StudyMed医師国家試験

42兆円の中身を読み解く―国民医療費の「範囲」と「大小関係」

第113回医師国家試験 F問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第4問

27年度の国民医療費について正しいのはどれか。

  1. a.介護保険費用が含まれる。
  2. b.国民所得に対する比率は10%を超える。
  3. c.一般診療所医療費は病院医療費より多い。
  4. d.年齢階級別では65歳以上が80%を超える。
  5. e.薬局調剤医療費は医科診療医療費より多い。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は国民医療費の統計問題だ。数字を丸暗記するより、「何が含まれて何が含まれないか」という範囲と、「どれがどれより大きいか」という大小関係を押さえるのがコツ。分母が何かにも注意して見ていこう。
医学生医学生
国民医療費というと、医療と介護を合わせた費用の総額というイメージでした。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。国民医療費は、その年度に医療機関などで保険診療の対象となりうる傷病の治療に要した費用の推計なんだ。介護保険の費用は含まれず、介護給付費などとして別に集計されている。
医学生医学生
傷病の治療に限るということは、健診や予防接種も入らないんですか。
ドクタードクター
その通り。正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種は治療ではないので含まれない。差額ベッド代などの保険外負担や先進医療の費用も対象外だ。一方で、保険診療の患者自己負担分や公費負担医療の分は含まれる。訪問看護も医療保険から給付されるものは含まれるけれど、介護保険から給付されるものは含まれないよ。
医学生医学生
社会医学の講義で「国民医療費に含まれないもの」はリストで覚えた記憶があります。規模はどれくらいでしたっけ。
ドクタードクター
平成27年度は約42.4兆円、人口1人当たり約33.3万円だった。そして国民所得に対する比率は10.91%で、10%を超えている。これが正解だ。
医学生医学生
あれ、GDP比は8%くらいと聞いたことがあって、10%は超えていないと思っていました。
ドクタードクター
いい混乱だね、まさにそこが狙われる。GDPに対する比率は約8%だけれど、国民所得はGDPより小さいから、同じ医療費でも比率は大きくなる。国民所得比はおおむね平成21年度以降10%を超えて推移しているんだ。分母がGDPか国民所得かを必ず確認しよう。
医学生医学生
分母の違いで答えが変わるんですね。次に施設別ですが、診療所の数は病院よりずっと多いので、診療所の医療費のほうが多いのかと迷いました。
ドクタードクター
施設数は診療所が圧倒的に多いけれど、医療費は病院が約21.2兆円、一般診療所が約8.9兆円で、病院が約2.4倍だ。高額になりやすい入院医療の大部分を病院が担っているからだよ。
医学生医学生
内科の実習でも、入院患者さんの医療費は外来に比べてかなり大きいと聞きました。年齢別では高齢者が大半ですよね。
ドクタードクター
65歳以上が占める割合は59.3%、約6割だ。80%には届かない。ただ1人当たりで比べると、65歳以上は約74万円、65歳未満は約18万円で、約4倍の差がある。人口に占める割合以上に医療費を使っている、という見方が大切なんだ。
医学生医学生
薬局調剤医療費も、院外処方が増えてかなり大きくなっていそうです。
ドクタードクター
医薬分業の進展で割合は増えてきたけれど、平成27年度は薬局調剤が18.8%、医科診療が70.9%で、医科診療のほうが約3.8倍多い。診療種類別では医科診療が約7割、薬局調剤が約2割、歯科が7%程度という順番で覚えておこう。
医学生医学生
範囲は「治療だけ、介護は別」、大小は「医科>薬局調剤>歯科」「病院>診療所」「65歳以上は約6割」、比率は「国民所得比10%超・GDP比約8%」ですね。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。補足すると、財源は保険料が約5割、公費が約4割弱、患者負担が1割強。国民医療費は高齢化と医療の高度化を背景に増加傾向が続いていて、令和に入ってからは40兆円台半ばで推移している。統計は年度で数値が変わるから、大小関係とおおよその割合を軸に、最新の値も確認する習慣をつけておくといいね。
医学生医学生
臨床に出てからも、自分の処方や検査が医療費全体にどうつながるかを意識したいと思います。
ドクタードクター
それは大事な視点だよ。医療資源は有限だから、必要な医療を届けつつ無駄を減らす姿勢が、制度を持続させることにもつながるんだ。

まとめ

国民医療費は保険診療の対象となりうる傷病の治療に要した費用の推計であり、介護保険の費用、正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種、差額ベッド代などの保険外負担は含まれません。平成27年度は約42.4兆円で、国民所得に対する比率は10.91%と10%を超えていますが、GDPに対する比率は約8%であり、分母の違いに注意が必要です。診療種類別では医科診療が約7割、薬局調剤が約2割、歯科が7%程度で、施設別では病院が一般診療所の約2.4倍、年齢階級別では65歳以上が約6割を占め、1人当たりでは65歳未満の約4倍となります。具体的な数値は年度で変わるため、範囲と大小関係、おおよその割合を軸に整理しておくと、統計問題に安定して対応できます。医療費の構造を理解することは、高齢化が進む中で持続可能な医療を考える基盤となります。

