「次の子も?」に答える―標準型18トリソミーの再発率と遺伝カウンセリング
第115回医師国家試験 D問題 第64問
国試問題にチャレンジ
26歳の女性。18trisomyをもつ第1子の健康診査のために来院した。女性から「次のこどもも18trisomyをもって生まれてくる確率はどのくらいでしょうか」と質問があった。第1子は転座を伴わないtrisomy(核型:47,XX,+18)である。 第2子が18trisomyをもって生まれてくる確率はどれか。
- a.1%未満
- b.5%程度
- c.25%程度
- d.50%程度
- e.ほぼ100%
対話形式の解説
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ドクターまとめ
転座を伴わない標準型18トリソミー(47,XX,+18など)は、主に卵子形成時の減数分裂で起こる偶発的な染色体不分離によって生じ、両親の染色体は通常正常です。そのため次子の再発率は一般頻度をわずかに上回る程度で1%程度以下にとどまり、母親が若い本例では1%未満と説明するのが妥当です。一方、不均衡転座による転座型では親が均衡型転座保因者の可能性があり再発率が高くなるため、両親の染色体検査が必要となります。25%は常染色体潜性遺伝、50%は常染色体顕性遺伝の再発率であり、染色体数的異常とは区別して考えます。核型から発生機序を読み取り、正確な再発率を伝えることは、親の不安に寄り添う遺伝カウンセリングの基本です。
解答・解説
正解はaです
問われていること
18トリソミーの子をもつ母親から、次の子の再発率(同じ疾患をもつ子が再び生まれる確率)を問われた場面である。遺伝カウンセリングの基本として、染色体異常の再発率は「その異常がどのような仕組みで生じたか」によって大きく異なる。
所見の整理
・母親は26歳と若く、母体年齢による染色体数的異常のリスクは低い。 ・第1子の核型は47,XX,+18である。18番染色体がまるごと1本多い標準型トリソミーであり、転座は伴わない。
考え方
標準型トリソミーの大部分は、配偶子(主に卵子)がつくられる減数分裂の際に、染色体がうまく分かれない「不分離」が偶然起こることで生じる。両親の染色体は通常正常であり、受精のたびに独立して起こる偶発的な出来事なので、次の妊娠で同じことが繰り返される確率は低い。一度トリソミーの子をもった場合の再発率は、年齢相応の一般頻度よりわずかに高いとされるが、それでも1%程度以下にとどまる。18トリソミーの一般頻度は出生数千人に1人である。したがって、第2子が18トリソミーをもって生まれる確率は1%未満と考えるのが妥当である。 これに対し、子の18トリソミーが不均衡転座による場合、親が均衡型転座保因者である可能性があり、その場合の再発率は大きく上がる。このため、トリソミーの子が生まれた際には子の核型を確認し、転座型であれば両親の染色体検査を行う。本例は転座を伴わない標準型なので、両親の染色体検査なしに一般的な再発率で説明してよい。
選択肢考察
- ○a. 1%未満
転座を伴わない標準型18トリソミーは、減数分裂時の染色体不分離によって偶発的に生じる。両親の染色体は通常正常であり、次子の再発率は一般頻度(出生数千人に1人)をわずかに上回る程度にとどまる。母親が26歳と若いことも踏まえると、第2子が18トリソミーをもつ確率は1%未満と説明するのが適切である。
- ×b. 5%程度
標準型トリソミーは偶発的な不分離によるため、5%ほどの高い再発率にはならない。再発率が数%以上と高くなりうるのは、親が18番染色体を含む均衡型転座の保因者である場合などであり、本例のように転座を伴わない核型では当てはまらない。
- ×c. 25%程度
25%は、両親がともに保因者である常染色体潜性(劣性)遺伝病で、子が罹患する確率である。18トリソミーは単一遺伝子のメンデル遺伝ではなく、染色体数の異常が偶発的に起こるものなので、この確率は当てはまらない。
- ×d. 50%程度
50%は、親の一方が罹患者である常染色体顕性(優性)遺伝病で、子が罹患する確率である。標準型18トリソミーは親から受け継ぐものではなく、偶然の不分離で生じるため、この確率にはならない。
- ×e. ほぼ100%
子がほぼ100%罹患するような状況は、標準型トリソミーではありえない。両親の染色体は通常正常で、毎回の妊娠ごとに独立して偶発的に起こるため、再発率は低い。
18トリソミー(エドワーズ症候群)の概要
・頻度:出生3,000〜8,000人に1人程度と報告されている(報告によって幅がある)。女児に多い。受胎の段階ではもっと多いが、大部分は流産・死産となる。 ・主な特徴:子宮内発育不全、羊水過多、後頭部の突出、小顎、耳介低位、手指の重なり(握りこぶしで、第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる)、揺り椅子状の足底(rocker-bottom foot)、短い胸骨。先天性心疾患(心室中隔欠損など)を高頻度に合併し、食道閉鎖や臍帯ヘルニアなどの消化器奇形も伴いうる。 ・予後:かつては1年生存率が約10%とされ、生命予後は不良である。近年は心臓手術などの積極的な治療を行う例もあり、生存期間が延びている。重度の発達遅滞を伴う。
18トリソミーの核型の種類
・標準型トリソミー(大部分):47,XX,+18または47,XY,+18。主に母親の卵子形成時の不分離による偶発的な発生で、母体年齢が高いほど頻度が上がる。次子の再発率は低い(1%程度以下)。 ・転座型(まれ):不均衡転座により18番染色体の一部が過剰になる。親が均衡型転座保因者であれば、次子の再発率が高くなるため、両親の染色体検査と遺伝カウンセリングが必要である。 ・モザイク型:正常細胞とトリソミー細胞が混在し、症状は比較的軽いことがある。受精後の体細胞分裂での不分離による。
再発率の目安(整理)
・常染色体顕性遺伝:50%(親の一方が罹患者の場合) ・常染色体潜性遺伝:25%(両親が保因者の場合) ・標準型トリソミー:1%程度以下(一般頻度をわずかに上回る程度) ・均衡型転座保因者の親:トリソミーの標準型より明らかに高く、転座の種類や保因者が父母のどちらかによって異なる。
21トリソミー・13トリソミーとの比較
13トリソミー(パトー症候群)は全前脳胞症、口唇口蓋裂、多指症などを特徴とし、18トリソミーと同じく予後不良である。21トリソミー(ダウン症候群)は最も頻度の高い常染色体トリソミーで、転座型が約5%を占める。いずれも標準型であれば次子再発率は低い。
POINT
・転座を伴わない標準型トリソミーは、減数分裂時の不分離による偶発的な発生であり、次子の再発率は1%程度以下と低い。 ・転座型の場合は、親が均衡型転座保因者の可能性があるため、両親の染色体検査を行い、再発率の評価と遺伝カウンセリングを行う。 ・25%は常染色体潜性遺伝、50%は常染色体顕性遺伝の再発率であり、染色体数的異常とは区別する。 ・18トリソミーの特徴:手指の重なり、揺り椅子状の足底、小顎、後頭部の突出、先天性心疾患、子宮内発育不全。
