StudyMed医師国家試験

2025年の在宅医療はどれだけ必要か―「現状の統計」と「将来の構想」を見分ける

第113回医師国家試験 F問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第6問

在宅医療の医療需要の推計が示されているのはどれか。

  1. a.患者調査
  2. b.国勢調査
  3. c.健康日本21
  4. d.地域医療構想
  5. e.介護保険事業計画

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療や介護に関わる統計調査や計画のうち、将来の在宅医療の需要を推計しているものはどれかを問う問題だ。選択肢を「現状を調べる統計調査」「健康づくりの方針」「医療提供体制の将来像」「介護サービスの計画」に分けて整理すると見通しがよくなるよ。
医学生医学生
在宅医療の需要なら、患者さんの数を調べている患者調査かなと最初は思いました。
ドクタードクター
いいところに目をつけているけど、そこがひっかけだ。患者調査は厚生労働省が3年ごとに、無作為に抽出した病院・一般診療所・歯科診療所を対象に行う標本調査で、推計患者数や受療率、平均在院日数などを出す。あくまで調査時点の受療の実態を把握するもので、将来を推計するものではないんだ。
医学生医学生
現状のスナップショットということですね。でも、将来推計の材料にはなりそうです。
ドクタードクター
その通り。患者調査の受療率は、将来の需要を推計するときの基礎資料として使われる。同じように国勢調査も間接的に使われるよ。国勢調査について覚えていることは?
医学生医学生
総務省が5年ごとに行う全数調査で、人口静態統計の代表です。CBTの公衆衛生分野で人口動態統計と区別して覚えました。
ドクタードクター
完璧だね。人口や世帯構成、就業状況などを調べるもので、医療需要は調査項目にない。ただ、将来推計人口の基礎になるから、やはり材料の一つではある。では、実際にこれらの材料を使って将来の在宅医療需要を推計しているのはどれだろう。
医学生医学生
地域医療構想でしょうか。病床を減らす話というイメージが強いのですが。
ドクタードクター
正解だ。地域医療構想は2014年の医療介護総合確保推進法による医療法改正で制度化され、都道府県が医療計画の一部として策定する。団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年を見据えて、構想区域ごとに、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つの医療機能別の必要病床数と、在宅医療等の医療需要を推計しているんだ。
医学生医学生
病床の話と在宅医療の話がセットになっているのはなぜですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。慢性期の病床を減らしていくと、そこで療養していた人たちの受け皿が必要になる。その受け皿が在宅医療等なんだ。だから病床の必要量と同時に在宅医療等の需要を推計して、提供体制の整備につなげる。ちなみに「在宅医療等」には自宅だけでなく、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅などで受ける医療も含まれる。
医学生医学生
構想区域というのは、二次医療圏と同じですか。
ドクタードクター
原則として二次医療圏が単位だ。構想を実現するために、医療機関が病棟ごとの機能を報告する病床機能報告制度、関係者が協議する地域医療構想調整会議、財政支援の地域医療介護総合確保基金といった仕組みがある。
医学生医学生
健康日本21はどうでしょう。国の計画なので、何か将来の数値目標が入っていそうです。
ドクタードクター
数値目標はあるけれど、中身が違う。健康日本21は健康増進法に基づく国民の健康づくりの基本方針で、現在の第三次は健康寿命の延伸と健康格差の縮小を全体目標に掲げている。生活習慣の改善や生活習慣病の予防が中心で、在宅医療の需要推計は含まれない。
医学生医学生
介護保険事業計画は在宅に近い気がして迷いました。地域実習で訪問看護に同行したときも、介護と医療の境目が分かりにくかったです。
ドクタードクター
その感覚は大事だね。介護保険事業計画は市町村が3年を1期として策定し、介護サービスの種類ごとの見込み量や確保策を定めて、介護保険料の算定根拠にもなる計画だ。対象は介護サービスであって、医療である在宅医療の需要推計ではない。ただし、医療計画と介護保険事業計画は整合性を保つために策定サイクルがそろえられているよ。
医学生医学生
整理すると、患者調査と国勢調査は現状を調べる材料、地域医療構想がそれを使って将来の病床と在宅医療の需要を推計する、ということですね。
ドクタードクター
その理解で十分だ。発展として、医療計画は都道府県が6年ごとに策定し、5疾病・6事業と在宅医療の体制などを定める。第8次からは新興感染症対応が6事業に加わった。さらに2040年頃を見据えて、入院だけでなく外来・在宅医療や介護との連携も含めた新たな地域医療構想への見直しが進められている。臨床に出たら、自分の地域の病床や在宅医療の体制がこうした計画に基づいていることを意識してみてほしい。

まとめ

在宅医療等の医療需要の推計が示されているのは地域医療構想であり、都道府県が医療計画の一部として策定し、2025年を見据えて構想区域(原則として二次医療圏)ごとに4医療機能別の必要病床数と在宅医療等の需要を推計しています。慢性期病床の縮小に伴う受け皿として在宅医療等を整備することがねらいで、病床機能報告制度や地域医療構想調整会議によって実現が図られます。患者調査(厚生労働省、3年ごと、医療施設対象の標本調査)や国勢調査(総務省、5年ごと、全数調査)は現状を把握する統計で、推計の基礎資料にとどまります。健康日本21は国民の健康づくりの基本方針、介護保険事業計画は市町村が3年ごとに介護サービス見込み量を定める計画であり、在宅医療の需要推計とは目的が異なります。統計調査と行政計画を「誰が・何のために・何年ごとに」で整理しておくと、公衆衛生の制度問題に強くなり、地域医療の仕組みを理解する土台にもなります。

