StudyMed医師国家試験

赤血球をつくる「指令・設計図・材料」―G-CSFだけが仲間外れの理由

第110回医師国家試験 B問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第2問

赤血球造血に関与しないのはどれか。

  1. a.鉄
  2. b.葉酸
  3. c.G-CSF
  4. d.ビタミンB12
  5. e.エリスロポエチン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は赤血球造血に何が必要かを整理する問題だ。「関与しないもの」を選ぶ形式なので注意しよう。コツは、赤血球をつくるのに必要なものを「増殖の指令」「細胞分裂のための材料」「ヘモグロビンの材料」の3つに分けて考えることだよ。
医学生医学生
選択肢を見ると、欠乏すると貧血になるものが並んでいる気がします。
ドクタードクター
いい着眼点だね。この問題は「欠乏すると貧血の原因になるものはどれか」と言い換えることもできる。では一つずつ見ていこう。まず指令役は何だと思う?
医学生医学生
エリスロポエチンですね。生理学の講義で、腎臓が酸素不足を感知してつくると習いました。
ドクタードクター
その通り。エリスロポエチンは主に腎皮質の尿細管周囲の間質細胞で産生され、低酸素誘導因子、いわゆるHIFの働きで産生が増える。骨髄の赤芽球系前駆細胞に作用して増殖・分化を促し、細胞死を防ぐ。赤血球造血を調節する中心的なホルモンだ。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、透析患者さんに注射しているのを見ました。
ドクタードクター
慢性腎臓病ではエリスロポエチンの産生が落ちて腎性貧血になる。だから赤血球造血刺激因子製剤、ESAを使うし、最近はHIF-PH阻害薬という内服薬もある。次は細胞分裂の材料だ。赤芽球は盛んに分裂するから何が必要になる?
医学生医学生
DNA合成ですね。葉酸とビタミンB12が補酵素として必要で、欠乏すると巨赤芽球性貧血になります。
ドクタードクター
正解。葉酸はチミジル酸やプリン塩基の合成に必要で、不足すると核の成熟が細胞質に追いつかず、大きな巨赤芽球ができる。その多くは骨髄内で壊れてしまい、これを無効造血という。ビタミンB12は、メチル型の葉酸を使える形に戻す反応を担うから、B12が欠けると葉酸が閉じ込められてしまい、結果的にDNA合成が障害される。
医学生医学生
B12欠乏では神経症状も出るんでしたよね。CBTの勉強で亜急性連合性脊髄変性症を覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。それが葉酸欠乏との大きな違いだ。原因も、B12は内因子に対する自己免疫による悪性貧血や胃全摘後、葉酸はアルコール多飲や偏食、妊娠、メトトレキサートなどと整理しておこう。3つ目、ヘモグロビンの材料は?
医学生医学生
鉄です。ヘムの中心にありますから。
ドクタードクター
そう。ヘム合成の最終段階でフェロケラターゼがプロトポルフィリンⅨに鉄を組み込む。不足すると小球性低色素性の鉄欠乏性貧血になり、貧血の中で最も頻度が高い。これで4つが赤血球造血に関与することがわかった。残るG-CSFはどうかな。
医学生医学生
名前に「コロニー刺激因子」とあるので、造血全般を刺激するのかと思って少し迷いました。
ドクタードクター
その迷いはよくわかる。でもGは顆粒球、granulocyteのGなんだ。G-CSFは好中球系の前駆細胞の増殖・分化を促し、成熟好中球の機能を高めて末梢血への放出も促す。赤血球造血には関与しないから、これが正解だね。
医学生医学生
血液内科の実習では、化学療法後の好中球減少でG-CSFを打っていました。
ドクタードクター
まさに代表的な使い方だ。ほかに、末梢血幹細胞移植で造血幹細胞を末梢血に動員する目的でも使う。ここで造血因子と血球系統の対応をまとめておこう。エリスロポエチンは赤血球系、トロンボポエチンは血小板系で主に肝臓で産生、G-CSFは好中球系、M-CSFは単球・マクロファージ系、GM-CSFは顆粒球と単球の両方、IL-5は好酸球系だ。
医学生医学生
名前の頭文字でどの系統かがわかるものが多いですね。貧血のタイプも、鉄が小球性、葉酸とB12が大球性、エリスロポエチン低下が正球性と対応させて覚えられそうです。
ドクタードクター
その整理はとても役立つ。発展として、ヘム合成にはビタミンB6も必要で、その障害は鉄芽球性貧血の原因になる。銅も鉄の利用に関わる。臨床で貧血を見たら、まず平均赤血球容積で小球性・正球性・大球性に分け、どの材料や指令が足りないのかを考えると鑑別が進めやすいよ。

