陰茎は「頭側」へ―尿道カテーテル管理の3原則で読み解く男性の固定法
第115回医師国家試験 C問題 第22問
国試問題にチャレンジ
男性の尿道カテーテル留置に際し,適切なのはどれか。
- a.尿道カテーテルと連結する蓄尿バッグは開放式回路を用いる。
- b.尿道カテーテルは陰茎を頭側に向けて下腹部に固定する。
- c.尿道カテーテルを3日ごとに入れ換える。
- d.入院中は連日膀胱洗浄を行う。
- e.留置中は安静臥床を促す。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
男性の尿道は陰茎陰嚢角で大きく曲がるため、尿道カテーテルは陰茎を頭側に向けて下腹部に固定し、圧迫壊死による尿道皮膚瘻や尿道狭窄を防ぎます(女性は大腿内側に固定)。留置中の管理は「感染を防ぐ」「尿の流れを保つ」「尿道を傷つけない」の3原則に基づき、閉鎖式回路を保ち、蓄尿バッグは膀胱より低く床につけない位置に置きます。頻回の定期交換やルーチンの膀胱洗浄はかえって感染リスクを高めるため行わず、留置中も安静は不要で離床・歩行を勧めます。カテーテル関連尿路感染症の最大の予防策は不要になったカテーテルの早期抜去であり、日常的な処置だからこそ根拠に基づいた管理を身につけることが、患者の安全に直結します。
解答・解説
正解はbです
尿道カテーテル留置(膀胱留置カテーテル)は、尿閉、手術中・術後の管理、重症患者での正確な尿量測定などのために広く行われる処置である。一方で、カテーテルに関連した尿路感染症〈CAUTI:catheter-associated urinary tract infection〉は医療関連感染のなかでも多いものの一つであり、留置中の管理の基本は次の3点に集約される。 ①感染を防ぐ:閉鎖式回路を保ち、不要な操作(回路の切り離し、ルーチンの膀胱洗浄、頻回の入れ換え)をしない。必要がなくなれば早めに抜く。 ②尿の流れを保つ:カテーテルやチューブを折り曲げず、蓄尿バッグは膀胱より低い位置に置いて逆流を防ぐ。 ③尿道を傷つけない:カテーテルを適切な向きで固定し、尿道粘膜への圧迫や引っ張りを避ける。 男性の尿道は、陰茎の付け根と陰嚢の境目(陰茎陰嚢角)で大きく曲がっている。陰茎を足側に垂らしたままにすると、この曲がり角でカテーテルが尿道の腹側の壁を押し続け、圧迫壊死から尿道皮膚瘻や尿道狭窄を起こしうる。陰茎を頭側に向けて下腹部に固定すれば、尿道の曲がりがゆるやかになり、この圧迫を避けられる。各選択肢は、上の3つの原則に照らして判断すればよい。
選択肢考察
- ×a. 尿道カテーテルと連結する蓄尿バッグは開放式回路を用いる。
誤り。カテーテルと蓄尿バッグの接続部をはずせる開放式回路では、接続をはずすたびに外から細菌が入り込み、留置が数日続くとほとんどの例で細菌尿が生じるとされる。このため現在は、カテーテルと蓄尿バッグがあらかじめ一体になった(あるいは接続部を封印した)閉鎖式回路を用いることが標準である。採尿は回路をはずさず、専用の採尿ポートから消毒したうえで行う。閉鎖が破れたり回路が汚染したりしたときは、カテーテルと蓄尿バッグを一式で交換する。
- ○b. 尿道カテーテルは陰茎を頭側に向けて下腹部に固定する。
適切である。陰茎を足側に向けた状態では、陰茎陰嚢角で尿道が鋭く曲がり、そこでカテーテルが尿道の腹側の壁を圧迫し続ける。これが長く続くと圧迫壊死が起き、陰茎腹側と陰嚢の間に尿道皮膚瘻ができたり、のちに尿道狭窄を残したりする。また曲がったカテーテルは折れて詰まりやすくなる。陰茎を頭側に向けて下腹部にテープで固定すると、尿道の曲がりがゆるやかになり、これらを防げる。固定にはカテーテルが引っ張られて膀胱頸部や尿道を傷つけるのを防ぐ意味もある。なお、女性では大腿の内側に固定するのが一般的である。
