Na+とK+の数字で見抜く「維持液」―輸液表を読み解く基本の型
第110回医師国家試験 B問題 第5問
国試問題にチャレンジ
輸液製剤で維持液に分類されるのはどれか。 Na+ (mEq/L) K+ (mEq/L) Cl- (mEq/L) Lactate- (mEq/L) ブトウ糖 (%) a 154 0 154 0 0 b 130 4 109 28 5 c 90 0 70 20 2.6 d 45 17 37 20 5 e 0 0 0 0 5
- a.154 0 154 0 0
- b.130 4 109 28 5
- c.90 0 70 20 2.6
- d.45 17 37 20 5
- e.0 0 0 0 5
対話形式の解説
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医学生まとめ
輸液製剤は、Na+濃度とK+の有無で整理すると見分けやすくなります。Na+ 154のみなら生理食塩液、Na+約130でK+・乳酸を含めば細胞外液補充液(リンゲル液)、電解質なしのブドウ糖のみなら5%ブドウ糖液です。低張電解質輸液のうち、K+を含まないものが開始液(1号液)、K+を約20 mEq/L含みNa+が35〜50 mEq/L程度のものが維持液(3号液)です。維持液の組成は、成人の1日必要量(水分約2 L、Na+約50〜100 mEq、K+約40 mEq)を2 Lに溶かした値に対応しており、計算で理解できます。製剤ごとの体液分布と用途の違いを押さえることは、周術期管理や絶食患者の輸液計画を立てる基本になります。
解答・解説
正解はdです
輸液製剤は、含まれるナトリウム(Na+)濃度とカリウム(K+)の有無などによっておおまかに分類できる。表の組成から各製剤を同定するのが本問のポイントである。
分類の考え方
・Na+ 154 mEq/L、Cl- 154 mEq/Lのみ → 0.9%食塩水(生理食塩液)。 ・Na+ 約130 mEq/L前後で、K+・Ca2+・乳酸(または酢酸)を含み、細胞外液(血漿)の電解質組成に近い → 細胞外液補充液(リンゲル液系)。 ・Na+ が生理食塩液の1/2〜1/4程度に薄められ、ブドウ糖で浸透圧を補った製剤 → 低張電解質輸液(いわゆる1〜4号液)。このうちK+を含まないのが開始液(1号液)、K+を比較的多く含み1日の必要量を補うよう設計されたのが維持液(3号液)である。 ・電解質を含まずブドウ糖のみ → 5%ブドウ糖液。
維持液の設計
維持液は、経口摂取ができない患者に対し、1日に失われる水分と電解質(尿・不感蒸泄・便など)をちょうど補うことを目的とする。成人の1日必要量はおよそ水分 2,000 mL(30〜40 mL/kg)、Na+ 約1〜2 mEq/kg(体重50 kgで50〜100 mEq)、K+ 約1 mEq/kg(体重50 kgで約40 mEq)とされる。これらを2 Lの水に溶かすと、Na+ 約25〜50 mEq/L、K+ 約20 mEq/Lとなり、選択肢dの組成(Na+ 45、K+ 17)とよく一致する。実際にdを1日2 L投与すると、Na+ 90 mEq、K+ 34 mEqが補給され、1日の必要量をおおむね満たす。 したがって、Na+ が低めでK+ を十分に含み、ブドウ糖が加えられたdが維持液である。
選択肢考察
- ×a. 154 0 154 0 0
Na+ とCl- がいずれも154 mEq/Lで、他の成分を含まないため0.9%食塩水(生理食塩液)である。血漿とほぼ等張で、投与すると細胞外液(血管内と間質)にとどまるため、出血・脱水などで減少した細胞外液の補充に用いる。K+ を含まず、Na+ が多すぎるため、1日の水分・電解質を補う維持液としては不適切である。なおCl- が血漿(約100〜108 mEq/L)より多く、大量投与で高Cl性代謝性アシドーシスを起こしうる。
