StudyMed医師国家試験

点滴1本で何キロカロリー?―「5%ブドウ糖500mL=100kcal」から見える維持輸液の本当の役割

第114回医師国家試験 C問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第114回 C問題 第24問

維持輸液製剤(組成:Na+ 35mEq/L,K+ 20mEq/L,Cl- 35mEq/L,グルコース5.0%)500mL中に含まれるエネルギー量(kcal)に最も近いのはどれか。

  1. a.25
  2. b.50
  3. c.100
  4. d.200
  5. e.400

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は輸液製剤のエネルギー量を計算する問題だ。考えるべきは、組成のうちどれがエネルギー源になるのか、そして「5%」という表示が何を意味するのか。この2点を押さえれば計算はすぐだよ。まず、エネルギーになる成分はどれだと思う?
医学生医学生
NaやKも入っているので一緒に計算したくなりますが、電解質はエネルギーにはならないですよね。
ドクタードクター
その通り。Na⁺、K⁺、Cl⁻は浸透圧や電解質バランスを保つための成分で、カロリーはゼロ。この製剤でエネルギーを生むのはグルコースだけなんだ。では「グルコース5.0%」とは、具体的にどれだけの量だろう。
医学生医学生
重さの割合なら、500mLの5%で25gでしょうか。
ドクタードクター
結果は合っているけれど、考え方を正確にしておこう。輸液のパーセントは重量/容量パーセント、つまり100mL中に何gかを表す。5%なら100mLに5g、500mLなら25gだ。あとは1gあたりのエネルギー量を掛ければいい。
医学生医学生
生化学の講義で、糖質と蛋白質は4kcal/g、脂質は9kcal/gと習いました。25g×4kcalで100kcalですね。
ドクタードクター
正解。最も近いのは100kcalだ。誤りの選択肢も、典型的な計算ミスとして見ておくと役に立つ。25という数字はどうかな。
医学生医学生
グルコースの重さそのものですね。gのところで止まってkcalに換算し忘れると選んでしまいそうです。
ドクタードクター
そう。単位を最後まで確認する習慣が大事だ。50は1gあたり2kcalで計算したか、250mL分として計算した値に当たる。200はグルコース10%として計算したか、2本分にした値。400は20%と取り違えたか、この製剤を1日2,000mL、つまり4本投与したときの量に相当する。
医学生医学生
400kcalが1日分だとすると、思ったより少ないです。
ドクタードクター
そこが今回いちばん伝えたい臨床的なポイントなんだ。成人の1日必要エネルギー量はおおよそ25〜30kcal/kg、体重50kgなら1,250〜1,500kcal程度。維持輸液を1日2,000mL入れても400kcal程度にしかならず、栄養としては全く足りない。
医学生医学生
消化器外科の実習で、術後の患者さんが何日も3号液だけだったのを見ました。あれは栄養を入れていたわけではなかったんですね。
ドクタードクター
いい気づきだね。維持輸液、いわゆる3号液は、1日2,000mL程度で成人に必要な水分・Na・Kをおおむね補えるように作られている。主な目的は水分と電解質の補給なんだ。
医学生医学生
では、なぜわざわざブドウ糖を入れているんでしょうか。
ドクタードクター
少量でも糖を入れておくと、糖新生のために筋蛋白が分解されるのを抑えたり、ケトン体の産生を抑えたりできる。これを蛋白節約効果という。エネルギーを満たすためではなく、飢餓状態を和らげるための最低限の糖だと理解しておこう。
医学生医学生
経口摂取できない期間が長くなったら、どうするんですか。
ドクタードクター
末梢静脈栄養(PPN)や中心静脈栄養(TPN)を考える。PPNではブドウ糖10%程度までの糖加アミノ酸製剤に脂肪乳剤を併用する。脂肪は9kcal/gと効率がいいからね。末梢静脈は浸透圧の高い輸液で静脈炎を起こすので投与できる量に限界があり、さらに多くのエネルギーが必要なら中心静脈から高カロリー輸液を入れる。
医学生医学生
脂肪乳剤やアミノ酸もエネルギー源になると考えると、輸液の選び方が栄養管理とつながって見えてきました。
ドクタードクター
その視点が大切だよ。ちなみに、静注用ブドウ糖は一水和物として表示されることがあり、厳密には3.4kcal/gで計算する場合もある。ただ試験では4kcal/gで計算すれば十分だ。病棟では「この点滴で何kcal入っているか」をざっと暗算できると、低栄養を見逃しにくくなるよ。

