StudyMed医師国家試験

造影CTの前に必ず見る数値は?―ヨード造影剤の「出口」を確かめよ

第112回医師国家試験 B問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第112回 B問題 第5問

造影CTを施行するにあたり事前に確認すべきこととして最も重要なのはどれか。

  1. a.喫煙歴
  2. b.飲酒歴
  3. c.肝機能
  4. d.腎機能
  5. e.認知機能

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、造影CTの前に何を確認すべきかという、日常診療ですぐに役立つ問題だ。ポイントは、ヨード造影剤が体内でどう処理され、どこから出ていくか。そこから考えると答えは自然に決まるよ。
医学生医学生
選択肢を見ると、肝機能か腎機能かで迷います。薬の代謝といえば肝臓のイメージがあるので。
ドクタードクター
その迷いはよくわかる。でも、ヨード造影剤は水溶性で、体内でほとんど代謝されない。大部分が腎臓の糸球体で濾過されて、そのまま尿中に出ていくんだ。腎機能が正常なら、およそ24時間以内にほぼすべて排泄される。
医学生医学生
薬理学の講義で、水溶性の薬は腎排泄型が多いと習いました。造影剤もそうなんですね。
ドクタードクター
そう。だから「出口」である腎臓が造影剤に耐えられるかどうかが最大の問題になる。正解は腎機能だ。腎機能が低下している人では、造影剤投与後に急性腎障害、いわゆる造影剤腎症が起こりやすい。
医学生医学生
造影剤腎症は、どういう仕組みで起こるんですか。
ドクタードクター
造影剤によって腎血管が収縮して腎髄質が虚血になることと、尿細管上皮への直接的な障害が考えられている。最近は造影剤投与後の急性腎障害、PC-AKIと呼ぶことも多いよ。だから検査前に血清クレアチニンとeGFRを確認するんだ。
医学生医学生
放射線科の実習で、造影検査のオーダーにeGFRの欄があったのを思い出しました。
ドクタードクター
よく見ていたね。日本のガイドラインでは、造影CTでeGFRが30未満の人を予防策が必要な高リスク群としている。その場合は、まず造影が本当に必要か考え直し、使うなら量を減らし、検査前後に生理食塩水などで補液をする。補液がもっとも確立した予防法なんだ。
医学生医学生
では肝機能は全く関係ないということですか。
ドクタードクター
関係ゼロとまでは言えない。添付文書では重篤な肝障害のある患者には注意が必要とされている。ただ、肝臓での代謝や胆汁排泄はごくわずかで、腎機能に比べれば重要度は低い。実際、肝腫瘍の精査のように、肝疾患の人にこそ造影CTを行う場面は多いよね。
医学生医学生
確かに、肝細胞癌の診断ではダイナミックCTが欠かせないですね。喫煙歴や飲酒歴はどうでしょう。
ドクタードクター
喫煙歴は肺癌やCOPD、飲酒歴は肝疾患や膵炎の評価に大切な病歴だ。でも、造影剤の排泄や副作用の起こりやすさを左右する因子ではないから、造影の可否判断には使わない。認知機能も、息止めや安静が保てないと画質に影響することはあるけれど、造影剤の安全性とは直接関係しない。
医学生医学生
「造影剤の安全性に直接関わるか」という軸で見れば、腎機能だけが残るんですね。
ドクタードクター
その通り。ここからは臨床で一緒に確認すべきことを挙げておこう。まず、以前に造影剤で副作用が出たことがあるか、気管支喘息があるか。即時型副作用のリスクが上がるからね。
医学生医学生
CBTの勉強で、メトホルミンと造影剤の組み合わせにも注意と覚えました。
ドクタードクター
いいね。メトホルミンを飲んでいる人で造影剤腎症が起きて腎機能が落ちると、乳酸アシドーシスを起こすおそれがある。だからeGFRに応じて検査前後の一時休薬を考える。ほかにも甲状腺機能亢進症はヨウ素負荷で悪化しうるし、多発性骨髄腫、脱水、NSAIDsの併用なども腎障害のリスクを高める。
医学生医学生
MRIのガドリニウム造影剤なら腎機能は気にしなくていいんですか。
ドクタードクター
そこも大事な点だ。ガドリニウム造影剤も腎臓から排泄され、高度の腎機能低下では腎性全身性線維症を起こすことがある。だからMRIの造影でも腎機能の確認は欠かせないよ。
医学生医学生
造影剤を使う前は、種類を問わずまず腎機能を見る、と覚えておきます。
ドクタードクター
それでいい。オーダーを出す前にクレアチニンとeGFRを確認する習慣が、研修医になってから患者さんを守るんだ。

まとめ

造影CTで用いるヨード造影剤はほとんど代謝されず、大部分が腎臓から尿中に排泄されるため、事前確認で最も重要なのは腎機能(血清クレアチニン、eGFR)です。腎機能低下は造影剤腎症(造影剤投与後の急性腎障害)の最大の危険因子で、国内ガイドラインでは造影CTでeGFR 30未満を高リスクとし、造影の必要性の再検討、造影剤の減量、検査前後の補液で予防します。肝機能は主な排泄経路ではないため重要度は低く、喫煙歴・飲酒歴・認知機能は造影剤の安全性に直接関わりません。あわせて造影剤の副作用歴、気管支喘息、メトホルミン服用、甲状腺機能亢進症なども確認が必要で、MRIのガドリニウム造影剤でも腎機能の評価は欠かせません。「薬の出口を確かめる」という考え方は、造影検査に限らず安全な薬物投与の基本となります。

