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白く光るのは「水」だけ―膝MRIのT2強調像で組織を見分けるコツ

第118回医師国家試験 B問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第118回 B問題 第7問

膝関節MRIのT2強調像で筋肉より高信号になるのはどれか。

  1. a.腱
  2. b.靱帯
  3. c.関節液
  4. d.骨皮質
  5. e.半月板

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は膝関節MRIの基本的な読影の問題だ。ポイントは「T2強調像で何が白く写るのか」という原理を、膝を構成する組織に当てはめられるかどうか。まずはT2強調像の特徴から確認しよう。
医学生医学生
放射線医学の講義で「T2は水が白い」と習った記憶はあります。でも、なぜそうなるのかまでは曖昧です。
ドクタードクター
MRIの信号は、組織中の水素原子核、主に水と脂肪のプロトンの量と、その緩和時間で決まる。T2強調像では、T2緩和時間の長い組織、つまり自由に動ける水を多く含む組織ほど高信号、白く写るんだ。
医学生医学生
ということは、水分が多い組織を選べばいいんですね。腱や靱帯も生きた組織なので、ある程度水を含んでいそうですが……。
ドクタードクター
そこが大事なところ。腱・靱帯・半月板は密なコラーゲン線維でできていて、含まれる水の多くは線維に結合している。だからT2緩和時間が極端に短く、T1強調像でもT2強調像でもほぼ真っ黒に近い低信号になる。
医学生医学生
組織学実習で見た腱は、コラーゲン線維がぎっしり平行に並んでいて、細胞がほとんどありませんでした。あれが黒く写る理由なんですね。
ドクタードクター
その通り。半月板も線維軟骨でコラーゲンが豊富だから同様に低信号だ。矢状断では内側・外側半月板の前節と後節が黒い三角形として見えるのが正常像なんだよ。
医学生医学生
骨皮質はどうでしょう。骨なら硬いので黒そうですが、骨髄は白く見えた気がします。
ドクタードクター
鋭いね。骨皮質はハイドロキシアパタイトなどの無機成分が主体で、信号を出す動けるプロトンがほとんどないから、どの撮像法でも黒い線として写る。一方、骨髄は脂肪に富むので、通常のT1強調像では高信号になる。同じ「骨」でも皮質と髄で見え方が違うんだ。
医学生医学生
そうすると、残るのは関節液ですね。滑液はほとんど水なので、T2強調像で筋肉より白く見える、と。
ドクタードクター
正解。関節液はほぼ自由水そのもので、T2強調像では筋肉より明らかに高信号、逆にT1強調像では筋肉より低信号になる。骨格筋はちょうど中間くらいの信号だから、比較の基準として使いやすいんだ。
医学生医学生
腱・靱帯・半月板・骨皮質は「水が少なくて黒い」、関節液は「水そのもので白い」と整理すればいいんですね。
ドクタードクター
そう。そしてこの知識は、そのまま病変の読み方につながる。本来黒いはずの構造の中に白い信号が出てきたら、そこに水、つまり浮腫や出血、断裂部に入り込んだ液体などがあるサインなんだ。
医学生医学生
整形外科の臨床実習で、前十字靱帯損傷の患者さんのMRIを見せてもらいました。靱帯の連続性が途切れて、白っぽく写っていました。
ドクタードクター
まさにそれ。前十字靱帯損傷では線維の途絶やT2高信号に加え、大腿骨外側顆と脛骨後外側に骨挫傷を伴いやすい。半月板では、低信号の中に関節面へ達する線状の高信号があれば断裂を示唆し、関節面に達しないものは加齢による変性を反映することが多いんだ。
医学生医学生
骨挫傷のような骨髄の変化は、骨髄の脂肪も白く写ると見分けにくくないですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。だから骨髄浮腫を見るときは、脂肪の信号を抑えた脂肪抑制T2強調像やSTIR法を使う。そうすると水だけが白く浮かび上がる。ほかにも関節水腫や膝窩部のBaker嚢腫も、T2強調像で高信号の液体貯留として見つけられるよ。
医学生医学生
T2強調像は病変探し、T1強調像は解剖の把握、と使い分けるイメージですね。
ドクタードクター
その理解で十分だ。なお、T2強調像で低信号になるものとしては、線維組織や骨皮質のほか、石灰化、ヘモジデリン沈着、空気、流れの速い血管のflow voidなども覚えておくと、全身の読影に応用できるよ。

まとめ

MRIのT2強調像では、自由水を多く含みT2緩和時間の長い組織が高信号に描出されるため、膝関節ではほぼ水である関節液が筋肉より高信号となります。腱・靱帯・半月板は密なコラーゲン線維から成り、骨皮質は無機成分が主体で可動性プロトンが乏しいため、T1・T2強調像ともに筋肉より低信号です。本来低信号であるこれらの構造の内部にT2高信号が現れることは、靱帯損傷や半月板断裂などの重要な手がかりとなり、骨髄浮腫の評価には脂肪抑制T2強調像やSTIR法が有用です。「水が多いほどT2で白い」という原理を組織の成り立ちと結びつけて理解することは、膝に限らず全身のMRI読影の基礎になります。

