StudyMed医師国家試験

腎臓を守るのは誰だ―CKDの危険因子と「味方」を見分ける

第114回医師国家試験 B問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第114回 B問題 第16問

成人において慢性腎臓病の発症のリスクファクターとならないのはどれか。

  1. a.加齢
  2. b.喫煙
  3. c.糖尿病
  4. d.運動習慣
  5. e.高血圧症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、慢性腎臓病、CKDの発症に関わる危険因子を問う問題だ。選択肢の中に、腎臓にとってむしろ「味方」になるものが紛れている。それを見抜くために、まずCKDという概念そのものを整理しておこう。CKDの定義は覚えているかな。
医学生医学生
蛋白尿などの腎障害か、GFR 60未満が3か月以上続く状態、でしたっけ。
ドクタードクター
正確だね。腎障害の所見、特に蛋白尿・アルブミン尿か、GFRが60 mL/分/1.73 m²未満か、そのいずれかまたは両方が3か月以上続くこと。原因疾患を問わない包括的な概念で、日本の成人のおよそ8人に1人が該当するといわれている。末期腎不全だけでなく、心筋梗塞や脳卒中の強い危険因子でもあるのが大事なところだ。
医学生医学生
腎臓の病気なのに心血管疾患のリスクになるんですね。
ドクタードクター
そう、腎臓は血管の塊のような臓器だから、全身の血管障害と表裏一体なんだ。では選択肢を見ていこう。まず加齢はどうだろう。
医学生医学生
生理学の講義で、年を取るとネフロンの数が減ってGFRが下がると習いました。
ドクタードクター
その通り。機能するネフロンが減り、腎血流量もGFRも徐々に低下する。さらに高齢者では高血圧や糖尿病、動脈硬化の合併も増えるから、CKDの有病率は年齢とともに大きく上昇する。加齢は変えられない危険因子の代表だ。
医学生医学生
糖尿病は、透析導入の原因の第1位が糖尿病性腎症なので、間違いなく危険因子ですよね。
ドクタードクター
そうだね。持続する高血糖で糸球体が障害される。最近は高血圧や動脈硬化の関与も含めて、糖尿病関連腎臓病と総称されることもある。高血圧症はどうかな。
医学生医学生
病理実習で、腎硬化症の細動脈の壁が厚くなっている標本を見ました。高血圧が続くとああなるんですね。
ドクタードクター
いい結びつけ方だ。高血圧が続くと腎臓の細い動脈に硬化が起き、糸球体への過剰な圧負荷も加わって腎機能が落ちる。腎硬化症は透析導入の原疾患で糖尿病性腎症に次いで多い。しかもCKDが進むと高血圧が悪化するという悪循環になる。
医学生医学生
喫煙は肺や血管に悪いのはわかりますが、腎臓にも直接関係あるんですか。
ドクタードクター
あるんだ。喫煙は血管内皮障害や酸化ストレス、交感神経の活性化を通じて腎臓の血管や糸球体を傷つけ、蛋白尿の出現やGFR低下のリスクを高める。CKDの発症にも進行にも関わるから、禁煙はCKD対策の基本だよ。
医学生医学生
そうすると運動習慣が答えですね。でも、腎臓病の患者さんは安静にするように言われていた気がして、少し迷いました。
ドクタードクター
その迷いはもっともだね。かつてはCKD患者に一律に運動制限をかける考え方があった。でも今は、病状に応じた運動療法が勧められている。適度な運動は体重を適正にし、血圧・血糖・脂質を改善し、インスリン抵抗性も改善する。つまりCKDの主な危険因子である生活習慣病そのものを予防するから、運動習慣は危険因子どころか予防的に働くんだ。
医学生医学生
危険因子の多くは生活習慣病とつながっていて、運動はその根っこを改善する側、という整理ですね。
ドクタードクター
その通り。ほかの危険因子もまとめておこう。脂質異常症、肥満やメタボリックシンドローム、高尿酸血症、過度の飲酒、食塩の過剰摂取、CKDの家族歴、健診での尿異常の既往、膠原病、尿路結石や尿路感染症、急性腎障害の既往、そしてNSAIDsのような腎毒性のある薬剤の常用だ。
医学生医学生
臨床実習の腎臓内科で、整形外科から痛み止めを長く出されていた高齢の方のeGFRが下がっていた症例がありました。
ドクタードクター
よくある落とし穴だね。高齢で腎予備能が少ない人ほどNSAIDsの影響を受けやすい。処方するときは腎機能を確認し、漫然と続けないことが大切だ。重症度はGFR区分と蛋白尿区分、原疾患を組み合わせたCGA分類で評価する。GFRが低いほど、蛋白尿が多いほど予後が悪いから、健診での尿蛋白とeGFRの確認が早期発見の要になる。
医学生医学生
予防としては、生活習慣病の治療を続けること、減塩、禁煙、適正体重、そして適度な運動、ということですね。
ドクタードクター
まさにそれだ。CKD患者では食塩1日6 g未満が目標とされる。CKDは自覚症状が乏しいまま進むから、危険因子を持つ人を見つけて早めに介入することが、透析や心血管イベントを防ぐいちばんの近道なんだ。

まとめ

慢性腎臓病(CKD)は、蛋白尿などの腎障害またはGFR 60 mL/分/1.73 m²未満が3か月以上続く状態で、末期腎不全だけでなく心血管疾患の重要な危険因子でもあります。発症の危険因子には、加齢、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満・メタボリックシンドローム、高尿酸血症、喫煙、CKDの家族歴、NSAIDsなど腎毒性薬剤の常用などがあります。一方、適度な運動習慣は生活習慣病を予防・改善するため危険因子ではなく、むしろCKDの予防に役立ち、CKD患者でも病状に応じた運動療法が勧められます。新規透析導入の原疾患は糖尿病性腎症が最多で、腎硬化症がそれに続きます。自覚症状の乏しいCKDを防ぐには、危険因子を理解して生活習慣病の管理と健診での早期発見につなげることが重要です。

