StudyMed医師国家試験

紅皮症は骨髄腫のサインか?―「どこで増え、何をつくるか」で読み解く造血器腫瘍の症候

第117回医師国家試験 F問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第117回 F問題 第27問

疾患と症候の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.Hodgkinリンパ腫 ―― 間欠熱
  2. b.菌状息肉症 ―― 皮膚腫瘤
  3. c.多発性骨髄腫 ―― 紅皮症
  4. d.マクログロブリン血症 ―― 網膜静脈怒張
  5. e.慢性リンパ性白血病 ―― 肝脾腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、造血器腫瘍とその症候の組合せから誤りを一つ選ぶ問題だ。暗記で片付けたくなるけれど、各疾患について「腫瘍細胞がどこで増えるか」「何を産生するか」を考えると、症候は筋道立てて導ける。その視点で一つずつ確認していこう。
医学生医学生
組合せ問題は苦手です……。どれも聞いたことがある症候なので、全部正しく見えてしまいます。
ドクタードクター
だからこそ病態から考えるのが大事なんだ。まずHodgkinリンパ腫と発熱。Hodgkinリンパ腫ではどんな全身症状が出るかな。
医学生医学生
B症状ですね。発熱、寝汗、体重減少。血液内科の講義でPel-Ebstein熱が有名だと習いました。
ドクタードクター
その通り。Hodgkin細胞やReed-Sternberg細胞が産生するサイトカインによって発熱が起こる。Pel-Ebstein熱は有熱期と無熱期を数日〜数週の周期で繰り返す波状熱で、厳密には日内変動で定義する間欠熱とは別物だ。ただ、Hodgkinリンパ腫では日内変動が大きく平熱まで下がる間欠熱の形をとることもあるし、発熱自体が代表的症候だから、組合せとしては正しいと考えていい。
医学生医学生
熱型の定義って意外とあいまいに覚えていました。間欠熱は最低体温が平熱まで下がるもの、弛張熱は下がりきらないもの、でしたっけ。
ドクタードクター
正解。稽留熱は日内変動1℃以内で高熱が続く、弛張熱は変動1℃以上だが37℃以下には下がらない、間欠熱は平熱まで下がる時間帯がある、と整理しておこう。次は菌状息肉症と皮膚腫瘤だ。
医学生医学生
菌状息肉症は皮膚原発のT細胞リンパ腫ですよね。病理実習でPautrier微小膿瘍を見た記憶があります。
ドクタードクター
よく覚えているね。菌状息肉症はCD4陽性T細胞由来が多く、年単位でゆっくり進む。紅斑期から扁平浸潤期、そして結節や腫瘤が出る腫瘤期へと移行するから、皮膚腫瘤は正しい組合せだ。さらに進むと全身の皮膚が赤くなる紅皮症を呈することもある。
医学生医学生
あれ、紅皮症って菌状息肉症で出るんですね。そうなると多発性骨髄腫と紅皮症の組合せが怪しく見えてきました。
ドクタードクター
鋭いね。それがこの問題の正解だ。紅皮症は体表面のほぼ全体がびまん性に潮紅し落屑を伴う状態で、原因はアトピー性皮膚炎や乾癬の悪化、薬疹、そして菌状息肉症やSézary症候群などの皮膚T細胞リンパ腫が代表的。皮膚にT細胞が浸潤する病気だから皮膚全体が赤くなる、と理解できる。
医学生医学生
多発性骨髄腫は骨髄で形質細胞が増える病気なので、皮膚とは結びつきにくいですね。CRABで覚えました。
ドクタードクター
そう、高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変がCRAB。骨髄腫細胞が破骨細胞を活性化して骨を溶かし、打ち抜き像や病的骨折、高カルシウム血症を起こす。Bence Jones蛋白は尿細管を傷害し、正常な免疫グロブリンが減るので感染にも弱くなる。皮膚症状としてはALアミロイドーシスによる眼瞼周囲の紫斑や、POEMS症候群の色素沈着は知られているけれど、紅皮症はまれで典型的とはいえない。
医学生医学生
次はマクログロブリン血症ですね。網膜静脈怒張は過粘稠度症候群のせいでしょうか。
ドクタードクター
その通り。原発性マクログロブリン血症ではリンパ形質細胞が単クローン性IgMを産生する。IgMは五量体で分子量が大きいから、血液がドロドロになるんだ。眼底では網膜静脈がソーセージ状に怒張・蛇行し、出血を伴うこともある。頭痛や視力障害、鼻出血などもみられ、緊急時には血漿交換で粘稠度を下げる。
医学生医学生
何をつくるかで症候が決まる、というのはこういうことなんですね。IgGが中心の骨髄腫よりも粘稠度が上がりやすいと。
ドクタードクター
いい理解だ。骨髄腫でも過粘稠度症候群は起こりうるけれど、IgMは分子が大きい分起こりやすい。最後に慢性リンパ性白血病と肝脾腫を見ておこう。
医学生医学生
CLLは日本では少ないので、臨床実習で血液内科を回ったときも実際の患者さんには会えませんでした。成熟リンパ球が増えるんでしたよね。
ドクタードクター
そう、CD5とCD23を発現する小型の成熟B細胞が末梢血、骨髄、リンパ節、肝臓、脾臓に蓄積する。臓器に溜まるから、全身のリンパ節腫脹と肝脾腫をきたすわけだ。塗抹標本で壊れた細胞が見えるsmudge cellも特徴で、自己免疫性溶血性貧血や低γグロブリン血症による易感染性にも注意が必要だ。
医学生医学生
腫瘍細胞の居場所と産生物を考えると、症候が自然に説明できることがよくわかりました。
ドクタードクター
それがこの分野を得意にするコツだ。臨床では、全身の皮膚が赤い患者さんを診たら、湿疹や薬疹だけでなく皮膚T細胞リンパ腫や成人T細胞白血病・リンパ腫も鑑別に挙げて、必要なら皮膚生検をためらわないこと。逆に、腰痛と貧血、腎機能低下が揃った高齢者では骨髄腫を思い浮かべて、血清・尿の蛋白電気泳動を出せるようにしておこう。

