「割り付ける」のは誰か―介入研究と観察研究を分ける一本の線
第112回医師国家試験 B問題 第10問
国試問題にチャレンジ
介入研究はどれか。
- a.横断研究
- b.コホート研究
- c.症例対照研究
- d.ケースシリーズ研究
- e.ランダム化比較試験〈RCT〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
疫学研究は、研究者が曝露を割り付ける「介入研究」と、もともとの状態を観察する「観察研究」に大別され、選択肢のうち介入研究はランダム化比較試験(RCT)のみです。横断研究、コホート研究、症例対照研究は要因と疾病の関連を検証する分析疫学、ケースシリーズ研究は記述疫学で、いずれも観察研究に属し、前向きのコホート研究であっても曝露を研究者が決めない以上は観察研究です。RCTはランダム化により未知の交絡因子まで両群に均等化できるため、個別研究で最も高いエビデンスレベルを持ち、ITT解析や盲検化と組み合わせて用いられます。一方で有害な曝露は倫理的に割り付けられないため、観察研究にも固有の役割があります。研究デザインの違いを理解することは、論文やガイドラインのエビデンスを正しく読み解く力の基礎になります。
解答・解説
正解はeです
疫学研究は、研究者が対象者に介入するかどうかで、観察研究と介入研究の二つに分かれる。 ・観察研究:研究者は対象者の曝露(喫煙、職業、服薬など)に手を加えず、もともとある状態をそのまま観察・記録する。 ・介入研究:研究者が曝露の有無や種類(薬剤、治療法、保健指導など)を決めて対象者に与え、その後の結果(アウトカム)を比べる。 観察研究は、さらに次の二つに分けられる。 ・記述疫学:症例報告、ケースシリーズ研究など。疾病の分布や特徴を記述し、仮説をつくる段階にあたる。 ・分析疫学:横断研究、症例対照研究、コホート研究など。要因と疾病の関連を検証する。 選択肢のうち、研究者が対象者に曝露を割り付けるのはランダム化比較試験だけである。ほかの四つは、どれも曝露を操作しない観察研究である。 「前向きかどうか」は、介入研究かどうかとは別の観点である点に注意が必要である。前向きコホート研究は、時間の流れに沿って追跡するが、曝露を研究者が決めるわけではないので観察研究である。
選択肢考察
- ×a. 横断研究
横断研究(cross-sectional study)は、ある一時点で集団の要因と疾病の有無を同時に調べる観察研究である。有病率を推定でき、短期間・低コストで実施できる。一方、要因と疾病の時間的な前後関係がわからないため、因果関係を推論する力は弱い。研究者が曝露を操作することはない。
- ×b. コホート研究
コホート研究(cohort study)は、曝露のある群とない群を追跡し、その後の疾病の発生を比べる観察研究である。現在から将来へ追跡する前向き研究と、過去の記録を使って追跡する後ろ向き研究がある。罹患率、相対危険度、寄与危険度を求められるが、曝露は対象者自身の生活や状況によって決まっており、研究者が割り付けるわけではない。そのため介入研究ではない。
- ×c. 症例対照研究
症例対照研究(case-control study)は、疾病のある症例群と疾病のない対照群を集め、過去の要因への曝露を比べる観察研究である。まれな疾病の研究に向いている。罹患率は求められず、関連の強さはオッズ比で表す。過去を振り返って調べるため、思い出しバイアス(想起バイアス)が入りやすい。介入は伴わない。
- ×d. ケースシリーズ研究
ケースシリーズ研究(case series study)は、同じ疾病や治療を受けた複数の症例を集め、その臨床的な特徴や経過をまとめて記述する研究である。対照群を持たない記述疫学で、新しい疾病の認識や仮説づくりに役立つ。研究者は曝露を割り付けないため、観察研究に分類される。
- ○e. ランダム化比較試験〈RCT〉
ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)は、対象者をくじ引きのように無作為に介入群と対照群へ割り付け、介入の効果を比べる介入研究である。ランダム化によって、既知の交絡因子だけでなく未知の交絡因子も両群に均等に分かれる。このため、因果関係を最も信頼性高く示すことができ、個別研究の中で最もエビデンスレベルが高い。さらに、盲検化(単盲検・二重盲検)を組み合わせて、情報バイアスを減らすことが多い。
疫学研究の分類
1. 観察研究 ・記述疫学:症例報告、ケースシリーズ研究、生態学的研究(地域相関研究。集団単位のデータで比較する) ・分析疫学:横断研究、症例対照研究、コホート研究 2. 介入研究 ・ランダム化比較試験(RCT) ・非ランダム化比較試験:歴史的対照や、地域単位での介入(地域介入研究)など ・クロスオーバー試験:同じ対象者に順番を入れ替えて両方の介入を行う
エビデンスレベル(高い順の目安)
RCTのシステマティックレビュー・メタアナリシス > RCT > 非ランダム化比較試験 > コホート研究 > 症例対照研究 > 横断研究・ケースシリーズ・症例報告 > 専門家の意見
RCTの解析と倫理
・解析は、割り付けた群のまま解析するintention-to-treat(ITT)解析が原則である。途中で脱落した人や、割り付けと違う治療を受けた人も、元の群に含めて解析する。こうすることで、ランダム化の利点が保たれる。 ・介入研究は対象者に直接影響を与えるため、倫理審査委員会の承認と、インフォームド・コンセントの取得が必須である。有害であることがわかっている曝露(喫煙など)を割り付けることはできない。そのような要因の評価には観察研究が用いられる。
POINT
・介入研究とは、研究者が曝露(治療や予防法など)を割り付ける研究で、代表がRCTである。 ・横断研究、症例対照研究、コホート研究(前向きでも後ろ向きでも)、ケースシリーズ、症例報告は、いずれも観察研究である。 ・RCTの強みは、ランダム化によって未知の交絡因子も含めて制御できる点である。 ・関連の指標は、コホート研究では相対危険度、症例対照研究ではオッズ比、横断研究では有病率を用いる。
