鼻カニューラで50%は出ない―酸素流量とFIO2の「目安」を使いこなす
第112回医師国家試験 B問題 第11問
国試問題にチャレンジ
酸素投与法,酸素流量と想定される吸入酸素濃度の組合せで正しいのはどれか。
- a.鼻カニューラ2L/分 ―― 20%
- b.鼻カニューラ4L/分 ―― 50%
- c.マスク6L/分 ―― 80%
- d.リザーバー付きマスク7L/分 ―― 50%
- e.リザーバー付きマスク10L/分 ―― 90%以上
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
室内気の酸素濃度は約21%で、鼻カニューラは1L/分ごとに約4%上昇(2L/分で約28%、4L/分で約36%)し通常6L/分まで、簡易酸素マスクは5L/分以上で使用して約40〜60%、リザーバー付きマスクは6L/分以上で使用して6L/分で約60%、1L/分ごとに約10%上昇し10L/分で90%以上が目安です。したがって、リザーバー付きマスク10L/分で90%以上という組合せが正しく、鼻カニューラで50%や簡易マスクで80%は到達しえない値です。これらは低流量システムであり、FIO2は患者の1回換気量や呼吸数で変動するため、濃度を一定に保ちたい場合(CO2ナルコーシスのリスクがあるCOPDなど)はベンチュリーマスクや高流量鼻カニューラなどの高流量システムを選びます。臨床ではSpO2や血液ガスで効果を確認しながら器具と流量を選ぶことが重要で、この目安は救急や病棟での初期対応の基本知識となります。
解答・解説
正解はeです
本問は、代表的な酸素投与器具ごとに、設定した酸素流量でおおよそどの程度の吸入酸素濃度(FIO2:fraction of inspired oxygen、吸い込む気体に占める酸素の割合)が得られるかを問う問題である。
考え方の軸
室内気の酸素濃度は約21%である。低流量システム(鼻カニューラ、簡易酸素マスク、リザーバー付きマスク)では、患者は供給される酸素に加えて周囲の室内気も一緒に吸い込むため、FIO2は酸素流量だけでなく患者の1回換気量や呼吸数によって変動する。したがって数値はあくまで「目安」であるが、国試では次の目安を覚えておけば解ける。 ・鼻カニューラ:1L/分あたり約4%ずつ上昇(1L/分で約24%、2L/分で約28%、4L/分で約36%、6L/分で約44%) ・簡易酸素マスク:5〜6L/分で約40%、6〜7L/分で約50%、7〜8L/分で約60% ・リザーバー付きマスク:6L/分で約60%、以降1L/分増やすごとに約10%ずつ上昇し、7L/分で約70%、8L/分で約80%、9L/分で約90%、10L/分で90%以上 この目安と各選択肢の組合せを照らし合わせると、リザーバー付きマスク10L/分で90%以上という組合せのみが妥当である。
選択肢考察
- ×a. 鼻カニューラ2L/分 ―― 20%
鼻カニューラでは流量1L/分ごとにFIO2が約4%上がるとされ、2L/分では約28%が目安である。20%は室内気(約21%)とほぼ同じかそれ以下の値であり、酸素を投与しているのにこの濃度になることはない。
- ×b. 鼻カニューラ4L/分 ―― 50%
鼻カニューラ4L/分のFIO2は約36%が目安である。鼻カニューラは口呼吸や室内気の混入の影響を大きく受け、6L/分まで上げても約44%程度にとどまるため、50%に達することは期待できない。
- ×c. マスク6L/分 ―― 80%
簡易酸素マスク6L/分のFIO2はおよそ40〜50%が目安である。マスクの側孔から室内気が入り込むため、簡易マスクでは最大流量でも60%程度が上限であり、80%には到達しない。高濃度が必要な場合はリザーバー付きマスクを選択する。
- ×d. リザーバー付きマスク7L/分 ―― 50%
リザーバー付きマスクは6L/分で約60%、そこから1L/分増すごとに約10%上昇するとされ、7L/分では約70%が目安である。50%は過小評価であり、組合せとして誤りである。
- ○e. リザーバー付きマスク10L/分 ―― 90%以上
リザーバー付きマスクでは、呼気相のあいだにリザーバーバッグへ100%酸素がためられ、吸気時にはそのバッグ内の酸素を主に吸入する。さらに一方向弁により呼気や室内気の混入が抑えられるため、低流量システムの中で最も高いFIO2が得られる。10L/分では90%以上が目安とされ、この組合せは正しい。
酸素投与器具の分類
・低流量システム:患者の吸気流量より少ない量の酸素を供給し、不足分は室内気で補われる。FIO2は患者の呼吸パターンで変動する。鼻カニューラ、簡易酸素マスク、リザーバー付きマスクが該当する。 ・高流量システム:患者の吸気流量を上回る流量の混合ガスを供給するため、呼吸パターンにかかわらずFIO2が一定に保たれる。ベンチュリーマスク(ベンチュリ効果で空気を一定の比率で取り込む)、ネブライザー付き酸素吸入装置、高流量鼻カニューラ(HFNC:high-flow nasal cannula)などが該当する。FIO2を厳密に管理したい場面、例えばCO2ナルコーシスのリスクがあるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者で有用である。
各器具の特徴
・鼻カニューラ:会話や食事をしながら使用でき、患者の負担が小さい。低濃度の酸素投与に向く。高流量では鼻粘膜の乾燥・刺激が強くなるうえ、FIO2の上昇も頭打ちになるため、通常6L/分を超えて使用しない。 ・簡易酸素マスク:口と鼻を覆う。流量が少ないとマスク内に呼気がたまり、CO2を再吸入するおそれがあるため、5L/分以上で使用するのが原則である。 ・リザーバー付きマスク:リザーバーバッグに酸素を蓄え、高濃度酸素を吸入させる。バッグが十分に膨らまないとマスク内の呼気を再吸入する危険があるため、6L/分以上で使用する。
注意点
上記の数値は目安であり、実際のFIO2は1回換気量、呼吸数、マスクの密着度などで変化する。酸素投与中は、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)や動脈血ガス分析で効果を確認しながら流量・器具を調整する。
POINT
・室内気の酸素濃度は約21%。 ・鼻カニューラ:1L/分ごとに約4%上昇(2L/分で約28%、4L/分で約36%)、通常6L/分まで。 ・簡易酸素マスク:5L/分以上で使用、5〜8L/分で約40〜60%。 ・リザーバー付きマスク:6L/分以上で使用、6L/分で約60%、1L/分ごとに約10%上昇し、10L/分で90%以上。 ・FIO2を一定に保ちたいときは高流量システム(ベンチュリーマスクなど)を用いる。
