指先はどこまで届くのか―分娩第1期の内診で「触れない」骨盤の目印
第112回医師国家試験 F問題 第26問
国試問題にチャレンジ
頭位正常分娩の分娩第1期の内診で触れないのはどれか。
- a.岬角
- b.尾骨
- c.坐骨棘
- d.小泉門
- e.矢状縫合
対話形式の解説
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ドクターまとめ
頭位正常分娩の分娩第1期の内診では、骨盤側壁の坐骨棘(ステーション0の基準)、後方の仙骨下部から尾骨、そして児頭の先進部である小泉門とその近くを走る矢状縫合を触れることができます。仙骨岬角は骨盤入口の後縁という高い位置にあり、正常骨盤では対角結合線が長いため内診指は通常届かず、さらに第1期には児頭が入口部に嵌入しているため触れません。内診で岬角に容易に触れる場合は狭骨盤を疑うきっかけとなります。小泉門の位置と矢状縫合の向きから回旋を判定し、大泉門が先進していれば反屈位を疑うなど、骨盤と児頭の立体的な位置関係を理解することは、分娩進行の評価や異常の早期発見に直結します。
解答・解説
正解はaです
頭位の正常分娩で、分娩第1期に内診(腟内に指を入れて行う診察)を行ったとき、指先が届く構造と届かない構造を区別させる問題である。
前提の整理
・分娩第1期は、規則的な陣痛の開始(陣痛周期10分以内、または1時間に6回以上)から子宮口全開大(約10cm)までの期間をいう。 ・正常な頭位分娩では、児頭は分娩開始前後に骨盤入口を通過して固定(嵌入、engagement)し、分娩第1期を通じて骨盤内を下降していく。 ・児頭の下降度はステーション(station)で表し、児頭先進部が両側の坐骨棘を結ぶ線の高さにあるときをステーション0、それより上を−、下を+(cm単位)とする。骨盤入口はおおよそ−5に相当する。
内診で触れるもの
内診では、子宮口の開大度・展退度・硬さ・位置とともに、児頭の先進部と骨盤の骨性構造を確認する。 ・児頭:正常の屈曲位では小泉門が先進部となり、その近くを走る矢状縫合とともに触れることができる。両者の向きから回旋の状態を判断する。 ・骨盤:側方の坐骨棘はステーションの基準として触れ、後方では仙骨下部から尾骨にかけて触れることができる。
触れないもの
仙骨岬角は骨盤入口の後縁をなし、内診指の届く範囲よりも高い位置にある。正常骨盤では非妊時でも通常届かず、さらに分娩第1期には児頭が骨盤入口に嵌入して入口部を占めているため、岬角を触れることはない。したがって「触れないもの」は岬角である。
選択肢考察
- ○a. 岬角
触れないため、これが正解である。岬角(仙骨岬角)は第1仙椎上縁前面の突出部で、恥骨結合上縁とともに骨盤入口面の境界をつくる。正常な骨盤では対角結合線(岬角から恥骨結合下縁まで)が約12.5〜13cmあり、内診指は通常岬角に届かない。加えて頭位正常分娩の第1期では児頭が骨盤入口に嵌入して入口部をふさいでいるため、岬角の触知は不可能である。逆に内診で岬角に容易に触れる場合は、骨盤入口が狭い(狭骨盤)可能性を考える。
- ×b. 尾骨
触れる。尾骨は骨盤の後下方、骨盤出口部の後端に位置し、内診指を後方へ向ければ仙骨下部から尾骨先端にかけて触知できる。尾骨先端と恥骨結合下縁を結ぶ部分は骨盤出口部に当たり、児頭がここまで下降して排臨・発露に至る分娩第2期後半には、児頭が間に入って尾骨は触れにくくなる。分娩第1期にはまだ触知可能である。
- ×c. 坐骨棘
触れる。坐骨棘は骨盤の側壁から内側に突出した骨性の突起で、骨盤腔の最も狭い部分(濶部から峡部への移行部)の目印となる。児頭下降度(ステーション)の基準点であり、内診で左右の坐骨棘を触れ、その高さと児頭先進部との距離を評価する。分娩第1期には児頭はまだ骨盤峡部以下に深く下降していないため、坐骨棘は触知できる。児頭が骨盤峡部から出口部へ進む分娩第2期には触れにくくなる。
- ×d. 小泉門
触れる。小泉門は左右の頭頂骨と後頭骨の間にある三角形の泉門である。正常の頭位分娩では、第1回旋で児頭が屈曲して顎を胸につけるため、後頭部にある小泉門が先進部となり内診で触知できる。第1頭位(児背が母体左側)の場合、第1回旋の段階では小泉門は内診者から見て3時方向に、第2回旋(内回旋)を終えると12時方向(恥骨側)に触れる。大泉門が先進している場合は反屈位を疑う。
- ×e. 矢状縫合
触れる。矢状縫合は左右の頭頂骨の間を前後に走る縫合で、後端が小泉門、前端が大泉門につながる。屈曲位で小泉門が先進するとき、その周囲の矢状縫合も触知できる。第1回旋の段階では矢状縫合は骨盤入口の横径に一致して横向き(3時–9時方向)に触れ、第2回旋の進行とともに斜径、さらに縦径(12時–6時方向)へと向きを変える。矢状縫合の向きと小泉門の位置から回旋の進み具合を判定する。
分娩の時期区分
・分娩第1期(開口期):分娩開始(陣痛周期10分以内)〜子宮口全開大。 ・分娩第2期(娩出期):子宮口全開大〜児娩出。 ・分娩第3期(後産期):児娩出〜胎盤娩出。
骨盤の区分と目印
・骨盤入口部:恥骨結合上縁と仙骨岬角を結ぶ面。岬角から恥骨結合後面までの最短距離が産科真結合線で、9.5cm未満は狭骨盤とされる。 ・骨盤濶部・峡部:坐骨棘が峡部の側方の目印となる。ステーション0は坐骨棘の高さ。 ・骨盤出口部:恥骨結合下縁と尾骨先端を結ぶ部分。
頭位分娩の回旋(第1頭位)
・第1回旋:児頭の屈曲。小泉門が先進部となる。矢状縫合は横径に一致。 ・第2回旋:内回旋。小泉門が前方(恥骨側)へ回り、矢状縫合は縦径に一致する。 ・第3回旋:児頭の伸展(反屈)。後頭が恥骨弓下を支点として顔面が娩出される。 ・第4回旋:外回旋。児の顔が母体の大腿側を向く。
内診で評価する主な項目
子宮口開大度、頸管展退度、児頭の位置(ステーション)、子宮頸部の硬さ、子宮口の位置(これらでBishopスコアを評価)、先進部と回旋の状態、破水の有無など。
POINT
・岬角は骨盤入口の後端で、正常骨盤では内診指が届かない。分娩第1期には児頭が嵌入しておりなおさら触れない。岬角に触れれば狭骨盤を疑う。 ・分娩第1期の内診では、坐骨棘(ステーション0の基準)、尾骨、小泉門(正常屈曲位の先進部)、矢状縫合を触れる。 ・小泉門の位置と矢状縫合の向きで回旋を判定する(第1頭位:第1回旋後は小泉門3時、第2回旋後は12時)。
