StudyMed医師国家試験

消える反射、現れる反射―10か月児の神経発達を「時期」で読み解く

第115回医師国家試験 F問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第115回 F問題 第20問

10か月児に認められる反射はどれか。

  1. a.吸啜反射
  2. b.Moro反射
  3. c.手掌把握反射
  4. d.パラシュート反射
  5. e.非対称性緊張性頸反射

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳児の反射を、出現と消失の時期で整理できているかを問う問題だ。ポイントは、反射を「生まれつきあって消えていくもの」と「あとから現れて一生残るもの」の2グループに分けて考えること。この区別ができれば、10か月という月齢で何が見られるかは自然に決まるよ。
医学生医学生
小児科の講義で原始反射の表を覚えましたが、正直どれがいつ消えるのか混乱しています。
ドクタードクター
まず仕組みから押さえよう。原始反射は脳幹や脊髄レベルで制御される反射で、出生時から存在する。そして大脳皮質などの上位中枢が成熟して抑制をかけるようになると、生後数か月のうちに消えていく。吸啜反射、Moro反射、手掌把握反射、非対称性緊張性頸反射がその代表だ。
医学生医学生
だいたい生後4〜6か月ころまでに消えるんでしたよね。
ドクタードクター
そう、教科書によって1〜2か月の幅はあるけれど、「多くの原始反射は生後半年前後までに消える」と覚えておけば十分だ。それとは逆に、中枢神経の成熟に伴って後から現れ、その後ずっと残るのが姿勢反射で、立ち直り反応や保護伸展反応、平衡反応がこれにあたる。お座りや立位、歩行の土台になる反応だね。
医学生医学生
そうすると、10か月児で見られるのは後者のグループということですね。パラシュート反射でしょうか。
ドクタードクター
正解。パラシュート反射は、体幹を支えて持ち上げた児を頭から前方へ落とすようにすると、両腕を前に伸ばし手を開いて体を支えようとする反応だ。転んだときに身を守る保護伸展反応の一つで、生後7〜9か月ころに出現し、その後は生涯持続する。だから10か月児で見られるのが正常なんだ。
医学生医学生
確かに、大人でも転びそうになると手が前に出ますね。
ドクタードクター
その感覚がまさにこの反応だ。では他の反射も確認しておこう。吸啜反射はどうかな。
医学生医学生
口に指を入れると吸いつく反射で、哺乳のためのものですよね。新生児室の見学で、赤ちゃんが指に吸いついてきたのを覚えています。
ドクタードクター
いい経験だね。吸啜反射は生後4〜6か月ころまでに消え、以降は意思による吸う動作や咀嚼に移っていく。10か月では通常見られない。次はMoro反射。
医学生医学生
頭を急に落とすと両腕をぱっと広げて、そのあと抱きつくような動きをする反射です。
ドクタードクター
そう。生後4〜6か月ころまでに消失し、その時期はおおよそ首すわりの獲得と重なる。10か月で残っていれば中枢神経系の異常を疑う。新生児期に左右差があれば、分娩麻痺つまり腕神経叢麻痺や鎖骨骨折を考えるのも大事なポイントだ。
医学生医学生
手掌把握反射も同じころに消えるんですか。
ドクタードクター
そう、4〜6か月ころまでに消える。この反射が消えることで、自分の意思で物に手を伸ばしてつかむことができるようになる。ここで注意したいのが足底把握反射で、こちらは消失が遅く、つかまり立ちや独歩の時期、10〜15か月ころまで残る。手と足で時期が違うのは国試でも狙われやすいよ。
医学生医学生
非対称性緊張性頸反射は、顔を向けた側の手足が伸びて反対側が曲がる、フェンシングの姿勢ですよね。
ドクタードクター
その通り。生後2か月ころに最も目立ち、4〜6か月ころまでに消える。これが消えることで、体の正中で両手を合わせて遊んだり、寝返りをしたりできるようになる。10か月で残っていれば脳性麻痺などを示唆する所見だ。
医学生医学生
原始反射が消えるのと入れ替わるように、随意運動や姿勢反射が育ってくるという関係なんですね。
ドクタードクター
まさにそう。厳密な因果関係というより、時期がおおよそ対応していると理解しておけばいい。臨床で大事なのは、反射を運動発達の里程標と一緒に評価することだ。首すわり3〜4か月、寝返り5〜6か月、お座り6〜7か月、つかまり立ち9〜10か月、独歩12〜15か月くらいが目安になる。
医学生医学生
乳幼児健診で、原始反射が残っていたりパラシュート反射が出なかったりしたら要注意ということですね。
ドクタードクター
そう。消えるべき反射が残っている、出るべき反射が出ない、あるいは左右差がある、という3つの視点で見ると異常に気づきやすい。たとえばパラシュート反射で片側の腕だけ伸びない場合は、片麻痺の手がかりになる。反射は乳児が言葉で訴えられない神経の状態を教えてくれる大切なサインなんだ。

