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壊れた赤血球はどこへ行く?―黄疸で見抜く溶血性貧血

第114回医師国家試験 B問題 第19問

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第114回 B問題 第19問

溶血性貧血でみられるのはどれか。

  1. a.黄疸
  2. b.徐脈
  3. c.匙状爪
  4. d.眼球突出
  5. e.拡張期心雑音

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、溶血性貧血でみられる身体所見を選ぶ問題だ。考え方のコツは、所見を「貧血ならどれでも出るもの」と「溶血だからこそ出るもの」の2つに分けて整理すること。まず、溶血性貧血とはどんな状態か説明できるかな。
医学生医学生
赤血球が本来の寿命より早く壊れてしまって起こる貧血、ですよね。寿命は約120日と習いました。
ドクタードクター
その通り。骨髄は産生を数倍まで増やして頑張るけれど、壊れる速さがそれを上回ると貧血になる。では、壊れた赤血球の中身、特にヘモグロビンはその後どうなると思う?
医学生医学生
生化学の講義で習ったヘムの代謝ですね。ヘムがビリベルジンを経てビリルビンになるので…ビリルビンが増える?
ドクタードクター
そう。マクロファージで処理されたヘムから間接(非抱合型)ビリルビンができる。これが大量につくられて肝臓での抱合・排泄の処理能力を超えると、間接ビリルビン優位の高ビリルビン血症になり、黄疸が現れる。これが溶血に特有の所見で、今回の正解だ。
医学生医学生
黄疸というと肝炎や胆道閉塞のイメージが強かったです。溶血の黄疸は何が違うんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。間接ビリルビンはアルブミンと結合していて水に溶けにくいから、糸球体で濾過されず尿中ビリルビンは陰性になる。一方、腸で増えたウロビリノゲンが再吸収されるので尿中ウロビリノゲンは増える。かゆみは伴いにくく、レモン色の黄疸と表現されることもあるよ。閉塞性黄疸で直接ビリルビンが上がり、尿中ビリルビンが陽性になるのとは対照的だね。
医学生医学生
ほかの選択肢も見ていきたいです。徐脈は、貧血だと心臓が頑張るはずなので逆な気がします。
ドクタードクター
その感覚で正しい。酸素を運ぶ力が落ちた分を補うために心拍数と1回拍出量が増えるから、出るのは頻脈だ。徐脈は甲状腺機能低下症や房室ブロック、洞不全症候群などで考える所見だね。同じ理屈で、心雑音はどうなるかな。
医学生医学生
循環器内科の実習で、貧血の患者さんに収縮期雑音が聴こえると教わりました。拡張期ではなかったと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。心拍出量の増加と血液の粘稠度低下で血流が速くなり、駆出時に乱流が生じて収縮期駆出性の機能性雑音が聴かれることがある。弁そのものは正常だから、拡張期雑音は生じない。拡張期雑音が聴こえたら、大動脈弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄症といった器質的な弁膜症をまず考えるべき病的所見なんだ。
医学生医学生
匙状爪はCBTの勉強で鉄欠乏性貧血の所見として覚えました。溶血でも貧血なら出そうな気もしますが…。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところだ。溶血で壊れた赤血球の鉄は体内で再利用されるから、通常は鉄欠乏にならず匙状爪はみられない。例外は血管内溶血が長く続いてヘモグロビン尿やヘモジデリン尿で鉄を失い続ける場合だね。匙状爪は舌炎や口角炎、Plummer-Vinson症候群などと一緒に鉄欠乏の所見として押さえておこう。
医学生医学生
眼球突出はBasedow病の甲状腺眼症ですよね。これは貧血とは関係なさそうです。
ドクタードクター
その通り。眼窩内の脂肪組織や外眼筋が自己免疫性の炎症で腫れて生じるもので、溶血とは無関係だ。つまりこの問題は、溶血特有の所見、別の貧血の所見、別の疾患の所見、そして貧血所見を逆にしたもの、が混ぜてある構成なんだ。
医学生医学生
貧血共通の所見は頻脈と収縮期雑音、溶血に特有なのが黄疸、と分けて考えればよいんですね。
ドクタードクター
その整理で完璧。発展として、溶血を裏づける検査所見も覚えておこう。網赤血球の増加、間接ビリルビンの上昇、LDの上昇、ハプトグロビンの低下が4点セットだ。ハプトグロビンは遊離ヘモグロビンと結合して消費されるから下がるんだね。
医学生医学生
溶血の場所によって血管内と血管外に分けると習いましたが、所見も違いますか。
ドクタードクター
違うよ。脾臓などのマクロファージで壊される血管外溶血は遺伝性球状赤血球症や温式自己免疫性溶血性貧血が代表で、脾腫を伴いやすい。血管内溶血は発作性夜間ヘモグロビン尿症や不適合輸血、赤血球破砕症候群などで、ハプトグロビンが使い切られるとコーラ色のヘモグロビン尿が出る。それから慢性溶血では、ビリルビン結石による胆石症や、パルボウイルスB19感染による無形成発作にも注意が必要だ。
医学生医学生
貧血と黄疸が一緒にある患者さんを見たら、肝臓だけでなく溶血も鑑別に入れる、ということですね。
ドクタードクター
その姿勢が大事。尿中ビリルビンの有無やハプトグロビン、網赤血球を確認するだけで、黄疸の原因の方向性はかなり絞れるよ。