解答・解説

正解はdです

本問は、慢性腎臓病〈CKD:chronic kidney disease〉の発症に関わる危険因子を問う問題である。

CKDとは

CKDは、①尿異常(特に蛋白尿・アルブミン尿)、画像診断・血液検査・病理所見などで腎障害の存在が明らかであること、②糸球体濾過量〈GFR〉が60 mL/分/1.73 m²未満に低下していること、のいずれか、または両方が3か月以上持続する状態と定義される。原因疾患を問わない包括的な概念であり、末期腎不全(透析・腎移植が必要な状態)へ進行する危険があるだけでなく、心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患の強い危険因子でもある。日本の成人のおよそ8人に1人がCKDとされ、新たな国民病とも呼ばれる。

CKD発症の主な危険因子

・加齢 ・高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満・メタボリックシンドローム、高尿酸血症などの生活習慣病 ・喫煙、過度の飲酒、食塩の過剰摂取などの生活習慣 ・CKDの家族歴、健診での尿異常・腎機能異常の既往 ・膠原病、尿路結石・尿路感染症、急性腎障害の既往 ・腎毒性のある薬剤(非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉など)の常用

考え方

選択肢のうち、加齢・喫煙・糖尿病・高血圧症はいずれもCKD発症の確立した危険因子である。一方、適度な運動を習慣的に行うことは、肥満や生活習慣病を改善・予防することで、かえってCKDの発症予防に役立つ。したがって、リスクファクターとならないのは運動習慣である。

選択肢考察

  1. ×a.  加齢

    腎臓は加齢とともに機能するネフロン(腎臓の機能単位)が減少し、腎血流量やGFRが徐々に低下する。さらに高齢者では動脈硬化や高血圧・糖尿病の合併が増えるため、CKDの有病率は年齢とともに著しく上昇する。人口の高齢化がCKD患者数の増加の一因ともなっており、加齢はCKD発症の危険因子である。

  2. ×b.  喫煙

    喫煙は血管内皮障害や酸化ストレス、交感神経の活性化などを介して腎臓の血管・糸球体を障害し、蛋白尿の出現やGFR低下のリスクを高める。CKDの発症だけでなく進行や心血管疾患の発症にも関与するため、喫煙は危険因子であり、禁煙はCKD予防・管理の基本となる。

  3. ×c.  糖尿病

    糖尿病では持続する高血糖により糸球体が障害され、糖尿病性腎症(現在は高血圧や動脈硬化の関与も含めて糖尿病関連腎臓病と総称されることがある)を生じる。日本で新たに透析療法を導入される患者の原疾患の第1位は糖尿病性腎症であり、糖尿病はCKD発症の最も重要な危険因子の一つである。

  4. ○d.  運動習慣

    適度な運動を習慣的に行うことは、体重の適正化、血圧・血糖・脂質の改善、インスリン抵抗性の改善などを通じて、CKDの主要な危険因子である生活習慣病を予防・改善する。したがって運動習慣はCKD発症のリスクファクターとはならず、むしろ予防的に働く。CKD患者においても、かつてのように一律に運動を制限するのではなく、病状に応じた運動療法が勧められており、減量や運動耐容能(最高酸素摂取量)の改善に有効とされる。

  5. ×e.  高血圧症

    高血圧が持続すると腎臓の細い動脈に動脈硬化(腎硬化症)が生じ、糸球体への過剰な圧負荷も加わって腎機能が低下する。血圧が高いほどCKD発症の危険が高まることが疫学的に示されている。腎硬化症は新規透析導入の原疾患としても上位を占めており、高血圧症はCKD発症の重要な危険因子である。なお、CKDが進むと高血圧が悪化するという悪循環も生じる。

CKDの重症度分類

CKDの重症度は、原疾患(Cause)、GFR区分(G1~G5)、蛋白尿・アルブミン尿区分(A1~A3)を組み合わせたCGA分類で評価する。GFR区分は、G1:90以上、G2:60~89、G3a:45~59、G3b:30~44、G4:15~29、G5:15未満(mL/分/1.73 m²)である。GFRが低いほど、また蛋白尿が多いほど、末期腎不全・心血管疾患・死亡のリスクが高くなる。

CKD発症予防・進行抑制の要点

1.糖尿病・高血圧・脂質異常症・高尿酸血症などの生活習慣病を適切に治療し、治療を中断しない。 2.適度な運動と食事管理により適正体重を維持する。 3.CKDを招く生活習慣を是正する:禁煙、節酒、減塩(CKD患者では1日6 g未満が目標)、鎮痛薬(NSAIDsなど)の漫然とした常用を避ける。 4.健診で尿蛋白や血清クレアチニン(eGFR)を定期的に確認し、早期発見・早期介入に努める。

透析導入の主な原疾患

新規透析導入患者の原疾患は、糖尿病性腎症が最多であり、次いで腎硬化症、慢性糸球体腎炎が続く。腎硬化症は高齢化と高血圧を背景に増加傾向にあり、慢性糸球体腎炎は減少傾向にある。

POINT

・CKDの危険因子:加齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満・メタボリックシンドローム、高尿酸血症、喫煙、CKDの家族歴、腎毒性薬剤(NSAIDsなど)の常用など。 ・適度な運動習慣は危険因子ではなく、CKDの予防・管理に有益である。 ・CKDの定義:腎障害(特に蛋白尿)またはGFR 60 mL/分/1.73 m²未満が3か月以上持続。 ・新規透析導入の原疾患の第1位は糖尿病性腎症、次いで腎硬化症。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。