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要介護度を決めるのは誰?―脳梗塞後の退院支援で見る多職種の役割分担

第112回医師国家試験 C問題 第45問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第45問

72歳の男性。脳梗塞で入院し,急性期治療を終え,現在は回復期病棟でリハビリテーションを行っている。右半身麻痺と嚥下障害が残存しているが,病状が安定してきたので退院を見据えて療養環境を調整することになった。  多職種連携における職種と役割の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.看護師 ―― 吸痰処置の指導
  2. b.薬剤師 ―― 服薬の指導
  3. c.理学療法士 ―― 関節拘縮の予防
  4. d.管理栄養士 ―― 食事の指導
  5. e.ケアマネジャー ―― 介護度の認定

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、脳梗塞の後遺症が残った患者さんの退院支援を題材に、多職種連携でそれぞれの職種が何を担うかを問う問題だ。診断を問う問題ではなく、「その仕事は本当にその職種の役割か」を一つずつ確かめていくのがポイントだよ。
医学生医学生
右片麻痺と嚥下障害が残っているので、在宅に戻るには医療面でも生活面でもいろいろな支援が必要そうですね。
ドクタードクター
その通り。誤嚥や痰への対応、服薬管理といった医療面、拘縮予防や移動・ADLの維持といった機能面、嚥下機能に合った食事という栄養面、そして介護保険サービスを使うための制度面。これらを各専門職が分担し、退院前カンファレンスなどで情報を共有するんだ。まず看護師が吸痰処置を指導する、という組合せはどうかな。
医学生医学生
吸引は医行為なので、家族がやってはいけないのでは、と少し引っかかりました。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。確かに喀痰吸引は医行為だけど、在宅で家族が行うことは認められているんだ。嚥下障害があると唾液や食物の誤嚥で痰が増えやすいから、手技や清潔操作、吸引のタイミング、異常時の対応を本人や家族に教えるのは看護師の重要な役割だよ。だからこれは適切な組合せだ。
医学生医学生
薬剤師の服薬指導は、OSCEの医療面接でも服薬状況を確認する練習をしたので、自然な役割だと思います。
ドクタードクター
そうだね。脳梗塞後は抗血小板薬や抗凝固薬、降圧薬などを長く飲むことが多い。薬剤師は作用・副作用や出血傾向への注意、飲み忘れ対策を説明する。嚥下障害がある人には、錠剤を粉砕してよいか、簡易懸濁法が使えるか、剤形を変えるかといった提案もしてくれる。
医学生医学生
理学療法士の関節拘縮予防も、リハビリ科の実習で麻痺側の関節可動域訓練を見学したので納得です。
ドクタードクター
理学療法士は寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行といった基本的動作の回復・維持を担う専門職だ。麻痺した側は動かさないと関節が固まりやすいから、可動域訓練やポジショニングで拘縮を防ぎ、家族に自主訓練を指導するのも大事な仕事だよ。
医学生医学生
管理栄養士の食事指導も問題なさそうですね。とろみの付け方なんかを教えるイメージです。
ドクタードクター
その通り。言語聴覚士の嚥下評価をふまえて、嚥下調整食の形態やとろみの付け方を具体的に指導する。栄養量の計画や、再発予防のための減塩指導も含まれるね。となると残るのはケアマネジャーと介護度の認定だ。
医学生医学生
ケアマネジャーは介護保険の専門家なので、介護度を決めるのも仕事なのかと思っていました。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だ。要介護度を認定するのは保険者である市町村なんだ。流れとしては、申請を受けた市町村が認定調査を行い、主治医に意見書を依頼する。それをもとにコンピュータで一次判定をして、保健・医療・福祉の専門家でつくる介護認定審査会が二次判定を行い、最終的に市町村が要支援1・2、要介護1〜5、非該当のいずれかを認定する。
医学生医学生
判定するのは介護認定審査会で、認定するのは市町村、と区別して覚えればいいんですね。ではケアマネジャーは何をするんですか。
ドクタードクター
認定された要介護度の範囲で、本人の希望や心身の状態に合わせたケアプランを作り、サービス事業者との連絡・調整をするのが本来の役割だ。認定調査を委託されて行うことはあるけれど、認定そのものはしない。だから誤っている組合せはケアマネジャーと介護度の認定だね。
医学生医学生
主治医意見書は医師が書くんですよね。将来、自分も書くことになるのか。
ドクタードクター
そうだよ。病状や生活機能を具体的に書くことが、適切な認定につながる。もう一つ押さえておきたいのが被保険者の区分だ。65歳以上の第1号被保険者は原因を問わず給付を受けられるけれど、40〜64歳の第2号被保険者は脳血管疾患を含む16の特定疾病が原因の場合に限られる。
医学生医学生
今回の患者さんは72歳なので第1号ですね。若い脳梗塞の患者さんでも、特定疾病に入っているから使えるわけですか。
ドクタードクター
その通り。ほかにも、食事や更衣などの応用的動作を訓練する作業療法士、嚥下や言語の訓練を担う言語聴覚士、制度紹介や経済的な相談に乗る医療ソーシャルワーカーも退院支援の重要なメンバーだ。医師は各職種の専門性を理解したうえで、チームの要として方針をまとめる役割を担うんだよ。