まとめ

造血器腫瘍の症候は、腫瘍細胞が増える場所と産生物から論理的に導けます。Hodgkinリンパ腫はサイトカインによる発熱などのB症状、菌状息肉症は皮膚T細胞の浸潤による皮膚腫瘤(進行すれば紅皮症も)、マクログロブリン血症は大分子IgMによる過粘稠度症候群と網膜静脈のソーセージ様怒張、慢性リンパ性白血病は成熟B細胞の臓器蓄積による肝脾腫やリンパ節腫脹をきたします。一方、多発性骨髄腫の中心はCRAB症状(高Ca血症・腎障害・貧血・骨病変)と易感染性、アミロイドーシスであり、紅皮症は典型的ではないため誤った組合せです。紅皮症をきたす造血器腫瘍としては菌状息肉症やSézary症候群などのT細胞リンパ腫を押さえておくと、皮膚と血液の両面から鑑別を進める力になります。

解答・解説

正解はcです

問われていること

造血器腫瘍(リンパ腫、形質細胞腫瘍、白血病)それぞれに特徴的な症候を対応させ、誤った組合せを一つ選ぶ問題である。各疾患について「腫瘍細胞がどこで増えるか」「何を産生するか」を押さえると、症候は論理的に導ける。

考え方

・Hodgkinリンパ腫:サイトカイン産生により発熱・盗汗・体重減少(B症状)を生じ、特徴的な熱型を示す。 ・菌状息肉症:皮膚に原発するT細胞リンパ腫で、病期が進むと皮膚に腫瘤を形成する。 ・多発性骨髄腫:骨髄で形質細胞が増殖し、単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)を産生する。症候は骨病変・高カルシウム血症・腎障害・貧血(CRAB)が中心であり、皮膚全体が潮紅する紅皮症は典型的ではない。 ・原発性マクログロブリン血症:単クローン性IgMが増え、血液の粘稠度が上がる(過粘稠度症候群)結果、眼底で網膜静脈が怒張する。 ・慢性リンパ性白血病:成熟B細胞がリンパ節・肝・脾・骨髄に蓄積し、リンパ節腫脹や肝脾腫をきたす。 以上から、誤っている組合せは「多発性骨髄腫 ― 紅皮症」である。

選択肢考察

  1. ×a.  Hodgkinリンパ腫 ―― 間欠熱

    正しい組合せである。Hodgkinリンパ腫ではHodgkin細胞・Reed-Sternberg細胞が産生するサイトカインにより、38℃を超える原因不明の発熱、寝汗(盗汗)、6か月以内の10%を超える体重減少というB症状がみられる。熱型としては、発熱する時期と解熱する時期が数日〜数週の周期で繰り返すPel-Ebstein型(波状熱・周期熱)が古典的に有名であるが、日内変動が大きく平熱まで下がる時間帯のある間欠熱の形をとることもあり、発熱自体はHodgkinリンパ腫の代表的症候である。

  2. ×b.  菌状息肉症 ―― 皮膚腫瘤

    正しい組合せである。菌状息肉症は皮膚に原発する成熟T細胞リンパ腫(CD4陽性ヘルパーT細胞由来が多い)で、年単位で緩徐に進行する。典型的には、軽い鱗屑を伴う紅斑の時期(紅斑期)→浸潤を触れる局面の時期(扁平浸潤期)→結節や腫瘤が出現する時期(腫瘤期)へと移行する。したがって腫瘤期には皮膚腫瘤が認められる。病理では表皮内に異型リンパ球が集簇するPautrier微小膿瘍が特徴的である。進行すると紅皮症やリンパ節・内臓病変を伴うこともある。

