StudyMed医師国家試験

数字のオーダーと法律の名前で解く―社会保障制度の横断問題

第113回医師国家試験 E問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第113回 E問題 第2問

社会保障制度について正しいのはどれか。

  1. a.診療録の保存義務期間は終診時から2年間である。
  2. b.国民健康保険組合の被保険者数は6千万人より多い。
  3. c.国民医療費は2005年からの10年間で3倍に増加した。
  4. d.介護保険第1号被保険者数は第2号被保険者数より多い。
  5. e.結核患者の医療費の公費負担は感染症法に規定されている。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は社会保障制度に関する知識を横断的に問う問題だ。診療録の保存期間、医療保険の加入者数、国民医療費の推移、介護保険の被保険者、結核医療の公費負担と、分野はばらばらに見える。でも解くカギは2つだけ。「おおまかな数値のオーダー」と「どの法律に書いてあるか」だよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義でたくさん数字が出てきて、正直どれも自信がありません。細かい数字まで覚えないと無理でしょうか。
ドクタードクター
細かい数字は要らないよ。たとえば日本の総人口は約1億2千万人。これを基準にすれば多くの選択肢は判断できる。まず診療録の保存期間から確認しよう。何年だったかな。
医学生医学生
2年……と言いたくなりますが、CBTの勉強で5年と覚えた気がします。
ドクタードクター
その通り、5年だ。医師法第24条で、診療録は5年間の保存が義務づけられている。2年というのは、処方箋や手術記録、エックス線写真、検査所見記録などの「診療に関する諸記録」で、こちらは医療法施行規則に規定されている。診療録と諸記録を混同させるのは定番のひっかけだね。
医学生医学生
なるほど、記録の種類で根拠法も年数も違うんですね。次の国民健康保険組合が6千万人より多いというのは、総人口の半分ですから多すぎる気がします。
ドクタードクター
いい感覚だ。国民健康保険組合は医師・歯科医師・薬剤師、建設業、理容・美容業など同業種で組織される保険者で、被保険者は300万人弱しかいない。市町村が運営する国保を合わせても3千万人前後だ。最大の保険者は協会けんぽで約4千万人。人口が複数の制度に分かれて加入しているから、単一の制度で6千万人を超えるものはないと判断できる。
医学生医学生
国民医療費が10年で3倍というのも、さすがに増えすぎですよね。
ドクタードクター
そう。2005年度が約33兆円、2015年度が約42兆円で、約1.3倍にとどまる。高齢化や医療の高度化で増え続けてはいるけれど、緩やかな増加だ。「国民医療費は40兆円台」と覚えておけば十分だよ。
医学生医学生
介護保険は、介護を受けるのは高齢者が中心なので、65歳以上の第1号被保険者のほうが多いと思っていました。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。サービスを受ける人の大部分は確かに第1号だけれど、問われているのは被保険者の数だ。第1号の65歳以上は約3,500万人、第2号の40〜64歳の医療保険加入者は約4,200万人で、第2号のほうが多い。団塊ジュニア世代を含む40〜64歳の人口が厚いことを思い出せば納得できるはずだ。
医学生医学生
給付を受ける人数と保険料を払う人数を分けて考えるんですね。第2号が給付を受けられるのは特定疾病のときだけでしたっけ。
ドクタードクター
そう、末期がん、関節リウマチ、ALS、脳血管疾患、初老期の認知症など16の特定疾病が原因の場合に限られる。では最後、結核医療の公費負担はどうかな。
医学生医学生
結核予防法という法律があったような……。でも臨床実習で呼吸器内科を回ったとき、結核は2類感染症として保健所に届け出ると教わりました。
ドクタードクター
まさにそれが答えにつながる。結核予防法は2007年に廃止され、結核は感染症法の2類感染症に位置づけられた。医療費の公費負担も感染症法に引き継がれ、入院勧告・措置による入院医療は第37条、通院による一般患者の医療は第37条の2に規定されている。だからこの記述が正しい。ちなみにBCG接種は予防接種法に移ったよ。
医学生医学生
結核予防法の名前だけ覚えていると、古い知識で間違えそうですね。
ドクタードクター
その通り。法改正で根拠法が変わったものは狙われやすい。公費負担医療は根拠法とセットで整理しておこう。措置入院は精神保健福祉法、精神通院医療や更生医療などの自立支援医療は障害者総合支援法、指定難病は難病法、小児慢性特定疾病は児童福祉法、未熟児養育医療は母子保健法、医療扶助は生活保護法だ。
医学生医学生
臨床で患者さんの医療費助成の書類を書くときにも必要になりそうです。
ドクタードクター
まさにそう。医師が意見書や申請書を書かないと患者さんは公費負担を受けられない制度が多い。結核なら感染症法に基づく公費負担申請を保健所に出すことで、患者さんは安心して長期の治療を続けられる。制度を知ることは、患者さんの治療継続を支えることでもあるんだ。

まとめ

社会保障制度の問題は、総人口約1億2千万人を基準にした数値のオーダーと、各制度の根拠法を押さえれば解けるものが多いです。診療録の保存義務は医師法で5年(諸記録は医療法施行規則で2年)、最大の医療保険者は協会けんぽで約4千万人、国民医療費は40兆円台で緩やかに増加、介護保険の被保険者数は第2号(40〜64歳)が第1号(65歳以上)より多い、という点が要点です。結核予防法は2007年に廃止され、結核医療の公費負担は感染症法第37条・第37条の2に規定されています。公費負担医療は精神保健福祉法、障害者総合支援法、難病法、児童福祉法などと根拠法をセットで整理しておくと、試験だけでなく実際に患者さんの医療費助成を支える場面でも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

