StudyMed医師国家試験

毛布をかぶっても止まらない震え―悪寒戦慄は血液培養のサイン

第113回医師国家試験 B問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第113回 B問題 第17問

発熱患者で菌血症の存在を最も示唆するのはどれか。

  1. a.悪心
  2. b.頭痛
  3. c.関節痛
  4. d.悪寒戦慄
  5. e.リンパ節腫脹

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、発熱患者のなかから菌血症を見抜く手がかりを問う問題だ。考えるポイントは「その症状が菌血症にどれだけ特異的か」。発熱に伴う症状はたくさんあるけれど、菌血症以外でもよく出るものは決め手にならない。まず、菌血症とはどういう状態か説明できるかな。
医学生医学生
本来は無菌の血液中に細菌がいる状態ですよね。微生物学の講義で、敗血症とは別物だと習いました。
ドクタードクター
その通り。敗血症は感染に対する生体反応の制御がきかなくなって臓器障害をきたした状態で、菌血症はそこへ進む入り口にもなる。だから発熱患者で菌血症を疑ったら、抗菌薬を始める前に血液培養を取るかどうかを判断するのが大切なんだ。選択肢の症状を見て、どれが一番菌血症らしいと思う?
医学生医学生
頭痛はどうでしょう。熱があって頭が痛いと、なんとなく重症感があります。
ドクタードクター
気持ちはわかるけれど、頭痛は片頭痛や緊張型頭痛から髄膜炎、くも膜下出血までさまざまな原因で起こるし、インフルエンザのようなウイルス感染でも熱と一緒にごく普通にみられる。項部硬直や意識障害を伴えば細菌性髄膜炎を考えるけれど、それは頭痛単独の意味とは別の話だね。
医学生医学生
悪心も同じで、胃腸炎や薬の副作用、妊娠でも出るので、菌血症に特異的とは言えないですね。
ドクタードクター
そう。関節痛も、インフルエンザやパルボウイルスB19などのウイルス感染、SLEや成人Still病といった膠原病でよく見られる。化膿性関節炎や感染性心内膜炎で関節症状が出ることもあるけれど、関節痛そのものの特異性は低い。
医学生医学生
リンパ節腫脹も、扁桃炎や伝染性単核球症、結核、悪性リンパ腫と、原因が多すぎますね。
ドクタードクター
よく整理できている。残るのが悪寒戦慄。これが最も菌血症を示唆する所見だ。なぜ震えが起きるか、生理学で習った発熱の機序から考えてみよう。
医学生医学生
エンドトキシンなどの刺激でIL-1やTNF-αが出て、視床下部でプロスタグランジンE2がセットポイントを上げる、という流れでした。
ドクタードクター
完璧だね。セットポイントが急に上がると、体はまだ「寒い」と感じて、皮膚の血管を収縮させて熱を逃がさず、骨格筋をふるわせて熱を作る。これが悪寒で、全身が激しく震えるほど強いものを悪寒戦慄という。菌血症では細菌や菌体成分が一気に血中へ流れ込むから、この反応が強く出やすいんだ。悪寒戦慄を伴う発熱では、悪寒のない場合に比べて菌血症の頻度が約12倍高いという報告もある。
医学生医学生
悪寒にも程度があるんですか。救急外来の実習で「寒気はどのくらいですか」と聞いたら、患者さんの答えがあいまいで困りました。
ドクタードクター
そこは問診の工夫が効く。上着を羽織りたい程度が軽度、厚い毛布をかぶりたいほどが中等度、毛布をかぶっても歯がガチガチ鳴って震えが止まらないのが悪寒戦慄。こう具体的に聞くと区別しやすいし、程度が強いほど菌血症の可能性は高くなる。
医学生医学生
「寒気がありますか」だけでは不十分で、震えが止まらなかったかまで聞くべきなんですね。
ドクタードクター
その通り。そして悪寒戦慄を認めたら、抗菌薬投与前に血液培養を2セット以上、異なる部位から採取する。各セットは好気ボトルと嫌気ボトルの組み合わせだ。複数セット取ることで検出感度が上がるし、表皮ブドウ球菌のような皮膚常在菌の汚染なのか本物の菌血症なのかも判断しやすくなる。
医学生医学生
OSCEの手技で血液培養を練習したとき、なぜ2セットなのか分かっていなかったので納得しました。
ドクタードクター
理由がわかると忘れないよね。注意点として、悪寒戦慄は菌血症以外でも起こりうる。マラリア、薬剤熱、輸血反応などがその例だ。だから悪寒戦慄イコール菌血症と決めつけず、渡航歴や薬剤歴も確認したい。また、血液培養の適応は悪寒戦慄だけではない。敗血症が疑われるとき、意識障害や低血圧を伴う発熱、感染性心内膜炎の疑い、免疫不全患者の発熱なども取るべき場面だ。
医学生医学生
逆に、高齢者などで震えがはっきりしないからといって、菌血症を否定してはいけないということですね。
ドクタードクター
その姿勢が大事。特異性の高い所見は「あれば強く疑う」手がかりで、なければ否定できるとは限らない。全身状態やバイタルも合わせて判断しよう。

