StudyMed医師国家試験

ブドウ糖15gにインスリン1単位―「比」を守れば迷わない中心静脈栄養の計算

第111回医師国家試験 D問題 第60問

国試問題にチャレンジ

第111回 D問題 第60問

糖尿病患者に中心静脈栄養を開始した。速効型インスリンを混和した輸液で血糖値が安定したため,ブドウ糖とインスリンの割合を維持したまま明日から投与熱量を変更することとした。  明日からの輸液に混和すべき速効型インスリンの量を求めよ。  ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。 基本に使用する輸液の組成 投与量 混和する 速効型 インスリン量 Na+ K+ ブドウ糖 アミノ酸 mEq/L %(g/dL) mL/ 日 単位/ 日 本日まで 60 10 7.5 0 1,000 5 明日から 50 0 12 2 1,500 ① ② 解答:① ② 単位

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、中心静脈栄養に混ぜる速効型インスリンの量を求める計算問題だ。カギは「ブドウ糖とインスリンの割合を維持する」という条件。表にはいろいろな数字が並んでいるけれど、どれが本当に必要かを見極めることが第一歩になる。
医学生医学生
Na+やK+、アミノ酸まで変わっているので、全部計算に使うのかと身構えてしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだね。インスリン量に直結するのはブドウ糖の量だけ。使うのはブドウ糖濃度、1日の投与量、インスリン量の3つで十分だ。まず濃度の単位を確認しよう。%(g/dL)というのはどういう意味かな。
医学生医学生
100mLあたり何gか、ということですよね。7.5%なら100mLに7.5gです。
ドクタードクター
その通り。つまり1mLあたり0.075g。では本日までの1日のブドウ糖量は?
医学生医学生
1,000mLなので75gです。そこに5単位を混ぜて血糖が安定していた、と。
ドクタードクター
そう。75gに5単位だから、ブドウ糖15gあたりインスリン1単位という比になる。これがこの患者さんにとって実績のある比だ。では明日からのブドウ糖量は?
医学生医学生
12%を1,500mLなので、1,500×0.12で180gです。
ドクタードクター
いいね。あとは同じ比を当てはめるだけだ。
医学生医学生
180÷15で12単位。割り切れるので四捨五入もいりませんね。
ドクタードクター
正解。比例式で75:5=180:Xと立ててもいいし、ブドウ糖が2.4倍になるからインスリンも5×2.4で12単位、と考えてもいい。自分が一番ミスしにくい方法を1つ持っておくといいよ。
医学生医学生
薬理学の実習で投与量の計算をしたときも、単位換算でつまずく人が多かったです。%が出てきたらまずgに直す、と決めておけばよさそうですね。
ドクタードクター
それが鉄則だ。ついでに投与熱量の変化も見ておこう。ブドウ糖とアミノ酸をどちらも約4kcal/gとすると、本日までは75g×4で300kcal。明日からはブドウ糖180gで720kcal、そこにアミノ酸が2%×1,500mLで30g、つまり120kcalが加わって合計約840kcalになる。
医学生医学生
「投与熱量を変更する」というのは、かなり増やすということなんですね。
ドクタードクター
そう。そもそもなぜインスリンを混ぜるかというと、中心静脈栄養では高濃度のブドウ糖を持続的に入れるので、糖尿病の人や、手術・感染などのストレス下にある人では高血糖になりやすいからだ。輸液バッグに直接混ぜる方法と、別ルートから持続静注する方法がある。
医学生医学生
最初に混ぜる量には目安があるんですか。
ドクタードクター
開始時はブドウ糖5〜10gに1単位程度がよく目安にされるけれど、必要量はインスリン抵抗性や病態によって大きく違う。今回の患者さんは15gに1単位で安定していたのだから、その比を維持するのが合理的だ。もちろん実際には血糖値を頻回に測りながら調整していく。
医学生医学生
臨床実習で消化器外科を回ったとき、中心静脈栄養の患者さんの血糖を1日に何度も測っていたのを思い出しました。
ドクタードクター
それが現場の姿だね。実地の注意点もいくつか挙げておこう。インスリンは輸液バッグや点滴チューブ、特にポリ塩化ビニル製のものに一部吸着されるので、混ぜた量がそのまま体に入るとは限らない。また熱量を増やすときは一気に上げず、段階的に増やしながら血糖を確認する。
医学生医学生
長く食事がとれなかった人だと、リフィーディング症候群も心配ですよね。
ドクタードクター
その通り。栄養再開時に低リン血症や低カリウム血症が起こりうる。インスリンはブドウ糖と一緒にカリウムを細胞内へ取り込ませるから、今回のようにK+を含まない輸液に切り替えるなら、血清カリウムの推移にも目を配る必要がある。計算で使わなかった数字も、臨床ではちゃんと意味を持っているんだ。
医学生医学生
計算問題では読み飛ばしていい数字でも、患者さんを診るときには読み飛ばせない、ということですね。

