5つの抗体を見分ける鍵―「最初に来るIgM」と「4兄弟のIgG」
第110回医師国家試験 E問題 第37問
国試問題にチャレンジ
ヒト免疫グロブリンとその特徴の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.IgA ―― 胎盤通過性を有する。
- b.IgD ―― 5量体を形成する。
- c.IgE ―― Ⅲ型アレルギーに関与する。
- d.IgG ―― 4つのサブクラスがある。
- e.IgM ―― 感染早期に産生される。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
ヒト免疫グロブリンはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5クラスに分かれ、構造・胎盤通過性・産生時期・関与するアレルギー型で整理すると見分けやすくなります。5量体を形成するのはIgM、分泌型IgAは2量体で、胎盤をFcRnを介して通過できるのはIgGのみです。IgEはⅠ型アレルギーの主役で、Ⅲ型の免疫複合体には主にIgGやIgMが関わります。IgGにはIgG1〜IgG4の4サブクラスがありIgG4関連疾患でも重要で、IgMは一次免疫応答で最初に産生されるため、特異的IgM陽性は最近の感染を示唆します。こうした抗体の性質は、血清診断、先天感染の評価、乳児期の生理的低γグロブリン血症の理解など、日常臨床の判断の基盤になります。
解答・解説
正解はd, eです
ヒトの免疫グロブリン(Ig:抗体)は、重鎖(H鎖)定常部の構造によってIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つのクラス(アイソタイプ)に分けられる。本問は、各クラスの構造(単量体か多量体か)、胎盤通過性、サブクラス、産生のタイミング、関与するアレルギーの型(Gell-Coombs分類)を正しく対応づけられるかを問う。 考え方としては、各クラスの「代表的な特徴」を一つずつ思い出して照合すればよい。 ・胎盤を通過できるのはIgGだけである(胎盤の新生児Fc受容体〈FcRn〉を介して能動的に輸送される)。 ・5量体を作るのはIgMである(分泌型IgAは2量体)。 ・IgEはⅠ型(即時型)アレルギーの主役であり、Ⅲ型(免疫複合体型)はIgG・IgMなどが抗原と複合体を作って起こす。 ・IgGにはIgG1〜IgG4の4サブクラスがある。 ・感染などの一次免疫応答で最初に作られるのはIgMで、その後クラススイッチによりIgGへ移行する。 これらに照らすと、組合せとして正しいのはdとeである。
選択肢考察
- ×a. IgA ―― 胎盤通過性を有する。
誤り。胎盤を通過する免疫グロブリンはIgGのみである。IgGのFc部分が胎盤の合胞体栄養膜細胞にあるFcRn(新生児Fc受容体)に結合して胎児側へ運ばれるが、IgAにはこの輸送経路がない。IgAは血清中では主に単量体として存在し、粘膜面や外分泌液(唾液、涙、腸液、母乳など)では J鎖と分泌成分(secretory component)を伴う2量体の分泌型IgAとして働き、粘膜防御を担う。新生児へは胎盤ではなく母乳(特に初乳)を介して受け渡され、消化管の局所免疫に役立つ。
- ×b. IgD ―― 5量体を形成する。
誤り。5量体を形成するのはIgMである(J鎖で5つの単量体が結合した構造で、抗原結合部位を10個もつ)。IgDは単量体で、血中濃度はごく低い。主に成熟したナイーブB細胞の表面にIgMとともに抗原受容体(B細胞受容体)として発現し、B細胞の活性化・分化の調節に関与すると考えられているが、その生理的役割は十分に解明されていない。
- ×c. IgE ―― Ⅲ型アレルギーに関与する。
誤り。IgEが関与するのはⅠ型(即時型、アナフィラキシー型)アレルギーである。IgEは肥満細胞や好塩基球の高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合しており、そこに抗原(アレルゲン)が結合して受容体が架橋されると、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アナフィラキシーなどが起こる。Ⅲ型アレルギーは抗原と抗体(主にIgG、ほかにIgMなど)からなる免疫複合体が組織に沈着し、補体活性化と好中球浸潤によって組織傷害を起こす機序であり、血清病、全身性エリテマトーデス(SLE)のループス腎炎、溶連菌感染後急性糸球体腎炎などが代表である。
