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二股に分かれたら左、溝をたどれば名前がわかる―冠動脈3D-CTで回旋枝を見つける

第112回医師国家試験 C問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第7問

冠動脈の造影3D-CT(①~⑤)を別に示す。  左冠動脈回旋枝はどれか。

第112回 C問題 第7問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、冠動脈の造影3D-CTから左冠動脈回旋枝を同定する問題だ。立体画像は一見複雑に見えるけれど、見るべきは「どこから起始しているか」「どう分岐するか」「どの溝を走っているか」の3点だけ。この順番で読めば、迷わずに名前をつけられるよ。
医学生医学生
正直、3D-CTを見ると血管が全部同じに見えてしまいます。循環器内科を回ったときもカテ画像についていけませんでした。
ドクタードクター
最初はみんなそうだよ。まずは大動脈基部、バルサルバ洞から出る2本の冠動脈を探そう。右冠動脈洞から出る右冠動脈は、大きく二股に分かれずに、右房室間溝に沿って心臓の右側を回り込みながら細い枝を出していく。一方、左冠動脈洞から出る左冠動脈は、短い主幹部を経てすぐに2本に分かれるんだ。
医学生医学生
すぐ二股に分かれるのが左、そのまま回り込むのが右、ということですね。では、この画像で右側を回っている血管が右冠動脈でしょうか。
ドクタードクター
その通り。右房室間溝を走るその血管が右冠動脈だ。右心室や左室下壁、多くの人で房室結節にも血流を送っている。そして左冠動脈洞から出て、短い距離で分岐する太い血管が左冠動脈主幹部。
医学生医学生
主幹部は解剖実習でも短くて驚いた記憶があります。ここが詰まると危ないんですよね。
ドクタードクター
そう。主幹部は左心室の広い範囲を灌流するから、高度狭窄や閉塞が起きると広範な虚血になり、致死的になりやすい。では、主幹部から分かれた2本をどう見分けるか。ここが本題だ。
医学生医学生
前に向かって下りていくのが前下行枝で、横に回るのが回旋枝、という理解で合っていますか。
ドクタードクター
合っている。前下行枝は左右の心室の前面の境である前室間溝を、心尖部に向かって下行する。回旋枝は左房室間溝に沿って、心臓の左側から後面へ回り込んでいく。名前の通り「回る」枝なんだ。この画像でいえば、主幹部から分かれて左後方へ回っていく血管が回旋枝になる。
医学生医学生
前下行枝から斜めに出ている枝もあって、それも回旋枝に見えてしまいそうです。
ドクタードクター
よくある引っかけだね。前下行枝から左室前側壁へ斜めに向かう枝は対角枝で、あくまで前下行枝の枝だ。根元をたどって、主幹部から直接分かれているのか、前下行枝から出ているのかを確認するのが大切。今回の画像では、前下行枝から出る2本目の対角枝と考えられる血管が描出されている。
医学生医学生
枝の根元を必ず確認する、ですね。前室間溝を下りる血管が前下行枝、その途中から出るのが対角枝、主幹部から左後方へ回るのが回旋枝、右側を回るのが右冠動脈、と整理できました。
ドクタードクター
完璧だ。回旋枝は左室側壁・後壁を灌流していて、途中で左室側壁へ向かう鈍縁枝や後側壁枝を出す。ただ今回の画像では、それらの細い枝ははっきりとは描出されていないね。
医学生医学生
灌流域がわかると、心電図との対応も考えやすくなりそうです。CBTの勉強でも誘導と責任血管の対応はよく出ました。
ドクタードクター
いい結びつけ方だ。目安として、前下行枝の病変はV1〜V4の前壁中隔、回旋枝はI・aVL・V5・V6の側壁や後壁、右冠動脈はII・III・aVFの下壁に変化が出やすい。右冠動脈の閉塞では、房室結節の虚血で房室ブロックを伴いやすいことも覚えておこう。回旋枝の梗塞は心電図変化が目立ちにくいことがあるので、臨床では見逃しに注意が必要だ。
医学生医学生
カテ室で先生方が「シャープ6」などと番号で呼んでいたのは何ですか。
ドクタードクター
それはAHA分類の区域番号だね。右冠動脈が1〜4、主幹部が5、前下行枝が6〜8で、第1対角枝が9、第2対角枝が10、回旋枝が11〜15。冠動脈造影やCTの報告書はこの番号で書かれるから、実習や研修ですぐに役立つよ。それから冠動脈CTは非侵襲的に狭窄や石灰化、走行異常を評価でき、特に陰性的中率が高いので、冠動脈疾患を除外したいときに有用な検査なんだ。

まとめ

冠動脈3D-CTでは、起始部、分岐の仕方、走行する溝の3点に注目すると血管を同定できます。右冠動脈は右冠動脈洞から起始し、大きく分岐せずに右房室間溝を回り込みます。左冠動脈は短い主幹部からすぐに前下行枝と回旋枝に分かれ、前室間溝を心尖部へ下行するのが前下行枝、左房室間溝に沿って左後方へ回り込むのが回旋枝で、前下行枝から左室前側壁へ斜めに出る対角枝と混同しないよう枝の根元を確認することが重要です。回旋枝は左室側壁・後壁を灌流し、その病変はI・aVL・V5・V6や後壁の変化として現れやすく、AHA分類では11〜15番にあたります。冠動脈の解剖と灌流域を心電図や画像所見と結びつけて理解しておくことは、虚血性心疾患の責任血管の推定やカテーテル検査の理解の土台になります。