まとめ

発熱患者で菌血症を最も示唆する症状は悪寒戦慄であり、悪寒のない場合に比べて菌血症の頻度が約12倍高いと報告されています。これは、細菌や菌体成分が急激に血中へ流入してサイトカインを介し視床下部のセットポイントが急上昇し、皮膚血管収縮と骨格筋のふるえが強く起こるためです。悪心・頭痛・関節痛・リンパ節腫脹はウイルス感染症や膠原病などでもよくみられ、菌血症に対する特異性は低い症状です。悪寒は「上着」「毛布」「毛布をかぶっても止まらない震え」と程度を具体的に問診し、悪寒戦慄があれば抗菌薬投与前に血液培養を2セット以上採取します。症状の特異性を意識して血液培養の要否を判断する力は、敗血症への進展を防ぐ初期診療の基本となります。

解答・解説

正解はdです

菌血症とは、本来無菌である血液中に細菌が存在する状態である。発熱患者のなかから菌血症を見逃さないことは、敗血症(感染に対する生体反応の制御不全により臓器障害をきたした状態)への進展を防ぐうえで極めて重要であり、「どのような所見があれば血液培養を採取すべきか」を判断する力が求められる。 悪心・頭痛・関節痛・リンパ節腫脹はいずれも発熱に伴ってよくみられる症状だが、ウイルス感染症や非感染性疾患など菌血症以外の原因でも頻繁に出現するため、菌血症に対する特異性は低い。 これに対し悪寒戦慄(shaking chills、毛布をかぶっても止まらないほどの全身の震え、歯がガチガチ鳴るような震え)は、血液中に細菌や菌体成分(エンドトキシンなど)が流入して急激に体温のセットポイントが上昇したときに典型的に生じる。悪寒の程度が強いほど菌血症の可能性が高まることが臨床研究で示されており、悪寒戦慄を伴う発熱患者では、悪寒のない患者に比べて菌血症の頻度が約12倍高いと報告されている。したがって、悪寒戦慄は菌血症を最も示唆する所見であり、認めた場合には抗菌薬投与前に血液培養(2セット以上)を採取すべきである。

選択肢考察

  1. ×a.  悪心

    誤り。悪心(吐き気)は胃腸炎などの消化器疾患、頭蓋内圧亢進や前庭障害などの神経疾患、薬剤の副作用、妊娠、代謝異常など多くの原因で生じる非特異的な症状であり、発熱一般にも伴い得る。菌血症を特異的に示唆する所見ではない。

  2. ×b.  頭痛

    誤り。頭痛は片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛のほか、髄膜炎、くも膜下出血、脳腫瘍などの二次性頭痛でも起こる。発熱そのものに伴う頭痛はインフルエンザなどのウイルス感染症でもごく一般的であり、菌血症に特異的ではない。なお、発熱と頭痛に項部硬直や意識障害を伴えば細菌性髄膜炎を考えるが、それは頭痛単独の意義とは別である。

