い、地域全体の公衆衛生の技術水準を高める役割を担う。
- ×d. 衛生微生物に関する試験検査
試験検査は地方衛生研究所の業務の一つである。細菌・ウイルスなど病原微生物の検査(感染症の病原体の確定検査、食中毒の原因菌の特定など)のほか、食品添加物・残留農薬、水質・大気などの理化学的検査も行う。保健所では対応が難しい高度な検査を担う点が特徴であり、新型コロナウイルス感染症の流行時にも PCR 検査などで大きな役割を果たした。
- ×e. 公衆衛生情報の収集・解析・提供
公衆衛生情報等の収集・解析・提供は地方衛生研究所の業務の一つである。代表例が感染症発生動向調査(感染症サーベイランス)で、多くの都道府県では地方衛生研究所内に地方感染症情報センターが置かれ、患者情報や病原体情報を集計・解析し、行政や医療機関、住民に還元している。
地方衛生研究所と保健所の違い
・保健所:地域保健法に基づき、都道府県・指定都市・中核市・その他政令で定める市・特別区が設置する。地域住民に対する対人保健サービスの専門的・広域的部分や、食品衛生・環境衛生などの監視指導(対物保健)を担う行政機関である。 ・地方衛生研究所:もともと厚生労働省の設置要綱(通知)に基づく機関で、保健所などの行政を科学的・技術的に支える研究・検査機関である。新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた法改正により、都道府県等が調査研究・試験検査の体制を整備することが地域保健法に位置づけられた。
保健所の事業(地域保健法第6条)
・地域保健に関する思想の普及・向上 ・人口動態統計その他地域保健に係る統計 ・栄養の改善、食品衛生 ・住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境衛生 ・医事、薬事 ・保健師に関する事項 ・公共医療事業の向上・増進 ・母性・乳幼児・老人の保健 ・歯科保健 ・精神保健 ・治療方法が確立していない疾病などにより長期療養を要する者の保健 ・エイズ、結核、性病、感染症その他の疾病の予防 ・衛生上の試験・検査 ・その他地域住民の健康の保持・増進
その他の関連機関
・市町村保健センター:乳幼児健診、予防接種、健康相談など、住民に身近な対人保健サービスを提供する。 ・国立感染症研究所:国レベルで感染症の研究・検査・サーベイランスを担う(2025年に国立国際医療研究センターと統合し、国立健康危機管理研究機構となった)。
POINT
・地方衛生研究所の4業務:調査研究、試験検査、研修指導、公衆衛生情報等の収集・解析・提供。 ・人口動態統計など地域保健に係る統計は保健所の事業(地域保健法第6条)。 ・地方衛生研究所は都道府県・指定都市に置かれる地域保健の科学的・技術的中核機関であり、感染症サーベイランスの地方感染症情報センターを担うことが多い。
