StudyMed医師国家試験

その略語、隣の職種に通じていますか?―チーム医療をつなぐのは「伝わる言葉」

第114回医師国家試験 E問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第114回 E問題 第15問

多職種でのチーム医療を妨げる要因はどれか。

  1. a.職種独自の略語を使用する。
  2. b.患者の家族の希望を傾聴する。
  3. c.他職種からの意見を尊重する。
  4. d.各職種の専門性が確立している。
  5. e.他職種の役割や機能を理解する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はチーム医療がうまく機能する条件と、それを妨げる要因を問う問題だ。チーム医療の土台は「目標の共有」「相互理解と相互尊重」「円滑なコミュニケーションと情報共有」の3つ。この3つを損なうものはどれか、という視点で考えてみよう。
医学生医学生
チーム医療というと、医師が指示を出して、ほかの職種がそれに従うイメージがありました。
ドクタードクター
昔はそういう見方もあったけれど、今は違う。チーム医療とは、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士・作業療法士、医療ソーシャルワーカーなどがそれぞれの専門性を発揮し、互いに連携・補完し合って患者に最適な医療を提供することだ。医師もチームを構成する一職種なんだよ。
医学生医学生
そう考えると、職種独自の略語を使うことが妨げになりそうですね。
ドクタードクター
正解だ。職種ごとに教育背景が違うから、ある職種の中だけで通じる略語は、他職種には意味が分からなかったり、別の意味に誤解されたりする。同じ略語が職種や診療科で違う意味で使われることもあって、指示の取り違えなど医療安全上の事故にもつながりうるんだ。
医学生医学生
臨床実習でカルテを読んだとき、診療科ごとに略語が違って、調べるのにかなり時間がかかりました。
ドクタードクター
医学生でもそうなのだから、職種が違えばなおさらだよね。多職種カンファレンスや共有の診療記録では、誰が読んでも分かる正式な用語で書き、説明するのが基本だ。では、患者の家族の希望を傾聴することはどうだろう。
医学生医学生
家族の話を聞くと時間がかかるので、効率の面では妨げになる、という考え方もありますか。
ドクタードクター
その発想は誤りだね。チーム医療の目的そのものが、患者と家族のニーズに応えることにある。本人や家族の希望を丁寧に聴くことで、治療方針や退院後の療養環境についてチームとして共通のゴールを設定しやすくなる。むしろ推進する行動なんだ。
医学生医学生
他職種の意見を尊重するのも、当然プラスですよね。
ドクタードクター
そう。薬物相互作用なら薬剤師、栄養状態なら管理栄養士、ADLの評価なら療法士、社会資源の活用ならMSWと、医師だけでは得られない視点がある。対等な立場で意見を尊重し合うことで、多面的な評価に基づく医療ができる。
医学生医学生
各職種の専門性が確立していることはどうでしょうか。専門性が強すぎると、縦割りになって連携しにくくなる気もします。
ドクタードクター
鋭い疑問だけど、ここは逆なんだ。チーム医療は確立した専門性を持ち寄って補完し合うことで成り立つ。専門性が確立していないと、各職種が責任ある評価や提案をしにくくなり、結局医師の意見に偏った意思決定になりやすい。専門性の確立は前提条件と考えよう。
医学生医学生
他職種の役割や機能を理解しておくことも、誰に何を相談すればいいか分かるので大切ですね。
ドクタードクター
その通り。役割を知っていれば業務の重複や抜け落ちが減り、生活面や心理面まで含めた支援の分担を合意しやすくなる。
医学生医学生
つまり、目標の共有、相互理解・尊重、情報共有の3つを損なうものを探せばよかったわけですね。略語は情報共有を壊すから妨げになる、と。
ドクタードクター
完璧だね。発展として、チーム医療の具体例も押さえておこう。栄養サポートチーム(NST)、感染制御チーム(ICT)、緩和ケアチーム、呼吸ケアチーム、褥瘡対策チーム、退院支援カンファレンスなどがある。そして妨げになる要因としては、略語の多用のほかに、職種間の上下関係による発言のしにくさ、いわゆる権威勾配も重要だ。
医学生医学生
OSCEの医療面接で、患者さんに専門用語を使わずに説明する練習をしましたが、他職種への伝え方にも同じ配慮が要るんですね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。相手が患者でも他職種でも、「相手に伝わる言葉を選ぶ」ことはコミュニケーションの基本だ。研修医になったら、看護師さんが遠慮なく疑問を口にできる雰囲気づくりも、医師の大切な役割になるよ。

まとめ

チーム医療とは、多様な職種がそれぞれの専門性を発揮しつつ連携・補完し合い、患者の状態に的確に対応した医療を提供することであり、その基盤は目標の共有、相互理解と相互尊重、円滑なコミュニケーションと情報共有です。職種独自の略語は他職種に通じず誤解や指示の取り違えを招くため、情報共有を阻害しチーム医療を妨げる要因となります。一方、患者・家族の希望の傾聴、他職種の意見の尊重、各職種の専門性の確立、他職種の役割の理解は、いずれもチーム医療を支える要素です。NSTやICT、緩和ケアチームなど具体的なチームの存在とともに、権威勾配による発言のしにくさも妨げとなることを知っておきましょう。医師もチームの一員であるという認識と、誰にでも伝わる言葉を選ぶ姿勢は、医療の質と安全を高める臨床の基本となります。