まとめ

輸液製剤でエネルギー源となるのはブドウ糖・アミノ酸・脂肪で、Na⁺やK⁺などの電解質はエネルギーをもちません。輸液の%は重量/容量パーセントなので、5%ブドウ糖500mLには25gの糖が含まれ、糖質4kcal/gから100kcalとなります。維持輸液(3号液)を1日2,000mL投与しても糖由来のエネルギーは400kcal程度で、成人の必要量には遠く及ばず、その主目的は水分・電解質の補給と蛋白節約効果にあります。絶食が長引く場合は脂肪乳剤やアミノ酸を含むPPN、さらにTPNへと移行を検討するため、輸液のカロリーを素早く見積もる力は日常の栄養管理に直結します。

解答・解説

正解はcです

輸液製剤のエネルギー量を求めるには、エネルギー源となる成分を特定し、その重量(g)に1gあたりのエネルギー量を掛ければよい。

エネルギー源になる成分

本製剤の組成のうち、Na+、K+、Cl−といった電解質は体液の浸透圧や電解質バランスを保つための成分で、エネルギーにはならない。エネルギーを生むのはグルコース(ブドウ糖)だけである。

計算

1) 濃度の意味:輸液の「グルコース5.0%」は重量/容量パーセント(w/v%)で、100mL中にグルコース5gを含むことを意味する。 2) グルコースの量:500mL × 5g/100mL = 25g 3) エネルギー量:糖質は1gあたり約4kcalであるから、25g × 4kcal/g = 100kcal したがって、最も近いのは100kcalである。

臨床的な意味

1日に維持輸液を2,000mL(500mLを4本)投与しても糖質由来のエネルギーは400kcalにとどまり、成人の1日必要エネルギー量(おおよそ25〜30kcal/kg、体重50kgなら1,250〜1,500kcal程度)には遠く及ばない。維持輸液は水分と電解質の補給が主目的であり、糖は飢餓による蛋白異化やケトーシスを抑える程度の量しか含まれていないことを理解しておく。

選択肢考察

  1. ×a.  25

    25は500mL中のグルコースの重量(25g)であり、エネルギー量ではない。これに1gあたり4kcalを掛ける必要がある。

  2. ×b.  50

    グルコース25gに対して1gあたり2kcalで計算した値、または250mL分のエネルギー量に相当し、誤りである。糖質のエネルギー量は1gあたり約4kcalである。

  3. ○c.  100

    5%グルコース500mLには25gのグルコースが含まれ、糖質1gあたり約4kcalであるから、25g × 4kcal/g = 100kcalとなる。電解質はエネルギーをもたないため、製剤全体のエネルギー量は100kcalである。

  4. ×d.  200

    グルコース濃度を10%とした場合(50g × 4kcal/g)や、500mLを2本分(1,000mL)として計算した場合の値であり、誤りである。

  5. ×e.  400

    グルコース濃度を20%とした場合や、この製剤を2,000mL(500mL × 4本)投与した場合のエネルギー量に相当する。500mL 1本では100kcalである。

三大栄養素の1gあたりのエネルギー量(Atwaterの係数)

・糖質(グルコース):4kcal ・蛋白質(アミノ酸):4kcal ・脂質:9kcal 輸液でエネルギー源となるのは、ブドウ糖、アミノ酸、脂肪乳剤である。なお、静注用ブドウ糖は一水和物で表示される場合があり、厳密な計算では3.4kcal/gを用いることもあるが、試験では4kcal/gで計算すればよい。

維持輸液(3号液)の特徴

Na+ 35mEq/L前後、K+ 20mEq/L前後、ブドウ糖4.3〜5%程度を含むのが一般的で、1日2,000mL程度投与すると、成人の1日に必要な水分・Na・Kをおおむね補える組成になっている。ただし糖質由来のエネルギーは1日400kcal程度にすぎず、長期にわたる栄養管理には不十分である。

栄養輸液との違い

経口摂取ができない期間が長くなる場合には、末梢静脈栄養(PPN:ブドウ糖濃度10%程度までの糖加アミノ酸製剤、脂肪乳剤の併用)や、中心静脈栄養(TPN:高濃度ブドウ糖を含む高カロリー輸液)を行う。末梢静脈では浸透圧の高い輸液は静脈炎を起こすため、投与できるエネルギー量に限界がある。

ブドウ糖を含む理由

最低限の糖を投与することで、体蛋白の分解(糖新生のための筋蛋白の異化)やケトン体産生を抑制する効果(蛋白節約効果)がある。

POINT

・輸液中でエネルギー源となるのはブドウ糖、アミノ酸、脂肪であり、電解質はエネルギーにならない。 ・糖質・蛋白質は4kcal/g、脂質は9kcal/g。 ・5%ブドウ糖液は100mLに5g、500mLに25g含み、エネルギーは100kcalである。 ・維持輸液は水・電解質の補給が主目的で、エネルギー補給としては不十分である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。