StudyMed医師国家試験

骨髄にとどまる腫瘍、脾臓に広がる腫瘍―多発性骨髄腫が脾腫をきたさない理由

第111回医師国家試験 E問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第111回 E問題 第22問

脾腫の原因とならないのはどれか。

  1. a.急性リンパ性白血病
  2. b.多発性骨髄腫
  3. c.非Hodgkinリンパ腫
  4. d.Hodgkinリンパ腫
  5. e.慢性骨髄性白血病

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、造血器腫瘍のなかで脾腫をきたさないものを選ぶ問題だ。丸暗記で解くこともできるけれど、「脾臓がどんな臓器か」と「腫瘍細胞がどこで増えるか」を結びつけて考えると、迷わず解けるようになるよ。まず、脾臓はどういう臓器だったかな。
医学生医学生
解剖の講義で、白脾髄と赤脾髄に分かれると習いました。白脾髄はリンパ球の集まり、赤脾髄は古い赤血球を壊す場所、でしたよね。
ドクタードクター
その通り。白脾髄はリンパ濾胞などからなるリンパ組織で、脾臓は全身最大の二次リンパ組織なんだ。赤脾髄は血液のフィルターとして働く。つまり脾臓は「リンパ組織」であり、かつ「血液が大量に流れ込む濾過装置」でもある。この2つの顔が、脾腫の原因を考えるうえでの出発点になる。
医学生医学生
ということは、リンパ球の腫瘍は白脾髄で増えるし、血液中に腫瘍細胞が増える病気も脾臓に引っかかりやすい、ということでしょうか。
ドクタードクター
まさにそう考えればいい。では選択肢を見ていこう。まず急性リンパ性白血病はどうかな。
医学生医学生
小児科の実習で、ALLの子が肝脾腫とリンパ節腫脹で見つかったと聞きました。白血病細胞が臓器に浸潤するからですよね。
ドクタードクター
そう。未熟なリンパ芽球が骨髄で増えて末梢血にもあふれ、脾臓・肝臓・リンパ節に浸潤する。T細胞性なら縦隔腫瘤を伴うこともある。次に悪性リンパ腫。非Hodgkinリンパ腫とHodgkinリンパ腫は?
医学生医学生
どちらもリンパ球の腫瘍なので、白脾髄に浸潤して脾腫を起こしうると思います。でもHodgkinはリンパ節から隣へ連続して広がるイメージが強くて、脾臓まで行くのか少し不安です。
ドクタードクター
いい疑問だね。Hodgkinリンパ腫は確かに隣接リンパ節領域へ連続的に進展しやすい。でも、Ann Arbor分類では脾臓はリンパ組織として扱われていて、脾臓病変の有無が病期決定に関わるんだ。つまり脾臓に浸潤することは十分ありうる、という前提で分類が作られている。非Hodgkinリンパ腫はリンパ節外にも病変をつくりやすく、脾辺縁帯リンパ腫のように脾腫が主役の病型まである。
医学生医学生
なるほど、病期分類の仕組みそのものが答えになっているんですね。慢性骨髄性白血病は巨脾の代表でしたよね。
ドクタードクター
そう、CBTでも定番だね。BCR-ABL1融合遺伝子をもつ造血幹細胞の腫瘍で、成熟した顆粒球系細胞が大量に増える。腫瘍細胞の浸潤に加えて、骨髄以外で造血が起こる髄外造血も脾腫の原因になり、臍を越えるほどの巨脾で腹部膨満感や早期満腹感を訴えることもある。
医学生医学生
そうすると、残る多発性骨髄腫が正解ですね。でも骨髄腫もB細胞系の腫瘍なのに、どうしてリンパ組織に広がらないんでしょう。
ドクタードクター
そこが本問の核心だ。多発性骨髄腫は、B細胞が最終分化した形質細胞の腫瘍で、腫瘍細胞は主に骨髄の中で増殖する。骨髄の微小環境に強く依存していて、末梢血やリンパ組織に広がることは少ないんだ。だから症状は骨髄の中や骨で起こること、つまり骨痛や病的骨折、高カルシウム血症、貧血などが中心になり、脾腫やリンパ節腫脹は通常みられない。
医学生医学生
血液内科の講義で習ったCRAB、高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変ですね。確かに脾腫は入っていません。
ドクタードクター
その通り。どれも「骨髄で増える」「M蛋白をつくる」ことから説明できる症状だね。腎障害は軽鎖、いわゆるBence Jones蛋白による尿細管障害などが関わる。ただし例外もあって、末梢血に形質細胞が多数出る形質細胞性白血病や、アミロイドーシスを合併した場合には脾腫をみることがある。頻度はまれだけれど、「絶対にない」とは言い切らないほうがいい。
医学生医学生
骨髄腫の検査では、punched-out lesionや赤血球の連銭形成も出てきますよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。頭蓋骨X線の打ち抜き像、末梢血塗抹の連銭形成、血清蛋白電気泳動のMピークはセットで押さえておこう。最後に臨床での視点を補っておくと、脾腫をみたときは造血器腫瘍だけでなく、伝染性単核球症などの感染症、肝硬変による門脈圧亢進症、遺伝性球状赤血球症のような溶血性貧血、SLEなどの自己免疫疾患、Gaucher病のような蓄積症まで幅広く考える必要がある。
医学生医学生
巨脾ならCMLのほかに骨髄線維症やマラリアも、ですね。腹部診察で脾臓を触れたら、まず大きさで鑑別を絞る癖をつけます。
ドクタードクター
いい心がけだ。脾腫の程度と随伴所見で鑑別はかなり絞れる。逆に、骨病変や貧血、腎障害があるのに脾腫やリンパ節腫脹がない高齢者なら、骨髄腫を思い浮かべられるようにしておこう。

