StudyMed医師国家試験

75歳からの窓口負担は何割?―後期高齢者医療制度と自己負担のしくみ

第112回医師国家試験 E問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第112回 E問題 第16問

現役並み所得のない75歳以上の者の医療費の一部負担(自己負担)割合はどれか。

  1. a.なし
  2. b.1 割
  3. c.2 割
  4. d.3 割
  5. e.5 割

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療保険制度の基本、75歳以上の人が医療機関の窓口で払う自己負担の割合を問う問題だ。年齢と所得で負担割合がどう変わるか、そして75歳で何が切り替わるのかを押さえよう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で表を見た記憶はあるんですが、何歳で何割だったかが混ざってしまいます。
ドクタードクター
まず75歳という区切りから。75歳になると、それまで入っていた健康保険や国民健康保険を離れて、後期高齢者医療制度に加入する。2008年に老人保健制度に代わってできた制度で、一定の障害があると認定された65〜74歳も対象になる。
医学生医学生
運営しているのは市町村ですか。
ドクタードクター
都道府県ごとに全市町村が加入する後期高齢者医療広域連合が運営主体だ。この制度の自己負担は原則1割で、現役並みの所得がある人だけが3割になる。問題文は現役並み所得を除外しているから、原則どおり1割が答えになる。
医学生医学生
高齢者は負担が軽いんですね。でも「なし」、つまり無料の時代もあったと聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく知っているね。1973年に老人医療費支給制度が始まって、70歳以上の自己負担が実質無料になった。ところが受診が急増して医療費が膨らみ、1983年の老人保健法で定額の一部負担が導入されて無料化は終わったんだ。現行制度では75歳以上でも窓口負担はある。
医学生医学生
2割はどの年代でしたっけ。70代前半だった気がします。
ドクタードクター
正解。70〜74歳は2割で、現役並み所得者は3割。もう一つ、義務教育就学前の子どもも2割だ。それ以外の、就学後から69歳までが3割。年齢で並べると、子ども2割、現役3割、70代前半2割、75歳以上1割、と覚えるといい。
医学生医学生
5割負担というのは、昔の制度ですか。
ドクタードクター
そう。かつて被用者保険の被扶養者、つまり家族の給付率が5割で、自己負担も5割だった時代がある。1973年の改正で家族の給付率が7割に引き上げられて、この区分はなくなった。現行制度に5割負担はないよ。
医学生医学生
整理すると、75歳以上は原則1割、現役並み所得なら3割、ですね。
ドクタードクター
その通り。ただ、2022年10月からは、現役並みには届かないけれど一定以上の所得がある75歳以上の人が2割負担になった。つまり75歳以上は、1割、2割、3割の3区分だ。本問は原則である一般所得者の負担を問うているから、答えは1割でいい。
医学生医学生
臨床実習で総合内科を回ったとき、患者さんが「来月から2割になるから受診を減らそうかな」と話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
負担割合は受診行動に直結するから、医師としても知っておく価値があるね。そこで大事なのが高額療養費制度だ。1か月の自己負担に上限があって、高齢者では上限額が低めに設定されている。入院や高額な治療のときに案内できると、患者さんの安心につながる。
医学生医学生
後期高齢者医療制度の財源はどうなっていますか。
ドクタードクター
自己負担を除く給付費のおよそ5割が公費で、国、都道府県、市町村が4対1対1で出す。約4割が現役世代の保険からの後期高齢者支援金、残り約1割が後期高齢者自身の保険料だ。保険料は原則として年金から天引きされる。
医学生医学生
高齢者の医療費を、現役世代の支援でかなり支えているんですね。
ドクタードクター
そう、世代間で支え合うしくみなんだ。制度は改正が続く分野だから、最新の区分を確認する習慣をつけておこう。

まとめ

75歳以上(一定の障害がある65〜74歳を含む)の者は後期高齢者医療制度に加入し、医療費の自己負担は原則1割、現役並み所得者は3割で、2022年10月からは一定以上の所得がある者が2割となりました。年齢別には、義務教育就学前が2割、就学後〜69歳が3割、70〜74歳が2割(現役並み所得者は3割)です。1973年の老人医療費無料化は1983年の老人保健法で終了し、かつての被扶養者5割負担も現存しません。制度の財源は公費約5割、現役世代からの支援金約4割、高齢者の保険料約1割で、自己負担には高額療養費制度による月ごとの上限があります。負担割合は患者の受診行動に影響するため、制度の基本を理解しておくことは臨床でも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