まとめ

溶血性貧血では、壊れた赤血球のヘモグロビンが代謝されて間接ビリルビンが大量に産生され、肝臓の処理能力を超えることで黄疸が現れます。この黄疸は間接ビリルビン優位で、尿中ビリルビンは陰性、尿中ウロビリノゲンは増加するのが特徴です。貧血に共通する所見は頻脈と収縮期駆出性の機能性雑音であり、徐脈や拡張期雑音は貧血の所見ではありません。また匙状爪は鉄欠乏性貧血、眼球突出はBasedow病の所見で、溶血では通常みられません。網赤血球増加・間接ビリルビン上昇・LD上昇・ハプトグロビン低下という検査の4点セットとあわせて、「貧血共通の所見」と「溶血特有の所見」を分けて考える習慣は、黄疸や貧血の鑑別診断の基礎になります。

解答・解説

正解はaです

溶血性貧血は、赤血球が通常の寿命(約120日)より早く壊れてしまうことで起こる貧血の総称である。骨髄は赤血球の産生を数倍まで増やして代償しようとするが、破壊の速さが産生能力を上回ると貧血になる。 本問では、溶血性貧血でみられる身体所見を、次の2つに分けて考えると整理しやすい。 1. 貧血そのものによる症状・所見(どの貧血でも共通):酸素を運ぶ能力が下がるのを補うため、心拍出量が増える。その結果、頻脈、動悸、息切れ、眼瞼結膜の蒼白、収縮期の機能性心雑音などがみられる。 2. 溶血に特有の所見:壊れた赤血球から出たヘモグロビンが代謝されて間接(非抱合型)ビリルビンが増え、黄疸が出る。慢性の溶血では脾腫や、ビリルビン結石による胆石もみられる。 選択肢には、ほかの貧血(鉄欠乏性貧血)や甲状腺疾患でみられる所見、貧血の所見を逆にしたもの(徐脈、拡張期雑音)が混ぜてある。「貧血の三徴」と言われる貧血・黄疸・脾腫のうち、溶血を特徴づけるのは黄疸である。

選択肢考察

  1. ○a.  黄疸

    正しい。赤血球が壊れると、中のヘモグロビンのヘムがマクロファージで代謝され、ビリベルジンを経て間接(非抱合型)ビリルビンになる。溶血でこれが大量につくられ、肝臓での抱合・排泄の能力を超えると、間接ビリルビンが優位な高ビリルビン血症となり、黄疸が現れる。間接ビリルビンはアルブミンと結合していて水に溶けにくく、腎臓の糸球体で濾過されないため、尿中ビリルビンは陰性である。一方、腸管で増えたウロビリノゲンが再吸収されるため、尿中ウロビリノゲンは増える。皮膚の瘙痒(かゆみ)は伴いにくく、レモン色の黄疸と表現されることがある。