解答・解説

正解はdです

医療・保健・介護に関わる統計調査や計画のうち、将来の在宅医療の需要を推計しているものを問う問題である。 各選択肢は、(1) 現状を把握するための統計調査(患者調査、国勢調査)、(2) 国民の健康づくりの基本方針(健康日本21)、(3) 医療提供体制の将来像を示す構想(地域医療構想)、(4) 介護サービス量を見込む行政計画(介護保険事業計画)に分けて考えると整理しやすい。 地域医療構想は、2014年の医療介護総合確保推進法による医療法改正で制度化され、都道府県が医療計画の一部として策定するものである。いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年を見据え、構想区域(原則として二次医療圏)ごとに、将来の人口推計と性・年齢階級別の受療率などを基に、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つの医療機能ごとの病床数の必要量(必要病床数)と、在宅医療等の医療需要を推計している。したがって、在宅医療の医療需要の推計が示されているのは地域医療構想である。

選択肢考察

  1. ×a.  患者調査

    誤り。患者調査は厚生労働省が3年ごとに実施する標本調査(基幹統計)で、無作為に抽出した病院・一般診療所・歯科診療所を対象とする。患者の性・年齢、傷病名、入院・外来の別、受療の状況などを調べ、推計患者数、受療率、平均在院日数、総患者数などを算出する。調査時点での受療の実態を把握するものであり、将来の在宅医療需要を推計するものではない。ただし、その結果は地域医療構想で需要を推計する際の基礎資料として用いられる。

  2. ×b.  国勢調査

    誤り。国勢調査は総務省が5年ごとに10月1日現在で行う全数調査で、日本に住むすべての人と世帯を対象に、人口、世帯構成、就業状況などを調べる人口静態統計の代表である。医療需要は調査項目に含まれない。将来推計人口の基礎となるため、地域医療構想の推計にも間接的に利用される。

  3. ×c.  健康日本21

    誤り。健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)は、健康増進法に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」として、国民の健康づくりの方向性と具体的な数値目標を定めたものである。現在の第三次(2024〜2035年度)は健康寿命の延伸と健康格差の縮小を全体目標に掲げる。生活習慣の改善や生活習慣病の予防が中心であり、在宅医療の需要推計は含まれない。

  4. ○d.  地域医療構想

    正しい。地域医療構想は都道府県が医療計画の一部として策定し、構想区域ごとに2025年の4医療機能別の必要病床数とともに、在宅医療等の医療需要を推計している。慢性期の病床を減らしていく分の受け皿として在宅医療等を整備する必要があるため、在宅医療等の需要量を推計し、その提供体制の整備につなげる。構想の実現に向けては、病床機能報告制度で各医療機関の病床機能の現状を把握し、構想区域ごとに設けられる地域医療構想調整会議で関係者が協議して、病床の機能分化と連携を進める。

  5. ×e.  介護保険事業計画

    誤り。介護保険事業計画は、介護保険法に基づき市町村が3年を1期として策定する計画で、介護サービスの種類ごとの見込み量や、その確保のための方策、地域支援事業などを定め、介護保険料を算定する根拠にもなる。都道府県はこれを支援する介護保険事業支援計画を策定する。対象は介護サービスであり、医療(在宅医療)の需要推計を示す計画ではない。なお医療計画と介護保険事業(支援)計画は、整合性を確保するため策定サイクルがそろえられている。

地域医療構想の要点

・根拠: 医療法(2014年の医療介護総合確保推進法による改正)。都道府県が医療計画の一部として策定し、2016年度中に全都道府県で策定された ・単位: 構想区域(原則として二次医療圏) ・内容: 2025年の医療需要と、4医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとの病床数の必要量、在宅医療等の医療需要の推計、およびその実現に向けた施策 ・推進の仕組み: 病床機能報告制度(医療機関が病棟ごとの医療機能を都道府県に報告)、地域医療構想調整会議、地域医療介護総合確保基金による財政支援 ・「在宅医療等」には、居宅だけでなく、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅などで受ける医療も含まれる ・2040年頃を見据え、入院に加えて外来・在宅医療や介護との連携も対象に含める新たな地域医療構想への見直しが進められている

主な統計調査の整理

・国勢調査: 総務省、5年ごと、全数、人口静態統計 ・人口動態調査: 厚生労働省、出生・死亡・死産・婚姻・離婚の届出に基づく ・患者調査: 厚生労働省、3年ごと、医療施設を対象とする標本調査。受療率、推計患者数、平均在院日数など ・国民生活基礎調査: 厚生労働省、毎年(3年ごとに大規模調査)、世帯を対象。有訴者率、通院者率、介護の状況など

関連する計画

・医療計画(都道府県、6年ごと): 5疾病・6事業(2024年度からの第8次で新興感染症対応が追加)と在宅医療の体制、基準病床数などを定める ・介護保険事業計画(市町村、3年ごと)/介護保険事業支援計画(都道府県、3年ごと)

POINT

・在宅医療等の医療需要の推計が示されるのは地域医療構想 ・地域医療構想は都道府県が医療計画の一部として策定し、2025年の4医療機能別必要病床数と在宅医療等の需要を構想区域ごとに推計する ・患者調査は医療施設を対象に受療の現状を調べる統計調査(3年ごと) ・国勢調査は人口静態統計(5年ごと、全数) ・介護保険事業計画は市町村が3年ごとに介護サービス見込み量を定める計画

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。