StudyMed医師国家試験

在宅医療は「つながり」で支える―多職種チームの要は情報共有

第112回医師国家試験 F問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第112回 F問題 第34問

在宅医療におけるチーム医療として正しいのはどれか。

  1. a.患者情報は職種間で共有する。
  2. b.患者が独居の場合適応にならない。
  3. c.チーム内の医師は一人の方が良い。
  4. d.ケアマネジャー主体でチームを構成する。
  5. e.多職種カンファレンスに患者の家族は同席できない。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は在宅医療におけるチーム医療の基本を問う問題だ。在宅医療では、医師だけでなく看護、薬剤、リハビリ、介護など多くの職種が、それぞれ違う時間に患者の自宅を訪れる。そうした状況でチームがうまく機能するには何が必要か、という視点で考えてみよう。
医学生医学生
病院なら同じ病棟にスタッフが集まっていますが、在宅だとばらばらに訪問するんですよね。だとすると、お互いの情報をどう伝えるかが大事になりそうです。
ドクタードクター
まさにそこが核心だ。病状の変化、服薬状況、生活の様子、家族の介護負担、本人の意向。こうした情報を職種間で共有しなければ、一貫したケアは提供できない。だから「患者情報は職種間で共有する」が正解だね。
医学生医学生
地域医療実習で訪問診療に同行したとき、患者さんの家に連絡ノートが置いてあって、看護師さんやヘルパーさんが書き込んでいました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。連絡ノートのほか、電話やファクス、最近はICTを使った連携システム、そしてカンファレンスなどで情報を共有する。もちろん患者の同意のもと、個人情報保護に配慮することが前提だよ。
医学生医学生
独居の患者さんは適応にならない、というのはどうでしょう。介護する人がいないと在宅は難しそうに思えますが。
ドクタードクター
そう感じる人は多いけれど、独居は在宅医療の除外理由にはならない。高齢化で独居の在宅療養者はむしろ増えている。家族の見守りが期待できない分、訪問看護や訪問介護、見守りサービスを組み合わせ、チームがより緊密に連携する必要があるんだ。急変時の連絡体制や、本人の意思をあらかじめ確認しておくことも大切だね。
医学生医学生
独居だからこそ、情報共有の重要性がさらに増すわけですね。医師は一人の方が責任がはっきりしてよい気もするのですが。
ドクタードクター
チームに加わる医師の人数に決まりはないんだ。在宅医に加えて、専門的な治療を担う病院の主治医、精神科医、皮膚科医、歯科医師などが関わることもある。それに、24時間の対応を一人の医師で担い続けるのは大きな負担だから、複数の医師や医療機関が連携して往診や看取りに対応する形もよくとられる。
医学生医学生
在宅療養支援診療所の要件にも、24時間の往診体制がありましたね。
ドクタードクター
そう。単独で要件を満たせない場合は、複数の医療機関が連携して対応する形態も認められている。大切なのは人数ではなく、役割分担と情報共有を明確にすることだ。
医学生医学生
ケアマネジャーが主体になってチームを組む、というのは?介護保険の講義では、ケアマネジャーがサービスを調整すると習いました。
ドクタードクター
ケアマネジャーはケアプランを作り、サービス担当者会議を開催する重要な調整役だ。でも、在宅医療のチームは特定の職種が主体になるものではなく、患者と家族を中心に各職種が対等に参加する。医学的な判断や治療方針の決定は在宅医が責任を負うし、訪問看護指示書の交付も医師が行う。それに、要介護認定を受けていない人や介護保険の対象外の若年者など、ケアマネジャーが関わらないケースもあるんだ。
医学生医学生
なるほど、「調整役」と「主体」は別ということですね。家族がカンファレンスに同席できないというのは、さすがに違和感があります。
ドクタードクター
その感覚は正しい。本人と家族はチームの重要な一員で、多職種カンファレンスにも同席できる。退院前カンファレンスやサービス担当者会議でも、本人や家族が療養の希望や不安を直接伝えたうえで方針を決めるのが望ましい。人生の最終段階の医療・ケアについて話し合うアドバンス・ケア・プランニング、ACPでも、本人・家族と医療・ケアチームの話し合いが基本になる。
医学生医学生
チームの中心に患者さんと家族がいて、その周りを多職種が対等に囲み、情報でつながっている、というイメージですね。
ドクタードクター
その図をイメージできれば十分だ。最後に用語の整理もしておこう。計画的・定期的に訪問するのが訪問診療、患者や家族の求めに応じて臨時に訪問するのが往診だ。また、在宅医は訪問看護指示書を出し、薬局に訪問薬剤管理指導を依頼し、ケアマネジャーには注意すべき症状やサービス利用の可否など医学的情報を伝える。医師から各職種への情報提供も、チーム医療を支える大事な仕事なんだよ。
医学生医学生
将来、退院する患者さんを担当したら、在宅のチームにどう情報を引き継ぐかまで意識したいと思います。
ドクタードクター
それができれば、病院と地域がしっかりつながる。在宅医療の質は、そうした一つひとつの連携で決まるんだ。

まとめ

在宅医療では多職種が異なる時間・場面で患者に関わるため、病状・服薬・生活状況・本人の意向などの患者情報を、同意と個人情報保護に配慮しつつ職種間で共有することが連携の基本です。チームの中心は患者と家族であり、家族も多職種カンファレンスやACPの話し合いに参加し、各職種が対等な立場で専門性を発揮します。独居は在宅医療の適応外ではなくむしろ連携が一層重要となり、医師の人数に制限はなく、複数の医師・医療機関が連携して24時間対応を担うこともあります。ケアマネジャーは介護保険サービスの調整役であってチームの主体ではなく、医学的判断や訪問看護指示書の交付は医師が担います。こうしたチーム医療の原則を理解することは、退院支援から看取りまで地域で患者を支える医療を実践するための土台になります。