まとめ

乳児の反射は、脳幹・脊髄レベルで制御され出生時から存在し上位中枢の成熟とともに消える原始反射と、中枢神経の成熟に伴って後から出現し生涯持続する姿勢反射に分けて整理します。吸啜反射、Moro反射、手掌把握反射、非対称性緊張性頸反射は生後おおむね4〜6か月ころまでに消失し、足底把握反射のみ10〜15か月ころまで残る点が例外です。パラシュート反射は保護伸展反応の一つで生後7〜9か月ころに出現して以後持続するため、10か月児で認められるのが正常です。原始反射の残存、姿勢反射の未出現、左右差は脳性麻痺などの中枢神経障害や分娩麻痺を疑う手がかりとなり、運動発達の里程標と合わせて評価することが乳幼児健診の基本となります。

解答・解説

正解はdです

乳児にみられる反射を、出現・消失の時期によって整理できているかを問う問題である。 乳児の反射は大きく二つに分けられる。 1. 原始反射:脳幹・脊髄レベルで制御され、出生時から存在し、大脳皮質や中脳などの上位中枢が成熟して抑制がかかるにつれて生後数か月のうちに消えていく反射。吸啜反射、Moro反射、手掌把握反射、非対称性緊張性頸反射(ATNR)などがこれにあたる。 2. 姿勢反射(立ち直り反応・保護伸展反応・平衡反応):中枢神経系の成熟に伴って生後しばらくしてから現れ、その後は一生持続する反応。座位や立位、歩行といった粗大運動の獲得の基盤となる。パラシュート反射はここに含まれる。 10か月児では、代表的な原始反射の多くはすでに消失しており(足底把握反射のように1歳前後まで残るものは例外)、一方で生後半年以降に現れる保護伸展反応が確認できる時期である。したがって、選択肢のうち10か月児に認められるのは生後7〜9か月ころに出現して以後消えないパラシュート反射である。

選択肢考察

  1. ×a.  吸啜反射

    吸啜反射は、口の中に乳首や指が入って口蓋や舌に触れると、規則的に吸いつく動きが起こる原始反射である。新生児の哺乳を支える反射で、生後4〜6か月ころまでに消失し、それ以降は意思による随意的な吸う動作・咀嚼へ移行する。10か月児では通常みられない。

  2. ×b.  Moro反射

    Moro反射は、仰臥位の児の頭部を少し持ち上げてから急に落とす(頭部を支えている手を急に下げる)と、両上肢を伸展・外転して指を開き、続いて抱きつくように上肢を内転・屈曲させる原始反射である。生後3〜4か月ころから減弱し、おおむね4〜6か月までに消失する。消失時期は定頸(首すわり)の獲得とほぼ重なる。10か月で残存していれば中枢神経系の異常を疑う所見となる。また新生児期に左右差があれば、分娩麻痺(腕神経叢麻痺)や鎖骨骨折を考える。

