StudyMed医師国家試験

羊水・臍帯・胎盤・卵膜―「正常」を知ってこそ異常に気づける胎児付属物の基本

第110回医師国家試験 B問題 第37問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第37問

正常な胎児付属物について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.羊水は淡黄色透明である。
  2. b.臍帯内の静脈は2本である。
  3. c.妊娠末期の胎盤重量は約200 gである。
  4. d.分娩時臍帯動脈血pHは7.00未満である。
  5. e.卵膜の3層構造で最も内側の層は羊膜である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胎児付属物、つまり胎盤・臍帯・卵膜・羊水の正常像を問う知識問題だ。色、構造、重さ、血液ガスと、それぞれの「正常な姿」を思い浮かべられるかがポイントになる。まずは胎児付属物と聞いて何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
胎盤と臍帯はすぐ出てきますが、羊水も含まれるんですね。発生学の講義で卵膜の話を聞いたのですが、層の順番があいまいです。
ドクタードクター
卵膜は最後にじっくりやろう。まず羊水から。正常な羊水はどんな色だと思う?
医学生医学生
透明なイメージです。産婦人科の実習で破水のときに見たのは、ほとんど水のようでした。
ドクタードクター
その通りで、正常の羊水は淡黄色透明、ほぼ無色に近い。妊娠中期以降の主な供給源は胎児の尿で、肺からの分泌液も加わる。だから基本的には澄んでいるんだ。逆に色がついていたら異常のサインになる。
医学生医学生
緑色の羊水は胎便が出ているということですよね。分娩室で助産師さんが「羊水混濁あり」と報告していました。
ドクタードクター
よく見ているね。胎児が低酸素などのストレスを受けると腸管運動が亢進して胎便が出て、緑色の混濁になる。胎便吸引症候群のリスクにもなるから要注意だ。血性なら常位胎盤早期剝離、混濁して悪臭があれば絨毛膜羊膜炎を疑う。では次、臍帯の血管は何本で、内訳は?
医学生医学生
3本で…静脈が2本、動脈が1本でしたっけ。
ドクタードクター
惜しい、逆なんだ。臍帯は動脈2本、静脈1本。動脈は胎児から胎盤へ二酸化炭素や老廃物を運び、静脈は胎盤で酸素化された血液を胎児へ戻す。動脈・静脈の名前は心臓から出るか戻るかで決まるから、成人とは逆に静脈のほうが酸素に富むんだ。
医学生医学生
なるほど、酸素の多さで名前が決まるわけではないんですね。胎児循環の講義で静脈管を通って下大静脈に入る流れを習いました。
ドクタードクター
そこまでつながっていれば完璧だ。ちなみに動脈が1本しかない単一臍帯動脈は、胎児の形態異常や染色体異常を合併することがあり、精査のきっかけになる。次に胎盤の重さ、妊娠末期でどれくらい?
医学生医学生
200 gだと手のひらに乗る程度で、ちょっと軽すぎる気がします。
ドクタードクター
いい感覚だね。正期産の胎盤は約500 g、直径15〜20 cm、厚さ2〜3 cmの円盤状で、出生児体重のおよそ6分の1に相当する。200 gは小さすぎる。では臍帯動脈血pHはどうだろう。7.00未満が正常、というのは?
医学生医学生
成人の動脈血は7.35〜7.45ですし、7.00未満はかなりのアシドーシスではないでしょうか。
ドクタードクター
その通り。臍帯動脈血は出生直前の胎児の酸塩基状態を反映する。分娩のストレスで成人よりはやや低めになるけれど、正常はおおむね7.2台以上だ。7.00未満は重度の酸血症で、低酸素性虚血性脳症など神経学的予後不良と関連する病的な値なんだ。基準の下限は文献で多少幅があるけれど、7.00未満が正常でないことは確実だね。
医学生医学生
最後に卵膜ですね。羊水に接しているのが一番内側だから、羊膜が内側ですか。
ドクタードクター
正解。卵膜は胎児側から羊膜・絨毛膜・脱落膜の3層。羊膜が羊水に直接接している。だから正しいのは、羊水が淡黄色透明であることと、卵膜の最内層が羊膜であることの2つになる。
医学生医学生
羊膜と絨毛膜は受精卵由来で、脱落膜は子宮内膜が変化したもの、という整理でいいでしょうか。
ドクタードクター
その通り。胎児付属物のうち母体由来は脱落膜だけ、という点はよく問われる。胎盤も、胎児側は絨毛膜有毛部、母体側は基底脱落膜でできている。臍帯は長さ50〜60 cmで、血管をワルトン膠質が包んでいる。羊水量は妊娠30週前後で700〜800 mLとピークになり、正期産では500 mL程度に減ることも併せて覚えておこう。
医学生医学生
正常値をしっかり押さえておけば、分娩の現場で羊水の色や臍帯の血管数を見たときに異常に気づけるんですね。
ドクタードクター
まさにそこが大事だ。分娩後に胎盤と臍帯を観察し、臍帯動脈血ガスを測るのは、児の状態を評価し記録するための基本的な手順なんだ。正常を知っていることが、異常を見抜く一番の近道だよ。

