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粗死亡率4.25が10.0に化ける―直接法で見抜く「若い町」の本当の死亡水準

第114回医師国家試験 C問題 第75問

国試問題にチャレンジ

第114回 C問題 第75問

人口12万人のA市のある年の死亡者数は510名であった。A市の年齢群別の人口と死亡者数,同じ年の日本全国の年齢群別の人口の概数を示す。 年齢群 A 市 日本 死亡者数 人口 人口 0~19歳 20   40,000   20,000,000 20~64歳 140   70,000   70,000,000 65歳以上 350   10,000   30,000,000 合計 510   120,000   120,000,000 表の日本全国の人口を基準人口としたとき,A市の人口1,000人あたりの年齢群で調整した死亡率を直接法で計算せよ。  ただし,小数第2位以下の数値が得られた場合は,小数第2位を四捨五入すること。解答:①② . ③ /人口1,000対)

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、年齢調整死亡率を直接法で計算する問題だ。ポイントは「誰の死亡率を、誰の年齢構成に当てはめるか」を取り違えないこと。まず、そもそもなぜ年齢調整が必要なのか、説明できるかな。
医学生医学生
死亡率は年齢によって大きく違うので、高齢者が多い地域ほど粗死亡率が高く出てしまうから、ですよね。
ドクタードクター
その通り。年齢構成が違う集団を粗死亡率のまま比べると、高齢化の程度の差が結果をゆがめてしまう。その影響を取り除くのが年齢調整だ。では直接法の考え方は?
医学生医学生
公衆衛生の講義で習ったはずなんですが、基準集団の死亡率を観察集団に当てはめるんでしたっけ。
ドクタードクター
惜しい、それは間接法のほうだ。直接法は逆で、観察集団、つまりA市の年齢階級別死亡率を、基準集団である日本全国の年齢構成に当てはめる。「A市の死にやすさのまま、日本全体の年齢構成だったら全体の死亡率はいくつになるか」を求めるイメージだね。
医学生医学生
なるほど。じゃあ最初にA市の年齢階級別死亡率を出すわけですね。0〜19歳が人口1,000対0.5、20〜64歳が2.0、65歳以上が35.0になります。
ドクタードクター
いいね。高齢者の死亡率が桁違いに高いのがわかる。次に、その死亡率を日本全国の各年齢階級の人口に掛けて、期待される死亡数を求めよう。
医学生医学生
0〜19歳が1万人、20〜64歳が14万人、65歳以上が105万人で、合計120万人です。
ドクタードクター
正確だ。最後にそれを基準人口の総数1億2千万人で割ると0.01、人口1,000対に直すと10.0。これが答えだ。式にすると、Σ(観察集団の年齢階級別死亡率×基準人口の年齢階級別人口)÷基準人口の総数、となる。
医学生医学生
CBTの過去問で桁を間違えたことがあるので、最後の1,000対の換算は慎重にやります。
ドクタードクター
大事な心がけだね。別の見方もしておこう。基準人口の年齢構成比は、若年層が6分の1、生産年齢層が12分の7、高齢者が4分の1。A市の年齢階級別死亡率をこの構成比で重み付けして平均しても、やはり10.0になる。直接法は「基準人口の構成比による加重平均」だと理解すると覚えやすい。
医学生医学生
ところでA市の粗死亡率は510を12万で割って4.25ですよね。調整すると倍以上になるのはなぜですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。A市の65歳以上は人口の約8%しかいないけれど、日本全国では25%。死亡率の高い高齢者が少ない若い人口構成のおかげで、粗死亡率が見かけ上低く出ていたんだ。年齢構成の影響を除くと、A市の死亡水準は決して低くないことがわかる。
医学生医学生
高齢者が少ない集団では年齢調整すると死亡率が上がり、多い集団では下がる、ということですね。
ドクタードクター
その通り。ここで間接法との違いも整理しておこう。間接法は基準集団の年齢階級別死亡率を観察集団の人口に当てはめて期待死亡数を出し、実際の死亡数との比をとる。これが標準化死亡比、SMRだ。
医学生医学生
間接法なら年齢階級別の死亡数がわからなくても、総死亡数さえあれば計算できるんですよね。
ドクタードクター
そう。だから市町村のように人口が少なく、年齢階級ごとの死亡数が少なくて不安定な集団ではSMRが使われる。一方で直接法は、同じ基準人口を使えば複数の集団同士を直接比べられるのが強みだ。SMRは基準集団との比較には使えるけれど、異なる観察集団同士を厳密に比べるのには向かない。
医学生医学生
基準人口は何を使っているんですか。
ドクタードクター
日本の人口動態統計では長く昭和60年モデル人口が使われてきたけれど、高齢化を踏まえて2020年以降は平成27年モデル人口に改められた。基準人口が変われば値も変わるから、比較するときは同じ基準人口を用いた値同士で比べることが大切だよ。

