StudyMed医師国家試験

赤ちゃんは産道でなぜ回るのか―「最大径に合わせる」で解く4つの回旋

第112回医師国家試験 F問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第112回 F問題 第7問

正常頭位分娩について正しいのはどれか。

  1. a.児頭の第2回旋と第4回旋は同方向である。
  2. b.児頭の第4回旋は発露とほぼ同時に起こる。
  3. c.児頭の第1回旋と第3回旋は同じ動きである。
  4. d.児の肩甲はその肩幅が骨盤最大径に一致するように回旋する。
  5. e.児の肩甲は母体の背側にある肩甲から先に母体外に娩出される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は正常頭位分娩の分娩機転、つまり児が産道を通るときの回旋を問う問題だ。丸暗記しがちな第1〜第4回旋だけど、「なぜ回るのか」という理由を一つ押さえれば、各選択肢の正誤は自然に判断できる。まずは理由から考えてみよう。
医学生医学生
産道の形が場所によって違うから、でしょうか。産婦人科の講義で骨盤の模型を見ました。
ドクタードクター
その通り。骨盤入口部では横径が最大、濶部はほぼ円形、峡部から出口部では前後径が最大になる。児頭も肩甲も、自分の最大径を各部位の最大径に合わせるように向きを変えながら下降する。これが回旋の本質だ。
医学生医学生
ということは、肩甲が肩幅を骨盤の最大径に一致するように回旋するというのは、まさにその原理そのものですね。
ドクタードクター
正解。それがこの問題の答えだ。肩甲は入口部を横径から斜径方向で通過したあと、出口部では肩幅を最大径である前後径に合わせるように回る。この肩甲の回旋に連動して、すでに体外に出た児頭も回る。これが第4回旋、外回旋だ。
医学生医学生
回旋の名前がいつも混乱します。第1回旋が屈曲でしたっけ。
ドクタードクター
そう。整理すると、第1回旋は屈曲で、骨盤入口部で顎を胸に近づける。これで最も小さい小斜径周囲、約32cmで進めるようになり、先進部は小泉門になる。第2回旋は内回旋で、矢状縫合が横径方向から前後径方向に向きを変え、後頭部が母体の前方、恥骨側を向く。第3回旋は反屈で、項部を恥骨弓下に固定して児頭が伸展し、前頭部、顔面、顎の順に娩出される。第4回旋が先ほどの外回旋だ。
医学生医学生
第1回旋と第3回旋は、どちらも首を曲げ伸ばしする動きなので、同じ動きと言っていいのでは?
ドクタードクター
そこがひっかけ。どちらも児頭の横軸まわりの回旋、つまり胎勢回旋だけれど、第1回旋は屈曲、第3回旋は反屈で、動きは逆なんだ。軸が同じでも向きが反対だから「同じ動き」とは言えない。
医学生医学生
じゃあ第2回旋と第4回旋も、同じ縦軸回旋だけど向きが逆、ということですか。
ドクタードクター
その理解でいい。どちらも児の体の長軸を中心にねじる胎向回旋だけど、第4回旋では児頭が第2回旋前の向きに戻るように回る。だから同方向ではない。外回旋のあと児の顔が母体の大腿内側を向く、というイメージを持っておくとわかりやすい。
医学生医学生
発露とほぼ同時に起こるのは第4回旋ではなかったでしょうか。
ドクタードクター
発露の時期に始まるのは第3回旋だよ。発露は陣痛間欠期にも児頭が陰裂から見えたまま後退しなくなった状態で、ちょうど項部を支点に児頭が伸展し始める頃だ。第4回旋は児頭が完全に娩出された後に起こる。発作時だけ見えて間欠時に引っ込む排臨とセットで区別しておこう。
医学生医学生
肩は母体の背側にある肩から先に出るんでしたっけ。会陰側の方が広そうに思えて。
ドクタードクター
実は逆で、先に出るのは母体の腹側、恥骨側にある前在肩甲だ。前在肩甲が恥骨弓下から現れた後、背側の後在肩甲が会陰を越えて娩出される。介助では、まず児頭を後下方へ誘導して前在肩甲を出し、次に前上方へ持ち上げて後在肩甲を出す。
医学生医学生
臨床実習で分娩見学をしたとき、助産師さんがまさに頭を下に向けてから上に持ち上げていました。あれは肩の順番に合わせていたんですね。
ドクタードクター
よく観察していたね。この順番を知っていると、肩甲難産の理解にもつながる。前在肩甲が恥骨結合に引っかかって出られなくなる状態で、巨大児や糖尿病合併妊娠で起こりやすい。マックロバーツ体位や恥骨上部圧迫法で対処するんだ。
医学生医学生
回旋がうまくいかないと、ほかにどんな異常がありますか。
ドクタードクター
第1回旋がうまくいかないと前頭位、額位、顔位といった反屈位になる。額位では大斜径、約13.5cmで通過しようとするので経腟分娩は難しい。第2回旋の異常には、小泉門が母体後方に回る後方後頭位や、矢状縫合が低い位置で横径に一致したまま止まる低在横定位がある。どれも「最大径を合わせる」がうまくいかなかった結果と考えると覚えやすい。
医学生医学生
回旋を名前で覚えるより、骨盤の形と児の径の関係で理解すれば、異常もつながって見えますね。
ドクタードクター
その通り。分娩進行が停滞したときに内診で矢状縫合や小泉門の向きを確認するのは、まさにどの回旋でつまずいているかを見極めるためなんだ。

