StudyMed医師国家試験

計画は県、調整は機構、医師を送るのは拠点病院―へき地医療を支える役割分担の見取り図

第113回医師国家試験 C問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第113回 C問題 第6問

へき地医療について正しいのはどれか。

  1. a.へき地医療支援機構は市町村ごとに設置する。
  2. b.へき地医療診療所は一次医療圏毎に設置されている。
  3. c.へき地保健医療計画は地域医療支援病院が策定する。
  4. d.へき地医療拠点病院は代診医派遣の役割を担っている。
  5. e.へき地巡回診療車は地域の救命救急センターから派遣される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、へき地医療を支える仕組みについての問題だ。登場する組織がたくさんあるけれど、「誰が計画を立て、誰が調整し、誰が実際に医師を送り、誰が現場で診るのか」という役割分担を整理できれば、迷わずに解ける。まず、へき地医療は医療計画の中でどんな位置づけか覚えているかな。
医学生医学生
5疾病・5事業の「事業」の一つでしたよね。救急、災害、へき地、周産期、小児です。
ドクタードクター
その通り。2024年度からの第8次医療計画では新興感染症発生・まん延時の医療が加わって6事業になっている。そして医療計画を策定するのは都道府県だ。だから、へき地医療対策も基本的に都道府県単位で組み立てられていると考えるとわかりやすい。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、医療計画は都道府県がつくると習いました。でも、へき地って市町村ごとに事情が違うので、支援組織は市町村ごとに置いたほうがよさそうな気もします。
ドクタードクター
直感としてはわかるけれど、そこが引っかけだね。へき地を抱える市町村は医療資源が限られていて、単独では医師の派遣や確保が難しい。だから都道府県全体を見渡して医師派遣や代診医の確保を調整する司令塔として、へき地医療支援機構を都道府県が設置しているんだ。市町村ごとではない。
医学生医学生
では、計画を策定するのも都道府県ということですか。地域医療支援病院がつくる、という選択肢もありましたが。
ドクタードクター
そう、へき地の保健医療に関する計画は国の指針に基づいて都道府県が策定する。かつては独立した「へき地保健医療計画」があったけれど、2018年度からの第7次医療計画以降は都道府県の医療計画の中に一体化されている。地域医療支援病院は、紹介患者の診療、医療機器の共同利用、救急医療、地域の医療従事者の研修などでかかりつけ医を支える病院で、計画策定の主体ではないよ。
医学生医学生
地域医療支援病院と、へき地医療拠点病院は名前が似ていて混同しそうです。
ドクタードクター
よくある混乱だね。へき地医療拠点病院は都道府県知事が指定する病院で、へき地医療支援機構の調整のもとで動く実働部隊だ。無医地区などへの巡回診療、へき地診療所への医師派遣、そして診療所の医師が研修や休暇で不在になるときの代診医派遣、遠隔医療による診療支援などを担う。だから、拠点病院が代診医派遣の役割を担っている、という記述が正解になる。
医学生医学生
代診医がいないと、へき地の診療所の先生は休みも取れないし学会にも行けないですよね。
ドクタードクター
まさにそこが大事なポイントだ。一人で地域を支える医師が孤立したり疲弊したりしないための仕組みが代診医派遣なんだ。では、へき地診療所はどうだろう。一次医療圏ごとに設置されている、という記述は正しいかな。
医学生医学生
一次医療圏は市町村くらいの範囲でしたよね。へき地でもない市町村にまで一律に置くのは変な気がします。
ドクタードクター
いい推論だ。へき地診療所は一次医療圏ごとに一律に置くものではなく、医療を受けにくい地区の条件に応じて設置される。目安として、おおむね半径4kmの区域内に他の医療機関がなく、区域内人口が原則1,000人以上で、最寄りの医療機関まで通常の交通機関で30分以上かかる地区などが対象になる。医療機関のない離島では、もっと少ない人口でも設置対象になりうる。
医学生医学生
巡回診療車が救命救急センターから派遣される、というのも違和感があります。救急科を回ったとき、救命救急センターは重症患者の受け入れで手一杯でした。
ドクタードクター
その感覚は正しいね。救命救急センターは重篤な救急患者を受け入れる三次救急の施設で、巡回診療車を出すのは本来の役割ではない。巡回診療は主にへき地医療拠点病院が行うほか、都道府県、市町村、日本赤十字社などの公的団体が事業主体となって実施しているんだ。
医学生医学生
整理すると、計画は都道府県、調整はへき地医療支援機構、医師を送るのは拠点病院、現場で日常の医療を担うのがへき地診療所、という構図ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、無医地区の定義も押さえておこう。地区の中心からおおむね半径4kmの区域内に50人以上が住み、容易に医療機関を利用できない地区のことで、へき地医療対策の主な対象になる。さらに、医師確保の面では自治医科大学や医学部の地域枠がへき地で働く医師の養成に貢献している。最近は情報通信機器を使った遠隔診療やドクターヘリによる搬送も、へき地医療を支える大切な手段になっている。
医学生医学生
地域枠の同級生がいるので、卒業後にこういう仕組みの中で働くんだと思うと、少し身近に感じます。
ドクタードクター
そうだね。将来へき地で勤務する人も、拠点病院から支援する立場になる人もいる。仕組みを知っていれば、困ったときにどこに相談すればいいかもわかるはずだ。

