「飲み間違えました」の電話は誰に届けるべきか―処方は医師、確認は薬剤師という医薬分業の原則
第113回医師国家試験 C問題 第5問
国試問題にチャレンジ
病院・診療所と薬局の連携について正しいのはどれか。
- a.内服間違いについて薬剤師が患者から連絡を受けた場合は医師に伝える。
- b.薬剤師は看護師の指示により患者に服薬指導を行うことができる。
- c.医療ソーシャルワーカーはお薬手帳の情報を閲覧できない。
- d.処方箋には薬剤名と病名が記載されている。
- e.薬剤師が自分の判断で処方を修正できる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
医薬分業では、処方を決めるのは医師、処方監査・調剤・服薬指導は薬剤師の独立した業務であり、両者が互いにチェックし合うことで医療安全が保たれます。薬剤師は処方を独断で変更できず、疑問があれば処方医に疑義照会を行い、患者の内服間違いや副作用など医学的判断を要する情報は処方医に伝えます。服薬指導は看護師の指示ではなく薬剤師自身の義務であり、処方箋の法定記載事項に病名は含まれず、お薬手帳は患者の同意があれば医療ソーシャルワーカーなど多職種が活用できます。「誰が決め、誰が確認し、情報をどこへ流すか」を押さえることは、チーム医療の中で医師として適切に連携するための基礎となります。
解答・解説
正解はaです
本問は、外来診療で処方箋を出す医療機関(病院・診療所)と、その処方箋を受けて調剤する保険薬局とが、どのように役割を分担し、どのように情報をやり取りするかを問うている。
医薬分業の基本構造
医師(歯科医師)は診察して処方を決め、処方箋を患者に交付する。患者はその処方箋を薬局へ持参し、薬剤師が処方内容を確認(処方監査)したうえで調剤し、服薬指導を行う。処方を決める権限は医師にあり、調剤と薬学的な確認・指導は薬剤師の専門領域である。両者は上下関係ではなく、それぞれ独立した専門職として互いをチェックし合う関係にある。
連携の要
独立して業務を分担する以上、情報の共有が欠かせない。薬剤師が処方箋に疑問を持てば処方医に問い合わせ(疑義照会)、患者の服薬状況に問題があれば処方医へ情報提供する。一方、処方を変える判断は医師が行う。この「確認・報告は薬剤師、処方決定は医師」という原則に沿って各選択肢を判断すればよい。 内服の誤りは、過量・重複による副作用や、服用し忘れによる治療効果の低下を生じうるため、処方医が把握して対応を判断すべき情報である。したがって薬剤師が患者から連絡を受けたときは処方医に伝える、という記述が正しい。
選択肢考察
- ○a. 内服間違いについて薬剤師が患者から連絡を受けた場合は医師に伝える。
飲み過ぎ・二重服用・他人の薬の誤服用・飲み忘れなどの内服間違いは、低血糖(血糖降下薬)や出血(抗凝固薬)などの有害事象につながる可能性があり、受診の要否、経過観察、処方の見直しといった医学的判断が必要になることがある。こうした判断は処方医が行うものであるから、薬剤師は患者から得た情報を処方医に報告する。薬剤師が患者の服薬状況を把握して医師へフィードバックすることは、チーム医療における薬剤師の重要な役割である。
- ×b. 薬剤師は看護師の指示により患者に服薬指導を行うことができる。
薬剤師法は、調剤した薬剤について、薬剤師が自ら患者(または看護する者)に必要な情報を提供し、薬学的知見に基づく指導を行うことを薬剤師の義務として定めている。つまり服薬指導は薬剤師本来の業務であり、看護師の指示を受けて行うものではない。看護師には薬剤師に業務を指示する立場もない。
- ×c. 医療ソーシャルワーカーはお薬手帳の情報を閲覧できない。
お薬手帳は患者自身が所有・管理する服薬記録であり、患者(または家族)が提示・同意すれば医療ソーシャルワーカー(MSW:患者の経済的・心理社会的問題の相談に応じ、退院支援や社会資源の活用を援助する専門職)も閲覧できる。退院後の生活環境の調整や介護サービス・施設との連携を進めるうえで、服薬内容の把握が役立つ場面は多い。「閲覧できない」という規定は存在しない。
- ×d. 処方箋には薬剤名と病名が記載されている。
医師法施行規則で定められた処方箋の記載事項は、患者の氏名・年齢、薬名、分量、用法・用量、発行年月日、使用期間、医療機関の名称・所在地、医師の記名押印または署名などであり、病名は含まれない。処方箋は患者が持ち歩いて薬局に提出する書類であるため、病名を記載しないことはプライバシーへの配慮にもかなう。なお近年は、検査値などを処方箋に印字して薬局と共有する医療機関もあるが、これは任意の取り組みであり法定の記載事項ではない。
- ×e. 薬剤師が自分の判断で処方を修正できる。
薬剤師法では、薬剤師は処方箋の内容を処方医の同意なく変更して調剤してはならず、処方箋に疑わしい点があれば処方医に問い合わせ、それを確かめた後でなければ調剤してはならない(疑義照会)と定めている。処方を変更するかどうかを決めるのは医師であり、薬剤師が独断で修正することはできない。わが国で処方権をもつのは医師・歯科医師・獣医師に限られる。なお、処方箋で変更不可とされていない場合の後発医薬品への変更や、医療機関と薬局があらかじめ合意した手順書(プロトコル)に基づく軽微な変更は認められているが、これらも処方医の事前の了解の枠内で行われるものであり、「自分の判断で処方を修正できる」わけではない。
医薬分業
医師が処方箋を交付し、医療機関外の保険薬局の薬剤師が調剤する仕組み。処方内容を別の専門職がもう一度確認することで、用量の誤り、重複投与、相互作用、禁忌などを発見しやすくなる。複数の医療機関を受診する患者でも、かかりつけ薬局で服薬情報を一元的に管理すれば、多剤併用による有害事象(ポリファーマシー)の防止に役立つ。
疑義照会
薬剤師が処方箋の内容に疑問(用量過多、相互作用、重複、記載不備など)を見つけた際に処方医へ問い合わせること。薬剤師法で義務付けられており、照会して疑問が解消されるまで調剤してはならない。処方を変更する場合は、処方医が判断し同意したうえで行われる。
服薬情報の提供(トレーシングレポート)
緊急性は低いが処方医に知っておいてほしい服薬状況(残薬、副作用が疑われる症状、服用方法の誤りなど)を、薬局から医療機関へ文書で伝える仕組み。急を要する場合は電話などで直ちに連絡する。
お薬手帳
患者が受け取った薬の名称・用量・調剤日、アレルギー歴や副作用歴などを記録する手帳(電子版もある)。患者自身が持ち歩き、医療機関・薬局・介護職などに提示して情報共有に用いる。災害時に常用薬を把握する手段としても有用である。
処方箋の主な記載事項(医師法施行規則)
患者の氏名・年齢、薬名、分量、用法・用量、発行年月日、使用期間、医療機関の名称・所在地、医師の記名押印または署名。病名は記載事項に含まれない。
POINT
・処方を決めるのは医師、調剤・処方監査・服薬指導は薬剤師の独立した業務である。 ・薬剤師は処方を独断で変更できず、疑問があれば処方医へ疑義照会する(薬剤師法)。 ・患者の内服間違いや副作用など、医学的判断が必要な情報は薬剤師から処方医へ伝える。 ・服薬指導は薬剤師自身の義務であり、看護師の指示で行うものではない。 ・処方箋の法定記載事項に病名は含まれない。 ・お薬手帳は患者の同意があればMSWなど多職種が閲覧・活用できる。