まとめ

正常頭位分娩では、児頭と肩甲が産道各部の最大径(入口部は横径、出口部は前後径)に自らの最大径を合わせるように回旋しながら下降し、肩幅を骨盤出口の前後径に合わせる肩甲の回旋に伴って起こるのが第4回旋(外回旋)です。第1回旋(屈曲)と第3回旋(反屈)は同じ横軸まわりでも動きが逆、第2回旋(内回旋)と第4回旋も同じ縦軸まわりでも方向が逆です。発露の頃に始まるのは第3回旋で、第4回旋は児頭娩出後に起こり、肩甲は母体腹側の前在肩甲から先に娩出されます。回旋の理由を理解しておくと、反屈位や後方後頭位、低在横定位、肩甲難産といった分娩異常の病態や分娩介助の手技まで一貫して理解できます。

解答・解説

正解はdです

正常頭位分娩(後頭位・第1または第2頭位)での児の回旋(分娩機転)を問う問題である。 胎児は、形が変化する産道(骨盤入口・骨盤濶部・骨盤出口)を通過するために、児頭と体幹の向きを段階的に変えていく。この一連の動きを児頭の第1〜第4回旋として整理する。

回旋の分類

・横軸回旋(胎勢回旋): 児頭の左右方向の軸を中心に、首を曲げたり伸ばしたりする動き。第1回旋(屈曲)と第3回旋(反屈=伸展)がこれにあたる。 ・縦軸回旋(胎向回旋): 児の体の長軸を中心に、頭部や体幹をねじる動き。第2回旋(内回旋)と第4回旋(外回旋)がこれにあたる。

各回旋の内容

・第1回旋(屈曲): 骨盤入口部で児頭が顎を胸に近づけるように前屈する。これにより、最も小さい周囲である小斜径周囲(約32cm)で産道を進めるようになり、先進部は小泉門となる。 ・第2回旋(内回旋): 骨盤濶部〜峡部で、矢状縫合が骨盤入口部の横径(または斜径)方向から出口部の前後径(縦径)方向へ向きを変える。小泉門が母体の前方(恥骨側)へ回り、児の後頭部が前方を向く。 ・第3回旋(反屈): 児頭の項部(うなじ)が恥骨弓下に支点として固定され、児頭が伸展しながら前頭部・顔面・顎の順に会陰から娩出される。発露とほぼ同じ時期に始まる。 ・第4回旋(外回旋): 児頭娩出後、産道内の肩甲が骨盤出口の最大径(前後径)に一致するよう回旋する。これに伴って体外に出た児頭も回り、児の顔は母体の大腿内側の方向を向く。回旋の向きは第2回旋と反対で、第2回旋前の向きに戻るかたちになる。 この後、まず母体の腹側(恥骨側)にある前在肩甲が恥骨弓下から娩出され、続いて背側(仙骨側)にある後在肩甲が会陰を越えて娩出され、体幹が続く。 設問では、肩甲が骨盤最大径に合わせて回旋するという第4回旋の機序を正しく述べた選択肢を選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  児頭の第2回旋と第4回旋は同方向である。

