「15%」は何グラム?―輸液ラベルから総エネルギーを読み解く
第114回医師国家試験 F問題 第75問
国試問題にチャレンジ
6歳の男児。Hirschsprung病のため在宅静脈栄養により管理されている。体重18kg。中心静脈栄養は1,500mL/日でその組成の15%がブドウ糖,2%がアミノ酸である。さらに1.1kcal/mLの脂肪乳剤100mLを加えることにした。 静脈栄養法により投与される1日の総エネルギー量を求めよ。なお,ブドウ糖は4kcal/g,アミノ酸は4kcal/gとする。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。 解答:1, ①②③ kcal)
対話形式の解説
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ドクターまとめ
輸液の濃度表示「%」は100mL中の溶質のグラム数(w/v%)を表すため、輸液量×濃度で溶質の重量を求め、糖質・アミノ酸はそれぞれ4kcal/gを掛けてエネルギーに換算します。本問ではブドウ糖900kcal、アミノ酸120kcal、脂肪乳剤110kcal(1.1kcal/mL×100mL)を合計して1,130kcalとなり、体重あたり約63kcal/kg/日という値で妥当性を検算できます。脂肪乳剤は少ない水分で効率よくエネルギーを補い、必須脂肪酸欠乏を防ぐ役割があり、10%製剤は約1.1kcal/mL、20%製剤は約2kcal/mLです。長期の中心静脈栄養ではカテーテル関連血流感染症、高血糖、腸管不全関連肝障害、ビタミンB1欠乏による乳酸アシドーシスなどに注意が必要です。輸液組成からエネルギーを正確に計算する力は、病棟での栄養管理や投与ミスの防止に直結する基本技能です。
解答・解説
正解は1,130 kcalです
問題の整理
在宅で中心静脈栄養(TPN:total parenteral nutrition)を受けている6歳男児に、1日に投与される総エネルギー量を求める計算問題である。投与されるのは次の2つである。 ・中心静脈栄養液:1,500mL/日(ブドウ糖15%、アミノ酸2%) ・脂肪乳剤:1.1kcal/mL を 100mL エネルギー換算はブドウ糖4kcal/g、アミノ酸4kcal/gと指定されている。
解き方
輸液の濃度表示「%」は、通常 w/v%(100mL中に含まれる溶質のg数)を意味する。したがって「15%ブドウ糖」は100mL中に15gのブドウ糖を含むということであり、輸液量(mL)×濃度(小数)で含まれる溶質の重量(g)が求まる。これにエネルギー換算係数を掛ければ各成分のエネルギー量になる。
計算過程
1)ブドウ糖 含有量:1,500mL × 0.15 = 225g エネルギー:225g × 4kcal/g = 900kcal 2)アミノ酸 含有量:1,500mL × 0.02 = 30g エネルギー:30g × 4kcal/g = 120kcal 3)脂肪乳剤 エネルギー:1.1kcal/mL × 100mL = 110kcal 4)合計 900 + 120 + 110 = 1,130kcal 小数点以下は生じないので、そのまま 1,130kcal が答えとなる(解答欄 1,①②③ に対し ①=1、②=3、③=0)。
結果の妥当性の確認
体重18kgで割ると約63kcal/kg/日となる。学童期の小児の静脈栄養における必要エネルギー量としておおむね妥当な範囲であり、計算結果に大きな桁の誤りがないことが確認できる。
栄養素のエネルギー換算係数
一般に用いられる概数(Atwater係数)は、糖質4kcal/g、蛋白質4kcal/g、脂質9kcal/gである。なお、静脈栄養で用いるブドウ糖(含水結晶)は厳密には約3.4kcal/gとして計算されることもあるが、国家試験では問題文の指定に従えばよい。本問では4kcal/gと指定されている。
脂肪乳剤
・大豆油などを卵黄レシチンで乳化した製剤で、10%製剤は約1.1kcal/mL、20%製剤は約2kcal/mL である。乳化剤のリン脂質や浸透圧調整のグリセリンも熱量を持つため、脂質9kcal/gから単純計算した値よりやや高くなる。 ・少ない水分量で多くのエネルギーを投与でき、必須脂肪酸欠乏の予防にも必要である。脂肪を含まないTPNを長期間続けると、皮膚炎などを伴う必須脂肪酸欠乏症を来しうる。 ・投与速度が速すぎると脂質の処理が追いつかず高トリグリセリド血症を来すため、ゆっくり投与する。
中心静脈栄養の要点
・高濃度のブドウ糖を含む高浸透圧の輸液は末梢静脈では静脈炎を起こすため、中心静脈から投与する。 ・合併症として、カテーテル関連血流感染症、高血糖、肝機能障害(特に小児の長期TPNでは腸管不全関連肝障害が問題となる)、微量元素・ビタミンの欠乏(ビタミンB1欠乏による乳酸アシドーシスなど)がある。
Hirschsprung病
腸管壁内の神経節細胞(Auerbach神経叢・Meissner神経叢)が肛門側から連続して欠如する先天性疾患で、無神経節腸管が蠕動せず機能的な通過障害を来す。多くは直腸からS状結腸に限局するが、無神経節領域が全結腸や小腸の広範囲に及ぶ型では、根治術後も腸管不全となり長期の静脈栄養を要することがある。本症例で在宅静脈栄養が行われているのはこのような背景によると考えられる。
POINT
・輸液濃度の「%」は100mL中のg数(w/v%)であり、輸液量×濃度で溶質の重量(g)が求まる。 ・エネルギー換算:糖質4kcal/g、蛋白質(アミノ酸)4kcal/g、脂質9kcal/g。 ・10%脂肪乳剤は約1.1kcal/mL、20%脂肪乳剤は約2kcal/mL。 ・本問:ブドウ糖900kcal+アミノ酸120kcal+脂肪乳剤110kcal=1,130kcal。