まとめ

中心静脈栄養に混和する速効型インスリンの量は、ブドウ糖量との比を一定に保つ考え方で求められます。%(g/dL)表示の濃度は「投与量(mL)×濃度/100」でグラム数に換算し、本日までの1,000mL×7.5%=75gに5単位からブドウ糖15gあたり1単位という比を出し、明日からの1,500mL×12%=180gに当てはめると12単位となります。Na+、K+、アミノ酸の値はこの計算には不要ですが、K+を含まない輸液への変更やインスリンによるカリウムの細胞内移行、リフィーディング症候群など、臨床管理上は重要な情報です。開始時の目安はブドウ糖5〜10gに1単位程度とされるものの必要量は個人差が大きく、インスリンの輸液ラインへの吸着も踏まえて、血糖を頻回に測定しながら調整します。単位換算と比例計算を確実にこなす力は、輸液や薬剤投与量の設定といった日常診療の安全に直結します。

解答・解説

正解は12 単位です

問題の要点

輸液に混ぜる速効型インスリンの量を、「ブドウ糖量とインスリン量の比を一定に保つ」という条件で求める問題である。表にはNa+、K+、アミノ酸の濃度も並んでいるが、本問の計算に必要なのはブドウ糖濃度、1日投与量、インスリン量の3つだけである。

手順1:単位をそろえる

ブドウ糖濃度は%(g/dL)で示されているので、7.5%は100mLあたり7.5g、すなわち1mLあたり0.075gである。同様に12%は1mLあたり0.12gである。

手順2:本日までのブドウ糖量とインスリン比

ブドウ糖量=1,000mL/日 × 0.075g/mL=75g/日 これに5単位/日の速効型インスリンを混和して血糖が安定していたので、比は 75g:5単位=ブドウ糖15gあたりインスリン1単位 である。

手順3:明日からのブドウ糖量

ブドウ糖量=1,500mL/日 × 0.12g/mL=180g/日

手順4:同じ比でインスリン量を求める

明日からのインスリン量をX単位とすると、 75:5=180:X X=180 × 5 ÷ 75=12(単位) (別の見方:180g ÷ 15g/単位=12単位、あるいはブドウ糖量が180÷75=2.4倍になるのでインスリンも5×2.4=12単位) 割り切れるので四捨五入の必要はなく、答えは 12 単位である。

参考:投与熱量の変化

ブドウ糖とアミノ酸はいずれも約4kcal/gとして計算すると、本日まではブドウ糖75g×4=300kcal/日、明日からはブドウ糖180g×4=720kcalにアミノ酸(2%×1,500mL=30g)30g×4=120kcalが加わり、合計約840kcal/日となる。問題文の「投与熱量を変更する」とはこの増量を指している。

中心静脈栄養(TPN)と血糖管理

中心静脈栄養(TPN:total parenteral nutrition)では高濃度のブドウ糖を持続投与するため、糖尿病患者や手術・感染などのストレス下にある患者では高血糖をきたしやすい。対策として、輸液バッグに速効型インスリンを直接混和する方法や、インスリンを別ルートから持続静注する方法がとられる。

インスリン混和量の目安

開始時の目安としてブドウ糖5〜10gに対して速効型インスリン1単位程度がしばしば用いられるが、必要量はインスリン抵抗性や病態によって大きく異なるため、実際には血糖値を頻回に測定しながら調整する。本問の患者ではブドウ糖15gに1単位という比で血糖が安定していたので、その比を維持する。

実地での注意点

・インスリンは輸液バッグや点滴チューブの内面(特にポリ塩化ビニル製)に一部吸着されるため、実際に体内に入る量は混和量より少なくなることがある。 ・投与熱量を増やす際は急激に増やさず、段階的に増量しながら血糖を確認する。長期の低栄養患者ではリフィーディング症候群(栄養再開時の低リン血症、低カリウム血症など)にも注意する。 ・インスリンはブドウ糖とともにカリウムを細胞内に取り込ませるため、K+を含まない輸液を用いる場合は血清カリウム値の推移も確認が必要である。

POINT

・%(g/dL)表示の濃度は「mL × 濃度/100」でグラム数に換算する。 ・本日まで:1,000mL×7.5%=75g に5単位 → ブドウ糖15gあたり1単位。 ・明日から:1,500mL×12%=180g → 180÷15=12単位。 ・Na+、K+、アミノ酸の値は本問の計算には不要であり、惑わされないこと。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。