問われていること

75歳以上の者が医療機関を受診した際に窓口で支払う一部負担金(自己負担)の割合を問う問題である。

考え方

日本の公的医療保険では、医療費のうち患者が窓口で負担する割合が年齢と所得によって決められている。75歳以上(一定の障害があると認定された65〜74歳を含む)の者は、それまで加入していた健康保険や国民健康保険を離れ、2008年に創設された後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に加入する。 後期高齢者医療制度の自己負担は原則1割であり、現役世代と同程度の所得がある者(現役並み所得者)に限って3割となる。本問は「現役並み所得のない」と条件を付けているので、原則どおり1割が答えとなる。

年齢・所得別の自己負担割合(現行)

・義務教育就学前(おおむね6歳未満):2割 ・義務教育就学後〜69歳:3割 ・70〜74歳:2割(現役並み所得者は3割) ・75歳以上:1割(一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割) なお、自己負担には月ごとの上限額を定めた高額療養費制度があり、高齢者では上限額が低めに設定されている。

一定以上所得者の2割負担について

2022年10月以降、75歳以上のうち、現役並み所得者には該当しないが一定の所得基準を超える者(一定以上所得者)は2割負担となった。本問は「現役並み所得のない」とのみ条件を付しており、一定以上所得者に当たるかどうかは示されていない。したがって、後期高齢者医療制度の原則(一般所得者)である1割を答えるのが妥当である。

選択肢考察

  1. ×a.  なし

    現行制度では75歳以上でも窓口負担はある。かつて1973年1月に老人医療費支給制度(いわゆる老人医療費無料化)が始まり、70歳以上の者の自己負担が実質的に無料とされた時期があった。しかし受診の急増と医療費の膨張を招き、1983年2月の老人保健法施行によって一部負担(定額制)が導入され、無料化は終了した。

  2. ○b.  1 割

    75歳以上の者は後期高齢者医療制度の被保険者となり、その自己負担は原則1割である。現役並み所得者は3割となるが、本問はその場合を除外しているので、原則である1割が該当する。高齢者は受診頻度が高く収入が年金中心であることが多いため、現役世代より負担割合が低く設定されている。なお2022年10月以降は、現役並み所得には満たないが一定以上の所得がある者は2割となるが、これは原則に対する例外区分である。

  3. ×c.  2 割

    2割負担となるのは、義務教育就学前の小児と、70〜74歳の者(現役並み所得者を除く)である。75歳以上では、一定以上の所得がある者が2割負担となる(2022年10月〜)が、一般所得者の原則は1割である。本問は所得区分として「現役並み所得のない」とだけ示しており、原則の負担割合を問うているので2割は該当しない。

  4. ×d.  3 割

    3割負担は、義務教育就学後から69歳までの者と、70歳以上で現役並み所得がある者に適用される。本問は「現役並み所得のない」75歳以上の者を対象としているので3割にはならない。

  5. ×e.  5 割

    現行制度に5割負担の区分はない。かつて被用者保険(健康保険など)の被扶養者(家族)の給付率は5割で、自己負担が5割であった時代がある。1973年の改正で家族給付率が7割に引き上げられ、この5割負担はなくなった。

高齢者医療制度の変遷

・1973年1月:老人医療費支給制度により、70歳以上の自己負担が実質無料となる。 ・1983年2月:老人保健法施行。70歳以上の者に定額の一部負担を導入(外来は1か月400円、入院は1日300円で2か月を限度)。その後、定額は数回引き上げられた。 ・2002年10月:老人医療の自己負担が原則1割の定率制となる。あわせて老人保健の対象年齢が70歳から75歳へ、5年かけて段階的に引き上げられた。 ・2008年4月:老人保健制度に代わり後期高齢者医療制度が発足。75歳以上を対象とし、運営主体は都道府県ごとに全市町村が加入する後期高齢者医療広域連合である。 ・2014年4月以降:70〜74歳の負担が、新たに70歳になる者から順に1割(特例措置)から本来の2割へ移行した。 ・2022年10月:75歳以上で一定以上の所得がある者の負担が2割となる。

後期高齢者医療制度の財源

医療給付費(自己負担を除く部分)のおよそ5割を公費(国:都道府県:市町村=4:1:1)、約4割を現役世代の保険からの支援金(後期高齢者支援金)、約1割を後期高齢者自身の保険料でまかなう。保険料は原則として年金から天引き(特別徴収)される。

POINT

・75歳以上は後期高齢者医療制度に加入し、自己負担は原則1割(現役並み所得者は3割)。 ・2022年10月から、75歳以上で一定以上の所得がある者は2割。 ・70〜74歳は2割、義務教育就学前は2割、それ以外(就学後〜69歳)は3割。 ・1973年の老人医療費無料化は1983年の老人保健法で終了した。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。