StudyMed医師国家試験

主語は「医師」か「施設」か―医療法と医師法を見分けるたった一つのコツ

第111回医師国家試験 E問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第111回 E問題 第15問

医療法で規定されているのはどれか。

  1. a.応招義務
  2. b.医業の独占
  3. c.医師臨床研修
  4. d.異状死体の届出義務
  5. e.医療機関の管理者要件

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療に関する規定がどの法律に書かれているかを問う問題だ。条文を丸暗記するより、法律の「性格」をつかむのが近道になる。医療法と医師法、それぞれ何を定めた法律か説明できるかな。
医学生医学生
どちらも医療の法律という印象で、正直ごちゃごちゃになっています。CBTの公衆衛生でも混同して間違えました。
ドクタードクター
多くの人がつまずくところだよ。整理のコツは「身分法」と「施設法」に分けること。身分法は、ある職種の資格と、その資格を持つ人の義務や業務範囲を定める法律で、医師なら医師法。施設法は、病院や診療所といった医療を提供する場について、開設、管理、構造設備、医療安全、医療計画などを定める法律で、これが医療法だ。
医学生医学生
つまり、主語が医師個人なら医師法、主語が病院や診療所なら医療法、ということですか。
ドクタードクター
その通り。その視点で選択肢を見ていこう。まず応招義務はどうかな。
医学生医学生
診察を求められたら正当な事由がなければ拒めない、という義務ですよね。病院が断れないという意味なら医療法のような気もします。
ドクタードクター
迷いやすいポイントだね。でも条文上、義務を負うのは「診療に従事する医師」で、医師法第19条に置かれている。同じ条文には、診断書や検案書の交付を求められたときに正当な事由なく拒んではならない、という規定もある。主語は医師個人だ。
医学生医学生
医業の独占は「医師でなければ医業をしてはならない」というものなので、医師の資格そのものの話ですね。
ドクタードクター
そう、医師法第17条の業務独占だ。ちなみに第18条には、医師でない人が医師やまぎらわしい名称を使うことを禁じる名称独占がある。どちらも医師法だよ。では医師臨床研修は?
医学生医学生
卒業後に受ける2年間の研修ですよね。研修病院という施設が関わるので、医療法かと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこも引っかけになりやすい。診療に従事しようとする医師は2年以上の臨床研修を受けなければならない、と医師個人に義務を課しているから、医師法第16条の2などに規定されている。2004年度から必修化された制度だね。
医学生医学生
異状死体の届出義務は、法医学の講義で何度も強調されました。24時間以内に警察署へ、ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。死体や妊娠4月以上の死産児を検案して異状を認めたら、24時間以内に所轄警察署へ届け出る。医師法第21条で、これも医師個人の義務だ。届け先が保健所ではなく警察署であることもよく問われる。
医学生医学生
そうすると、残るのは医療機関の管理者要件です。病院や診療所をだれに管理させるかというルールなので、主語は施設ですね。
ドクタードクター
正解。医療法第10条で、病院や診療所の開設者は、医業を行う施設なら臨床研修等修了医師に管理させなければならないと定めている。管理者は施設の運営や医療安全の確保に責任を負う。施設の管理体制のルールだから、施設法である医療法に置かれているわけだ。
医学生医学生
臨床研修を修了していることが管理者の条件になるなら、研修と管理者要件はつながっているんですね。
ドクタードクター
鋭いね。研修制度そのものは医師法、それを修了した医師を管理者にせよという施設側のルールは医療法、と役割分担している。2つの法律が連携している良い例だ。
医学生医学生
ほかに医療法に書かれている内容で、試験に出やすいものはありますか。
ドクタードクター
病院は20床以上の入院施設をもつもの、診療所は入院施設がないか19床以下のもの、という定義は医療法だ。医療安全管理体制や医療事故調査制度、都道府県の医療計画や地域医療構想、広告規制、医療法人の規定も医療法。一方、無診察治療の禁止、処方箋の交付義務、保健指導の義務、診療録の記載と5年間の保存義務は医師法だよ。
医学生医学生
診療録の保存義務は医師法なんですね。病院のカルテ庫に保管されているので、てっきり医療法かと思っていました。
ドクタードクター
そう思う人は多いけれど、記載して5年間保存する義務を負うのは医師だから医師法なんだ。ちなみに看護師は保健師助産師看護師法、薬剤師は薬剤師法がそれぞれの身分法になる。臨床現場に出ると、自分の行為が医師法上の義務なのか、勤務先の施設に課された医療法上のルールなのかを意識する場面が意外と多い。どの法律に基づく責任かを理解しておくと、診断書の発行やカルテ管理、事故対応のときにも迷わずに済むよ。