まとめ

へき地医療は医療法に基づく医療計画の「事業」の一つであり、計画の策定主体は都道府県で、へき地の保健医療に関する計画は第7次医療計画から都道府県の医療計画に一体化されています。都道府県が設置するへき地医療支援機構が広域的な企画・調整を担い、都道府県知事が指定するへき地医療拠点病院が巡回診療、へき地診療所への医師派遣・代診医派遣、遠隔医療支援などの実務を担います。へき地診療所は一次医療圏ごとに一律ではなく、半径4km・人口1,000人以上・最寄り医療機関まで30分以上などの基準を満たす地区に設置され、住民の一次医療を担います。「計画は都道府県、調整は支援機構、派遣は拠点病院、現場は診療所」という役割分担を理解しておくことは、地域医療を支える一員として働く医師にとって欠かせない知識です。

解答・解説

正解はdです

本問は、わが国のへき地医療を支える仕組み(誰が計画を立て、どの組織が何を担うか)を問う問題である。

全体像

へき地の医療は、医療法に基づく医療計画の「5事業」の一つ(救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療。2024年度からの第8次医療計画では新興感染症発生・まん延時の医療が加わり6事業)に位置づけられている。医療計画を策定するのは都道府県であり、へき地医療対策も都道府県単位で組み立てられている。

担い手の役割分担

・都道府県:へき地医療に関する計画を策定し、へき地医療支援機構を設置する。 ・へき地医療支援機構:都道府県全体のへき地医療支援を企画・調整する司令塔。代診医派遣の調整、医師確保、研修計画などを担う。 ・へき地医療拠点病院:都道府県知事が指定する病院。巡回診療、へき地診療所への医師・代診医の派遣、遠隔医療による診療支援などの実働部隊となる。 ・へき地診療所:無医地区など医療機関に容易にかかれない地域に設けられ、住民の日常的な医療(一次医療)を担う。 このように「都道府県が計画し、支援機構が調整し、拠点病院が人を送り、診療所が現場で診る」という構図を押さえれば、拠点病院が代診医派遣を担うという記述が正しいと判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  へき地医療支援機構は市町村ごとに設置する。

    へき地医療支援機構は都道府県が設置する組織であり、市町村単位ではない。へき地を抱える市町村は医療資源が限られており、単独では医師の派遣や確保が難しい。そのため、都道府県全体を見渡して、へき地医療拠点病院からの医師派遣の調整、代診医の確保、へき地勤務医のキャリア支援などを広域的に行う司令塔として設けられている。

