StudyMed医師国家試験

答えるのは子どもではなくお母さん―「間接法」で見抜く津守・稲毛式発達検査

第111回医師国家試験 G問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第9問

心理・精神機能検査のうち,直接患者に行わないのはどれか。

  1. a.津守・稲毛式発達検査
  2. b.田中・Binet式知能検査
  3. c.状態特性不安検査〈STAI〉
  4. d.Minnesota多面人格検査〈MMPI〉
  5. e.Mini-Mental State Examination〈MMSE〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は心理・精神機能検査を「誰が答えるのか」という視点で整理する問題だ。検査の名前を知っているだけでは解けなくて、それぞれの検査がどんな形式で行われるかをイメージできるかがカギになる。まず、心理検査の実施形式にはどんなものがあったかな。
医学生医学生
精神科の講義で、質問紙法、投影法、作業検査法の3つに分けると習いました。
ドクタードクター
性格検査の分類としてはその通り。今回はさらに一歩進めて、「本人が質問紙に記入する」「検査者が本人と対面して課題を出す」「本人ではなく周囲の人に尋ねる」という3つの形式で考えてみよう。最後の形式を間接法と呼ぶ。
医学生医学生
本人に尋ねない検査なんてあるんですか。それだと検査として成り立たない気がします。
ドクタードクター
いい疑問だね。たとえば生後数か月の赤ちゃんに「ひとりでお座りできますか」と聞いても答えられないよね。だから乳幼児の発達を評価するときは、日頃の様子をいちばんよく知っている母親などの養育者に質問して判定する方法がある。それが津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法で、これが今回の正解だ。
医学生医学生
小児科の実習で、お母さんが待合室で質問紙に記入していたのを見ました。あれがそうだったのかもしれません。
ドクタードクター
きっとそうだね。津守・稲毛式は0〜7歳を対象に、運動、探索・操作、社会、食事・排泄・生活習慣、理解・言語の5領域で発達を評価する。年齢に応じて3種類の質問紙が用意されていて、養育者が「〜ができるか」に答えていく。器具が要らず、子どもの機嫌や場面に左右されにくいのが利点だけれど、回答者の観察力や主観に影響されるという限界もある。
医学生医学生
では田中・Binet式知能検査も子ども向けなので、間接法かと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところ。田中・Binet式は検査者が本人と1対1で向き合い、年齢級ごとに並んだ問題を実際に解かせる個別式知能検査なんだ。どの年齢級まで正答できたかから精神年齢を出し、生活年齢で割って100を掛けてIQを求める。2歳程度から成人まで使えるけれど、あくまで本人に直接行う検査だよ。
医学生医学生
STAIは不安の検査でしたよね。これは本人が答えるものですか。
ドクタードクター
そう、自己記入式の質問紙だ。名前の通り、今この瞬間どれくらい不安かという「状態不安」と、もともと不安を感じやすい性格傾向である「特性不安」を分けて測るのが特徴。それぞれ20項目を4段階で評定するよ。
医学生医学生
MMPIは項目数がすごく多い人格検査だった記憶があります。
ドクタードクター
よく覚えているね。550項目もの質問に「はい・いいえ」で本人が答える質問紙法の人格検査だ。心気症や抑うつ、統合失調症などの10の臨床尺度に加えて、自分をよく見せようとする回答の歪みを見抜く妥当性尺度を備えているのが特徴だよ。
医学生医学生
MMSEはOSCEの練習で友達同士でやりました。100から7を引いていく項目とか、図形を写す項目がありましたね。
ドクタードクター
実際にやってみると忘れないよね。MMSEは検査者が本人に対面で質問や課題を出す認知機能のスクリーニング検査で、30点満点、23点以下で認知症が疑われる。というわけで、本人が回答も課題もしないのは津守・稲毛式だけ、ということになる。
医学生医学生
整理すると、STAIとMMPIは本人が記入する質問紙、田中・Binet式とMMSEは対面の個別検査、津守・稲毛式だけが養育者に尋ねる間接法ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、乳幼児の発達検査はほかにもあって、実施形式が少しずつ違う。遠城寺式乳幼児分析的発達検査法は子どもの直接観察と養育者からの聴取を併用する。新版K式発達検査やBayley乳幼児発達検査は検査者が子どもに直接課題を与える。デンバー発達判定法は直接観察が中心で、一部を養育者からの聴取で判定するスクリーニング検査だ。
医学生医学生
同じ発達検査でも、誰から情報を得るかで分かれるんですね。乳幼児健診の場面でも使い分けがありそうです。
ドクタードクター
その通り。臨床では、間接法は養育者の受け止め方に左右されるから、気になる結果が出たら直接観察や別の検査で裏付けることが大切だ。逆に質問紙法は手軽で客観性が高い一方、本人が意図的に回答を操作できるという弱点がある。検査の形式を知っておくと、結果をどこまで信頼できるかも判断しやすくなるよ。

まとめ

心理・精神機能検査は、本人が記入する質問紙法、検査者が本人と対面して課題を出す個別検査、本人をよく知る人から情報を得る間接法に分けて整理すると理解しやすくなります。津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法は、0〜7歳の子どもの発達を母親などの養育者への質問で評価する間接法の検査で、本人に直接行いません。一方、STAI(状態不安と特性不安を区別)とMMPI(10の臨床尺度と妥当性尺度)は自己記入式質問紙、田中・Binet式知能検査とMMSE(30点満点、23点以下で認知症疑い)は対面で行う個別検査です。乳幼児の発達検査でも、遠城寺式は観察と聴取の併用、新版K式は直接実施と形式が異なります。各検査の実施形式を押さえておくことは、結果の信頼性や限界を踏まえた臨床判断につながります。