まとめ

脾臓は白脾髄(リンパ組織)と赤脾髄(血液の濾過)からなる全身最大の二次リンパ組織であり、リンパ系腫瘍や白血病など血液中・リンパ組織で増える腫瘍は脾腫をきたしやすい性質があります。急性リンパ性白血病は臓器浸潤により肝脾腫を、非Hodgkinリンパ腫・Hodgkinリンパ腫は脾浸潤を(Ann Arbor分類では脾臓をリンパ組織として扱う)、慢性骨髄性白血病は浸潤と髄外造血により巨脾をきたします。一方、多発性骨髄腫は主に骨髄内で増殖する形質細胞腫瘍で、CRAB(高Ca血症・腎障害・貧血・骨病変)が中心となり、脾腫やリンパ節腫脹は通常みられません(形質細胞性白血病やアミロイドーシス合併などはまれな例外)。「腫瘍細胞がどこで増えるか」から臨床像を説明する考え方は、脾腫の鑑別や造血器腫瘍の理解全体に役立ちます。

解答・解説

正解はbです

テーマ

造血器腫瘍のうち、どの疾患が脾腫(脾臓の腫大)をきたすかを問う問題である。「原因とならないのはどれか」という形式なので、通常は脾腫をきたさない疾患を選ぶ。

考え方

脾臓は、リンパ球が集まる白脾髄(リンパ組織)と、血液を濾過し老化赤血球を処理する赤脾髄からなる、全身最大の二次リンパ組織である。このため、 ・リンパ系の腫瘍(悪性リンパ腫、リンパ性白血病):腫瘍化したリンパ球が白脾髄に浸潤・増殖して脾腫を生じる。 ・白血病や骨髄増殖性腫瘍:末梢血中に増えた腫瘍細胞が脾臓に浸潤したり、髄外造血(骨髄以外の臓器での造血)が起こったりして脾腫を生じる。 といった形で、血液中やリンパ組織で増える腫瘍の多くは脾腫の原因となる。 これに対し、多発性骨髄腫は形質細胞(抗体を産生するB細胞の最終分化段階の細胞)の腫瘍であり、腫瘍細胞は主に骨髄の中で増殖して骨破壊(溶骨性病変)を起こす。末梢血やリンパ組織に広がることは少ないため、脾腫やリンパ節腫脹は通常みられない。よって脾腫の原因とならないのは多発性骨髄腫である。

選択肢考察

  1. ×a.  急性リンパ性白血病

    脾腫の原因となる。急性リンパ性白血病(ALL)は未熟なリンパ球系細胞(リンパ芽球)が腫瘍性に増殖する疾患で、小児に多い。白血病細胞が脾臓・肝臓・リンパ節などに浸潤するため、肝脾腫やリンパ節腫脹がしばしばみられる。T細胞性ALLでは縦隔腫瘤を伴うこともある。

