StudyMed医師国家試験

「発症させない」が一次予防―ワクチンとコンドームが同じ箱に入る理由

第113回医師国家試験 C問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第113回 C問題 第17問

一次予防に該当するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.住民がん検診
  2. b.脳梗塞後の理学療法
  3. c.精神障害者の作業療法
  4. d.性感染症予防のためのコンドーム使用
  5. e.ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン接種

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は予防医学の基本、予防の3段階を問う問題だ。ポイントは、それぞれの取り組みが病気の自然経過の「どの段階」に働きかけているかを見極めること。まずは一次・二次・三次予防の違いを、自分の言葉で説明できるかな。
医学生医学生
一次予防が病気を防ぐこと、二次予防が早期発見、三次予防がリハビリ……でしたっけ。公衆衛生の講義で聞いたきりで、境目が少しあいまいです。
ドクタードクター
大枠は合っているよ。もう少し正確に言うと、一次予防は「まだ病気になっていない健康な段階で、発症そのものを防ぐ」もの。中身は健康増進と特異的予防の2本柱で、生活習慣の改善や健康教育が前者、予防接種や感染経路の遮断、職業性曝露の防止が後者にあたる。
医学生医学生
二次予防は、病気はもう始まっているけれど症状が出ていない段階で見つける、ということですね。
ドクタードクター
そう。早期発見・早期治療で重症化を防ぐのが二次予防で、検診やスクリーニングが代表だ。三次予防は発症後に機能障害の進行や再発を防ぎ、社会復帰を目指すもので、リハビリテーションが中心になる。では、住民がん検診はどこに入るかな。
医学生医学生
がんを見つけるための検診なので二次予防です。ただ、子宮頸部の異形成を見つけて切除すれば、がんになるのを防いでいるとも言えそうで、少し迷います。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。確かに前がん病変を切除すれば発がん予防の側面はある。でも検診の本来の目的は、症状のないがんを早く見つけて治療につなげ、死亡を減らすこと。試験ではがん検診は二次予防と整理しておこう。
医学生医学生
脳梗塞後の理学療法は、もう発症した後の機能回復なので三次予防ですね。神経内科を回ったとき、発症早期からベッドサイドでリハビリが始まっていたのが印象的でした。
ドクタードクター
いい経験をしているね。早期離床は廃用症候群を防ぎ、ADLの再獲得につながる。これは典型的な三次予防だ。精神障害者の作業療法はどうだろう。
医学生医学生
精神科の実習でデイケアを見学しましたが、作業を通じて生活技能や対人スキルを取り戻すことが目的でした。すでに障害がある人の社会参加を支えるので、これも三次予防だと思います。
ドクタードクター
その通り。作業療法も理学療法と同じくリハビリテーションの一つで、三次予防に入る。残る2つ、性感染症予防のためのコンドーム使用とHPVワクチン接種はどうかな。
医学生医学生
どちらも感染する前に使うものなので、一次予防ですね。コンドームは健康教育っぽい印象ですが、分類は特異的予防になりますか。
ドクタードクター
いい整理だ。コンドームはHIVやクラミジア、淋菌などの病原体が伝播する経路を物理的に遮断するので、特異的予防として扱われる。その使用を勧める性教育には健康教育の側面もあるけれどね。HPVワクチンは高リスク型HPVへの感染を防ぎ、子宮頸癌やその前がん病変の発生自体を減らす予防接種だから、こちらも特異的予防、一次予防だ。
医学生医学生
同じ子宮頸癌でも、ワクチンは一次予防、細胞診による検診は二次予防と分かれるんですね。
ドクタードクター
そこが試験で一番狙われやすいところだよ。同じ疾患に対しても、手段によって段階が変わる。肝細胞癌ならHBワクチンが一次予防、慢性肝炎患者の定期的な画像検査が二次予防になる。疾患ではなく「介入のタイミング」で分類する、と覚えておこう。
医学生医学生
CBTの勉強では疾患ごとに覚えようとしていたので、混乱していた理由がわかりました。
ドクタードクター
発展知識として、最近は「ゼロ次予防」という考え方もある。個人の行動ではなく社会や環境を整えて、危険因子が生まれること自体を防ぐもので、受動喫煙を防ぐ法規制や歩きやすい街づくりが例だ。臨床では、目の前の患者さんに今どの段階の予防が必要かを意識することが大切になる。たとえば糖尿病外来では、生活指導、合併症の早期発見のための眼底検査、すでに起きた合併症への対応が同時に動いているんだ。
医学生医学生
一人の患者さんの中でも、一次から三次までが重なって行われているということですね。
ドクタードクター
その視点があれば、予防医学は暗記ではなく、診療の組み立て方そのものとして見えてくるはずだよ。