  3. ○c.  多発性骨髄腫 ―― 紅皮症

    誤っている組合せであり、これが正解である。紅皮症は全身の皮膚の大部分(体表面積のおよそ90%以上)がびまん性に潮紅し、落屑を伴う状態で、原因はアトピー性皮膚炎・乾癬などの皮膚疾患の悪化、薬疹、そして菌状息肉症の進行例やSézary症候群などの皮膚T細胞リンパ腫が代表的である。多発性骨髄腫は骨髄で単クローン性の形質細胞が増殖する疾患で、主な症候は高カルシウム血症(C)、腎障害(R)、貧血(A)、骨病変(B)に代表されるCRAB症状、易感染性、過粘稠度症候群、ALアミロイドーシス(巨舌、手根管症候群、眼瞼周囲の紫斑など)である。皮膚症状としてはアミロイドーシスに伴う紫斑やPOEMS症候群での色素沈着などは知られるが、紅皮症を呈することはまれであり、典型的な組合せとはいえない。

  4. ×d.  マクログロブリン血症 ―― 網膜静脈怒張

    正しい組合せである。原発性マクログロブリン血症(Waldenströmマクログロブリン血症)は、B細胞と形質細胞の中間段階にあるリンパ形質細胞が骨髄などでクローン性に増殖し、単クローン性IgMを産生する疾患である(多くでMYD88 L265P変異を認める)。IgMは五量体で分子量が大きいため血液の粘稠度を著しく高め、過粘稠度症候群をきたす。眼底では網膜静脈がソーセージ状に怒張・蛇行し、網膜出血を伴うこともある。そのほか頭痛、めまい、視力障害、鼻出血・歯肉出血などの出血傾向がみられ、緊急時には血漿交換で粘稠度を下げる。

  5. ×e.  慢性リンパ性白血病 ―― 肝脾腫

    正しい組合せである。慢性リンパ性白血病(CLL)は、CD5とCD23を発現する小型の成熟B細胞が末梢血・骨髄・リンパ節・肝・脾に蓄積する疾患で、欧米では高齢者に多いが日本では少ない。腫瘍細胞の臓器浸潤により全身のリンパ節腫脹と肝脾腫をきたす。末梢血では成熟リンパ球の増加とともに、塗抹標本で壊れた細胞(smudge cell)がみられる。自己免疫性溶血性貧血や低γグロブリン血症による易感染性を合併しやすい。

熱型の整理

・稽留熱:日内変動が1℃以内で高熱が持続する(腸チフス、大葉性肺炎など)。 ・弛張熱:日内変動が1℃以上あるが、最低体温が37℃以下まで下がらない(敗血症、化膿性疾患など)。 ・間欠熱:日内変動が1℃以上あり、最低体温が平熱まで下がる時間帯がある(マラリア、胆道感染など)。 ・波状熱(周期熱):有熱期と無熱期を不規則〜周期的に繰り返す(Hodgkinリンパ腫のPel-Ebstein熱、ブルセラ症など)。

多発性骨髄腫の病態と症候

・骨病変:骨髄腫細胞がRANKLなどの破骨細胞活性化因子を介して骨吸収を亢進させ、打ち抜き像(punched-out lesion)、病的骨折、腰痛をきたす。 ・高カルシウム血症:骨吸収亢進による。口渇・多尿、意識障害の原因となる。 ・腎障害:Bence Jones蛋白(遊離L鎖)による尿細管障害(円柱腎症)、高カルシウム血症、アミロイドーシスなど。 ・貧血:骨髄での正常造血の抑制。 ・易感染性:正常な多クローン性免疫グロブリンの減少。 ・ALアミロイドーシス:L鎖由来のアミロイド沈着により巨舌、手根管症候群、心不全、ネフローゼ症候群など。 ・赤沈の著明な亢進、末梢血の連銭形成も特徴である。

紅皮症をきたす主な原因

湿疹・皮膚炎群(アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎)、乾癬、毛孔性紅色粃糠疹、薬疹(DIHSなど)、皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉症、Sézary症候群)、成人T細胞白血病・リンパ腫など。

POINT

・多発性骨髄腫の症候はCRAB(高Ca血症・腎障害・貧血・骨病変)+易感染性・アミロイドーシスで、紅皮症は典型ではない。 ・紅皮症をきたす造血器腫瘍は菌状息肉症・Sézary症候群などのT細胞リンパ腫。 ・Hodgkinリンパ腫:B症状(発熱・盗汗・体重減少)、Pel-Ebstein熱。 ・マクログロブリン血症:IgM増加→過粘稠度症候群→網膜静脈のソーセージ様怒張。 ・CLL:成熟B細胞(CD5+、CD23+)増殖→リンパ節腫脹・肝脾腫、smudge cell。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。