解答・解説

正解はaです

在宅医療は、通院が困難な患者に対して、医師が自宅や施設を訪れて計画的に診療を行う医療である。生活の場で療養を支えるため、医療だけでなく介護・福祉・生活支援を含めた多職種の関わりが欠かせない。 在宅医療に関わる主な職種と役割は次のとおりである。 ・在宅医(訪問診療を行う医師):医学的判断と治療方針の決定、訪問看護指示書の交付など。 ・訪問看護師:病状観察、医療処置、療養上の世話、家族への指導。 ・薬剤師:訪問薬剤管理指導(服薬状況の確認、残薬管理、副作用の確認)。 ・歯科医師・歯科衛生士:訪問歯科診療、口腔ケア。 ・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:訪問リハビリテーション。 ・介護支援専門員(ケアマネジャー):介護保険サービスの調整とケアプランの作成。 ・訪問介護員(ホームヘルパー)、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど。 チーム医療の中心にいるのは患者本人とその家族であり、各職種が対等な立場で専門性を発揮し、情報と目標を共有しながら連携する。本問ではこの基本的な考え方に合致する選択肢を選べばよい。

選択肢考察

  1. ○a.  患者情報は職種間で共有する。

    多職種がそれぞれ異なる時間・場面で患者に関わる在宅医療では、病状の変化、服薬状況、生活状況、家族の介護負担、本人の意向などの情報を共有しなければ、適切で一貫したケアは提供できない。連絡ノート、電話・ファクス、ICT(情報通信技術)を用いた連携システム、カンファレンスなどを通じて、訪問診療・訪問看護・訪問薬剤管理指導・訪問介護などの担当者が情報を共有する。もちろん共有は患者の同意のもと、個人情報保護に配慮して行う。

  2. ×b.  患者が独居の場合適応にならない。

    独居であることは在宅医療の除外理由にはならない。高齢化に伴い独居の在宅療養者は増えており、むしろ家族による見守りや介護が期待できない分、訪問看護・訪問介護・見守りサービスなどを組み合わせ、多職種がより緊密に連携する必要がある。急変時の連絡体制や本人の意思の確認をあらかじめ整えておくことも重要である。

  3. ×c.  チーム内の医師は一人の方が良い。

    チームに加わる医師の人数に決まりはない。在宅医(かかりつけ医)に加え、専門的な治療を担う病院の主治医、精神科医、皮膚科医、歯科医師などが関わることもある。また、24時間対応を一人の医師で担うのは負担が大きいため、複数の医師や医療機関が連携して往診・看取りに対応する体制がとられることも多い。重要なのは人数ではなく、役割分担と情報共有を明確にすることである。

  4. ×d.  ケアマネジャー主体でチームを構成する。

    在宅医療のチームは特定の職種が主体となって構成するものではなく、患者・家族を中心に各職種が対等に参加する。ケアマネジャーは介護保険サービスの調整役としてケアプランを作成し、サービス担当者会議を開催するなど重要な役割を担うが、医学的な判断や治療方針の決定は在宅医が責任を負い、訪問看護指示書の交付や薬剤師への訪問指導依頼も医師が行う。また、在宅医療を受ける患者がすべて介護保険を利用しているわけではなく(例:要介護認定を受けていない人や、介護保険の対象とならない若年者)、ケアマネジャーが関わらない場合もある。

  5. ×e.  多職種カンファレンスに患者の家族は同席できない。

    患者本人と家族はチームの重要な一員であり、多職種カンファレンスに同席できる。介護保険制度でケアマネジャーが開催するサービス担当者会議や、退院前カンファレンスにも本人・家族が参加し、療養の希望や不安を直接伝えたうえで方針やケアプランを決定・見直すのが望ましい。人生の最終段階における医療・ケアの方針を話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)においても、本人・家族と医療・ケアチームの話し合いが基本となる。

在宅医療の流れの一例

1. 通院困難となった患者について、病院の退院支援部門や地域の医療機関が在宅医療を調整する(退院前カンファレンスなど)。 2. 介護が必要な場合は要介護認定を申請し、要支援・要介護と認定されると、ケアマネジャー(要支援では地域包括支援センターなど)が支給限度額の範囲内で必要なサービスを組み合わせたケアプランを作成する。 3. 在宅医は定期的な訪問診療を行い、必要に応じて訪問看護指示書を交付し、薬局に訪問薬剤管理指導を依頼する。ケアマネジャーにも医学的情報(主治医意見書の内容、注意すべき症状、サービス利用の可否など)を伝える。 4. 多職種が情報を共有しながらケアを提供し、病状や生活状況の変化に応じてサービス担当者会議などで計画を見直す。

訪問診療と往診の違い

・訪問診療:計画的・定期的に患家を訪問して行う診療。 ・往診:患者・家族の求めに応じて臨時に訪問して行う診療。

在宅療養支援診療所

24時間連絡を受ける体制、24時間の往診・訪問看護の提供体制などを備えた診療所であり、単独で要件を満たせない場合は複数の医療機関が連携して対応する形態もある。

POINT

・在宅医療のチーム医療では、多職種が患者情報を共有して連携することが基本である。 ・チームの中心は患者と家族であり、家族もカンファレンスに参加できる。 ・独居は在宅医療の適応外ではなく、むしろ連携が一層重要になる。 ・医師の人数に制限はなく、複数の医師・医療機関が関わってよい。 ・ケアマネジャーは介護保険サービスを調整する役割であり、チームの「主体」ではない。医学的判断は医師が担う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。