  2. ×b.  へき地医療診療所は一次医療圏毎に設置されている。

    へき地診療所は一次医療圏(おおむね市町村単位の日常的な医療の圏域)ごとに一律に置かれるものではなく、医療を受けにくい地区の条件に応じて設置される。設置基準は、①設置予定地を中心とするおおむね半径4kmの区域内に他の医療機関がなく、区域内人口が原則1,000人以上で、最寄りの医療機関まで通常の交通機関で30分以上かかる地区、または②医療機関のない離島で人口が原則300人以上1,000人未満の地区、である。主に市町村などが設置する。

  3. ×c.  へき地保健医療計画は地域医療支援病院が策定する。

    へき地の保健医療に関する計画は、国が示す指針に基づいて都道府県が策定する。かつては医療計画とは別に「へき地保健医療計画」が策定されていたが、2018年度からの第7次医療計画以降は都道府県の医療計画の中に一体化して記載されている。地域医療支援病院は、紹介患者への医療提供、医療機器の共同利用、救急医療、地域の医療従事者の研修などを通じてかかりつけ医を支援する病院として都道府県知事が承認するもので、計画策定の主体ではない。

  4. ○d.  へき地医療拠点病院は代診医派遣の役割を担っている。

    へき地医療拠点病院は都道府県知事が指定する病院で、へき地医療支援機構の調整のもと、へき地の医療を後方から支える。主な役割は、無医地区などへの巡回診療、へき地診療所への医師派遣、へき地診療所の医師が研修や休暇などで不在となる際の代診医派遣、遠隔医療による診療支援、へき地医療に従事する医療者の研修などである。代診医派遣はへき地で働く医師が孤立・疲弊しないための重要な支援であり、拠点病院の中核的な役割の一つである。

  5. ×e.  へき地巡回診療車は地域の救命救急センターから派遣される。

    巡回診療(巡回診療車や巡回診療船による診療)は、主にへき地医療拠点病院が実施するほか、都道府県、市町村、日本赤十字社などの公的団体が事業主体となって行う。救命救急センターは重篤な救急患者に対する三次救急医療を担う施設であり、へき地への巡回診療車の派遣はその役割ではない。

医療計画と5疾病・6事業

医療法に基づき、都道府県は医療計画を策定する(現在は6年ごと)。計画には5疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患)と、医療の確保に必要な事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療〈小児救急医療を含む〉、さらに第8次医療計画から新興感染症発生・まん延時における医療)が定められる。へき地医療は当初からこの「事業」の一つである。

へき地医療の主な仕組み

・へき地医療支援機構(都道府県が設置):広域的なへき地医療支援の企画・調整。専任担当官を置き、代診医派遣の調整や医師確保対策を行う。 ・へき地医療拠点病院(都道府県知事が指定):巡回診療、へき地診療所への医師・代診医派遣、遠隔医療支援、研修など。 ・へき地診療所:無医地区などの一次医療を担う。 ・社会医学的支援:ドクターヘリや患者輸送車による搬送体制、情報通信機器を用いた遠隔診療なども活用される。

無医地区

医療機関のない地域で、その地区の中心的な場所を起点として、おおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住しており、かつ容易に医療機関を利用できない地区をいう。へき地医療対策の主な対象となる。

へき地の医師確保

自治医科大学(都道府県が共同で設立し、卒業生は出身都道府県のへき地等で一定期間勤務する)や、医学部の地域枠などが、へき地医療に従事する医師の養成に貢献している。

POINT

・へき地医療は医療計画の「事業」の一つで、計画策定の主体は都道府県である。 ・へき地医療支援機構は都道府県が設置する調整組織である。 ・へき地医療拠点病院は都道府県知事が指定し、巡回診療・医師派遣・代診医派遣・遠隔医療支援を担う。 ・へき地診療所は一次医療圏ごとに一律設置ではなく、半径4km・人口1,000人以上・最寄り医療機関まで30分以上などの基準で設置される。 ・へき地保健医療計画は第7次医療計画(2018年度〜)から医療計画に一体化された。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。