- ×b. 130 4 109 28 5
Na+ 130、K+ 4、Cl- 109、乳酸28 mEq/Lと、血漿の電解質組成に近く、さらにブドウ糖5%を含むことから、ブドウ糖加乳酸リンゲル液(細胞外液補充液)である。乳酸は肝臓で代謝されて重炭酸イオン(HCO3-)となりアシドーシスを補正する。細胞外液の補充に用いる製剤であり、Na+ が多くK+ が少ないため維持液ではない。
- ×c. 90 0 70 20 2.6
Na+ が90 mEq/Lと生理食塩液の約1/2〜2/3程度に薄められ、K+ を含まないことから開始液(1号液)である。K+ を含まないため、腎機能や血清K値がまだ分からない病態不明の患者や脱水患者に、最初に投与する輸液として用いられる(乏尿時の高K血症を避けるため)。小児の初期輸液にもよく用いられる。K+ を含まないので維持液には該当しない。
- ○d. 45 17 37 20 5
Na+ 45 mEq/Lと低く、K+ を17 mEq/Lと比較的多く含み、ブドウ糖5%を加えた低張電解質輸液で、維持液(3号液)である。成人の1日必要水分量約2 Lをこの製剤で投与すると、Na+ 90 mEq、K+ 34 mEqとなり、1日に必要なNa+(約50〜100 mEq)とK+(約40 mEq)をおおむね補うことができる。経口摂取ができない患者の水分・電解質の維持に用いられる。
- ×e. 0 0 0 0 5
電解質を含まずブドウ糖のみ5%を含む5%ブドウ糖液である。ブドウ糖は体内で速やかに代謝されて実質的に自由水となるため、細胞内を含む体液全体に分布し、細胞外液の補充には適さない。電解質を補充できないので維持液ではない。高Na血症の是正(自由水の補給)や、薬剤の溶解・希釈などに用いられる。
主な輸液製剤の特徴
・生理食塩液:Na+ 154、Cl- 154 mEq/L。等張。細胞外液に分布。 ・細胞外液補充液(乳酸・酢酸・重炭酸リンゲル液):Na+ 約130、K+ 約4、Ca2+ 約3、Cl- 約110 mEq/L前後に緩衝剤を含む。細胞外液に分布。出血・脱水・周術期に使用。ブドウ糖を含むものと含まないものがある。 ・開始液(1号液):Na+ 約90 mEq/L前後、K+ を含まない。病態不明時の初期輸液。 ・脱水補給液(2号液):K+ やリンなど細胞内に多い電解質を含み、細胞内脱水の補正を意図した製剤。 ・維持液(3号液):Na+ 約35〜50、K+ 約20 mEq/L前後。1日必要量の補給。 ・術後回復液(4号液):Na+ が低くK+ を含まないかごく少量。腎機能が未熟な新生児・乳児や術後早期に使用。 ・5%ブドウ糖液:電解質なし。自由水の補給。
体液分布の考え方
輸液した水分は、含まれるNa+ 濃度に応じて分布する。等張のNa+ 液(生理食塩液・リンゲル液)は細胞外液にとどまり、その約1/4が血管内に残る。5%ブドウ糖液は体液全体(細胞内液2/3・細胞外液1/3)に分布し、血管内に残るのは約1/12にすぎない。低張電解質輸液はその中間の分布を示す。
維持輸液の目安(成人)
・水分:約30〜40 mL/kg/日(体重50 kgで約2,000 mL) ・Na+:約1〜2 mEq/kg/日 ・K+:約1 mEq/kg/日 ・ブドウ糖:100 g/日程度を与えると、飢餓によるタンパク異化とケトーシスを抑制できる(維持液2 Lでは5%なら100 g)。
POINT
・Na+ 154のみ → 生理食塩液、Na+ 約130でK+・乳酸を含む → 細胞外液補充液(リンゲル液)。 ・K+ を含まない低張液 → 開始液(1号液)、K+ を約20 mEq/L含む低張液 → 維持液(3号液)。 ・電解質なしのブドウ糖のみ → 5%ブドウ糖液(自由水の補給)。 ・成人の1日必要量:水分約2 L、Na+ 約50〜100 mEq、K+ 約40 mEq。