まとめ

医療関係の法律は、職種の資格と義務を定める身分法と、医療を提供する施設について定める施設法に分けると整理しやすく、医師法は前者、医療法は後者にあたります。応招義務、業務独占・名称独占、臨床研修、異状死体の24時間以内の警察署への届出、無診察治療の禁止、処方箋交付、診療録の記載と5年間保存は、いずれも医師個人の義務として医師法に規定されています。これに対し、病院・診療所の開設や管理者要件、構造設備・人員基準、医療安全、医療計画、医療法人などは医療法の領域で、病院・診療所の管理者は臨床研修等修了医師でなければならないと定められています。「主語が医師か、施設か」で判断すると迷いにくく、この区別は国家試験だけでなく、実際の診療で自らの法的責任を理解するうえでも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

医療に関係する法律のうち、どの規定がどの法律に置かれているかを区別させる問題である。 医療関係の法律は大きく「身分法」と「施設法」に分けて考えると整理しやすい。 ・身分法:ある職種の資格(免許)と、その資格を持つ人が負う義務・業務範囲を定める法律。医師については医師法がこれにあたる。 ・施設法:病院・診療所・助産所といった医療を提供する「場」について、開設・管理・構造設備・医療安全・医療計画などを定める法律。これが医療法である。 選択肢のうち、応招義務、医業の独占、医師臨床研修、異状死体の届出義務は、いずれも「医師という個人」が負う義務や資格に関するものであり、医師法に規定されている。一方、医療機関の管理者要件は「病院・診療所という施設」をだれに管理させるかという施設側のルールであり、医療法に規定されている。 したがって、正解はeである。主語が「医師」なら医師法、主語が「病院・診療所(の開設者・管理者)」なら医療法、と考えると迷いにくい。

選択肢考察

  1. ×a.  応招義務

    医師法第19条に規定されている。診療に従事する医師は、診察・治療を求められた場合、正当な事由がなければ拒んではならないとされる。また同条では、診察や検案をした医師は診断書・検案書などの交付を求められたときに正当な事由なく拒んではならないことも定められている。義務を負うのは医師個人であり、医療法の規定ではない。

  2. ×b.  医業の独占

    医師法第17条に「医師でなければ、医業をなしてはならない」と規定されている(業務独占)。なお、医師でない者が医師またはこれに紛らわしい名称を用いることを禁じる名称独占は同法第18条に定められている。いずれも医師という資格に関する規定であり、医療法ではない。

  3. ×c.  医師臨床研修

    医師法第16条の2などに規定されている。診療に従事しようとする医師は、2年以上、大学病院または厚生労働大臣の指定する病院で臨床研修を受けなければならないとされ、2004年度から必修化された。研修を受ける義務は医師個人に課されるため医師法の領域である。なお、臨床研修を修了した医師であることは医療法上の管理者要件と関連するが、研修制度そのものを定めているのは医師法である。

  4. ×d.  異状死体の届出義務

    医師法第21条に規定されている。医師は、死体または妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄の警察署に届け出なければならない。これも医師個人の義務であり、医療法の規定ではない。

  5. ○e.  医療機関の管理者要件

    医療法第10条に規定されている。病院または診療所の開設者は、医業を行う施設であれば臨床研修等修了医師に、歯科医業を行う施設であれば臨床研修等修了歯科医師に、その施設を管理させなければならないとされる。管理者は施設の運営や医療安全の確保などについて責任を負う。施設の管理体制に関する規定であるため、施設法である医療法に置かれている。

医療法の主な内容

医療法は、医療を受ける者の利益の保護と、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を目的とする法律である。主に次のような事項を定めている。 ・医療に関する選択の支援(医療機能情報の提供、広告規制など) ・医療の安全の確保(医療安全管理体制、医療事故調査制度など) ・病院・診療所・助産所の定義、開設(許可・届出)、管理者、構造設備、人員配置の基準 ・医療提供体制の確保(都道府県が定める医療計画、地域医療構想など) ・医療法人に関する規定 病院は20床以上の入院施設を有するもの、診療所は入院施設がないか19床以下のものと定義されているのも医療法である。

医師法の主な内容

医師法は医師の資格と義務を定める身分法である。 ・免許(国家試験、欠格事由、医籍登録) ・臨床研修の義務 ・業務独占(第17条)と名称独占(第18条) ・応招義務と診断書等の交付義務(第19条) ・無診察治療等の禁止(第20条) ・異状死体等の届出義務(第21条) ・処方箋の交付義務(第22条) ・保健指導を行う義務(第23条) ・診療録の記載と5年間の保存義務(第24条)

その他の関連法規

看護師などの資格は保健師助産師看護師法、薬剤師は薬剤師法がそれぞれ身分法として定めている。

POINT

・医師法=医師個人の資格と義務を定める身分法:業務独占・名称独占、応招義務、無診察治療の禁止、異状死体の届出(24時間以内に警察署へ)、処方箋の交付、診療録の記載・保存、臨床研修 ・医療法=病院・診療所などの施設に関する施設法:開設、管理者、構造設備・人員基準、医療安全、医療計画、医療法人 ・病院・診療所の管理者は臨床研修等修了医師でなければならない(医療法)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。