「広域は都道府県、身近は市町村」―地域保健の担い手と根拠法を一気に整理
第114回医師国家試験 E問題 第3問
国試問題にチャレンジ
地域保健について正しいのはどれか。
- a.予防接種の実施主体は教育委員会である。
- b.地方衛生研究所は主に対人サービスを行う。
- c.地域包括支援センターの設置主体は都道府県である。
- d.医療安全支援センターの業務は医療法に規定されている。
- e.地域保健センターには必ず医師を置かなければならない。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
地域保健の担い手は、広域的・専門的な業務を都道府県(保健所設置市・特別区を含む)が、住民に身近なサービスを市町村が担うという役割分担で整理できます。定期予防接種は予防接種法に基づき市町村長が実施し、地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置(委託可)し、医療安全支援センターは医療法に規定され都道府県・保健所設置市・特別区が設置に努めます。地方衛生研究所は調査研究・試験検査・研修指導・情報の収集解析提供を担う対物サービス中心の機関で、市町村保健センターは設置任意かつ医師配置の義務がない点で、所長が原則医師である保健所と区別されます。「設置主体・根拠法・業務内容」をセットで押さえることは、国試対策だけでなく、臨床現場で患者を適切な地域資源につなぐ力にもなります。
解答・解説
正解はdです
本問は、地域保健に関わる主な機関・制度について、「誰が設置・実施するのか」「根拠となる法律は何か」「どのような業務を担うのか」を問う知識問題である。 地域保健の担い手は、おおまかに次のように役割分担されている。 ・都道府県(および保健所設置市・特別区):保健所、地方衛生研究所などを通じた、広域的・専門的・技術的な業務 ・市町村:市町村保健センター、予防接種、母子保健、地域包括支援センターなど、住民に身近なサービス この「広域・専門は都道府県、身近なサービスは市町村」という整理と、各機関の根拠法(地域保健法、予防接種法、介護保険法、医療法)を押さえておけば、各選択肢の正誤を判断できる。医療安全支援センターは医療法に設置と業務が定められた機関であり、dが正しい。
選択肢考察
- ×a. 予防接種の実施主体は教育委員会である。
誤り。予防接種法に基づく定期接種(A類疾病・B類疾病)の実施主体は市町村(市町村長)である。臨時接種は都道府県知事または市町村長が行う。任意接種は法に基づかず、本人(保護者)の希望により医療機関で受けるものである。教育委員会は学校保健安全法に基づく就学時健康診断などを担うが、予防接種の実施主体ではない。
- ×b. 地方衛生研究所は主に対人サービスを行う。
誤り。地方衛生研究所は都道府県・政令指定都市などに置かれる科学的・技術的中核機関で、主な業務は(1) 調査研究、(2) 試験検査(感染症の病原体検査、食品・水・環境の検査など)、(3) 研修指導、(4) 公衆衛生情報の収集・解析・提供の4つである。これらは主に対物保健サービスであり、住民に直接接する対人サービス(健康相談・保健指導・健康診査など)は主に市町村保健センターが担う。
- ×c. 地域包括支援センターの設置主体は都道府県である。
誤り。地域包括支援センターは介護保険法に基づいて設置され、設置主体は市町村である。市町村が直営するほか、社会福祉法人や医療法人など、市町村から委託を受けた法人が運営することもできる。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)が配置され、介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待への対応など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援を行う。地域包括ケアシステムの中核となる機関である。
- ○d. 医療安全支援センターの業務は医療法に規定されている。
正しい。医療安全支援センターは医療法(第6条の13)に設置と業務が規定されており、都道府県、保健所を設置する市および特別区が設置に努めるものとされている。主な業務は、患者・家族・住民からの医療に関する苦情や相談への対応、医療機関・患者・住民への医療安全に関する助言や情報提供、医療安全確保に関する研修などである。中立的な立場で患者と医療機関の間をつなぐ相談窓口の役割を果たす。
- ×e. 地域保健センターには必ず医師を置かなければならない。
誤り。ここでいう地域保健センターは、地域保健法上の市町村保健センターを指すと考えられる。市町村保健センターは、健康相談、保健指導、健康診査など住民に身近な対人保健サービスを提供する拠点で、市町村が設置できる(設置義務はない)。業務は保健師が中心となり、医師の配置は義務づけられていない。これに対し、都道府県等が設置する保健所は、原則として医師を所長とすることが定められている点と区別しておく。
保健所と市町村保健センターの比較
・保健所:地域保健法に基づき、都道府県、政令指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区が設置する(設置義務あり)。所長は原則として医師。感染症対策、食品衛生、精神保健、難病対策、医事・薬事、統計など、広域的・専門的な業務を担う。 ・市町村保健センター:地域保健法に基づき、市町村が設置できる(任意)。所長が医師である必要はない。健康相談、保健指導、健康診査、乳幼児健診、予防接種の実施など、住民に身近な対人保健サービスを行う。
地方衛生研究所
都道府県・政令指定都市などが設置する。調査研究、試験検査、研修指導、公衆衛生情報の収集・解析・提供の4業務を担い、保健所などを科学的・技術的に支える。感染症の流行時には病原体検査の中心となる。
予防接種の区分
・定期接種:予防接種法に基づき市町村長が実施。A類疾病(主に集団予防、重篤な疾患の予防が目的。接種の努力義務あり)とB類疾病(主に個人予防が目的。努力義務なし、例:高齢者のインフルエンザ・肺炎球菌)に分けられる。 ・臨時接種:まん延予防上緊急の必要があるとき、都道府県知事または市町村長が行う。 ・任意接種:法に基づかず、希望者が医療機関で受ける。
地域包括支援センター
介護保険法に基づき市町村が設置(委託可)。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種を配置し、介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援を行う。
医療安全支援センター
医療法に基づき、都道府県、保健所設置市、特別区が設置に努める。相談窓口の運営、医療安全推進協議会の開催、相談事例の収集・分析、患者・住民・医療機関への助言や情報提供、研修の実施などを行う。
POINT
・定期予防接種の実施主体は市町村(市町村長)。 ・地方衛生研究所の4業務:調査研究、試験検査、研修指導、公衆衛生情報の収集・解析・提供(主に対物サービス)。 ・地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置(委託可)。 ・医療安全支援センターは医療法に規定され、都道府県・保健所設置市・特別区が設置。 ・市町村保健センターは設置任意で医師配置の義務なし。保健所長は原則医師。