  2. ×b.  徐脈

    誤り。貧血では血液が運べる酸素の量が減るので、組織への酸素供給を保つために心拍数と1回拍出量が増える。そのため現れるのは頻脈であって、徐脈ではない。徐脈は甲状腺機能低下症、房室ブロックや洞不全症候群、頭蓋内圧亢進(Cushing現象)などでみられる。

  3. ×c.  匙状爪

    誤り。匙状爪(さじ状爪、spoon nail、koilonychia)は、爪の中央がへこんでスプーンのように反り返る変化で、鉄欠乏性貧血の代表的な所見である。鉄が足りないと上皮組織の代謝が障害されるために起こると考えられており、舌炎、口角炎、嚥下障害(Plummer-Vinson症候群)、異食症なども鉄欠乏でみられる。溶血性貧血では、壊れた赤血球の鉄は体内で再利用されるので、通常は鉄欠乏にならず、匙状爪はみられない(血管内溶血が長く続き、ヘモグロビン尿やヘモジデリン尿として鉄を失い続ける場合は例外である)。

  4. ×d.  眼球突出

    誤り。眼球突出は、Basedow病(Graves病)による甲状腺眼症の代表的な所見である。眼窩内の脂肪組織や外眼筋が、自己免疫によって炎症を起こし腫れることで生じる。ほかには眼窩腫瘍、眼窩蜂窩織炎、頸動脈海綿静脈洞瘻などでもみられる。溶血性貧血とは関係がない。

  5. ×e.  拡張期心雑音

    誤り。貧血では心拍出量が増え、血液の粘稠度も下がって血流が速くなる。その結果、駆出のときに乱流が生じ、収縮期駆出性の機能性雑音(血流性雑音)が聴かれることがある。弁そのものに異常はないので、拡張期雑音は生じない。拡張期雑音は大動脈弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄症などの器質的な弁膜症を示唆し、病的な所見として扱う。

溶血の場所による分類

・血管外溶血:赤血球が主に脾臓(ほかに肝臓)のマクロファージに捕らえられて壊される。遺伝性球状赤血球症、温式自己免疫性溶血性貧血などが代表で、脾腫を伴いやすい。 ・血管内溶血:血管の中で赤血球が壊れ、ヘモグロビンが血漿中に放出される。発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、不適合輸血、赤血球破砕症候群(血栓性微小血管症、機械弁など)、寒冷凝集素症の一部などがある。遊離ヘモグロビンがハプトグロビンの結合能力を超えると尿に出て、ヘモグロビン尿(コーラ色、暗赤色の尿)となる。尿細管で取り込まれたヘモグロビンの鉄は、ヘモジデリン尿として排泄される。

溶血性貧血に共通する検査所見

・網赤血球の増加(骨髄が代償して産生を増やしたことを反映) ・間接ビリルビンの上昇 ・LD(乳酸脱水素酵素)の上昇(赤血球内のLDが逸脱する) ・血清ハプトグロビンの低下(遊離ヘモグロビンと結合して消費される) ・尿中ウロビリノゲンの増加 ・貧血は正球性(網赤血球が多いと、やや大球性になることもある)

原因による分類

・先天性(主に赤血球自体の異常):膜異常(遺伝性球状赤血球症など)、酵素異常(G6PD欠乏症、ピルビン酸キナーゼ欠乏症)、ヘモグロビン異常(サラセミア、鎌状赤血球症) ・後天性(主に赤血球の外の異常):自己免疫性溶血性貧血(直接Coombs試験陽性)、PNH、赤血球破砕症候群、感染症(マラリアなど)、薬剤性

慢性溶血の合併症

脾腫、ビリルビン結石(色素結石)による胆石症、パルボウイルスB19感染による無形成発作(aplastic crisis)、葉酸の消費が増えることによる葉酸欠乏などがある。

POINT

・溶血性貧血では間接ビリルビンが優位に上昇して黄疸をきたす(尿中ビリルビンは陰性、尿中ウロビリノゲンは増加)。 ・貧血に共通する所見は頻脈と収縮期駆出性の機能性雑音。徐脈や拡張期雑音は貧血の所見ではない。 ・匙状爪は鉄欠乏性貧血、眼球突出はBasedow病でみられる。 ・溶血の検査所見の4点セットは、網赤血球増加、間接ビリルビン上昇、LD上昇、ハプトグロビン低下。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。