まとめ

脳梗塞後に片麻痺や嚥下障害が残った患者の在宅移行では、看護師による吸引などの医療処置の指導、薬剤師による服薬指導と剤形の工夫、理学療法士による拘縮予防と基本動作訓練、管理栄養士による嚥下調整食や減塩の指導など、多職種がそれぞれの専門性を生かして関わります。要介護度を認定するのは保険者である市町村であり、認定調査と主治医意見書をもとにした一次判定、介護認定審査会による二次判定を経て決まります。ケアマネジャー(介護支援専門員)の役割は、認定された要介護度に基づくケアプランの作成とサービス事業者との連絡調整であり、認定そのものは行いません。介護保険では65歳以上は原因を問わず、40〜64歳は特定疾病が原因の場合に給付対象となる点も合わせて押さえておきましょう。各職種の役割と制度の仕組みを正しく理解することは、医師が主治医意見書を書き、チーム医療の要として退院支援を進めるための基礎になります。

解答・解説

正解はeです

症例の整理

72歳の男性で、脳梗塞の急性期治療を終え、回復期リハビリテーション病棟で訓練中である。右片麻痺と嚥下障害という後遺症が残っているが、全身状態は落ち着いており、自宅などへの退院に向けて生活環境を整える段階にある。診断としては脳梗塞後遺症(右片麻痺・嚥下障害)であり、本問は診断ではなく退院支援に関わる各専門職の役割を問うている。

退院支援と多職種連携

片麻痺と嚥下障害が残る高齢者が在宅へ戻るには、医療面(誤嚥への対応、痰の吸引、服薬管理)、機能面(関節拘縮・廃用の予防、移動・ADL〔日常生活動作〕の維持)、栄養面(嚥下機能に合った食形態や栄養量の確保)、制度面(介護保険サービスの利用)の各方面から支援が必要になる。医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・管理栄養士・医療ソーシャルワーカー・ケアマネジャー(介護支援専門員)などがそれぞれの専門性を生かして関与し、退院前カンファレンスなどで情報を共有する。

設問の考え方

「誤っているもの」を選ぶ問題である。各職種の本来の業務を思い浮かべ、その職種が担う役割として妥当かを判断する。特に介護保険制度では、「要介護度を決める主体(市町村)」と「決まった要介護度に基づいてケアプランを立てる者(ケアマネジャー)」を区別できるかが鍵となる。

選択肢考察

  1. ×a.  看護師 ―― 吸痰処置の指導

    適切な組合せである。嚥下障害がある患者は唾液や食物の誤嚥により痰が増えやすく、在宅でも喀痰吸引が必要になることがある。看護師は吸引の手技や清潔操作、吸引のタイミング、異常時の対応を本人・家族に指導する役割を担う。家族による吸引は医行為であるが、在宅で家族が行うことは認められており、その指導は看護師の重要な業務である。

