StudyMed医師国家試験

「頭・おなか・太もも」で赤ちゃんの体重を量る―超音波断面を見分ける胎児推定体重の基本

第114回医師国家試験 F問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第114回 F問題 第33問

胎児の超音波断層像(①~⑤)を別に示す。  胎児推定体重を測定する際に用いるのはどれか。3つ選べ。

第114回 F問題 第33問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、妊婦健診で毎回のように行う胎児推定体重の計測がテーマだ。5枚の超音波断層像がそれぞれ胎児のどこを切った断面なのかを見分けて、推定体重の計算に使うものを選ぶ問題だね。まず、推定体重を出すのに何を測るか覚えているかな。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で健診外来に付いたとき、先生が頭とおなかと足を順番に測っていたのは覚えています。
ドクタードクター
いい記憶だね。日本で標準的に使われているのは日本超音波医学会の式で、推定体重は児頭大横径(BPD)、腹部周囲長(AC)、大腿骨長(FL)の3つから計算する。式で書くと、1.07×BPDの3乗+0.30×ACの2乗×FLだ。つまり「頭・おなか・大腿骨」の3断面を探せばいい。
医学生医学生
じゃあ頭部の横断像はすぐ分かりますね。楕円形の頭蓋骨が写っているものが児頭大横径でしょうか。
ドクタードクター
そう。頭部の横断像では、楕円形の頭蓋骨の真ん中に正中線エコーが通り、透明中隔腔や視床が見える高さで測る。日本では、プローブに近い側の頭蓋骨の外側から、遠い側の頭蓋骨の内側までを測るouter-inner法が基準だ。式では3乗で効いてくるから、頭の大きさの影響は大きいんだよ。
医学生医学生
胴体の横断像は2枚あるように見えて迷いました。どちらも丸い断面ですよね。
ドクタードクター
そこが一つ目の落とし穴だ。一方は左右の心房と心室が十字に並んで見える胸部の断面、いわゆる心臓の四腔断面だ。これは先天性心疾患のスクリーニングに使う大切な断面だけど、推定体重の計算には入らない。もう一方は腹部の横断像で、脊椎に直交する断面に、肝臓の中を走る臍静脈が前方に見え、胃胞も写ることが多い。こちらが腹部周囲長を測る断面だ。
医学生医学生
胸か腹かは、心臓が見えるか、肝内の臍静脈や胃が見えるかで区別するんですね。
ドクタードクター
その通り。腹部周囲長は肝臓の大きさ、つまり胎児の栄養状態を反映しやすくて、式でも2乗の項として入る。だから胎児発育不全の評価では特に重視される指標なんだ。
医学生医学生
残りは骨の写った2枚ですね。どちらも長い骨なので、両方とも大腿骨長に見えてしまいました。
ドクタードクター
ここが二つ目の落とし穴。解剖学の講義を思い出してほしい。大腿の骨は何本かな。
医学生医学生
大腿骨1本です。あ、2本並んでいる方は前腕か下腿ということですね。
ドクタードクター
正解。1本の長い管状骨が描出されている方が大腿骨長の計測断面で、骨化した骨幹部の両端の間を、なるべく画面に水平に描出して測る。骨端の軟骨は含めない。2本の骨が並走している方は、太さがほぼ同じなので前腕の橈骨と尺骨と考えられる。下腿なら脛骨と腓骨で太さに明らかな差があるからね。いずれにしても前腕の計測は推定体重には使わない。
医学生医学生
結局、頭部横断像の児頭大横径、腹部横断像の腹部周囲長、1本の骨の大腿骨長の3つが正解ですね。四腔断面と前腕は外れる、と。
ドクタードクター
よく整理できたね。発展として、妊娠週数との関係も押さえておこう。妊娠初期には頭殿長(CRL)で週数や分娩予定日を確認・修正し、8〜11週ごろの値が最も精度が高い。中期以降はBPD・AC・FLから推定体重を出して発育を評価する、という使い分けだ。
医学生医学生
推定体重が小さかったら、すぐに胎児発育不全と診断するんですか。
ドクタードクター
在胎週数ごとの基準値と比べて、−1.5SD以下が胎児発育不全の目安になる。ただ推定体重には一般に±10%程度の誤差があるから、1回の値だけで判断せず経時的な推移を見ることが大切だ。疑わしいときは羊水量、臍帯動脈などのドプラ血流、胎児心拍数モニタリングを組み合わせて胎児の状態を評価する。
医学生医学生
健診の超音波は体重だけじゃなく、羊水量や胎盤の位置、胎位、心臓の形まで一度に見ているんですね。
ドクタードクター
そう。推定体重はその中の基本中の基本だ。どの断面で何を測るかが分かると、健診の画面の見え方がぐっと変わるよ。

まとめ

胎児推定体重は日本超音波医学会の式(1.07×BPD³+0.30×AC²×FL)で算出し、児頭大横径(BPD)、腹部周囲長(AC)、大腿骨長(FL)の3断面を用います。BPDは正中線エコーと透明中隔腔・視床が見える頭部横断像、ACは肝内臍静脈や胃胞が見える腹部横断像、FLは1本の大腿骨の長軸像で計測します。心臓の四腔断面は先天性心疾患のスクリーニング用であり、2本の骨が並ぶ像は前腕や下腿なので推定体重には使いません。推定体重は週数別基準値と比較し、−1.5SD以下で胎児発育不全を疑いますが、±10%程度の誤差があるため経時的な評価や羊水量・ドプラ検査との併用が重要です。断面の見分け方を身につけることは、妊婦健診での発育評価を理解する土台になります。