解答・解説

正解はdです

造影CTでは、ヨード造影剤(ヨウ素を含む水溶性の造影剤)を静脈内に投与する。ヨード造影剤はほとんど代謝されず、大部分が腎臓の糸球体で濾過されて、そのまま尿中に排泄される(腎機能が正常なら約24時間以内にほぼすべて排泄される)。 このため、造影CTの前に確認すべき事項は「造影剤の排泄経路である腎臓が耐えられるか」と「造影剤に対して危険な反応を起こしやすい背景がないか」の2点に集約される。 ・腎機能:腎機能が低下した患者では、造影剤投与後に急性腎障害(造影剤腎症)が起こりやすい。検査前に血清クレアチニン(Cr)値と推算糸球体濾過量(eGFR)で評価する。 ・副作用歴・アレルギー歴:以前の造影剤副作用、気管支喘息など。 ・併用薬・基礎疾患:ビグアナイド系糖尿病薬(メトホルミン)の服用、甲状腺疾患、多発性骨髄腫、脱水など。 選択肢の中で、造影剤の安全性に直接関わり、事前の検査値確認が必須とされているのは腎機能である。

選択肢考察

  1. ×a.  喫煙歴

    喫煙歴は、肺癌や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの危険因子として病歴聴取に欠かせない情報である。しかし、造影剤の排泄や副作用の起こりやすさを左右する因子ではなく、造影CTの可否判断に用いる項目ではない。

  2. ×b.  飲酒歴

    飲酒歴は、肝疾患や膵炎などの評価には重要である。しかし、造影剤の安全な投与のために事前確認が求められる項目ではない。

  3. ×c.  肝機能

    ヨード造影剤は主に腎臓から排泄され、肝臓での代謝や胆汁中への排泄はごくわずかである。添付文書では重篤な肝障害のある患者は投与に注意を要するとされているが、肝機能障害が造影剤投与の大きな障害となることは少ない。実臨床でも、肝腫瘍の精査など、肝疾患患者に造影CTを行う場面はむしろ多い。腎機能と比べれば、事前確認の重要度は低い。

  4. ○d.  腎機能

    ヨード造影剤はほぼ全量が腎臓から排泄されるため、腎機能低下例では急性腎障害(造影剤腎症)の危険が高まる。機序として、造影剤による腎血管の収縮で生じる腎髄質の虚血と、尿細管上皮への直接的な障害が考えられている。検査前に血清Cr値とeGFRを確認し、腎機能低下例では造影剤の必要性の再検討、使用量の削減、検査前後の輸液(生理食塩水などによる補液)といった予防策を講じる。したがって最も重要な確認事項である。

  5. ×e.  認知機能

    認知機能が低下していると、息止めや安静保持などの指示に従いにくく、画像の質に影響することはある。しかし、造影剤の安全性に直接関わる因子ではなく、事前確認として最も重要な項目ではない。

造影剤腎症(CIN:contrast-induced nephropathy)

・ヨード造影剤投与後に生じる急性腎障害である。近年は「造影剤投与後の急性腎障害(PC-AKI:post-contrast acute kidney injury)」と呼ぶことも多い。 ・従来は「造影剤投与後72時間以内に、血清Cr値が前値から0.5mg/dL以上または25%以上上昇したもの」と定義されてきた。現在は、KDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)の急性腎障害の診断基準を用いることが推奨されている。 ・多くは非乏尿性で、血清Cr値は3〜5日程度でピークに達し、1〜3週間で前値近くに戻ることが多い。ただし、一部は透析を要したり、腎機能が回復しなかったりする。 ・危険因子:腎機能低下(最大の危険因子)、糖尿病(特に腎機能低下を伴う場合)、高齢、脱水、心不全、多発性骨髄腫、腎毒性のある薬剤(非ステロイド性抗炎症薬[NSAIDs]など)の併用、大量または短期間での反復投与など。 ・日本の「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」では、造影CT(経静脈投与)でeGFR 30mL/分/1.73m²未満の患者を、予防策を講じるべき高リスク群としている。 ・予防:最も確立しているのは検査前後の補液(生理食塩水または重炭酸ナトリウム液)である。N-アセチルシステインの予防効果は確立していない。また、造影剤投与後の予防的血液透析は推奨されない。

その他の事前確認事項

・ヨード造影剤による副作用歴、気管支喘息の有無(即時型副作用のリスクが上がる)。 ・メトホルミン(ビグアナイド系薬)服用の有無:造影剤腎症で腎機能が悪化すると乳酸アシドーシスを起こすおそれがある。このため、eGFRに応じて検査前後の一時休薬を検討する。 ・甲状腺機能亢進症:大量のヨウ素負荷で症状が悪化しうる。 ・妊娠の有無(放射線被曝の観点)。

参考:MRI造影剤との違い

ガドリニウム造影剤も腎臓から排泄され、高度の腎機能低下例では腎性全身性線維症(NSF)を起こしうる。このため、MRI造影でも腎機能の確認が必要である。

POINT

・ヨード造影剤はほぼ全量が腎臓から排泄されるため、造影CT前には腎機能(血清Cr値、eGFR)の確認が必須である。 ・造影剤腎症の最大の危険因子は既存の腎機能低下で、糖尿病・脱水・高齢・腎毒性薬剤の併用なども危険因子となる。 ・予防の基本は補液であり、メトホルミン服用者では休薬を検討する。 ・副作用歴・喘息の有無などのアレルギー関連の確認も重要である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。