  3. ×c.  手掌把握反射

    手掌把握反射は、検者の指で児の手掌を圧迫すると、指が屈曲して握りしめる原始反射である。生後3〜4か月ころから減弱し、4〜6か月ころまでに消失する。この反射が消えることで、自分の意思で物に手を伸ばしてつかむ随意的な把握が可能になる。10か月児では通常みられない。なお、足の裏を圧迫して足趾が屈曲する足底把握反射は消失が遅く、つかまり立ちや独歩の時期(10〜15か月ころ)まで残る点と区別して覚えておく。

  4. ○d.  パラシュート反射

    パラシュート反射は、児の体幹を支えて腹臥位に近い姿勢で持ち上げ、急に頭部を下に向けて前方へ落下させるようにすると、両上肢を前方に伸ばし手指を開いて体を支えようとする反応である。転倒時に身を守る保護伸展反応の一つで、生後7〜9か月ころに出現し、その後は生涯にわたって持続する。したがって10か月児では認められるのが正常であり、これが正解である。この時期に出現しない、あるいは明らかな左右差がある場合は、脳性麻痺などの中枢神経障害や片麻痺を疑う手がかりになる。

  5. ×e.  非対称性緊張性頸反射

    非対称性緊張性頸反射(asymmetric tonic neck reflex:ATNR)は、仰臥位の児の顔を一方へ向けると、顔の向いた側(顔面側)の上下肢が伸展し、反対側(後頭側)の上下肢が屈曲する原始反射である。弓を引くような、いわゆるフェンシングの姿勢をとる。生後2か月ころに最も目立ち、その後減弱して4〜6か月ころまでに消失する。この反射が消えることで正中位での両手遊びや寝返りが可能になる。10か月児では通常みられず、残存は脳性麻痺などを示唆する。

主な原始反射と消失時期(目安)

・吸啜反射・探索(ルーティング)反射:4〜6か月ころ消失 ・Moro反射:4〜6か月ころ消失 ・手掌把握反射:4〜6か月ころ消失 ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):4〜6か月ころ消失 ・自動歩行(原始歩行):2か月ころ消失 ・足底把握反射:10〜15か月ころ消失 ・Babinski反射(新生児・乳児では陽性が正常):1〜2歳ころまでに陰性化 消失時期の記載は教科書によって1〜2か月程度幅があるが、「多くの原始反射は生後半年前後までに消える」と押さえておけばよい。

主な姿勢反射・平衡反応(出現時期の目安)

・Landau反射:腹臥位で水平に持ち上げると頭部・体幹・下肢を伸展させる。生後5〜6か月ころ出現し、1〜2歳ころには目立たなくなる。 ・パラシュート反射(前方):7〜9か月ころ出現、以後持続。 ・座位での側方・後方への保護伸展反応:側方は6〜8か月ころ、後方は9〜10か月ころから出現。 ・ホッピング反応・立位での平衡反応:1歳前後以降に出現し、独歩を支える。

原始反射と運動発達の関係

原始反射は上位中枢の成熟によって抑制されて消失し、それと入れ替わるように随意運動や姿勢反射が発達する。例えばMoro反射の消失と定頸、ATNRの消失と寝返り・正中位での手の操作、手掌把握反射の消失と随意的な把握は、それぞれおおよそ時期が対応している。

臨床的意義

原始反射が消失すべき時期を過ぎても残存する、出現すべき姿勢反射が現れない、反射に左右差がある、といった所見は、脳性麻痺などの中枢神経障害、末梢神経障害(分娩麻痺など)、骨折を示唆する。乳幼児健診では、運動発達の里程標(定頸3〜4か月、寝返り5〜6か月、お座り6〜7か月、つかまり立ち9〜10か月、独歩12〜15か月など)と合わせて評価する。

POINT

・原始反射(吸啜・Moro・手掌把握・ATNRなど)は生後おおむね4〜6か月までに消失する。 ・パラシュート反射は保護伸展反応の一つで、生後7〜9か月ころに出現し、生涯持続する。 ・10か月児で原始反射が残存、またはパラシュート反射が出現しない・左右差がある場合は中枢神経系の異常を疑う。 ・足底把握反射は例外的に消失が遅く、10〜15か月ころまで残る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。