解答・解説

正解はa, c, dです

胎児推定体重(EFW:estimated fetal weight)は、妊婦健診で胎児の発育を評価する基本的な指標である。わが国では日本超音波医学会が提示した次の式が標準的に用いられている。 推定体重(g)=1.07×BPD³+0.30×AC²×FL(各値の単位はcm) ・BPD(biparietal diameter):児頭大横径。頭部の左右方向の径 ・AC(abdominal circumference):腹部周囲長(体幹周囲長)。いわゆる腹囲 ・FL(femur length):大腿骨長 つまり、推定体重の算出に必要なのは「頭(BPD)」「おなか(AC)」「大腿骨(FL)」の3つの計測断面である。本問では①〜⑤の超音波断層像がそれぞれどの断面かを読み取り、この3つに該当するものを選ぶ。 ①は胎児頭部の横断像で、児頭大横径の計測断面である。②は胸部の横断像で心臓の四腔断面、③は1本の長い骨を描出した大腿骨長の計測断面、④は腹部の横断像で腹部周囲長の計測断面、⑤は並走する2本の骨が描出された四肢の像(前腕)である。したがって①、③、④が推定体重の算出に用いる断面である。

選択肢考察

  1. ○a.  ①

    正しい。①は胎児頭部の横断像であり、児頭大横径(BPD)を計測する断面である。BPDは、頭蓋骨の輪郭(児頭)が楕円形に描出され、正中線エコーが中央に位置し、透明中隔腔と視床(四丘体槽)が見える断面で測定する。わが国の基準では、プローブに近い側の頭蓋骨の外側から、遠い側の頭蓋骨の内側までの距離を測る(outer-inner法)。推定体重の式では3乗の項として用いられ、頭部の大きさを反映する。

  2. ×b.  ②

    誤り。②は胎児胸部の横断像で、左右の心房と心室が描出された心臓の四腔断面(four-chamber view)である。この断面は先天性心疾患のスクリーニング(心臓の位置・大きさ、各腔のバランス、房室弁の動きなどの確認)に用いられるが、推定体重の計算には含まれない。胸部の断面であり、腹部周囲長の計測断面とは異なる点にも注意する。

  3. ○c.  ③

    正しい。③は1本の長い管状骨が描出された像であり、大腿骨長(FL)を計測する断面である。大腿骨の長軸全体が画面に対してなるべく水平になるように描出し、骨化している骨幹部の両端の間の距離を測る(骨端の軟骨部分は含めない)。FLは推定体重の式に用いられるほか、四肢短縮を伴う骨系統疾患のスクリーニングにも役立つ。

  4. ○d.  ④

    正しい。④は胎児腹部の横断像であり、腹部周囲長(AC、体幹周囲長)を計測する断面である。腹部大動脈(脊椎)に直交する横断面で、肝内の臍静脈が前方に描出される高さで計測する。胃胞が同時に見えることも多い。ACは肝臓の大きさ、すなわち胎児の栄養状態を反映しやすく、推定体重の式では2乗の項として用いられるため、体重推定への影響が大きい。胎児発育不全の評価でも重要な指標である。

  5. ×e.  ⑤

    誤り。⑤では2本の長い骨が並走して描出されている。大腿は大腿骨1本であるため、⑤は大腿骨の像ではない。2本の骨の太さがほぼ同じであることから前腕(橈骨と尺骨)と考えられる(下腿であれば脛骨と腓骨で太さに明らかな差がある)。前腕の計測は推定体重の算出には用いない。

胎児推定体重の評価

・推定体重は、在胎週数ごとの胎児体重基準値と比較して評価する。基準値の−1.5SD以下を胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)の目安とする。 ・FGRが疑われる場合は、羊水量、臍帯動脈血流などのドプラ検査、胎児心拍数モニタリングなどを組み合わせて胎児の状態(well-being)を評価する。 ・推定体重には誤差があり、一般に±10%程度の誤差を見込む必要がある。

妊娠週数と超音波計測

・妊娠初期:頭殿長(CRL:crown-rump length)を用いて妊娠週数(分娩予定日)を確認・修正する。妊娠8〜11週ごろのCRLが最も精度が高い。 ・妊娠中期以降:BPD、AC、FLを計測して推定体重を求め、発育を評価する。

各計測断面のポイント

・BPD:正中線エコー、透明中隔腔、視床が描出される断面。outer-inner法で測定。 ・AC:脊椎に垂直な腹部横断面で、肝内臍静脈が描出される断面。腹部の外周をトレースするか、前後径と横径から算出する。 ・FL:大腿骨の長軸断面。骨化部分の両端間を測定。

妊婦健診の超音波検査で確認する主な項目

胎児の発育(推定体重)、羊水量(羊水ポケット、AFI)、胎盤の位置(前置胎盤の有無)、胎位、胎児心拍、胎児の形態異常(心臓四腔断面など)がある。

POINT

・胎児推定体重=1.07×BPD³+0.30×AC²×FL(cm単位、日本超音波医学会式) ・用いる3断面:児頭大横径(BPD)、腹部周囲長(AC)、大腿骨長(FL) ・心臓四腔断面は先天性心疾患スクリーニング用で、推定体重には使わない ・2本の骨が並ぶ像は前腕(または下腿)であり、大腿(骨1本)と区別する ・ACは胎児の栄養状態を反映し、FGRの評価で特に重要

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。