同じ「禁煙」でも段階が違う―対象者で見極める予防の3段階
第116回医師国家試験 C問題 第11問
国試問題にチャレンジ
A医師は地域で禁煙を進めるための様々な活動をしている。定期的に地域の小学校に出向いて①小学生への禁煙教育を行い,近くの企業の②産業医として禁煙活動を行っている。また,自らの診療所で③喫煙者の健康診断や④慢性閉塞性肺疾患の患者の呼吸リハビリテーションも行っている。週末には近所の産婦人科に出かけ,母親学級で⑤喫煙妊婦の禁煙指導も行っている。 下線部のうち,三次予防はどれか。
- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
予防医学は、健康な人に対し危険因子の除去や健康教育で発病を防ぐ一次予防、無症状の段階の疾患を健診・検診で早期発見し早期治療につなげる二次予防、すでに発症した人に治療・再発防止・リハビリテーションを行い機能障害の悪化を防いで社会復帰を図る三次予防に分けられます。喫煙は病気ではなく危険因子なので、小学生への防煙教育、職場での禁煙活動、喫煙妊婦への禁煙指導はいずれも一次予防、喫煙者の健康診断は二次予防にあたります。COPD患者への呼吸リハビリテーションは、発症後の呼吸困難の軽減や運動耐容能・QOLの改善を目的とするため三次予防です。同じ禁煙関連の活動でも対象者がどの段階にいるかで予防の位置づけが変わるため、活動名ではなく「誰に・何のために」で判断する習慣が、国試にも地域医療や産業保健の実践にも役立ちます。
解答・解説
正解はdです
予防医学では、介入する時期と対象によって予防を一次・二次・三次の3段階に分ける。一次予防は「まだ病気になっていない人」を対象に、危険因子を減らしたり健康を増進したりして発病そのものを防ぐ。二次予防は「自覚症状のない段階の病気」を健診・検診などで早期に見つけ、早期治療につなげて進行を食い止める。三次予防は「すでに発症した病気」をもつ人に対して、適切な治療・再発防止・リハビリテーションを行い、機能障害の悪化を防いで社会復帰を図る。 本問の下線部を、それぞれ「誰に対して」「何を目的に」行っているかで整理すると判断しやすい。①②⑤は健康な小学生・労働者・妊婦の喫煙をなくす(あるいは喫煙を始めさせない)ことで、将来の疾病の発生を防ぐ活動であり一次予防である。③の健康診断は、喫煙というリスクをもつ人に潜む疾患を早期発見する活動で二次予防である。④は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という既に発症した疾患をもつ患者に対し、呼吸リハビリテーションで呼吸機能・運動耐容能の維持改善と生活の質(QOL)の向上を図るものであり、三次予防に該当する。 なお、同じ「禁煙」に関わる活動でも、対象者がどの段階にいるか(健常者か、未発見の病気をもつ可能性のある人か、既に病気をもつ人か)で予防の段階が変わる点に注意する。
選択肢考察
- ×a. ①
小学生への禁煙教育は、喫煙を始める前の健康な子どもに喫煙の害を教え、喫煙開始を防ぐ(防煙)ことで将来の喫煙関連疾患の発生を防ぐ健康教育である。発病前の危険因子への介入であり、一次予防に当たる。
- ×b. ②
産業医が職場で行う禁煙活動は、主に疾病をもたない労働者を対象に、喫煙という危険因子を取り除いて肺癌・虚血性心疾患・COPDなどの発生を防ぐものである。職場の受動喫煙対策も含め、発症前の原因除去であるため一次予防である。
- ×c. ③
健康診断は、症状が出る前の段階にある疾患を早期に発見し、早期治療に結びつけて重症化を防ぐことが目的である。喫煙者という高リスク者を対象とした健診は、肺癌やCOPDなどの早期発見を意図した二次予防に当たる。
- ○d. ④
COPDは長期の喫煙が最大の原因となる慢性の進行性疾患で、すでに発症している患者が対象である。呼吸リハビリテーションは、呼吸訓練・運動療法・患者教育などにより、呼吸困難の軽減、運動耐容能やQOLの改善、増悪による入院の減少を目指す。発症後の機能低下の防止と残存機能の維持・回復、社会生活への復帰を目的とする活動であり、三次予防に該当する。
- ×e. ⑤
妊婦の喫煙は流産・早産・低出生体重児・常位胎盤早期剝離などのリスクを高める。喫煙妊婦への禁煙指導は、母体と胎児に生じうる健康障害の原因を取り除き、その発生を防ぐことが目的であるため一次予防に当たる。喫煙者に対する指導ではあるが、病気の早期発見や既存疾患の治療ではない点で二次・三次予防とは区別される。
予防の3段階(Leavell と Clark の考え方に基づく)
・一次予防(発生の防止):健康増進(栄養・運動・休養、健康教育)と特異的予防(予防接種、危険因子の除去、事故防止など)。対象は健康な人。例:禁煙教育、防煙教育、予防接種、職場環境の改善。 ・二次予防(進行の防止):早期発見・早期治療。対象は自覚症状のない段階の疾患をもつ可能性がある人。例:がん検診、特定健康診査、新生児マス・スクリーニング。 ・三次予防(再発・悪化の防止と社会復帰):適切な治療による機能障害の防止、再発防止、リハビリテーション。対象は既に発症した人。例:脳卒中後のリハビリテーション、心臓リハビリテーション、COPDの呼吸リハビリテーション、職場復帰支援。
喫煙と疾患
喫煙はCOPD、肺癌をはじめとする多くの悪性腫瘍、虚血性心疾患、脳卒中などの重要な危険因子である。COPDとの因果関係は特に確実で、COPD患者の大部分に喫煙歴がある。COPD患者にとって禁煙は呼吸機能の低下速度を緩める最も効果的な介入でもある。
POINT
・一次予防=発生防止(健康教育、禁煙指導、予防接種) ・二次予防=早期発見・早期治療(健康診断、がん検診) ・三次予防=発症後の悪化・再発防止と社会復帰(リハビリテーション) ・同じ禁煙関連の活動でも、対象者の病期によって予防段階が決まる ・COPD患者への呼吸リハビリテーションは三次予防
