数字のオーダーと法律の名前で解く―社会保障制度の横断問題
第113回医師国家試験 E問題 第2問
国試問題にチャレンジ
社会保障制度について正しいのはどれか。
- a.診療録の保存義務期間は終診時から2年間である。
- b.国民健康保険組合の被保険者数は6千万人より多い。
- c.国民医療費は2005年からの10年間で3倍に増加した。
- d.介護保険第1号被保険者数は第2号被保険者数より多い。
- e.結核患者の医療費の公費負担は感染症法に規定されている。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
社会保障制度の問題は、総人口約1億2千万人を基準にした数値のオーダーと、各制度の根拠法を押さえれば解けるものが多いです。診療録の保存義務は医師法で5年(諸記録は医療法施行規則で2年)、最大の医療保険者は協会けんぽで約4千万人、国民医療費は40兆円台で緩やかに増加、介護保険の被保険者数は第2号(40〜64歳)が第1号(65歳以上)より多い、という点が要点です。結核予防法は2007年に廃止され、結核医療の公費負担は感染症法第37条・第37条の2に規定されています。公費負担医療は精神保健福祉法、障害者総合支援法、難病法、児童福祉法などと根拠法をセットで整理しておくと、試験だけでなく実際に患者さんの医療費助成を支える場面でも役立ちます。
解答・解説
正解はeです
社会保障制度に関する法規・統計の知識を横断的に問う問題である。選択肢は、(1) 医師法に基づく診療録の保存義務、(2) 医療保険の保険者別の加入者規模、(3) 国民医療費の推移、(4) 介護保険の被保険者区分と人数、(5) 結核医療の公費負担の根拠法、という異なる領域から出題されている。 いずれも、おおまかな数値(オーダー)と法律の名称を正しく覚えていれば判断できる。特に、日本の総人口が約1億2千万人であること、医療保険の中で最大の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ、約4千万人)であること、国民医療費はおよそ40兆円台で緩やかに増加していること、介護保険の第2号被保険者(40〜64歳)は第1号被保険者(65歳以上)より多いこと、結核予防法は2007年に廃止されて感染症法に統合されたこと、を押さえておけば、正解は結核医療の公費負担に関する記述に絞られる。
選択肢考察
- ×a. 診療録の保存義務期間は終診時から2年間である。
誤り。医師法第24条により、医師は診療をしたときは遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならず、その診療録は5年間保存しなければならない。保存義務を負うのは、病院・診療所に勤務する医師の診療録については当該医療機関の管理者、それ以外の診療については診療を行った医師本人である。なお、2年間保存が求められるのは、処方箋、手術記録、エックス線写真、検査所見記録などの「診療に関する諸記録」(医療法施行規則)であり、診療録と混同しないよう注意する。
- ×b. 国民健康保険組合の被保険者数は6千万人より多い。
誤り。国民健康保険組合は、医師・歯科医師・薬剤師、建設業、理容・美容業など同種の事業・業務に従事する者で組織される国民健康保険の保険者で、被保険者数は約280万人にすぎない。市町村(都道府県と共同運営)が運営する国民健康保険を含めても、国民健康保険全体の被保険者数は約3千万人台であり、6千万人には遠く及ばない。日本の総人口が約1億2千万人で、それが複数の制度に分かれて加入していることを考えれば、単一の制度で6千万人を超えるものはないと判断できる。
- ×c. 国民医療費は2005年からの10年間で3倍に増加した。
誤り。国民医療費は2005年度が約33.1兆円、2015年度が約42.4兆円で、10年間の増加は約9兆円、倍率にすると約1.3倍にとどまる。高齢化や医療技術の高度化により増加傾向は続いているが、10年で3倍という急増ではない。
- ×d. 介護保険第1号被保険者数は第2号被保険者数より多い。
誤り。介護保険の第1号被保険者は65歳以上の者で約3,400万〜3,500万人、第2号被保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者で約4,200万人であり、第2号被保険者のほうが多い。なお、要介護認定を受けてサービスを利用する者の大部分は第1号被保険者であり、第2号被保険者が給付を受けられるのは加齢に伴う特定疾病(16疾病)が原因の場合に限られる。
- ○e. 結核患者の医療費の公費負担は感染症法に規定されている。
正しい。結核対策はかつて結核予防法に基づいて行われていたが、同法は2007年3月末で廃止され、結核は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」の2類感染症に位置づけられた。医療費の公費負担も感染症法に引き継がれ、入院勧告・措置により入院した患者の医療(第37条)と、通院による一般患者の適正医療(第37条の2)について公費負担が規定されている。なお、結核予防法に含まれていたBCG接種は予防接種法に移された。
診療録と諸記録の保存期間
・診療録:5年間(医師法第24条)。 ・病院の診療に関する諸記録(処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真など):2年間(医療法施行規則)。 ・保険医療機関の療養の給付に関する帳簿・書類:3年間(ただし患者の診療録は5年間、保険医療機関及び保険医療養担当規則)。
医療保険制度の概要
・被用者保険:全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ、主に中小企業の被用者、約4千万人)、組合管掌健康保険(大企業の被用者、約2,800万人)、共済組合(公務員など)、船員保険。 ・国民健康保険:市町村(都道府県が財政運営の責任主体)が運営するものと、同業種で組織する国民健康保険組合があり、自営業者、無職者、年金生活者などが加入する。 ・後期高齢者医療制度:75歳以上(一定の障害がある65歳以上を含む)、約1,800万〜2,000万人。
介護保険の被保険者
・第1号被保険者:65歳以上。原因を問わず要介護・要支援状態であれば給付対象。保険料は原則年金から天引き(特別徴収)。 ・第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者。末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、脳血管疾患、初老期における認知症など16の特定疾病による場合に限り給付対象。保険料は医療保険料と一体で徴収。
主な公費負担医療と根拠法
・結核、1類・2類感染症など:感染症法 ・措置入院:精神保健福祉法 ・自立支援医療(精神通院医療、更生医療、育成医療):障害者総合支援法 ・指定難病の医療費助成:難病法 ・小児慢性特定疾病:児童福祉法 ・未熟児養育医療:母子保健法 ・医療扶助:生活保護法
POINT
・診療録の保存期間は5年(医師法)、診療に関する諸記録は2年(医療法施行規則)。 ・国民健康保険組合は同業種の自営業者などで組織され、被保険者は約300万人弱と小規模。 ・国民医療費は約40兆円台で緩やかに増加(2005年度約33兆円→2015年度約42兆円)。 ・介護保険の被保険者数は第2号(40〜64歳)>第1号(65歳以上)。 ・結核予防法は2007年に感染症法へ統合され、結核医療の公費負担は感染症法第37条・第37条の2に規定される。