まとめ

直接法による年齢調整死亡率は、観察集団の年齢階級別死亡率を基準人口の年齢構成に当てはめて求めるもので、Σ(観察集団の年齢階級別死亡率×基準人口の年齢階級別人口)÷基準人口総数で計算します。本問ではA市の死亡率を日本全国の人口に掛けた期待死亡数が計120万人となり、1億2千万人で割って人口1,000対10.0となります。A市の粗死亡率4.25が調整後に大きく上がるのは、高齢者の割合が全国より低い若い人口構成のためです。基準集団の死亡率を観察集団に当てはめる間接法(SMR)は小規模集団に向き、直接法は同じ基準人口を使えば集団同士を比較できるという違いも押さえておきましょう。年齢構成の影響を見抜く視点は、地域の健康指標を正しく読み解くための基本です。

解答・解説

正解は10.0 /人口1,000対です

考え方

直接法による年齢調整死亡率は、「観察集団(A市)の年齢階級別死亡率が、基準集団(日本全国)の年齢構成をもつ集団で起こったとしたら、全体の死亡率はいくらになるか」を求めるものである。手順は次の3段階である。 ①A市の年齢階級別死亡率を求める。 ②それを基準人口の各年齢階級の人口に掛け、基準集団で期待される死亡数を求める。 ③期待死亡数の合計を基準人口の総数で割り、人口1,000対に換算する。 式で表すと、 年齢調整死亡率=Σ(観察集団の年齢階級別死亡率×基準人口の年齢階級別人口)÷基準人口の総数 となる。

計算過程

①A市の年齢階級別死亡率 ・0〜19歳:20÷40,000=0.0005(人口1,000対 0.5) ・20〜64歳:140÷70,000=0.002(人口1,000対 2.0) ・65歳以上:350÷10,000=0.035(人口1,000対 35.0) ②日本全国の人口に当てはめたときの期待死亡数 ・0〜19歳:0.0005×20,000,000=10,000人 ・20〜64歳:0.002×70,000,000=140,000人 ・65歳以上:0.035×30,000,000=1,050,000人 ・合計:10,000+140,000+1,050,000=1,200,000人 ③年齢調整死亡率 1,200,000÷120,000,000=0.01 人口1,000対に換算すると 0.01×1,000=10.0 したがって、答えは 10.0(人口1,000対)である。

別の見方(重み付き平均)

基準人口の年齢構成比は、0〜19歳が20,000,000/120,000,000=1/6、20〜64歳が70,000,000/120,000,000=7/12、65歳以上が30,000,000/120,000,000=1/4である。年齢調整死亡率は、A市の年齢階級別死亡率(人口1,000対)をこの構成比で重み付けした平均とも表せる。 0.5×1/6+2.0×7/12+35.0×1/4 ≒ 0.083+1.167+8.75=10.0 同じ結果が得られる。

粗死亡率との比較

A市の粗死亡率は 510÷120,000×1,000=4.25(人口1,000対)である。年齢調整後に10.0へと大きく上昇するのは、A市では高齢者(65歳以上)の割合が約8%(10,000/120,000)と、日本全国の25%(30,000,000/120,000,000)よりはるかに低いためである。死亡率の高い高齢者が少ない若い人口構成のために、粗死亡率は見かけ上低く出ていたことになる。年齢構成の影響を除くと、A市の死亡水準は決して低くないことがわかる。

年齢調整(標準化)の目的

死亡率は年齢によって大きく異なるため、年齢構成の異なる集団(地域間や年次間)を粗死亡率のまま比べると、人口の高齢化の程度の差が結果をゆがめる。年齢構成の影響を取り除いて比較するために、年齢調整を行う。

直接法と間接法

・直接法:観察集団の年齢階級別死亡率を基準人口に当てはめて年齢調整死亡率を求める。観察集団の年齢階級別死亡数(死亡率)が必要であり、各年齢階級の死亡数がある程度多い大きな集団に適する。同じ基準人口を用いれば、複数の集団同士を直接比較できる。 ・間接法:基準集団の年齢階級別死亡率を観察集団の年齢階級別人口に当てはめて「期待死亡数」を求め、実際の死亡数との比をとる。これが標準化死亡比(SMR)=観察死亡数÷期待死亡数(×100で表すことも多い)である。観察集団の年齢階級別死亡数が不明でも総死亡数がわかれば計算でき、市町村など人口規模が小さく死亡数が少ない集団で用いられる。SMRは基準集団との比較には使えるが、異なる観察集団同士を厳密に比較するには適さない。

基準人口について

日本の人口動態統計における年齢調整死亡率では、長く「昭和60年モデル人口」が基準人口として用いられてきたが、高齢化の進展を踏まえ、2020年(令和2年)以降は「平成27年モデル人口」に改められた。基準人口が変われば年齢調整死亡率の値も変わるため、比較する際は同じ基準人口を用いた値同士で比べる必要がある。

POINT

・直接法:Σ(観察集団の年齢階級別死亡率×基準人口の年齢階級別人口)÷基準人口総数。 ・本問:期待死亡数 10,000+140,000+1,050,000=1,200,000人 → 1,200,000/120,000,000×1,000=10.0(人口1,000対)。 ・粗死亡率4.25に対し調整後10.0。高齢者の少ない集団では年齢調整で死亡率が上がる。 ・間接法(SMR)は観察集団の年齢階級別死亡数が不要で、小規模集団に向く。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。