解答・解説

正解はaです

チーム医療とは、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士・作業療法士、医療ソーシャルワーカー(MSW)など多様な職種が、それぞれの専門性を発揮しつつ互いに連携・補完し合い、患者の状態に的確に対応した医療を提供することをいう。厚生労働省の検討会報告書(2010年)でもこのように位置づけられ、その推進が求められている。 チーム医療がうまく機能するための条件は、おおむね次のように整理できる。 ・目標の共有: 患者・家族の希望(ニーズ)を中心に、チームとして目指すゴールを一致させる。 ・相互理解と相互尊重: 他職種の役割・機能・専門性を知り、その意見を尊重する。 ・円滑なコミュニケーションと情報共有: 誰にでも通じる言葉で、必要な情報を過不足なく伝え合う。 本問では、これらの条件を満たす行動・状態と、逆にそれを損なう行動を見分ければよい。職種ごとに異なる教育背景をもつメンバーが集まる以上、ある職種の中だけで通じる略語や専門用語は、他職種にとって意味が分からない、あるいは別の意味に誤解されるおそれがあり、情報共有の障害となる。これがチーム医療を妨げる要因である。

選択肢考察

  1. ○a.  職種独自の略語を使用する。

    特定の職種内でしか通用しない略語や隠語を使うと、他職種は内容を正確に理解できず、情報の伝達漏れや誤解が生じる。同じ略語が職種や診療科によって別の意味で使われることもあり、指示の取り違えなど医療安全上の事故につながる危険もある。多職種が集まるカンファレンスや共有の診療記録では、誰が読んでも分かる正式な用語で記載・説明することが求められる。コミュニケーションと情報共有を阻害する点で、チーム医療を妨げる要因である。

  2. ×b.  患者の家族の希望を傾聴する。

    チーム医療は、患者とその家族のニーズに応えることを目的として行われるものであり、患者中心の医療の出発点は本人・家族の思いや希望を丁寧に聴き取ることにある。家族の希望を把握することで、治療方針や退院後の療養環境、在宅支援などについてチームとして共通の目標を設定しやすくなる。妨げになるどころか、チーム医療を推進する行動である。

  3. ×c.  他職種からの意見を尊重する。

    各職種はそれぞれの分野の専門家であり、例えば薬物の相互作用は薬剤師、栄養状態は管理栄養士、日常生活動作(ADL)の評価は療法士、社会資源の活用はMSWといったように、医師だけでは得られない視点をもっている。互いの意見を対等な立場で尊重し合うことで、多面的な評価に基づく質の高い医療が実現する。チーム医療に不可欠な姿勢である。

  4. ×d.  各職種の専門性が確立している。

    チーム医療は、各職種がそれぞれ確立された専門性を持ち寄って補完し合うことで成り立つ。専門性が確立していないと、各職種が自分の立場から責任ある評価や提案をすることが難しくなり、特定の職種(医療現場ではとくに医師)の意見に偏った意思決定になりやすい。医師もチームを構成する一職種にすぎないという認識のもと、各職種の専門性が確立され、それが尊重されることがチーム医療の前提となる。

  5. ×e.  他職種の役割や機能を理解する。

    他職種が何を担い、何ができるのかを理解していてはじめて、どの問題を誰に相談・依頼すべきかが判断でき、他職種の意見の意図も正しく受け止められる。これにより業務の重複や抜け落ちが減り、医療面だけでなく生活面・心理面も含めた支援について、各職種の協力の仕方を合意しやすくなる。チーム医療を円滑にする要素である。

チーム医療推進の考え方

・医療の高度化・複雑化や業務量の増大により、医師や看護師だけでは対応しきれない状況が生じており、多職種によるチーム医療の推進は不可欠となっている。 ・チーム医療の目的は、医療の質を高めること、そして効率的な医療サービスを提供することにある。 ・医療の質の向上には、コミュニケーション、情報の共有化、チームマネジメントが重要とされる。 ・効率的な医療サービスの提供には、情報の共有と業務の標準化が重要とされる。 ・チームとしての質を高めるには、互いの職種を尊重し、明確な目標に向かってそれぞれの専門的見地から評価を行い、専門的技術を効率よく提供することが求められる。 ・「患者に最善の医療を提供するために各職種がどう協力するか」という視点を常に持つことが大切である。

チーム医療の具体例

栄養サポートチーム(NST)、感染制御チーム(ICT)、緩和ケアチーム、呼吸ケアチーム、褥瘡対策チーム、退院支援のためのカンファレンスなどがある。

チーム医療を妨げる要因の例

・職種独自の略語・専門用語の多用による情報伝達の不備 ・職種間の上下関係や権威勾配による発言のしにくさ ・他職種の役割に対する理解不足 ・目標や情報の共有不足

POINT

・チーム医療の基本は、目標の共有、相互理解・相互尊重、円滑なコミュニケーションと情報共有である。 ・職種独自の略語は他職種に通じず、誤解や医療事故の原因となるため、チーム医療を妨げる。 ・各職種の専門性の確立と相互尊重は、チーム医療の前提となる。 ・医師もチームを構成する一職種であり、患者・家族の希望を中心に据える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。