転院相談の席に誰を呼ぶ?―医療ソーシャルワーカーが担う「医療の外側」の支援
第110回医師国家試験 C問題 第9問
国試問題にチャレンジ
急性期病院から機能回復を目的とする病院への転院について患者および家族と相談することになった。 同席を依頼すべき院内の職種はどれか。
- a.保健師
- b.精神科医
- c.臨床心理士
- d.リスクマネジャー
- e.医療ソーシャルワーカー
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
急性期病院から回復期の病院への転院を相談する際には、病状説明に加えて、転院先の選定・受け入れ調整、医療費や生活費の不安、介護保険や身体障害者手帳などの制度利用、退院後の生活準備といった社会的・経済的課題への支援が欠かせません。これらを社会福祉の立場から担い、他機関との連絡調整を行うのが医療ソーシャルワーカー(MSW)で、多くは社会福祉士の資格をもちます。保健師は保健指導や地域の公衆衛生活動、精神科医は精神疾患の診療、臨床心理士は心理支援、リスクマネジャーは医療安全管理と、それぞれの役割を区別して覚えることが重要です。回復期病棟には入院期間の上限があるため、急性期の段階から多職種で早めに調整を始めることが、患者さんの円滑な在宅復帰につながります。
解答・解説
正解はeです
急性期病院から回復期の病院(機能回復=リハビリテーションを目的とする病院、例:回復期リハビリテーション病棟をもつ病院)への転院を相談する場面で、どの職種に同席を求めるべきかを問う問題である。
転院相談で必要となる支援
転院にあたっては、医学的な説明(病状、今後の見通し、リハビリテーションの必要性)は主治医が行う。一方で、患者・家族には次のような医療以外の課題が生じる。 ・転院先の選定と受け入れ調整(病院の機能、入院できる期間、待機期間、通院・面会のしやすさ) ・医療費や生活費などの経済的な不安(高額療養費制度、傷病手当金などの利用) ・介護保険、身体障害者手帳などの社会保障制度の申請 ・回復期を経た後の自宅退院や施設入所に向けた準備
考え方
これらの社会的・経済的・心理社会的課題に対し、社会福祉の専門的立場から相談に応じ、他機関との連絡調整を担うのが医療ソーシャルワーカー(MSW:medical social worker)である。問題文には精神的な問題や医療事故をうかがわせる記載はなく、一般的な転院の相談であるから、同席を依頼すべきは医療ソーシャルワーカーである。
選択肢考察
- ×a. 保健師
誤り。保健師は保健師助産師看護師法で「厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」と定められている。主に保健所・市町村保健センター・事業所などで、健康教育、健康相談、疾病予防、母子保健や地域の公衆衛生活動を担う職種であり、病院内での転院調整は主な役割ではない。
- ×b. 精神科医
誤り。精神科医は精神疾患の診断・治療を担う医師である。本問では患者に精神症状や精神疾患を示唆する記載がなく、転院の相談に精神科医が同席する必要はない。せん妄やうつ状態などが問題となる場合には別途コンサルテーションを考慮する。
- ×c. 臨床心理士
誤り。臨床心理士は心理検査(心理アセスメント)やカウンセリングなどの心理的援助を行う専門職であり、転院先の調整や社会制度の案内は担当しない。本問では患者・家族の心理的問題をうかがわせる記載もなく、同席は不要である。なお臨床心理士は民間の学会系団体が認定する資格であり、心理職の国家資格としては2017年に施行された公認心理師法による公認心理師がある。
- ×d. リスクマネジャー
誤り。リスクマネジャー(医療安全管理者)は、医療事故の予防、インシデント・アクシデント報告の収集と分析、再発防止策の立案など、病院の医療安全管理を担う。医療事故への対応が問題となる場面ではないため、一般的な転院相談に同席する必要はない。
- ○e. 医療ソーシャルワーカー
正しい。医療ソーシャルワーカーは保健医療機関において、社会福祉の立場から患者・家族の経済的・心理的・社会的問題の解決を支援し、社会復帰を援助する専門職である。厚生労働省の医療ソーシャルワーカー業務指針では、療養中の心理的・社会的問題の解決・調整援助、退院援助、社会復帰援助、受診・受療援助、経済的問題の解決・調整援助、地域活動が業務として挙げられている。転院先の病院の情報提供・紹介と受け入れ調整、医療費や介護保険などの制度の案内、回復期を経た後の在宅生活に向けた準備まで見据えて支援できるため、転院相談の場への同席がふさわしい。多くは社会福祉士(国家資格)や精神保健福祉士の資格をもつ。
医療機関の病期別機能
・急性期:発症直後の診断と集中的治療を行う。在院日数は短い。 ・回復期:回復期リハビリテーション病棟などで、脳卒中・大腿骨頸部骨折などの患者に集中的なリハビリテーションを行い、日常生活動作(ADL)の改善と在宅復帰を目指す。疾患ごとに入院できる期間の上限が定められている。 ・慢性期:療養病床などで長期療養を行う。 ・在宅・介護:訪問診療・訪問看護・介護保険サービスなどで生活を支える。
転院・退院支援に関わる主な職種
・医療ソーシャルワーカー:社会福祉の立場から転院・退院調整、制度利用の支援、経済的問題の相談を行う。 ・退院調整(退院支援)看護師:看護の立場から療養上の課題を評価し、在宅療養や転院の準備を支援する。 ・介護支援専門員(ケアマネジャー):介護保険のケアプランを作成し、在宅サービスを調整する(主に院外・地域の職種)。 ・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:機能評価とリハビリテーションの情報を転院先へ引き継ぐ。
まぎらわしい職種の整理
・保健師:保健指導・公衆衛生活動(地域が主な活動の場) ・臨床心理士/公認心理師:心理検査・心理面接などの心理支援 ・リスクマネジャー:医療安全管理 ・精神保健福祉士:精神障害者の社会復帰に関する相談援助(国家資格)
POINT
・転院・退院の調整、社会保障制度・経済的問題の相談は医療ソーシャルワーカー(MSW)が担う。 ・MSWは社会福祉の立場から患者・家族を支援し、多くは社会福祉士の資格をもつ。 ・保健師=保健指導、臨床心理士=心理支援、リスクマネジャー=医療安全管理と、各職種の役割を区別して覚える。