社会保障制度に関する法規・統計の知識を横断的に問う問題である。選択肢は、(1) 医師法に基づく診療録の保存義務、(2) 医療保険の保険者別の加入者規模、(3) 国民医療費の推移、(4) 介護保険の被保険者区分と人数、(5) 結核医療の公費負担の根拠法、という異なる領域から出題されている。 いずれも、おおまかな数値(オーダー)と法律の名称を正しく覚えていれば判断できる。特に、日本の総人口が約1億2千万人であること、医療保険の中で最大の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ、約4千万人)であること、国民医療費はおよそ40兆円台で緩やかに増加していること、介護保険の第2号被保険者(40〜64歳)は第1号被保険者(65歳以上)より多いこと、結核予防法は2007年に廃止されて感染症法に統合されたこと、を押さえておけば、正解は結核医療の公費負担に関する記述に絞られる。

選択肢考察

  1. ×a.  診療録の保存義務期間は終診時から2年間である。

    誤り。医師法第24条により、医師は診療をしたときは遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならず、その診療録は5年間保存しなければならない。保存義務を負うのは、病院・診療所に勤務する医師の診療録については当該医療機関の管理者、それ以外の診療については診療を行った医師本人である。なお、2年間保存が求められるのは、処方箋、手術記録、エックス線写真、検査所見記録などの「診療に関する諸記録」(医療法施行規則)であり、診療録と混同しないよう注意する。

  2. ×b.  国民健康保険組合の被保険者数は6千万人より多い。

    誤り。国民健康保険組合は、医師・歯科医師・薬剤師、建設業、理容・美容業など同種の事業・業務に従事する者で組織される国民健康保険の保険者で、被保険者数は約280万人にすぎない。市町村(都道府県と共同運営)が運営する国民健康保険を含めても、国民健康保険全体の被保険者数は約3千万人台であり、6千万人には遠く及ばない。日本の総人口が約1億2千万人で、それが複数の制度に分かれて加入していることを考えれば、単一の制度で6千万人を超えるものはないと判断できる。

  3. ×c.  国民医療費は2005年からの10年間で3倍に増加した。

    誤り。国民医療費は2005年度が約33.1兆円、2015年度が約42.4兆円で、10年間の増加は約9兆円、倍率にすると約1.3倍にとどまる。高齢化や医療技術の高度化により増加傾向は続いているが、10年で3倍という急増ではない。

  4. ×d.  介護保険第1号被保険者数は第2号被保険者数より多い。

    誤り。介護保険の第1号被保険者は65歳以上の者で約3,400万〜3,500万人、第2号被保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者で約4,200万人であり、第2号被保険者のほうが多い。なお、要介護認定を受けてサービスを利用する者の大部分は第1号被保険者であり、第2号被保険者が給付を受けられるのは加齢に伴う特定疾病(16疾病)が原因の場合に限られる。

  5. ○e.  結核患者の医療費の公費負担は感染症法に規定されている。

    正しい。結核対策はかつて結核予防法に基づいて行われていたが、同法は2007年3月末で廃止され、結核は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」の2類感染症に位置づけられた。医療費の公費負担も感染症法に引き継がれ、入院勧告・措置により入院した患者の医療(第37条)と、通院による一般患者の適正医療(第37条の2)について公費負担が規定されている。なお、結核予防法に含まれていたBCG接種は予防接種法に移された。

診療録と諸記録の保存期間

・診療録:5年間(医師法第24条)。 ・病院の診療に関する諸記録(処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真など):2年間(医療法施行規則)。 ・保険医療機関の療養の給付に関する帳簿・書類:3年間(ただし患者の診療録は5年間、保険医療機関及び保険医療養担当規則)。

医療保険制度の概要

・被用者保険:全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ、主に中小企業の被用者、約4千万人)、組合管掌健康保険(大企業の被用者、約2,800万人)、共済組合(公務員など)、船員保険。 ・国民健康保険:市町村(都道府県が財政運営の責任主体)が運営するものと、同業種で組織する国民健康保険組合があり、自営業者、無職者、年金生活者などが加入する。 ・後期高齢者医療制度:75歳以上(一定の障害がある65歳以上を含む)、約1,800万〜2,000万人。

介護保険の被保険者

・第1号被保険者:65歳以上。原因を問わず要介護・要支援状態であれば給付対象。保険料は原則年金から天引き(特別徴収)。 ・第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者。末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、脳血管疾患、初老期における認知症など16の特定疾病による場合に限り給付対象。保険料は医療保険料と一体で徴収。

主な公費負担医療と根拠法

・結核、1類・2類感染症など:感染症法 ・措置入院:精神保健福祉法 ・自立支援医療(精神通院医療、更生医療、育成医療):障害者総合支援法 ・指定難病の医療費助成:難病法 ・小児慢性特定疾病:児童福祉法 ・未熟児養育医療:母子保健法 ・医療扶助:生活保護法

POINT

・診療録の保存期間は5年(医師法)、診療に関する諸記録は2年(医療法施行規則)。 ・国民健康保険組合は同業種の自営業者などで組織され、被保険者は約300万人弱と小規模。 ・国民医療費は約40兆円台で緩やかに増加(2005年度約33兆円→2015年度約42兆円)。 ・介護保険の被保険者数は第2号(40〜64歳)>第1号(65歳以上)。 ・結核予防法は2007年に感染症法へ統合され、結核医療の公費負担は感染症法第37条・第37条の2に規定される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。