感染症も食中毒も災害も―保健所は「地域の健康危機管理」の司令塔
第110回医師国家試験 B問題 第21問
国試問題にチャレンジ
保健所について正しいのはどれか。
- a.介護認定の審査を行う。
- b.保険医の登録先である。
- c.労働災害の届出先である。
- d.特定健康診査の実施主体である。
- e.地域における健康危機管理の拠点である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
保健所は地域保健法に基づき、都道府県・指定都市・中核市・政令で定める市・特別区が設置する行政機関で、感染症のまん延、食中毒、災害などに対応する地域の健康危機管理の拠点です。感染症の発生届や食中毒の届出も保健所が受理します。一方、要介護認定の審査は市町村の介護認定審査会、保険医登録は地方厚生局、労災の届出は労働基準監督署、特定健康診査は医療保険者が担い、いずれも保健所の業務ではありません。また、乳幼児健診や健康相談など身近な対人サービスは市町村保健センターが担当します。業務と担当機関を正しく対応させて理解しておくことは、国試対策だけでなく、臨床現場で届出や連携を適切に行うための基礎になります。
解答・解説
正解はeです
問われているテーマ
保健医療・福祉に関する行政事務には多くの機関が関わっており、「どの業務をどこが担うか」を区別して覚えることが求められる。本問は保健所の位置づけを問うている。
保健所の基本
保健所は地域保健法に基づく行政機関で、都道府県、地方自治法上の指定都市・中核市、地域保健法施行令で定める市、および特別区(東京23区)が設置する。広域的・専門的・技術的な業務を担い、感染症対策、食品衛生、環境衛生、医事・薬事、精神保健、難病対策などを所管する。一方、母子保健や成人の健康づくりなど住民に身近な対人サービスは、主に市町村保健センターが担う。
考え方
各選択肢の業務の担い手を整理すると、介護認定審査は市町村、保険医登録は地方厚生局、労働災害の届出は労働基準監督署、特定健康診査は医療保険者である。保健所の役割として正しいのは、感染症の集団発生、食中毒、自然災害などに対応する「地域の健康危機管理の拠点」という位置づけである。これは厚生労働大臣が定める「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」でも明記されている。
選択肢考察
- ×a. 介護認定の審査を行う。
介護保険の保険者は市町村(特別区を含む)であり、要介護・要支援認定の審査判定は市町村が設置する介護認定審査会が行う(複数の市町村による共同設置も可能)。流れとしては、市町村の認定調査とコンピュータによる一次判定、主治医意見書をもとに、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が二次判定を行い、その結果に基づいて市町村が認定する。保健所の業務ではない。
- ×b. 保険医の登録先である。
健康保険法に基づく保険診療を行う医師は保険医として登録を受ける必要があり、その登録や保険医療機関の指定は厚生労働大臣の権限を委任された地方厚生局(およびその都道府県事務所)が行う。なお、医療機関(診療所など)の開設届や病院の開設許可の申請は保健所が窓口となるため、混同しないよう注意する。
- ×c. 労働災害の届出先である。
労働災害により労働者が死亡または休業した場合、事業者は労働安全衛生規則に基づき「労働者死傷病報告」を所轄の労働基準監督署長に提出する。労災保険の給付請求も労働基準監督署に対して行う。労働基準監督署は厚生労働省の出先機関(都道府県労働局の下部組織)であり、保健所とは別系統の機関である。
- ×d. 特定健康診査の実施主体である。
特定健康診査(いわゆるメタボ健診)と特定保健指導は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、40〜74歳の加入者を対象として医療保険者が実施する。国民健康保険では市町村(および国保組合)、被用者保険では健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合などが実施主体となる。保健所は実施主体ではない。
- ○e. 地域における健康危機管理の拠点である。
保健所は、感染症のまん延、食中毒、飲料水汚染、毒物・化学物質による事故、地震や水害などの自然災害といった、住民の生命や健康を脅かす事態(健康危機)への対応において、地域の中核的な役割を担う。平常時の監視・情報収集、発生時の原因究明(疫学調査や検査)、被害拡大防止、関係機関との調整、事後の健康支援までを担当する。感染症法に基づく医師からの発生届の受理先も保健所長である。したがって「地域における健康危機管理の拠点」は保健所の役割として正しい。
地域保健法に定められた保健所の主な事業
地域保健法第6条は、保健所が企画・調整・指導およびそれに必要な事業を行う事項として、以下のような分野を挙げている。 ・地域保健に関する思想の普及と向上 ・人口動態統計など地域保健に関する統計 ・栄養改善と食品衛生(食中毒の調査・対応、飲食店の営業許可など) ・住宅、水道、下水道、廃棄物処理、清掃などの環境衛生 ・医事・薬事(医療機関の開設に関する手続、医療監視など) ・保健師に関すること ・公共医療事業の向上・増進 ・母性・乳幼児・高齢者の保健 ・歯科保健 ・精神保健 ・難病など、治療法が確立しておらず長期療養を要する疾病の保健 ・エイズ、結核、性感染症などの感染症の予防 ・衛生上の試験・検査 ・その他地域住民の健康の保持増進
保健所と市町村保健センターの違い
・保健所:都道府県、指定都市、中核市、政令で定める市、特別区が設置。所長は原則として医師。専門的・広域的・技術的な業務や監視・規制的業務を担う。 ・市町村保健センター:市町村が設置(設置は任意)。乳幼児健診、予防接種、健康相談、保健指導など住民に身近な対人保健サービスを担う。所長が医師である必要はない。
業務と担当機関の対応(混同しやすいもの)
・要介護認定:市町村(介護認定審査会) ・保険医登録、保険医療機関の指定:地方厚生局 ・労働災害の報告、労災保険の請求:労働基準監督署 ・特定健康診査・特定保健指導:医療保険者 ・感染症の発生届、食中毒の届出:保健所 ・医師免許の申請:住所地の保健所を経由して厚生労働大臣へ
健康危機管理と保健所
大規模災害時には、保健所は被災地の保健医療ニーズの把握、医療救護班や保健師チームの受け入れ・配置調整などを担う。新型コロナウイルス感染症の流行時には、積極的疫学調査、入院調整、健康観察などで中心的な役割を果たした。
POINT
・保健所は地域保健法に基づき、都道府県・指定都市・中核市・政令で定める市・特別区が設置する。 ・保健所は感染症、食中毒、災害などに対応する地域の健康危機管理の拠点である。 ・介護認定審査は市町村、保険医登録は地方厚生局、労災の届出は労働基準監督署、特定健診は医療保険者が担う。 ・保健所は専門的・広域的業務、市町村保健センターは身近な対人保健サービスを担当する。
