「保健」「病院」の名前にだまされない―施設の設置根拠法を見抜くコツ
第110回医師国家試験 G問題 第30問
国試問題にチャレンジ
設置根拠が医療法によるのはどれか。
- a.保険薬局
- b.特定機能病院
- c.母子保健施設
- d.介護老人保健施設
- e.柔道整復師による施術所
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
医療法は病院・診療所・助産所の開設や基準を定める法律であり、その特別な類型として地域医療支援病院(都道府県知事承認)、特定機能病院・臨床研究中核病院(厚生労働大臣承認)を規定しています。特定機能病院は高度医療の提供・開発・研修を担う病院で、1992年の第2次医療法改正で創設され、大学病院本院の多くが承認されています。一方、薬局の開設許可は医薬品医療機器等法、保険薬局の指定は健康保険法、介護老人保健施設は介護保険法、母子保健施設は母子保健法、柔道整復の施術所は柔道整復師法に基づきます。医療法に名前が登場する「医療提供施設」と、医療法が設置根拠である施設とは区別が必要です。施設と根拠法の対応を整理しておくことは、地域の保健医療福祉制度を理解し、患者を適切な資源につなぐための基礎となります。
解答・解説
正解はbです
本問は、保健医療福祉に関わる各種施設が、どの法律に基づいて設けられているか(設置根拠法)を問う一般問題である。
考え方
医療法は、病院・診療所・助産所という医療施設の開設・管理・人員・構造設備の基準、医療計画、医療安全などを定める法律である。病院のうち特別な機能をもつものとして、医療法は「地域医療支援病院」「特定機能病院」「臨床研究中核病院」を規定しており、これらはいずれも医療法上の承認制度に基づく。 一方、選択肢にあるほかの施設は、それぞれの分野の個別法(健康保険法、母子保健法、介護保険法、柔道整復師法)に根拠がある。名前に「保健」「病院」「施術」など似た語が含まれていても、どの制度の中で位置づけられているかで判断する。
選択肢考察
- ×a. 保険薬局
誤り。保険薬局とは、健康保険などの公的医療保険を使った調剤(保険調剤)を行うことができる薬局であり、健康保険法に基づき厚生労働大臣(実務は地方厚生局長)の指定を受けたものである。なお、薬局そのものを開設するための許可は医薬品医療機器等法(薬機法、旧薬事法)に基づき都道府県知事などが与える。つまり「薬局」としての開設は薬機法、「保険薬局」としての指定は健康保険法が根拠であり、いずれにせよ医療法ではない。
- ○b. 特定機能病院
正しい。特定機能病院は、高度な医療の提供、高度な医療技術の開発・評価、高度な医療に関する研修を行う能力をもつ病院として、医療法に基づき厚生労働大臣の承認を受けた病院である。1992年の第2次医療法改正で創設された。主な承認要件として、400床以上の病床、原則として定められた主要診療科をそろえること、一定以上の紹介率・逆紹介率、医師・看護師などの手厚い人員配置、集中治療室・無菌病室などの設備、医療安全管理体制の整備などがあり、大学病院の本院の多くと国立がん研究センター中央病院などの一部の専門病院が承認されている。2016年以降、一部の特定機能病院で起きた重大な医療事故を受けて、医療安全管理責任者の配置や外部監査委員会の設置などガバナンスに関する要件が強化された。
- ×c. 母子保健施設
誤り。母子保健施設(かつての母子健康センター)は、母子保健法に基づいて市町村が設置する施設であり、妊産婦・乳幼児の健康相談や保健指導などを行う。その後の法改正で、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を行う母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)へと位置づけが改められ、さらに現在は児童福祉の相談機能と一体化したこども家庭センターへと再編が進められている。いずれも母子保健法(および児童福祉法)の枠組みの施設であり、医療法に基づくものではない。
- ×d. 介護老人保健施設
誤り。介護老人保健施設(老健)は、病状が安定した要介護者に対し、看護・医学的管理下での介護、機能訓練(リハビリテーション)などを提供して在宅復帰を支援する施設であり、介護保険法に基づき都道府県知事の開設許可を受ける介護保険施設である。1986年に老人保健法によって創設されたが、2000年の介護保険制度施行に伴い根拠法が介護保険法に移った。医療法では「医療提供施設」の一つとして名前が挙げられているが、施設の開設・基準を定める根拠法は介護保険法である。
- ×e. 柔道整復師による施術所
誤り。柔道整復師が打撲・捻挫・脱臼・骨折などに対して施術を行う施術所(接骨院・整骨院などと呼ばれる)は、柔道整復師法に規定され、開設時には都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)への届出が必要である。同様に、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の施術所(鍼灸院・治療院など)は「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(あはき法)に規定される。これらは医療法上の病院・診療所には含まれない。
医療法が定める主な施設
・病院:医師・歯科医師が医業を行う場所で、20人以上の患者を入院させるための施設を有するもの。 ・診療所:入院施設をもたないか、19人以下の入院施設をもつもの。 ・助産所:助産師が業務を行う場所で、入所施設は9人以下。 ・地域医療支援病院:紹介患者への医療提供、医療機器の共同利用、救急医療、地域の医療従事者の研修などを担う病院。都道府県知事が承認する。原則200床以上。1997年の第3次医療法改正で創設。 ・特定機能病院:高度医療の提供・開発・研修を担う病院。厚生労働大臣が承認する。400床以上。1992年の第2次医療法改正で創設。 ・臨床研究中核病院:日本発の革新的医薬品・医療機器の開発に必要な質の高い臨床研究や治験を推進する中心的な病院。厚生労働大臣が承認する。2015年施行の医療法改正で創設。
主な施設とその根拠法
・保健所:地域保健法 ・市町村保健センター:地域保健法 ・薬局(開設許可):医薬品医療機器等法 ・保険医療機関・保険薬局(指定):健康保険法 ・介護老人保健施設、介護医療院、介護老人福祉施設(特別養護老人ホームのうち指定を受けたもの):介護保険法 ・特別養護老人ホーム:老人福祉法 ・母子保健施設、母子健康包括支援センター:母子保健法 ・柔道整復の施術所:柔道整復師法 ・あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの施術所:あはき法
医療法上の「医療提供施設」
医療法では、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院・調剤を行う薬局などを「医療提供施設」と総称している。名称が医療法に登場することと、設置・開設の根拠法が医療法であることは別であり、混同しないよう注意する。
POINT
・医療法に基づく施設:病院、診療所、助産所、およびその特別類型である地域医療支援病院(都道府県知事承認)、特定機能病院(厚生労働大臣承認)、臨床研究中核病院(厚生労働大臣承認)。 ・保険薬局は健康保険法、薬局の開設許可は医薬品医療機器等法に基づく。 ・介護老人保健施設は介護保険法(もとは老人保健法)に基づく。 ・母子保健施設は母子保健法、柔道整復の施術所は柔道整復師法に基づく。