解答・解説

正解はbです

厚生労働省が毎年公表する「国民医療費」の範囲と規模、内訳を問う問題である。 国民医療費とは、その年度内に医療機関等で保険診療の対象となりうる傷病の治療に要した費用を推計したものである。医科診療医療費、歯科診療医療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費などが含まれる。一方、傷病の治療ではない費用(正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種など)、介護保険の費用、保険外の自費診療(先進医療、差額ベッド代などの選定療養)は含まれない。 平成27年度の国民医療費は約42.4兆円で、人口1人当たりでは約33.3万円であった。国内総生産(GDP)に対する比率は約8.0%、国民所得に対する比率は10.91%であり、国民所得比は10%を超えている。 内訳の大小関係として、診療種類別では医科診療医療費(約7割)>薬局調剤医療費(約2割)>歯科診療医療費(7%程度)、医科診療のうち施設別では病院>一般診療所、年齢階級別では65歳以上が約6割、という3点を押さえておけば、各選択肢を判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  介護保険費用が含まれる。

    誤り。国民医療費は傷病の治療に要した費用に限って集計される。介護保険法に基づく介護サービスの費用は対象外であり、介護保険から給付される訪問看護なども国民医療費には含まれない(医療保険から給付される訪問看護は含まれる)。介護にかかる費用は、介護給付費などとして別に集計されている。

  2. ○b.  国民所得に対する比率は10%を超える。

    正しい。平成27年度の国民医療費は約42.4兆円で、国民所得に対する比率は10.91%であった。国民所得に対する比率はおおむね平成21年度以降10%を超えて推移している。なお、GDPに対する比率は約8%であり、こちらは10%に達していない。分母が国民所得かGDPかで数値が異なる点に注意する。

  3. ×c.  一般診療所医療費は病院医療費より多い。

    誤り。平成27年度の医科診療医療費を施設別にみると、病院が約21.2兆円、一般診療所が約8.9兆円であり、病院医療費は一般診療所医療費の約2.4倍にあたる。高額になりやすい入院医療の大部分を病院が担っていることが主な理由である。

  4. ×d.  年齢階級別では65歳以上が80%を超える。

    誤り。平成27年度の国民医療費のうち65歳以上が占める割合は59.3%(約25.1兆円)で、約6割である。80%には達しない。ただし人口1人当たりでみると、65歳以上は約74万円、65歳未満は約18万円で、65歳以上は65歳未満の約4倍の医療費を要している。

  5. ×e.  薬局調剤医療費は医科診療医療費より多い。

    誤り。平成27年度の診療種類別構成割合は、医科診療医療費が70.9%(約30.0兆円)、薬局調剤医療費が18.8%(約8.0兆円)であり、医科診療医療費は薬局調剤医療費の約3.8倍である。医薬分業の進展により薬局調剤医療費の割合は増えてきているが、医科診療医療費を上回ってはいない。

国民医療費に含まれるもの・含まれないもの

・含まれる: 医科診療医療費(入院・入院外)、歯科診療医療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費、療養費など(保険診療の自己負担分や、公費負担医療・全額自費で支払われた保険診療相当の費用も含む) ・含まれない: 正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種、介護保険の費用、先進医療や選定療養(差額ベッド代など)の保険外負担、義眼・義肢など

平成27年度国民医療費の概要

・総額: 約42.4兆円(人口1人当たり約33.3万円) ・対GDP比: 約8.0%、対国民所得比: 10.91% ・診療種類別: 医科診療70.9%(入院と入院外がほぼ半々)、薬局調剤18.8%、歯科診療6.7%程度 ・年齢階級別: 65歳以上59.3%、うち75歳以上が3分の1を超える ・財源別: 保険料が約5割、公費が約4割弱、患者負担が1割強

近年の傾向

国民医療費は高齢化と医療の高度化を背景に増加傾向が続き、令和に入ってからは40兆円台半ばで推移している。65歳以上が占める割合はおおむね6割で推移している。

POINT

・国民医療費は傷病の治療費に限られ、介護保険の費用、正常分娩、健診、予防接種は含まれない ・対国民所得比は10%超、対GDP比は約8% ・医科診療(約7割)>薬局調剤(約2割)>歯科診療 ・施設別では病院>一般診療所(約2.4倍) ・65歳以上が約6割を占め、1人当たり医療費は65歳未満の約4倍

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。