    誤り。第2回旋(内回旋)と第4回旋(外回旋)はどちらも児の長軸を中心にねじる縦軸回旋(胎向回旋)だが、回る向きは逆である。第2回旋では後頭部が母体前方へ回り、矢状縫合が縦径に一致する。第4回旋では肩甲の回旋に連動して、児頭は第2回旋前の向きに戻るように回る。

  2. ×b.  児頭の第4回旋は発露とほぼ同時に起こる。

    誤り。発露(陣痛間欠期にも児頭が陰裂から見えたまま後退しなくなった状態)とほぼ同じ時期に起こるのは、項部を恥骨弓下に固定して児頭が伸展する第3回旋(反屈)である。第4回旋(外回旋)は児頭が完全に娩出された後に起こる。

  3. ×c.  児頭の第1回旋と第3回旋は同じ動きである。

    誤り。第1回旋と第3回旋はどちらも児頭の横軸まわりの回旋(胎勢回旋)だが、動きは逆である。第1回旋は顎を胸につける屈曲で、小斜径周囲を先進させる。第3回旋は項部を支点に顎を胸から離す反屈(伸展)で、前頭部・顔面・顎を順に娩出させる。

  4. ○d.  児の肩甲はその肩幅が骨盤最大径に一致するように回旋する。

    正しい。骨盤入口部では横径が最大で、骨盤出口部では前後径(縦径)が最大となる。肩甲は入口部を横径〜斜径方向で通過した後、出口部では肩幅(肩甲間の径)が最大径である前後径に一致するよう回旋する。この肩甲の回旋に伴って、体外に出た児頭も回る。これが第4回旋(外回旋)である。

  5. ×e.  児の肩甲は母体の背側にある肩甲から先に母体外に娩出される。

    誤り。先に娩出されるのは、母体の腹側(恥骨側)にある前在肩甲である。前在肩甲が恥骨弓下から現れた後、背側(仙骨側)の後在肩甲が会陰を越えて娩出される。介助では、まず児頭を後下方へ誘導して前在肩甲を出し、次に前上方へ持ち上げて後在肩甲を出す。前在肩甲が恥骨結合に引っかかって出られない状態が肩甲難産である。

骨盤各部の最大径

・骨盤入口部: 横径が最大(入口部の前後径は産科的真結合線、約11cm)。 ・骨盤濶部: ほぼ円形。 ・骨盤峡部・出口部: 前後径(縦径)が最大。 児頭も肩甲も、各部位の最大径に自分の最大径を合わせるように回旋しながら下降する。これが回旋の理由である。

児頭の主な径と周囲

・小斜径(後頭下〜大泉門中央)約9.5cm、周囲約32cm: 屈曲した後頭位で通過する径で、最も有利である。 ・前後径(眉間〜後頭結節)約11.5cm、周囲約33cm: 前頭位などで通過する径である。 ・大斜径(顎〜後頭の最遠点)約13.5cm、周囲約35cm: 額位で問題になる径で、経腟分娩は困難である。

分娩機転の異常

・第1回旋の異常: 反屈位(前頭位・額位・顔位)。 ・第2回旋の異常: 後方後頭位(小泉門が母体後方に回る)、低在横定位(矢状縫合が低い位置で横径に一致したまま止まる)。 ・肩甲娩出の異常: 肩甲難産。巨大児や糖尿病合併妊娠で起こりやすい。マックロバーツ(McRoberts)体位や恥骨上部圧迫法などで対処する。

排臨と発露

・排臨: 陣痛発作時には児頭が陰裂から見えるが、間欠時には後退して見えなくなる状態。 ・発露: 間欠時にも児頭が後退せず、見えたままの状態。第3回旋(反屈)が始まる時期にあたる。

POINT

・第1回旋=屈曲、第3回旋=反屈(どちらも横軸回旋だが動きは逆)。 ・第2回旋=内回旋、第4回旋=外回旋(どちらも縦軸回旋だが方向は逆)。 ・第3回旋は発露の頃、第4回旋は児頭娩出後に起こる。 ・第4回旋は、肩幅を骨盤出口の最大径(前後径)に合わせる肩甲の回旋に伴って起こる。 ・肩甲は前在(母体腹側・恥骨側)から先に娩出され、次に後在(母体背側)が出る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。