StudyMed医師国家試験

うぶ毛だけが逆向きに動く―外表所見で読み解く新生児の成熟度

第111回医師国家試験 B問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第111回 B問題 第29問

正期産児より早産児にみられる所見はどれか。

  1. a.うぶ毛が多い。
  2. b.耳介軟骨が厚い。
  3. c.皮下脂肪が厚い。
  4. d.皮膚角化層が厚い。
  5. e.足底のしわが多い。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、新生児の外表所見から成熟度、つまり在胎週数を推定する問題だ。着眼点はシンプルで、胎児が成熟するにつれて「増える・厚くなるもの」と「減っていくもの」を区別できるかどうか。この軸で選択肢を眺めてみよう。
医学生医学生
早産児は全体的に未熟なので、何でも「少ない・薄い」と考えればいいでしょうか。
ドクタードクター
大筋はその発想でいい。ただ、ひとつだけ例外がある。それが今回の答えに直結するんだ。まず定義を確認しておこう。早産児と正期産児の在胎週数の境目は覚えているかな。
医学生医学生
正期産が37週0日から41週6日、早産が22週0日から36週6日です。CBTの直前に語呂で覚えました。
ドクタードクター
完璧だね。では、皮下脂肪はどうだろう。
医学生医学生
皮下脂肪は妊娠後期にたまるので、正期産児のほうが厚いはずです。NICUの見学で見た早産児は、すごく細くて皮膚にしわが寄っていました。
ドクタードクター
その通り。皮下脂肪は主に30週以降に急速に蓄積する。だから早産児は痩せて見え、体温を保つ脂肪が乏しいので低体温になりやすい。皮膚の角化層も同じ流れだ。
医学生医学生
角化層も妊娠後期に厚くなるんですね。早産児の皮膚が赤くて透けて見えるのはそのせいですか。
ドクタードクター
そう。早産児の皮膚は薄く、ゼラチン状で血管が透けて見える。角化層が未発達だとバリア機能が弱く、皮膚から水分が蒸発しやすい、つまり不感蒸泄が多くなる。一方、正期産児では皮膚が厚く不透明になり、落屑やひび割れが見られることもある。
医学生医学生
耳介軟骨も、成熟するほど厚くなる側ですよね。
ドクタードクター
正解。正期産児の耳介は軟骨がしっかりしていて、折り曲げてもすぐ元に戻る。早産児では軟骨が薄く柔らかいので、耳が平たく、折り曲げると戻りが遅いか戻らない。足底のしわはどうかな。
医学生医学生
しわというと、つい未熟な皮膚のイメージで早産児に多いのかと思ってしまいます。
ドクタードクター
そこはひっかけやすいところだね。足底のしわ、足底溝は成熟の指標で、最初はつま先側に少しだけ現れ、在胎週数が進むにつれて踵側へ広がる。正期産児では足底全体にしわがある。だから多いのは正期産児のほうだ。
医学生医学生
ということは、残ったうぶ毛が逆向きの所見なんですね。
ドクタードクター
その通り、これが正解だ。うぶ毛、つまり胎毛は妊娠20週ごろから全身に生え始め、28週前後に最も多くなる。その後は妊娠末期にかけて抜け落ち、正期産児では肩や背中にわずかに残る程度になる。だから正期産児と比べると、早産児のほうがうぶ毛が多い。
医学生医学生
成熟とともに減る所見はうぶ毛だけですか。
ドクタードクター
ほかに皮膚の透明感も成熟とともに失われるし、胎脂も妊娠末期、特に過期産では減っていく。ちなみに24週未満のごく早い早産児では、うぶ毛がまだ生えそろっておらず乏しいこともある。ただ一般的な早産児と正期産児を比べるなら、早産児で多いと押さえておけばいい。
医学生医学生
こうした所見を点数化して在胎週数を推定するのが、小児科の講義で出てきたDubowitz法やNew Ballard法でしたね。
ドクタードクター
そう。外表所見として皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳房、耳介、外性器を、神経学的所見として姿勢や筋緊張、関節の角度を評価する。乳房は成熟すると乳輪が隆起し乳腺組織を触れるようになるし、男児では精巣が陰嚢内に下降して陰嚢のしわが増える。神経学的には、早産児は四肢を伸ばした姿勢で筋緊張が低く、腕を反対側の肩へ引くと肘が正中を大きく越えるスカーフ徴候が目立つ。
医学生医学生
外表の特徴を見れば、管理で気をつけるべき点もわかりそうです。
ドクタードクター
まさにそこが臨床的に大事な点だ。皮下脂肪が乏しく角化層が薄いということは、低体温、水分喪失、皮膚損傷が起こりやすいということ。だから早産児は保育器で保温と加湿を行い、テープの貼り方ひとつにも気を配る。所見の暗記で終わらせず、その所見が児の生理にどう影響するかまで結びつけておこう。

まとめ

新生児の成熟度は、皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳房、耳介、外性器などの外表所見と、姿勢や筋緊張などの神経学的所見を組み合わせたDubowitz法やNew Ballard法で評価します。皮下脂肪、皮膚角化層、耳介軟骨、足底のしわ、乳輪・乳腺、陰嚢のしわは成熟とともに増える・厚くなる所見であり、正期産児の特徴です。これに対し、うぶ毛は妊娠28週前後に最も多くなった後、妊娠末期に抜け落ちて減るため、正期産児より早産児で多く見られます。早産児の皮下脂肪や角化層の乏しさは、低体温や不感蒸泄の増加、皮膚損傷につながるため、保育器での保温・加湿が欠かせません。「成熟で増えるもの」と「減るもの」を整理しておくことは、在胎週数の推定だけでなく早産児管理の理解にも役立ちます。

