75歳からの窓口負担は何割?―後期高齢者医療制度と自己負担のしくみ
第112回医師国家試験 E問題 第16問
国試問題にチャレンジ
現役並み所得のない75歳以上の者の医療費の一部負担(自己負担)割合はどれか。
- a.なし
- b.1 割
- c.2 割
- d.3 割
- e.5 割
対話形式の解説
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ドクターまとめ
75歳以上(一定の障害がある65〜74歳を含む)の者は後期高齢者医療制度に加入し、医療費の自己負担は原則1割、現役並み所得者は3割で、2022年10月からは一定以上の所得がある者が2割となりました。年齢別には、義務教育就学前が2割、就学後〜69歳が3割、70〜74歳が2割(現役並み所得者は3割)です。1973年の老人医療費無料化は1983年の老人保健法で終了し、かつての被扶養者5割負担も現存しません。制度の財源は公費約5割、現役世代からの支援金約4割、高齢者の保険料約1割で、自己負担には高額療養費制度による月ごとの上限があります。負担割合は患者の受診行動に影響するため、制度の基本を理解しておくことは臨床でも役立ちます。
解答・解説
正解はbです
問われていること
75歳以上の者が医療機関を受診した際に窓口で支払う一部負担金(自己負担)の割合を問う問題である。
考え方
日本の公的医療保険では、医療費のうち患者が窓口で負担する割合が年齢と所得によって決められている。75歳以上(一定の障害があると認定された65〜74歳を含む)の者は、それまで加入していた健康保険や国民健康保険を離れ、2008年に創設された後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に加入する。 後期高齢者医療制度の自己負担は原則1割であり、現役世代と同程度の所得がある者(現役並み所得者)に限って3割となる。本問は「現役並み所得のない」と条件を付けているので、原則どおり1割が答えとなる。
年齢・所得別の自己負担割合(現行)
・義務教育就学前(おおむね6歳未満):2割 ・義務教育就学後〜69歳:3割 ・70〜74歳:2割(現役並み所得者は3割) ・75歳以上:1割(一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割) なお、自己負担には月ごとの上限額を定めた高額療養費制度があり、高齢者では上限額が低めに設定されている。
一定以上所得者の2割負担について
2022年10月以降、75歳以上のうち、現役並み所得者には該当しないが一定の所得基準を超える者(一定以上所得者)は2割負担となった。本問は「現役並み所得のない」とのみ条件を付しており、一定以上所得者に当たるかどうかは示されていない。したがって、後期高齢者医療制度の原則(一般所得者)である1割を答えるのが妥当である。
選択肢考察
- ×a. なし
現行制度では75歳以上でも窓口負担はある。かつて1973年1月に老人医療費支給制度(いわゆる老人医療費無料化)が始まり、70歳以上の者の自己負担が実質的に無料とされた時期があった。しかし受診の急増と医療費の膨張を招き、1983年2月の老人保健法施行によって一部負担(定額制)が導入され、無料化は終了した。
- ○b. 1 割
75歳以上の者は後期高齢者医療制度の被保険者となり、その自己負担は原則1割である。現役並み所得者は3割となるが、本問はその場合を除外しているので、原則である1割が該当する。高齢者は受診頻度が高く収入が年金中心であることが多いため、現役世代より負担割合が低く設定されている。なお2022年10月以降は、現役並み所得には満たないが一定以上の所得がある者は2割となるが、これは原則に対する例外区分である。
- ×c. 2 割
2割負担となるのは、義務教育就学前の小児と、70〜74歳の者(現役並み所得者を除く)である。75歳以上では、一定以上の所得がある者が2割負担となる(2022年10月〜)が、一般所得者の原則は1割である。本問は所得区分として「現役並み所得のない」とだけ示しており、原則の負担割合を問うているので2割は該当しない。
- ×d. 3 割
3割負担は、義務教育就学後から69歳までの者と、70歳以上で現役並み所得がある者に適用される。本問は「現役並み所得のない」75歳以上の者を対象としているので3割にはならない。
- ×e. 5 割
現行制度に5割負担の区分はない。かつて被用者保険(健康保険など)の被扶養者(家族)の給付率は5割で、自己負担が5割であった時代がある。1973年の改正で家族給付率が7割に引き上げられ、この5割負担はなくなった。
高齢者医療制度の変遷
・1973年1月:老人医療費支給制度により、70歳以上の自己負担が実質無料となる。 ・1983年2月:老人保健法施行。70歳以上の者に定額の一部負担を導入(外来は1か月400円、入院は1日300円で2か月を限度)。その後、定額は数回引き上げられた。 ・2002年10月:老人医療の自己負担が原則1割の定率制となる。あわせて老人保健の対象年齢が70歳から75歳へ、5年かけて段階的に引き上げられた。 ・2008年4月:老人保健制度に代わり後期高齢者医療制度が発足。75歳以上を対象とし、運営主体は都道府県ごとに全市町村が加入する後期高齢者医療広域連合である。 ・2014年4月以降:70〜74歳の負担が、新たに70歳になる者から順に1割(特例措置)から本来の2割へ移行した。 ・2022年10月:75歳以上で一定以上の所得がある者の負担が2割となる。
後期高齢者医療制度の財源
医療給付費(自己負担を除く部分)のおよそ5割を公費(国:都道府県:市町村=4:1:1)、約4割を現役世代の保険からの支援金(後期高齢者支援金)、約1割を後期高齢者自身の保険料でまかなう。保険料は原則として年金から天引き(特別徴収)される。
POINT
・75歳以上は後期高齢者医療制度に加入し、自己負担は原則1割(現役並み所得者は3割)。 ・2022年10月から、75歳以上で一定以上の所得がある者は2割。 ・70〜74歳は2割、義務教育就学前は2割、それ以外(就学後〜69歳)は3割。 ・1973年の老人医療費無料化は1983年の老人保健法で終了した。