- ×c. 尿道カテーテルを3日ごとに入れ換える。
誤り。入れ換えのたびに尿道を傷つけたり、外から細菌を持ち込んだりするため、頻回の交換はかえって有害である。米国疾病予防管理センター〈CDC〉のガイドラインでは、決まった間隔でのルーチン交換は推奨されておらず、閉塞、感染、閉鎖式回路の破綻などがあったときに交換するとしている。実際の臨床現場では、カテーテルの材質(ラテックス製かシリコーン製か)や尿の汚れ具合、詰まりやすさに応じて、おおむね2〜4週間程度(材質によってはそれ以上)を目安に交換することが多い。3日ごとというのは明らかに短すぎる。
- ×d. 入院中は連日膀胱洗浄を行う。
誤り。膀胱洗浄では回路を開けることになり、閉鎖式回路の利点が失われ、外からの細菌の侵入や膀胱粘膜の刺激による感染のリスクがむしろ高まる。ルーチンの膀胱洗浄が尿路感染症を防ぐという根拠はなく、感染予防の目的では行わない。膀胱洗浄は、血尿による凝血塊や沈殿物でカテーテルが詰まる(または詰まりやすい)場合など、必要な場面に限って行う。前立腺や膀胱の手術後で凝血塊による閉塞が予想される場合は、3way(3管腔)カテーテルを用いた閉鎖式の持続膀胱洗浄を行う。
- ×e. 留置中は安静臥床を促す。
誤り。カテーテルを留置していることだけを理由に安静にする必要はない。むしろ臥床が長引くと、膀胱内に尿や沈殿物が停滞して尿路感染症や膀胱結石ができやすくなるほか、深部静脈血栓症、筋力低下、褥瘡、肺炎などの廃用による合併症も起こりやすくなる。原疾患が許すかぎり、歩行や体位変換を勧める。歩くときは、蓄尿バッグを膀胱より低い位置に保ち(床にはつけない)、チューブが折れたり引っ張られたりしないように注意する。
尿道カテーテル留置の主な適応
・急性の尿閉や下部尿路の閉塞 ・重症患者で正確な尿量測定が必要な場合 ・手術中・周術期の管理(長時間手術、泌尿生殖器の手術など) ・仙骨部や会陰部の開放創があり、失禁で汚れるのを防ぎたい場合 ・終末期などで患者の安楽のために必要な場合 単に失禁があるという理由や、看護の手間を省く目的での留置は避ける。
カテーテル関連尿路感染症〈CAUTI〉の予防
・必要な場合に限って留置し、必要がなくなったらできるだけ早く抜去する(最も効果的な予防策)。 ・挿入時は無菌操作で行う。 ・閉鎖式回路を保つ。 ・蓄尿バッグは膀胱より低い位置に置き、床にはつけない。尿はこまめに捨てる。 ・ルーチンの膀胱洗浄や抗菌薬の予防投与、定期的なカテーテル交換は行わない。 ・症状のない細菌尿(無症候性細菌尿)は、原則として治療しない。
尿道カテーテル留置の主な合併症
・尿路感染症(膀胱炎、尿道炎、急性前立腺炎、精巣上体炎、腎盂腎炎、尿路性敗血症) ・膀胱結石、カテーテルの閉塞 ・尿道損傷、尿道皮膚瘻、尿道狭窄 ・挿入時の偽尿道形成(前立腺肥大症のある高齢男性で起こりやすい)
挿入時の注意(男性)
陰茎を体に対してほぼ垂直に持ち上げて尿道をまっすぐにしてから挿入し、尿の流出を確認したあと、さらに数cm進めてからバルーンを膨らませる。尿道内でバルーンを膨らませると尿道を損傷するためである。
POINT
・男性の尿道カテーテルは、陰茎を頭側に向けて下腹部に固定する(陰茎陰嚢角での圧迫による尿道皮膚瘻・尿道狭窄を防ぐ)。女性は大腿内側に固定する。 ・回路は閉鎖式とし、蓄尿バッグは膀胱より低い位置に置く。 ・定期的な頻回交換、ルーチンの膀胱洗浄は行わない(感染リスクを高める)。 ・留置中も安静の必要はなく、離床・歩行を勧める。 ・最大の感染予防策は、不要になったカテーテルの早期抜去。
