腹痛の夜に病院を探す―「医療情報ネット」を支える医療法の役割
第110回医師国家試験 F問題 第20問
国試問題にチャレンジ
28歳の女性。突然の腹痛を自覚したため受診できる医療機関をインターネットで探したところ,都道府県のウェブサイトで内科の診療所や病院を検索できるようになっていた。この情報提供システムは,法律に基づいて設置されていると記載されていた。 根拠法として正しいのはどれか。
- a.医師法
- b.医療法
- c.介護保険法
- d.健康保険法
- e.地域保健法
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
都道府県などが医療機関の診療科目や診療時間、対応可能な疾患、設備などをインターネットで公表する医療機能情報提供制度(医療情報ネット)は、医療法に基づく制度です。第5次医療法改正で創設され、医療機関の管理者が都道府県知事に情報を報告し、行政がそれを公表して住民の医療機関選択を支援します。2024年4月からは全国統一システム「ナビイ」に移行しましたが、根拠法は変わりません。医師法は資格(人)、医療法は施設と医療提供体制を定めるという区別に加え、薬局は薬機法、介護事業所は介護保険法と、類似の情報公表制度の根拠法の違いも押さえておくと、法規の問題で迷いにくくなります。
解答・解説
正解はbです
問われていること
患者がインターネット上で、都道府県が提供する仕組みを使って診療所や病院を検索できるシステムの根拠法を問う問題である。
考え方
このシステムは「医療機能情報提供制度」(一般に「医療情報ネット」と呼ばれる)である。住民・患者が自分に合った医療機関を適切に選べるよう支援することを目的とし、2006年(平成18年)の第5次医療法改正で創設され、2007年4月から施行された。 制度の骨組みは次のとおりである。 ・病院・診療所・助産所の管理者は、診療科目、診療日・診療時間、対応できる疾患や治療内容、設備、人員配置、医療安全対策などの情報を都道府県知事に報告する義務を負う。 ・都道府県は報告された情報を集約し、住民にわかりやすく公表する(ウェブサイトでの検索システムなど)。 ・医療機関も同じ情報を院内で閲覧できるようにしておく。 医療機関(病院・診療所)の開設や管理、医療提供体制、医療に関する情報提供などを定める法律は医療法であり、本問の根拠法は医療法となる。 なお、2024年4月からは都道府県ごとに運営されていたシステムが統合され、厚生労働省が運営する全国統一の検索サイト「医療情報ネット(ナビイ)」として提供されている。根拠法が医療法であることは変わらない。
選択肢考察
- ×a. 医師法
医師法は医師という「資格・職業」について定めた法律であり、医師の任務、免許、国家試験、臨床研修、業務上の義務(応招義務、診断書の交付義務、異状死体の届出義務、診療録の記載・保存義務など)や罰則を規定している。病院・診療所という施設の情報提供については定めていない。
- ○b. 医療法
医療法は、病院・診療所・助産所の開設や管理、人員・構造設備の基準、医療計画などの医療提供体制、医療安全、医療に関する情報提供について定める法律である。医療機能情報提供制度(医療情報ネット)は第5次医療法改正で創設され、医療機関に都道府県知事への報告義務を課し、都道府県がそれを公表する仕組みとなっている。
- ×c. 介護保険法
介護保険法は、40歳以上が加入する介護保険制度について、保険者(市町村・特別区)、被保険者、要介護認定、介護サービスの給付などを定める法律である。介護サービス事業所の情報を公表する「介護サービス情報公表制度」はこの法律に基づくが、内科の診療所や病院を探す仕組みの根拠法ではない。
- ×d. 健康保険法
健康保険法は、被用者(会社員など)とその被扶養者を対象とする医療保険制度について、保険者、保険給付、保険料などを定める法律である。医療機関の情報提供システムについての規定はない。
- ×e. 地域保健法
地域保健法は、1994年に保健所法を改正・改称して成立した法律で、保健所や市町村保健センターの設置、地域保健対策の基本指針などを定めている。医療機関の検索システムの根拠法ではない。
医療機能情報提供制度(医療情報ネット)
・目的: 住民・患者による医療機関の適切な選択の支援。 ・創設: 第5次医療法改正(2006年成立、2007年4月施行)。 ・報告義務: 病院・診療所・助産所の管理者が、所在地の都道府県知事へ定期的に報告し、変更があれば随時報告する。 ・公表: 都道府県がインターネット等で公表してきたが、2024年4月からは全国統一システム「医療情報ネット(ナビイ)」に移行した。 ・類似制度: 薬局については医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく薬局機能情報提供制度、介護事業所については介護保険法に基づく介護サービス情報公表制度がある。
医療法の主な改正
・第1次(1985年): 医療計画制度の導入(二次医療圏の設定、病床規制)。 ・第2次(1992年): 特定機能病院、療養型病床群の制度化。 ・第3次(1997年): 地域医療支援病院の創設、インフォームド・コンセントの努力義務の明記。 ・第4次(2000年): 病床区分の見直し(「その他の病床」を一般病床と療養病床に区分)など。 ・第5次(2006年): 医療機能情報提供制度の創設、医療計画への4疾病5事業の明記、医療安全体制の確保の義務化など。 ・第6次(2014年): 病床機能報告制度と地域医療構想、在宅医療の推進、特定機能病院の承認の更新制、医師・看護職員の確保対策、勤務環境の改善、医療事故調査制度の創設、臨床研究の推進、医療法人制度の見直しなど。
医療関係法規の整理
・施設や医療提供体制に関するもの: 医療法。 ・資格(人)に関するもの: 医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法、薬剤師法など。 ・なお、医師の卒後臨床研修の必修化は医療法ではなく、2000年の医師法改正によって定められ、2004年4月から施行された。 ・保険制度に関するもの: 健康保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、介護保険法など。 ・保健活動に関するもの: 地域保健法、健康増進法、母子保健法など。
POINT
・医療機関の情報を住民に提供する医療機能情報提供制度(医療情報ネット)の根拠法は医療法である。 ・第5次医療法改正(2007年施行)で創設され、医療機関は都道府県知事に情報を報告し、行政が公表する。 ・2024年4月から全国統一システム「医療情報ネット(ナビイ)」に移行している。 ・薬局の情報提供は薬機法、介護サービス事業所の情報公表は介護保険法に基づく。 ・医師法は「人(資格)」、医療法は「施設・医療提供体制」を規定する。