解答・解説

正解はaです

心理・精神機能検査の多くは、評価の対象となる本人が質問に答えたり課題を解いたりする形式で行われる。しかし、乳幼児のように本人が質問に答えられない場合には、本人をよく知る人(多くは母親などの主な養育者)から情報を得て評価する「間接法」の検査が用いられる。

検査の実施形式の整理

・本人が質問紙に記入する(自己記入式質問紙法):STAI、MMPI など ・検査者が本人と対面して問題を出し、反応を評価する(個別式検査):田中・Binet 式知能検査、MMSE など ・本人ではなく養育者などに子どもの様子を尋ねる(間接法):津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法など

考え方

選択肢のうち、対象者自身が回答も課題遂行もしないものを選べばよい。乳幼児の発達検査である津守・稲毛式は、子どもの日常の行動について養育者が質問紙に答える形式であり、子どもに直接検査を行わない。その他の4つはいずれも、本人が質問紙に回答するか、検査者と対面して課題に取り組む検査である。

選択肢考察

  1. ○a.  津守・稲毛式発達検査

    正しい。津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法は、0〜7歳の乳幼児の精神発達を評価する質問紙法の検査である。子ども本人に質問や課題を与えるのではなく、母親など日頃の様子をよく知る養育者に「〜ができるか」を尋ね、その回答から発達の程度を判定する。発達を「運動」「探索・操作」「社会」「食事・排泄・生活習慣」「理解・言語」の5領域に分けて評価し、年齢に応じて3種類(1〜12か月、1〜3歳、3〜7歳)の質問紙が用意されている。検査器具が不要で、子どもの機嫌や場面に左右されにくい利点がある一方、回答者の観察力や主観の影響を受けるという限界がある。

  2. ×b.  田中・Binet式知能検査

    誤り。Binet と Simon が1905年に考案した知能検査をもとに、日本人向けに作られた個別式知能検査である。検査者が本人と1対1で向き合い、年齢級ごとに配列された問題を解かせる。どの年齢級の問題まで正答できるかから精神年齢(MA)を求め、MA÷生活年齢(CA)×100 で知能指数(IQ)を算出する(現行版では14歳以上は偏差IQで表す)。2歳程度から成人まで幅広く適用でき、本人に直接実施する検査である。

  3. ×c.  状態特性不安検査〈STAI〉

    誤り。STAI(State-Trait Anxiety Inventory)は、今この時点でどのくらい不安を感じているかという「状態不安」と、普段から不安を感じやすい性格傾向である「特性不安」を区別して測定する自己記入式質問紙である。それぞれ20項目を4段階で評定し、各尺度の得点は20〜80点となる。本人が自分で回答する検査である。

  4. ×d.  Minnesota多面人格検査〈MMPI〉

    誤り。MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)は550項目(改訂版のMMPI-2では567項目)という多数の質問に「はい/いいえ」で答える自己記入式の人格検査である。心気症(Hs)、抑うつ(D)、ヒステリー(Hy)、精神病質的偏奇(Pd)、男性性・女性性(Mf)、パラノイア(Pa)、精神衰弱(Pt)、統合失調症(Sc)、軽躁病(Ma)、社会的内向性(Si)の10の臨床尺度に加え、回答態度の歪みを検出する妥当性尺度(L・F・K など)を備えている点が特徴である。本人が直接回答する。

  5. ×e.  Mini-Mental State Examination〈MMSE〉

    誤り。MMSE は世界的に広く使われている認知機能のスクリーニング検査で、検査者が本人に対面で質問や課題を与える。時間・場所の見当識、記銘(3単語)、注意と計算(100から7を順に引く)、遅延再生、物品呼称、復唱、3段階の口頭命令、読字、書字、図形模写の項目からなり、30点満点で、23点以下で認知症が疑われる。10分程度で実施できる。

心理検査の主な分類

・質問紙法:決められた質問に回答させ、得点化して評価する。実施・採点が容易で客観性が高いが、回答者が意図的に自分をよく見せようとすると結果が歪む欠点がある。例:MMPI、YG(矢田部・Guilford)性格検査、STAI、CMI(Cornell Medical Index)、SDS(自己評価式抑うつ尺度)など。 ・投影法:あいまいな刺激に対する自由な反応から無意識的な人格特性を推測する。回答の意図的な操作が起こりにくい反面、解釈には検査者の熟練が必要である。例:Rorschach テスト、TAT(主題統覚検査)、SCT(文章完成法)、P-Fスタディ、バウムテストなど。 ・作業検査法:一定の作業を行わせ、その経過から性格や能力を評価する。例:内田・Kraepelin 精神作業検査。 ・知能検査:田中・Binet 式、Wechsler 式(WPPSI、WISC、WAIS)など。 ・認知機能検査:MMSE、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)など。

乳幼児の発達検査

・津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法:養育者への質問による間接法。 ・遠城寺式乳幼児分析的発達検査法:子どもの直接観察と養育者からの聴取を併用する。 ・新版K式発達検査、Bayley 乳幼児発達検査:検査者が子どもに直接課題を与える。 ・DENVER II(デンバー発達判定法):直接観察を中心とし、一部は養育者からの聴取で判定するスクリーニング検査。

POINT

・津守・稲毛式発達検査は、子ども本人ではなく養育者に質問して乳幼児の精神発達を評価する(間接法)。 ・田中・Binet 式知能検査と MMSE は検査者が本人と対面して行う個別検査、STAI と MMPI は本人が回答する自己記入式質問紙法である。 ・STAI は状態不安と特性不安を区別して評価する。 ・MMPI は10の臨床尺度と妥当性尺度をもつ質問紙法の人格検査である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。