解答・解説

正解はcです

MRI(磁気共鳴画像)の信号強度は、組織に含まれる水素原子核(主に水と脂肪のプロトン)の量と、その緩和時間(T1・T2)によって決まる。T2強調像では、T2緩和時間の長い組織、すなわち自由に動ける水を多く含む組織ほど白く(高信号に)描出される。 膝関節を構成する組織を水分量の観点から整理すると、関節液はほぼ自由水そのものであり、T2強調像で著明な高信号を示す。一方、腱・靱帯・半月板は密なコラーゲン線維から成り、含まれる水の多くが線維に結合してT2緩和時間が極端に短いため、どの撮像法でもほぼ無信号(黒)に近い。骨皮質もリン酸カルシウムを主体とする硬組織で可動性のプロトンが乏しく、同様に低信号である。骨格筋はこれらの中間程度の信号を示すため、筋肉より高信号となるのは関節液のみである。 設問は「T2強調像で何が白く見えるか」を問うており、各組織の水分量と線維成分の多寡を思い浮かべれば正解に至る。

選択肢考察

  1. ×a.  腱

    誤り。腱は規則正しく密に配列したⅠ型コラーゲン線維から成り、自由水が少ないためT2緩和時間が非常に短い。そのためT2強調像でもT1強調像でも筋肉より低信号(ほぼ黒)に描出される。膝蓋腱や大腿四頭筋腱が正常で均一な低信号を示すことが診断の基本であり、腱内に高信号が出現すれば断裂や腱症(変性)を疑う所見となる。

  2. ×b.  靱帯

    誤り。靱帯も腱と同様に密なコラーゲン線維で構成されるため、T2強調像で筋肉より低信号を示す。前十字靱帯(ACL)・後十字靱帯(PCL)・内側側副靱帯(MCL)などは正常では帯状の低信号構造として描出され、損傷時には線維の連続性の途絶や、浮腫・出血を反映したT2高信号が出現する。なおACLは正常でも線維束の間に脂肪や滑膜を挟むため、PCLよりやや不均一に見えることがある。

  3. ○c.  関節液

    正しい。関節液(滑液)は大部分が水であり、T2緩和時間が長いため、T2強調像で筋肉より明らかに高信号(白)に描出される。逆にT1強調像では筋肉より低信号となる。関節水腫や関節血症、膝窩部のベーカー嚢腫(滑液包が膨らんだもの)などはT2強調像で高信号の液体貯留として認められ、関節内病変の存在を知る手がかりとなる。

  4. ×d.  骨皮質

    誤り。骨皮質はハイドロキシアパタイトなどの無機成分に富み、MRIで信号を出す可動性のプロトンがほとんど存在しない。そのためT1強調像・T2強調像のいずれでも筋肉より低信号(無信号に近い黒い線)として描出される。なお骨の内部にある骨髄は脂肪を多く含むため、通常のT1強調像では高信号を示し、骨皮質とは見え方が異なる。

  5. ×e.  半月板

    誤り。半月板は線維軟骨から成り、コラーゲン線維が豊富で自由水が少ないため、すべての撮像法で筋肉より低信号を示す。矢状断では内側・外側半月板の前節・後節が黒い三角形(蝶ネクタイ状)に見えるのが正常像である。半月板内部に関節面へ達する線状の高信号を認めれば半月板損傷(断裂)を示唆し、関節面に達しない高信号は加齢に伴う変性を反映することが多い。

T1強調像とT2強調像の基本

T1強調像は解剖学的構造の把握に適し、脂肪が高信号、水(関節液・脳脊髄液・尿など)が低信号を示す。T2強調像は病変の検出に適し、水が高信号を示す。浮腫・炎症・嚢胞・多くの腫瘍は水分が増えるためT2強調像で高信号となる。

T2強調像で低信号を示す主なもの

・線維成分に富み水分の少ない組織:腱、靱帯、半月板、線維化・瘢痕 ・骨皮質、石灰化 ・ヘモジデリン沈着、メラニン、アミロイドなど ・空気、血流の速い血管(flow void:流れによる信号欠損)

膝関節MRIでみる主な病変

・前十字靱帯損傷:靱帯の連続性の途絶、走行異常、T2高信号。大腿骨外側顆と脛骨後外側の骨挫傷(骨髄浮腫)を伴いやすい。 ・半月板損傷:低信号の半月板内に、関節面に達する高信号の線状影。 ・関節水腫:T2強調像で高信号の液体貯留が関節包・膝蓋上包に広がる。 骨髄浮腫や骨挫傷は、脂肪の信号を抑制した脂肪抑制T2強調像やSTIR法で高信号として描出しやすい。

POINT

・T2強調像で高信号=水が多い(関節液、嚢胞、浮腫、炎症)。 ・腱・靱帯・半月板・骨皮質は水分が少なく、T1・T2強調像ともに低信号。 ・膝MRIでは、本来低信号の腱・靱帯・半月板内に高信号が出現することが損傷の手がかりとなる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。