解答・解説

正解はcです

冠動脈の造影3D-CT(造影剤を用いたCTで得た画像を立体的に再構成したもの)で、大動脈基部から起始する左右の冠動脈とその主要な分枝を同定する問題である。 読影の手順は次のとおりである。 1.大動脈基部(バルサルバ洞)から起始する2本の冠動脈を探す。右冠動脈洞から出る右冠動脈(RCA)は、大きく二分岐せず、右房室間溝(右心房と右心室の境の溝)に沿って心臓の右側を回り込みながら途中で細い枝を出していく。 2.左冠動脈洞から出る左冠動脈は、短い左冠動脈主幹部(LMT)を経てすぐに2本に分かれる。 3.分かれた2本のうち、前室間溝(左右心室の前面の境の溝)を心尖部に向かって下行するのが前下行枝(LAD)、左房室間溝に沿って心臓の左側から後面へ回り込むのが回旋枝(LCX)である。 4.前下行枝から左室前側壁へ斜めに向かう枝が対角枝である。 この手順に当てはめると、①は右冠動脈、②は左冠動脈主幹部、③は主幹部から分かれて左房室間溝を左後方へ回る左冠動脈回旋枝、④は前下行枝から分岐する対角枝、⑤は前室間溝を下行する前下行枝である。したがって回旋枝は③である。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は右冠動脈洞から起始し、主幹部のような二分岐をせずに右房室間溝を走行する血管であり、右冠動脈である。起始部付近からは円錐枝(右室流出路へ向かう枝)や洞結節枝が出る。右冠動脈は右心室、左室下壁、さらに多くの人で房室結節にも血流を送る。

  2. ×b.  ②

    ②は左冠動脈洞から起始し、短い距離で2本に分岐する太い血管であり、左冠動脈主幹部(LMT)である。主幹部は左心室の広い範囲を灌流するため、ここに高度狭窄・閉塞が起こると広範な心筋虚血となり、致死的になりやすい。

  3. ○c.  ③

    ③は左冠動脈主幹部から分かれた2本のうち、左房室間溝に沿って心臓の左側から後方へ回り込む血管であり、左冠動脈回旋枝(LCX)である。回旋枝は左室側壁・後壁を灌流し、途中で鈍縁枝(左室側壁へ向かう枝)や後側壁枝を出すが、本画像ではこれらの枝ははっきりとは描出されていない。

  4. ×d.  ④

    ④は前下行枝から分岐し、左室前側壁へ斜めに向かう血管であり、対角枝である(前下行枝から出る2本目の対角枝と考えられる)。前下行枝の枝のため、回旋枝ではない。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は左冠動脈主幹部から分かれ、前室間溝を心尖部に向かって下行する血管であり、左冠動脈前下行枝(LAD)である。左室前壁と心室中隔の前方約3分の2(中隔枝による)を灌流し、心筋梗塞の責任血管として最も重要な血管の一つである。

冠動脈の基本構造

・右冠動脈(RCA):右冠動脈洞から起始し右房室間溝を走行する。主な枝は円錐枝、洞結節枝(約60%で右冠動脈から出る)、鋭縁枝、後下行枝、房室結節枝(約90%で右冠動脈から出る)。右心室、左室下壁、心室中隔の後方約3分の1を灌流する。 ・左冠動脈主幹部(LMT):左冠動脈洞から起始し、短い距離で前下行枝と回旋枝に分かれる。 ・左前下行枝(LAD):前室間溝を下行し、対角枝(左室前側壁へ)と中隔枝(心室中隔へ)を出す。左室前壁・心尖部・心室中隔の前方約3分の2を灌流する。 ・左回旋枝(LCX):左房室間溝を左後方へ回り、鈍縁枝・後側壁枝を出す。左室側壁・後壁を灌流する。

AHA分類(冠動脈の区域番号)

右冠動脈は#1〜#4、左冠動脈主幹部は#5、前下行枝は#6〜#8(第1対角枝#9、第2対角枝#10)、回旋枝は#11〜#15で表す。冠動脈造影やCTの報告で用いられる。

心電図誘導との対応(目安)

前下行枝の病変はV1〜V4(前壁中隔)、回旋枝の病変はI・aVL・V5・V6(側壁)や後壁、右冠動脈の病変はII・III・aVF(下壁)に変化が出やすい。右冠動脈の閉塞では房室結節の虚血による房室ブロックを伴いやすい。

冠動脈CTの意義

冠動脈CTは非侵襲的に冠動脈の狭窄や石灰化、走行異常を評価でき、特に陰性的中率が高いため、冠動脈疾患の除外に有用である。

POINT

・左冠動脈は主幹部(LMT)からすぐに前下行枝(LAD)と回旋枝(LCX)の2本に分かれる。 ・前下行枝は前室間溝を下行し対角枝・中隔枝を出す。回旋枝は左房室間溝を左後方へ回り左室側壁・後壁を灌流する。 ・右冠動脈は大きく二分岐せず右房室間溝を走行し、洞結節・房室結節や左室下壁を灌流することが多い。 ・AHA分類:RCA #1〜4、LMT #5、LAD #6〜10、LCX #11〜15。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。