  2. ○b.  多発性骨髄腫

    脾腫の原因とならないため、本問の正解である。多発性骨髄腫(MM)は形質細胞が単クローン性に増殖し、M蛋白(単クローン性免疫グロブリン)を産生する疾患である。腫瘍細胞は主に骨髄内で増殖し、骨痛・病的骨折(溶骨性病変)、高カルシウム血症、腎障害、貧血、易感染性などを起こすが、脾腫やリンパ節腫脹は通常きたさない。末梢血中に形質細胞が多数出現する形質細胞性白血病やアミロイドーシス合併例などでは例外的に脾腫を認めることがあるが、まれである。

  3. ×c.  非Hodgkinリンパ腫

    脾腫の原因となる。非Hodgkinリンパ腫はB細胞・T細胞・NK細胞由来の悪性リンパ腫の総称で、リンパ節だけでなく脾臓・肝臓・消化管などのリンパ節外臓器にも病変をつくる。脾臓はリンパ組織であるため浸潤を受けやすく、脾腫は比較的よくみられる。脾辺縁帯リンパ腫のように脾腫を主な病変とする病型もある。

  4. ×d.  Hodgkinリンパ腫

    脾腫の原因となる。Hodgkinリンパ腫はHodgkin細胞・Reed-Sternberg細胞(大型で多核の腫瘍細胞)を特徴とする悪性リンパ腫で、頸部などのリンパ節から隣接するリンパ節領域へ連続的に進展しやすい。脾臓への浸潤も起こり、病期分類(Ann Arbor分類)では脾臓はリンパ組織として扱われ、脾臓病変の有無が病期決定に関わる。

  5. ×e.  慢性骨髄性白血病

    脾腫の原因となる。慢性骨髄性白血病(CML)はBCR-ABL1融合遺伝子(フィラデルフィア染色体)をもつ造血幹細胞の腫瘍で、成熟段階の顆粒球系細胞が著しく増加する。腫瘍細胞の浸潤と髄外造血により脾腫の頻度が高く、臍の高さを越えるような巨脾をきたして腹部膨満感や早期満腹感の原因となることもある。

脾腫をきたす主な原因

・感染症:伝染性単核球症(EBウイルス)、ウイルス性肝炎、感染性心内膜炎、敗血症、マラリア、リーシュマニア症(カラアザール)など ・うっ血:肝硬変などによる門脈圧亢進症、右心不全、Budd-Chiari症候群など ・血液疾患:溶血性貧血(遺伝性球状赤血球症、サラセミアなど)、白血病、悪性リンパ腫、骨髄増殖性腫瘍(CML、原発性骨髄線維症、真性赤血球増加症など) ・自己免疫疾患:全身性エリテマトーデス、Felty症候群(関節リウマチ+脾腫+好中球減少)など ・蓄積症・浸潤性疾患:Gaucher病、Niemann-Pick病、アミロイドーシスなど

巨脾をきたす代表的疾患

慢性骨髄性白血病、原発性骨髄線維症、マラリア、カラアザール、有毛細胞白血病、Gaucher病など。

多発性骨髄腫の主な特徴

・高齢者に多い形質細胞腫瘍 ・M蛋白血症(血清蛋白電気泳動でMピーク)、尿中Bence Jones蛋白 ・臓器障害の頭文字CRAB:高カルシウム血症(C)、腎障害(R)、貧血(A)、骨病変(B) ・骨X線で打ち抜き像(punched-out lesion)、末梢血で赤血球の連銭形成 ・脾腫・リンパ節腫脹は通常みられない

POINT

・脾臓はリンパ組織であり、白血病・悪性リンパ腫(Hodgkin、非Hodgkinとも)は脾腫をきたしうる。 ・CMLや骨髄線維症は巨脾の代表。 ・多発性骨髄腫は骨髄内で増殖する形質細胞腫瘍で、脾腫・リンパ節腫脹は通常きたさない。 ・骨髄腫の臓器障害はCRAB(高Ca血症、腎障害、貧血、骨病変)で整理する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。