  2. ×b.  薬剤師 ―― 服薬の指導

    適切な組合せである。脳梗塞後は再発予防のための抗血小板薬や抗凝固薬、降圧薬などを長期に服用することが多い。薬剤師は薬の作用・副作用、飲み忘れへの対策、出血傾向などの注意点を説明する。嚥下障害がある場合は、錠剤の粉砕可否、簡易懸濁法、剤形の変更など、安全に服用できる方法の提案も行う。

  3. ×c.  理学療法士 ―― 関節拘縮の予防

    適切な組合せである。理学療法士は、基本的動作能力(寝返り・起き上がり・立ち上がり・歩行など)の回復・維持を目的に、運動療法や物理療法を行う専門職である。麻痺側は動かさないでいると関節が固まりやすいため、関節可動域訓練やポジショニングによる拘縮予防は理学療法士の代表的な役割であり、家族への自主訓練の指導も担う。

  4. ×d.  管理栄養士 ―― 食事の指導

    適切な組合せである。管理栄養士は栄養状態を評価し、必要エネルギー量や栄養素の配分を考えた食事を計画・指導する。嚥下障害がある患者では、言語聴覚士の嚥下評価をふまえて、とろみの付け方や嚥下調整食の形態などを家族に具体的に指導する。また、脳梗塞の再発予防として減塩などの生活習慣病対策も指導内容に含まれる。

  5. ○e.  ケアマネジャー ―― 介護度の認定

    誤った組合せであり、これが正解である。要介護度(要支援・要介護の区分)を認定するのは保険者である市町村(特別区を含む)である。申請を受けた市町村は認定調査と主治医意見書をもとにコンピュータによる一次判定を行い、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会の二次判定(審査・判定)を経て、市町村が認定する。ケアマネジャー(介護支援専門員)は認定調査を委託されて行うことはあるが、認定そのものを行う立場にはない。ケアマネジャーの本来の役割は、認定された要介護度の範囲内で本人の希望や心身の状態に応じたケアプラン(居宅サービス計画)を作成し、サービス事業者との連絡調整を行うことである。

要介護認定の流れ

1. 本人または家族(代行として地域包括支援センターや居宅介護支援事業者も可)が市町村の窓口に申請する。 2. 市町村の職員などが自宅や病院を訪問して認定調査を行う(指定居宅介護支援事業者などに委託されることもある)。同時に市町村が主治医に主治医意見書を依頼する。 3. 認定調査の結果などをもとにコンピュータで一次判定を行う。 4. 介護認定審査会が一次判定結果、特記事項、主治医意見書をもとに二次判定を行う。 5. 市町村が要支援1・2、要介護1〜5、または非該当(自立)を認定し、本人に通知する。原則として申請から30日以内に結果が出る。

介護保険の被保険者

第1号被保険者は65歳以上で、原因を問わず要介護・要支援状態となれば給付を受けられる。第2号被保険者は40〜64歳の医療保険加入者で、脳血管疾患など16種類の特定疾病が原因の場合に限り給付対象となる。

退院支援に関わる主な職種と役割

・医師:病状評価、治療方針の決定、主治医意見書の作成 ・看護師:療養上の世話と医療処置(吸引、経管栄養など)の指導、退院後の生活の調整 ・薬剤師:服薬指導、剤形の工夫、薬剤管理 ・理学療法士:基本動作の訓練、拘縮予防、住環境(手すり・段差など)への助言 ・作業療法士:食事・更衣・排泄などの応用的動作や家事動作の訓練、福祉用具の選定 ・言語聴覚士:嚥下機能の評価・訓練、失語症・構音障害への対応 ・管理栄養士:栄養評価、嚥下調整食や治療食の指導 ・医療ソーシャルワーカー(MSW):社会制度の紹介、経済的問題や転院・施設入所の相談 ・ケアマネジャー:ケアプラン作成とサービス事業者との連絡調整

POINT

・要介護度を認定するのは市町村であり、判定は介護認定審査会が行う。ケアマネジャーは認定しない。 ・ケアマネジャー(介護支援専門員)の役割はケアプランの作成とサービス調整である。 ・在宅移行には、看護師(吸引などの医療処置指導)、薬剤師(服薬指導)、理学療法士(拘縮予防・動作訓練)、管理栄養士(食事指導)、言語聴覚士(嚥下訓練)など多職種の関与が必要である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。