まとめ

胎児付属物とは胎盤・臍帯・卵膜・羊水の総称で、本問はその正常像を問う知識問題です。正常の羊水は淡黄色透明で、緑色混濁は胎便排出、血性は常位胎盤早期剝離、悪臭を伴う混濁は絨毛膜羊膜炎を示唆します。卵膜は内側から羊膜・絨毛膜・脱落膜の3層で、脱落膜のみが母体由来です。臍帯は動脈2本・静脈1本、妊娠末期の胎盤は約500 g(児体重の約1/6)、臍帯動脈血pHは正常で7.2台以上であり、7.00未満は重度の酸血症として病的です。これらの正常値を確実に押さえることが、分娩時の異常の早期発見と新生児評価の土台になります。

解答・解説

正解はa, eです

テーマ

胎児付属物とは、子宮内で胎児の発育を支えるために形成される胎盤・臍帯・卵膜・羊水の総称である。本問はそれぞれの正常像(色、構造、重量、血液ガス値)を問う知識問題である。

解き方

各選択肢を正常値と照らし合わせればよい。押さえておくべき基本は次のとおりである。 ・羊水: 正常は淡黄色〜ほぼ無色透明。 ・臍帯: 動脈2本・静脈1本の3本の血管を含む。 ・胎盤: 妊娠末期で約500 g。 ・臍帯動脈血pH: 正常は7.2前後以上。7.00未満は重度のアシドーシス(酸血症)。 ・卵膜: 胎児側(内側)から羊膜・絨毛膜・脱落膜の3層。 これに照らすと、羊水の色と卵膜の層構造の記述が正しい。

選択肢考察

  1. ○a.  羊水は淡黄色透明である。

    正常の羊水は淡黄色透明(ほぼ無色に近い)である。妊娠中期以降、羊水の主な供給源は胎児尿であり、ほかに胎児肺からの分泌液も加わる(妊娠初期は羊膜や母体血漿由来の成分が主体)。胎児が低酸素などのストレスにさらされると腸管運動が亢進し、緑色の胎便が羊水中に排出されて混濁(胎便混濁)が生じる。そのほか血性羊水は常位胎盤早期剝離などを、悪臭や混濁は絨毛膜羊膜炎を疑う手がかりとなる。

  2. ×b.  臍帯内の静脈は2本である。

    臍帯には血管が3本あり、臍帯動脈が2本、臍帯静脈が1本である。臍帯動脈は胎児から胎盤へ二酸化炭素や老廃物を含む血液を運び、臍帯静脈は胎盤で酸素化された血液を胎児へ戻す。名称(動脈・静脈)は心臓から出ていくか戻るかで決まるため、成人とは逆に静脈のほうが酸素に富む。動脈が1本しかない単一臍帯動脈は、胎児の形態異常や染色体異常を合併することがあり、精査のきっかけになる。

  3. ×c.  妊娠末期の胎盤重量は約200 gである。

    妊娠末期(正期産)の胎盤は重量約500 g、直径約15〜20 cm、厚さ約2〜3 cmの円盤状で、重量はおおむね出生児体重の約1/6に相当する。200 gは小さすぎる。

  4. ×d.  分娩時臍帯動脈血pHは7.00未満である。

    臍帯動脈血は胎児から胎盤へ向かう血液であり、出生直前の胎児の酸塩基状態を反映する。正常ではpHはおおむね7.2台以上であり、7.15〜7.20を下回るとアシドーシスとみなされる。pH 7.00未満は重度の酸血症で、低酸素性虚血性脳症などの新生児の神経学的予後不良と関連する病的状態であり、正常値ではない。

  5. ○e.  卵膜の3層構造で最も内側の層は羊膜である。

    卵膜は胎児側(内側)から羊膜・絨毛膜・脱落膜の3層からなる。最も内側の羊膜は羊水に直接接している。羊膜と絨毛膜は受精卵に由来する胎児側の組織であり、最も外側の脱落膜は子宮内膜が妊娠により変化した母体側の組織である。

胎児付属物の由来

・胎児由来: 羊膜、絨毛膜(胎盤の胎児部分である絨毛膜有毛部を含む)、臍帯 ・母体由来: 脱落膜(子宮内膜が変化したもの。胎盤の母体部分である基底脱落膜を含む) 脱落膜だけが母体組織である点がよく問われる。

主な正常値

・胎盤: 約500 g、直径15〜20 cm、厚さ2〜3 cm。 ・臍帯: 長さ約50〜60 cm、太さ約1〜1.5 cm。動脈2本・静脈1本で、血管周囲をワルトン膠質(Wharton jelly)が包む。 ・羊水量: 妊娠30週前後で最大(約700〜800 mL)となり、正期産では約500 mL程度に減少する。 ・臍帯動脈血pH: 正常は7.2台以上。7.00未満は重度の酸血症。

羊水の異常所見

・緑色混濁: 胎便排出(胎児の低酸素ストレス、過期妊娠など)。胎便吸引症候群のリスク。 ・血性: 常位胎盤早期剝離など。 ・混濁・悪臭: 絨毛膜羊膜炎。

POINT

・羊水は淡黄色透明が正常。緑色混濁は胎便による。 ・臍帯は動脈2本・静脈1本。 ・妊娠末期の胎盤は約500 g(児体重の約1/6)。 ・臍帯動脈血pH 7.00未満は重度の酸血症で病的。 ・卵膜は内側から羊膜・絨毛膜・脱落膜。脱落膜のみ母体由来。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。