  3. ×c.  関節痛

    誤り。発熱に伴う関節痛・筋肉痛はウイルス感染症(インフルエンザ、パルボウイルスB19感染症など)で頻繁にみられ、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、成人Still病、リウマチ熱などの膠原病・自己免疫性疾患でも認められる。化膿性関節炎や感染性心内膜炎で関節症状を伴うこともあるが、関節痛自体は菌血症に対する特異性が低い。

  4. ○d.  悪寒戦慄

    正しい。発熱物質(サイトカインなど)の作用で視床下部の体温調節中枢のセットポイントが急に引き上げられると、体温を新しい設定値まで上げるために、皮膚血管の収縮(熱放散の抑制)と骨格筋のふるえ(熱産生の促進)が起こる。これを寒気として自覚するのが悪寒であり、全身が激しく震えるほど強いものを悪寒戦慄という。菌血症では細菌や菌体成分が急激に血中へ流入するため、この反応が強く現れやすい。悪寒戦慄を伴う場合は菌血症の可能性が約12倍に高まるとの報告があり、血液培養採取の強い根拠となる。菌血症以外(マラリア、薬剤熱、輸血反応など)でも起こり得るが、選択肢中で最も菌血症を示唆する。

  5. ×e.  リンパ節腫脹

    誤り。リンパ節腫脹は局所の細菌感染(扁桃炎、蜂窩織炎など)やウイルス感染症(伝染性単核球症など)、結核のほか、悪性リンパ腫や癌のリンパ節転移、サルコイドーシス、自己免疫性疾患などでもみられる。原因が多岐にわたり、菌血症を特に示唆する所見ではない。

悪寒の程度と菌血症

悪寒は程度によって段階的に分けられ、程度が強いほど菌血症の可能性が高い。 ・軽度の悪寒(mild chills):上着を羽織りたくなる程度の寒気 ・中等度の悪寒(moderate chills):厚い毛布をかぶりたくなる程度の強い寒気 ・悪寒戦慄(shaking chills):毛布をかぶっても全身の震えが止まらない状態 悪寒戦慄を伴う発熱では菌血症のリスクが大きく上昇するため、「悪寒戦慄=血液培養」と覚えておく。

発熱の機序

細菌由来のエンドトキシン(外因性発熱物質)などが単球・マクロファージを刺激し、IL-1、IL-6、TNF-αなどの内因性発熱物質(サイトカイン)が産生される。これらが視床下部でプロスタグランジンE2の産生を促し、体温のセットポイントを上昇させる。体温上昇期には末梢血管収縮とふるえにより悪寒が生じ、解熱期には発汗と皮膚血管拡張が起こる。

血液培養の基本

・抗菌薬投与前に採取する。 ・2セット以上(各セット好気ボトル・嫌気ボトル)を、異なる部位から採取する。複数セット採取により検出感度が上がり、表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌による汚染(コンタミネーション)との区別がしやすくなる。 ・適応:悪寒戦慄、敗血症が疑われる場合、意識障害や低血圧を伴う発熱、感染性心内膜炎の疑い、免疫不全患者の発熱など。

痛みの問診(OPQRST)

頭痛や関節痛などの痛みを評価する際は、発症様式(Onset)、増悪・寛解因子(Provocation/Palliation)、性質(Quality)、部位と放散(Region/Radiation)、強さ(Severity)、時間経過(Time)、さらに随伴症状(発熱、筋力低下、皮疹など)を系統的に確認すると鑑別に役立つ。

POINT

・発熱患者で菌血症を最も示唆する症状は悪寒戦慄である。 ・悪寒の程度が強いほど菌血症の可能性が高く、悪寒戦慄では約12倍とされる。 ・悪寒戦慄を認めたら、抗菌薬投与前に血液培養を2セット以上採取する。 ・悪心、頭痛、関節痛、リンパ節腫脹は原因が多岐にわたり、菌血症に対する特異性は低い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。