StudyMed医師国家試験

保健所は「お店」も見張っている―地域保健法第6条で解く保健所の仕事

第120回医師国家試験 F問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第120回 F問題 第5問

地域保健法に基づく保健所の業務はどれか。

  1. a.生活保護の認定
  2. b.食品衛生に関する事項
  3. c.予防接種後の健康被害救済
  4. d.休日夜間急患センターの設置
  5. e.地域包括支援センターの設置

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、保健所がどんな仕事をする機関なのかを、根拠法である地域保健法と結び付けて問う問題だ。着眼点は「この業務はどの法律に基づき、どの機関が担っているか」。選択肢を一つずつその視点で振り分けていけば、迷わず解けるよ。
医学生医学生
保健所というと、感染症対策のイメージが強いです。新型コロナのときの報道で何度も耳にしました。
ドクタードクター
そうだね、感染症対策は保健所の代表的な仕事の一つだ。でも実はもっと幅広い。地域保健法第6条には保健所の業務が14項目列挙されていて、保健所はそれらについて企画・調整・指導と必要な事業を行う。人口動態統計、環境衛生、医事・薬事、精神保健、難病、母子・老人保健、歯科保健、衛生上の試験検査などが並んでいるんだ。
医学生医学生
14項目もあるんですね。その中に食品衛生も入っているんでしょうか。
ドクタードクター
入っているよ。「栄養の改善及び食品衛生に関する事項」として明記されている。具体的には、食品衛生法に基づく飲食店の営業許可、食品衛生監視員による立入検査や指導、そして食中毒が起きたときの原因調査や営業停止などの措置だ。だから正解は食品衛生に関する事項になる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、食中毒を診断した医師は24時間以内に保健所長へ届け出ると習いました。届出先が保健所なのも、保健所が食品衛生を担当しているからなんですね。
ドクタードクター
その通り、きれいにつながったね。食品や環境のように「モノ」を対象にする対物保健は、広域的で専門的な技術が必要だから保健所の守備範囲なんだ。では、ほかの選択肢を見ていこう。まず生活保護の認定はどうかな。
医学生医学生
生活保護も役所の窓口でやっている印象なので、なんとなく保健所でもいいような気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだ。生活保護は生活保護法に基づく社会福祉の制度で、申請受付や調査、保護の決定といった実務を担うのは福祉事務所なんだ。保健ではなく福祉の領域だから、保健所の業務ではない。
医学生医学生
予防接種後の健康被害救済はどうでしょう。予防接種って保健所のイメージもあるのですが。
ドクタードクター
これは予防接種法に基づく救済制度だ。本人や家族は市町村に申請し、国、つまり厚生労働大臣が審査会の意見を聴いて予防接種との因果関係を認定する。認定されれば市町村から医療費や障害年金などが給付される。窓口と給付は市町村、認定は国で、保健所の業務としては位置づけられていないんだ。そもそも定期接種の実施主体自体が市町村だね。
医学生医学生
休日夜間急患センターは、救急外来の実習で「軽症の人はまずそちらへ」と案内されているのを見ました。
ドクタードクター
休日夜間急患センターは初期救急、いわゆる一次救急を担う施設で、市町村が地区医師会の協力を得て整備・運営するのが一般的だ。救急医療体制は医療計画に関わる事項で、地域保健法第6条の保健所業務には入っていない。
医学生医学生
地域包括支援センターは介護保険法でしたっけ。在宅医療の実習で、ケアマネジャーさんとの連携先として紹介されました。
ドクタードクター
正解。地域包括支援センターは介護保険法に基づき、保険者である市町村が設置する施設で、社会福祉法人などへの委託もできる。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置されて、高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防ケアマネジメントを担う。これも保健所の仕事ではないね。
医学生医学生
福祉は福祉事務所、介護は市町村、救急は市町村と医師会、予防接種の救済は市町村と国。法律と実施主体をセットで覚えるのがコツなんですね。
ドクタードクター
まさにそう。発展として、保健所と市町村保健センターの役割分担も押さえておこう。どちらも地域保健法に規定されているけれど、保健所は都道府県、指定都市、中核市、保健所政令市、特別区が設置し、食品衛生や環境衛生、感染症、精神保健、難病、医事・薬事の監視といった広域的・専門的な業務を担う。一方、市町村保健センターは乳幼児健診や母子健康手帳の交付、健康相談、健康教育など、住民に身近な対人サービスを担当するんだ。
医学生医学生
保健所は専門的で広域、保健センターは身近で対人、という整理ですね。CBTの過去問でもこの区別が出ていた気がします。
ドクタードクター
よく出るポイントだよ。臨床医になってからも、食中毒や感染症の届出、結核患者の対応、措置入院など、保健所とやり取りする場面は多い。どの相談をどこに持ち込むべきかを知っていることは、患者さんを適切な支援につなげる力そのものなんだ。