まとめ

疾病予防は病気の自然経過のどの段階に働きかけるかで3段階に分けられ、発症前に病気を防ぐ一次予防(健康増進・予防接種・感染経路遮断など)、早期発見・早期治療の二次予防(がん検診などのスクリーニング)、発症後の機能回復や再発防止・社会復帰を図る三次予防(理学療法・作業療法などのリハビリテーション)があります。性感染症予防のためのコンドーム使用とHPVワクチン接種は、いずれも感染、すなわち発症前の段階で病気を防ぐ特異的予防であり一次予防です。同じ子宮頸癌でもHPVワクチンは一次予防、細胞診による検診は二次予防というように、分類の基準は疾患ではなく介入のタイミングである点が重要です。近年は社会環境を整えて危険因子の発生自体を防ぐゼロ次予防という概念も用いられます。予防の段階を意識することは、個々の患者に必要な介入を整理し、診療や保健指導を組み立てる基盤になります。

解答・解説

正解はd, eです

疾病予防は、病気の自然経過のどの段階に働きかけるかによって一次予防・二次予防・三次予防の3段階に分けて考える(Leavell と Clark による予防の段階論)。 一次予防は、まだ病気になっていない健康な段階で、発症そのものを防ぐ取り組みである。健康増進(生活習慣の改善、健康教育など)と特異的予防(予防接種、感染経路の遮断、職業性曝露の防止など)が含まれる。 二次予防は、すでに病気が始まっているが自覚症状がない、あるいは軽い段階で、病気を早く見つけて早く治療し、重症化を防ぐ取り組みである。検診(スクリーニング)が代表である。 三次予防は、病気になった後に、機能障害の進行や再発・合併症を防ぎ、残った能力を最大限に生かして社会復帰を目指す取り組みである。リハビリテーションが代表である。 本問では、各選択肢が「発症前に発症を防ぐもの」か「発症後の早期発見か」「発症後の機能回復か」を判定すればよい。性感染症の感染経路を遮断するコンドーム使用と、HPV感染を防ぐワクチン接種はいずれも発症前に病気を防ぐ手段であり、一次予防に該当する。

選択肢考察

  1. ×a.  住民がん検診

    がん検診は、症状のない段階のがんを見つけ出し、早期に治療へつなげることで死亡を減らすことを目的とする。がんの発生そのものを防ぐわけではないため、早期発見・早期治療を担う二次予防に分類される。なお、検診で前がん病変(例:子宮頸部異形成、大腸腺腫)を見つけて切除することには発がんを防ぐ側面もあるが、試験上はがん検診=二次予防と整理する。

  2. ×b.  脳梗塞後の理学療法

    脳梗塞をすでに発症した患者に対し、運動機能の回復や廃用の防止、日常生活動作(ADL)の再獲得を目指して行うリハビリテーションである。発症後の機能障害を最小限にし社会復帰を図る取り組みなので三次予防に該当する。

  3. ×c.  精神障害者の作業療法

    作業療法は、作業活動を通じて生活技能や対人技能、就労能力などの回復・維持を図るリハビリテーションである。精神障害をすでに有する人の機能回復と社会参加・社会復帰を目指すものなので三次予防に該当する。

  4. ○d.  性感染症予防のためのコンドーム使用

    コンドームは性行為時の体液や粘膜の直接接触を防ぎ、HIV、クラミジア、淋菌などの性感染症の病原体が伝播する経路を物理的に遮断する。感染、すなわち発症の前段階で病気を防ぐ特異的予防であり、一次予防に該当する。

  5. ○e.  ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン接種

    HPVワクチンは、子宮頸癌の主な原因である高リスク型HPV(16型・18型など)への感染を予防する。感染を防ぐことで子宮頸癌やその前がん病変の発生自体を減らすため、予防接種による特異的予防であり一次予防に該当する。一方、子宮頸がん検診(細胞診など)は二次予防であり、両者を区別しておく。

予防の3段階

一次予防(発症前):健康増進(栄養・運動・禁煙などの生活習慣改善、健康教育)、特異的予防(予防接種、感染経路対策、環境・職業性曝露の除去、事故防止など)。 二次予防(発症後の早期):早期発見・早期治療(がん検診、特定健康診査、新生児マス・スクリーニングなど)、重症化予防。 三次予防(発症後):機能障害・能力低下の防止、再発防止、リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語聴覚療法)、社会復帰支援。

紛らわしい例

・子宮頸癌:HPVワクチンは一次予防、細胞診による検診は二次予防。 ・肝細胞癌:HBワクチンは一次予防、慢性肝炎患者の定期的な画像検査は二次予防。 ・脳卒中:高血圧の生活指導による発症予防は一次予防、発症後の再発予防や機能回復訓練は三次予防として扱われることが多い。

ゼロ次予防

近年は、一次予防よりさらに前の段階として、個人の行動ではなく社会・環境そのものを健康的に整え、危険因子の発生自体を防ぐ「ゼロ次予防」という概念も用いられる(例:受動喫煙を防ぐ法規制、歩きやすい街づくり)。

POINT

・一次予防=発症させない(健康増進・予防接種・感染経路遮断) ・二次予防=早期発見・早期治療(検診・スクリーニング) ・三次予防=機能回復・再発防止・社会復帰(リハビリテーション) ・HPVワクチンは一次予防、子宮頸がん検診は二次予防

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。