- ○d. IgG ―― 4つのサブクラスがある。
正しい。IgGは重鎖(γ鎖)の構造の違いによりIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の4つのサブクラスに分かれる。血中ではIgG1が最も多く、IgG4は最も少ない。サブクラスごとに性質が異なり、例えば補体活性化能はIgG3とIgG1で強く、IgG4はほとんどない。IgG4は、血清IgG4高値と組織へのIgG4陽性形質細胞浸潤・線維化を特徴とするIgG4関連疾患(自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、Mikulicz病など)との関係で臨床的に重要である。なおIgAにもIgA1・IgA2の2サブクラスがある。
- ○e. IgM ―― 感染早期に産生される。
正しい。抗原に初めて曝露されたときの一次免疫応答では、B細胞はまずIgMを産生し、その後ヘルパーT細胞の助けを受けてクラススイッチが起こり、IgG(あるいはIgA、IgE)の産生へと移行する。このため、病原体特異的IgM抗体が陽性であれば最近の(急性期の)感染を示唆し、IgG抗体のみ陽性であれば既往感染やワクチン接種後を示唆する、という血清診断の考え方につながる。IgMは5量体で抗原結合価が高く、補体を強力に活性化するため、初期の防御に適している。
免疫グロブリン各クラスの特徴の整理
・IgG:単量体。血清中で最も多い(全Igの約70〜75%)。胎盤を通過する唯一のIg。二次免疫応答の主体。4サブクラス(IgG1〜4)。オプソニン作用、補体活性化(古典経路)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に関与。Ⅱ型・Ⅲ型アレルギーに関与。 ・IgA:血清中は主に単量体、分泌型は2量体(J鎖+分泌成分)。唾液・涙・腸液・母乳など外分泌液中に多く、粘膜免疫の中心。2サブクラス(IgA1、IgA2)。 ・IgM:5量体(J鎖を含む)で分子量が最大。一次免疫応答で最初に産生される。補体活性化能が強い。分子が大きいため胎盤を通過しない。ABO血液型の自然抗体(同種凝集素)は主にIgM。 ・IgD:単量体。血中濃度はごくわずか。ナイーブB細胞表面に抗原受容体として発現する。 ・IgE:単量体。血中濃度は最も低い。肥満細胞・好塩基球のFcεRIに結合し、Ⅰ型アレルギーや寄生虫感染防御に関与する。
Gell-Coombs分類(アレルギーの4型)
・Ⅰ型(即時型):IgE、肥満細胞。例:アナフィラキシー、花粉症、気管支喘息。 ・Ⅱ型(細胞傷害型):IgG・IgMが細胞表面抗原に結合。例:自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、Goodpasture症候群。 ・Ⅲ型(免疫複合体型):IgG・IgMなどの免疫複合体が沈着。例:血清病、SLE、急性糸球体腎炎。 ・Ⅳ型(遅延型):T細胞が主体で抗体は関与しない。例:ツベルクリン反応、接触皮膚炎。 ※Basedow病のような刺激型抗体による機序をⅤ型として分ける考え方もある。
新生児・乳児の免疫
母体由来のIgGは生後数か月で減少し、生後3〜6か月頃に血清IgGが最低となる(生理的低γグロブリン血症)。臍帯血でIgMが高値の場合は、胎児自身がIgMを産生したことを意味し、先天感染(TORCH症候群など)を示唆する。
POINT
・胎盤通過性があるのはIgGのみ(FcRnを介する)。 ・5量体はIgM、分泌型IgAは2量体。 ・IgEはⅠ型アレルギー、Ⅲ型は免疫複合体(主にIgG・IgM)。 ・IgGのサブクラスはIgG1〜IgG4の4つ。IgG4関連疾患も頻出。 ・一次免疫応答で最初に出るのはIgM→特異的IgM陽性は急性期(最近の)感染を示唆する。