まとめ

保健所は地域保健法に基づいて設置される公衆衛生の第一線機関で、その業務は同法第6条の14項目に規定されており、「栄養の改善及び食品衛生」はその一つです。飲食店の営業許可や監視指導、食中毒の原因調査などが具体的な業務にあたります。一方、生活保護は生活保護法に基づき福祉事務所が、地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が担い、休日夜間急患センターは市町村が地区医師会の協力を得て運営し、予防接種健康被害救済は市町村が窓口となって国が認定します。保健所は広域的・専門的な対物保健や感染症・精神保健・難病対策を、市町村保健センターは身近な対人保健サービスを担うという役割分担も重要です。「どの法律に基づく、どの機関の仕事か」を整理しておくことは、試験対策にとどまらず、臨床現場で患者を適切な行政・福祉の窓口につなぐための基礎になります。

解答・解説

正解はbです

本問は、保健所がどのような業務を担う機関なのかを、根拠法である地域保健法と結び付けて理解しているかを問うている。 保健所は地域保健法に基づいて設置される公衆衛生の第一線機関であり、設置主体は都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市(保健所政令市)および特別区である。業務の中心は同法第6条に列挙された14項目で、保健所はこれらについて「企画、調整、指導及びこれらに必要な事業」を行う。その中に「栄養の改善及び食品衛生に関する事項」が明記されており、飲食店の営業許可や監視指導、食中毒の調査などが具体的な仕事となる。 一方、残りの選択肢はいずれも保健所ではなく、別の法律に基づいて市町村や福祉事務所などが担う業務である。解き方としては、「どの法律に基づく、どの機関の仕事か」を一つずつ当てはめ、地域保健法第6条の項目に該当するものを選べばよい。福祉(生活保護・介護)、医療提供体制(救急)、予防接種の救済制度は、それぞれ別の法律と実施主体を持つ点を押さえておくと迷わない。

選択肢考察

  1. ×a.  生活保護の認定

    生活保護は生活保護法に基づく福祉制度である。保護の実施機関は都道府県知事、市長および福祉事務所を設置する町村長であり、実際の申請受付・調査・保護の決定といった事務は福祉事務所が行う。保健ではなく社会福祉の領域に属するため、保健所の業務ではない。

  2. ○b.  食品衛生に関する事項

    地域保健法第6条第3号に「栄養の改善及び食品衛生に関する事項」が保健所の業務として規定されている。具体的には、食品衛生法に基づく飲食店などの営業許可、食品衛生監視員による施設の監視・指導、食品の検査、食中毒発生時の原因調査や営業停止などの措置が該当し、保健所の代表的な対物保健業務である。

  3. ×c.  予防接種後の健康被害救済

    予防接種健康被害救済制度は予防接種法に基づく制度である。健康被害を受けた本人や家族は市町村に申請し、厚生労働大臣が疾病・障害認定審査会の意見を聴いたうえで予防接種との因果関係を認定し、認定されると市町村から医療費・障害年金などの給付が行われる。窓口・給付は市町村、認定は国であり、保健所の業務ではない。

  4. ×d.  休日夜間急患センターの設置

    休日夜間急患センターは、休日や夜間の軽症患者に対応する初期(一次)救急医療施設であり、市町村が地区医師会などの協力を得て整備・運営するのが一般的である。救急医療体制の整備は医療計画に関わる事項であって、地域保健法第6条に定める保健所の業務には含まれない。

  5. ×e.  地域包括支援センターの設置

    地域包括支援センターは介護保険法に基づき、介護保険の保険者である市町村が設置する(社会福祉法人などへの委託も可能)。保健師(または経験のある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置され、高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防ケアマネジメントなどを担う。保健所の業務ではない。

地域保健法第6条(保健所の必須業務)

保健所は次の事項について企画、調整、指導およびこれらに必要な事業を行う。 1. 地域保健に関する思想の普及及び向上 2. 人口動態統計その他地域保健に係る統計 3. 栄養の改善及び食品衛生 4. 住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生 5. 医事及び薬事 6. 保健師 7. 公共医療事業の向上及び増進 8. 母性及び乳幼児並びに老人の保健 9. 歯科保健 10. 精神保健 11. 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健(難病対策など) 12. 感染症その他の疾病の予防 13. 衛生上の試験及び検査 14. その他地域住民の健康の保持及び増進

保健所と市町村保健センターの役割分担

保健所は広域的・専門的・技術的な業務(食品衛生や環境衛生などの対物保健、感染症対策、精神保健、難病、医事・薬事の監視など)を担う。これに対し、市町村保健センター(同じく地域保健法に規定)は住民に身近な対人保健サービス(乳幼児健診、母子健康手帳の交付、健康相談、健康教育、予防接種の実施など)を担う。保健所は市町村への技術的助言や市町村間の連絡調整も行う。

選択肢に出てきた制度と実施主体の整理

生活保護:生活保護法、福祉事務所 予防接種健康被害救済:予防接種法、申請・給付は市町村、認定は厚生労働大臣 休日夜間急患センター:初期救急医療、市町村(地区医師会の協力) 地域包括支援センター:介護保険法、市町村(委託可)

POINT

・保健所の業務は地域保健法第6条の14項目で規定される。 ・食品衛生(営業許可、監視指導、食中毒対応)は保健所の代表的業務である。 ・保健所は都道府県、指定都市、中核市、保健所政令市、特別区が設置する。 ・生活保護は福祉事務所、地域包括支援センターは市町村(介護保険法)、予防接種健康被害の認定は厚生労働大臣、休日夜間急患センターは市町村と地区医師会の担当であり、いずれも保健所の業務ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。