解答・解説

正解はaです

テーマ

新生児の外表所見から成熟度(在胎週数)を推定する考え方を問う問題である。早産児は妊娠22週0日〜36週6日、正期産児は37週0日〜41週6日に生まれた児をいう。在胎週数が不明確な場合や、発育の評価を行う場合には、外表所見(皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳房、耳介、外性器)と神経学的所見(姿勢、筋緊張、関節の角度など)を点数化する Dubowitz 法や New Ballard 法で成熟度を評価する。

正解を導く考え方

胎児は妊娠後期に向かって、皮下脂肪の蓄積、皮膚の角化・肥厚、耳介軟骨の発達、足底のしわの増加といった「成熟に伴って増える・厚くなる」変化を示す。一方、うぶ毛(胎毛、lanugo)は妊娠中期に全身に生え、その後妊娠末期にかけて抜け落ちて減っていく「成熟に伴って減る」所見である。したがって、正期産児より早産児で目立つのは、うぶ毛が多いことである。他の選択肢はいずれも成熟が進んだ児(正期産児)の特徴である。

選択肢考察

  1. ○a.  うぶ毛が多い。

    うぶ毛(胎毛)は妊娠20週ごろから全身に生え始め、妊娠28週前後に最も多くなる。その後は妊娠末期にかけて抜け落ち、正期産児では肩や背部などにわずかに残る程度となる。そのため、早産児(特に在胎28〜34週ごろ)では全身にうぶ毛が多く見られ、未熟性を示す所見となる。なお、New Ballard 法では妊娠24週未満の極端な早産児ではうぶ毛がまだ乏しいとされるが、一般的な早産児と正期産児を比べれば、早産児の方がうぶ毛が多い。

  2. ×b.  耳介軟骨が厚い。

    耳介軟骨は在胎週数が進むにつれて発達し、厚く硬くなる。正期産児の耳介はしっかりした形を保ち、折り曲げてもすぐに元に戻る。早産児では軟骨が薄く柔らかいため、耳介が平たく、折り曲げると戻りが遅い(あるいは戻らない)。耳介軟骨が厚いのは成熟した児の所見である。

  3. ×c.  皮下脂肪が厚い。

    皮下脂肪は主に妊娠後期(特に30週以降)に急速に蓄積する。正期産児は皮下脂肪によりふっくらした体型となり、体温保持にも役立つ。早産児では皮下脂肪が乏しく、皮膚にしわが寄って痩せて見え、低体温になりやすい。皮下脂肪が厚いのは成熟した児の所見である。

  4. ×d.  皮膚角化層が厚い。

    表皮の角化層は妊娠後期に発達して厚くなり、皮膚のバリア機能が整う。早産児では角化層が薄いため、皮膚が赤くゼラチン状で透明感があり、皮下の血管が透けて見える。また水分が皮膚から蒸発しやすい(不感蒸泄が多い)。正期産児では皮膚が厚くなり、表面の落屑やひび割れが見られることもある。角化層が厚いのは成熟した児の所見である。

  5. ×e.  足底のしわが多い。

    足底のしわ(足底溝)は、まず足底の前方(つま先側)に現れ、在胎週数が進むにつれて踵側へ広がり、正期産児では足底全体に見られるようになる。早産児ではしわが少なく、前方の一部にとどまる。足底のしわが多いのは成熟した児の所見である。

成熟度評価で用いる主な外表所見の変化(未熟 → 成熟)

・皮膚:薄く赤く透明で血管が透見できる → 厚く不透明になり、落屑・ひび割れが見られる ・うぶ毛:妊娠中期に全身に増加 → 妊娠末期に減少し、正期産では一部に残るのみ ・胎脂:妊娠中期から蓄積 → 妊娠末期(特に過期産)には減少 ・足底のしわ:少ない、前方のみ → 足底全体に及ぶ ・乳房(乳輪・乳腺):乳輪が目立たず乳腺組織を触れない → 乳輪が隆起し乳腺組織を触れる ・耳介:軟骨が薄く平たく、折り曲げると戻りにくい → 軟骨が厚く硬く、すぐ戻る ・外性器:男児は精巣が未下降で陰嚢のしわが少ない → 精巣が陰嚢内に下降し陰嚢のしわが多い。女児は陰核・小陰唇が目立つ → 大陰唇が発達して小陰唇・陰核を覆う

神経学的所見

成熟に伴い四肢の屈曲姿勢と筋緊張が強くなる。早産児は四肢を伸ばした姿勢をとり、スカーフ徴候(腕を反対側の肩へ引いたときに肘が正中を大きく越える)や膝窩角が大きいなど、筋緊張の低さが目立つ。

早産児の外表の特徴が臨床上もつ意味

皮下脂肪や角化層が乏しいことは、低体温や水分喪失(不感蒸泄の増加)、皮膚損傷の起こりやすさにつながるため、保育器による保温・加湿などの管理が必要となる。

POINT

・成熟に伴って増える・厚くなるもの:皮下脂肪、皮膚角化層、耳介軟骨、足底のしわ、乳輪・乳腺、陰嚢のしわ。 ・成熟に伴って減るもの:うぶ毛(妊娠28週前後が最多)、皮膚の透明感、胎脂(妊娠末期に減少)。 ・早産児の外表所見:うぶ毛が多い、皮膚が薄く赤く透明、皮下脂肪が乏しい、耳介が柔らかい、足底のしわが少ない。 ・成熟度評価法:Dubowitz 法、New Ballard 法(外表所見+神経学的所見)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。