まとめ

赤血球造血には、増殖・分化の指令となるエリスロポエチン(主に腎臓で産生)、DNA合成に必要な葉酸とビタミンB12、ヘム合成に必須の鉄が関与し、それぞれの不足は腎性貧血(正球性)、巨赤芽球性貧血(大球性)、鉄欠乏性貧血(小球性)をもたらします。G-CSFは好中球系の造血を促すサイトカインで赤血球造血には関与せず、化学療法後の好中球減少や末梢血幹細胞の動員に用いられます。造血因子はEPOが赤血球系、TPOが血小板系、G-CSFが好中球系、M-CSFが単球系、GM-CSFが顆粒球・単球系、IL-5が好酸球系と対応づけて整理しておくと混同しにくくなります。「指令・設計図・材料」という視点で造血を理解しておくことは、貧血の鑑別や造血因子製剤の使い分けといった臨床判断の基盤になります。

解答・解説

正解はcです

赤血球が骨髄でつくられる過程(赤血球造血)に何が必要かを整理する問題である。「関与しないもの」を選ぶ点に注意する。 赤血球造血に必要なものは、大きく3つに分けて考えると理解しやすい。 ①増殖・分化を促すシグナル:腎臓で産生されるエリスロポエチン(EPO)が、骨髄の赤芽球系前駆細胞に働いて増殖・分化を促し、アポトーシス(細胞死)を防ぐ。 ②細胞分裂のための材料:赤芽球は盛んに分裂するため、DNA合成が欠かせない。葉酸とビタミンB12はDNA合成に必要な補酵素として働く。 ③ヘモグロビンの材料:ヘモグロビンの中心にあるヘムの合成には鉄が必須である。 いずれかが不足すると、それぞれ特徴的な貧血(腎性貧血、巨赤芽球性貧血、鉄欠乏性貧血)が起こる。つまり本問は「欠乏すると貧血の原因になるものはどれか」と言い換えることもできる。これに対し、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)は好中球系の造血を促すサイトカインであり、赤血球造血の制御には関与しない。

選択肢考察

  1. ×a.  鉄

    鉄はヘムの構成要素であり、赤血球造血に必須である。ヘム合成の最終段階で、フェロケラターゼがプロトポルフィリンⅨに鉄(Fe2+)を組み込んでヘムができる。鉄が不足するとヘモグロビンを十分に合成できず、小球性低色素性の鉄欠乏性貧血をきたす。鉄欠乏性貧血は貧血のなかで最も頻度が高い。

  2. ×b.  葉酸

    葉酸は、DNAの材料であるチミジル酸(dTMP)やプリン塩基の合成に必要な補酵素として働き、赤血球造血に関与する。不足すると赤芽球の核の成熟(DNA合成)が細胞質の成熟に追いつかず、核と細胞質の成熟がずれた大型の巨赤芽球が出現する。その多くは骨髄内で壊れ(無効造血)、大球性の巨赤芽球性貧血となる。原因として、アルコール多飲、偏食、妊娠による需要増加、メトトレキサートなどの葉酸代謝拮抗薬がある。

  3. ○c.  G-CSF

    G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor:顆粒球コロニー刺激因子)は、骨髄の顆粒球系前駆細胞、特に好中球系の増殖・分化を促し、成熟好中球の機能を高め、骨髄から末梢血への放出を促すサイトカインである。赤血球造血には関与しない。臨床では、がん化学療法後の好中球減少症の治療や、末梢血幹細胞移植の際の造血幹細胞の動員(末梢血への誘導)に用いられる。

  4. ×d.  ビタミンB12

    ビタミンB12(コバラミン)は、メチオニン合成酵素の補酵素として、メチルテトラヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に戻す反応を担う。これがないと葉酸がメチル型のまま利用できなくなり(メチル葉酸トラップ)、結果的にDNA合成が障害される。このため、欠乏すると葉酸欠乏と同様に巨赤芽球性貧血をきたし、赤血球造血に関与する。原因として、内因子に対する自己免疫による悪性貧血や胃全摘後などがある。ビタミンB12欠乏では、亜急性連合性脊髄変性症などの神経障害を伴う点が葉酸欠乏との違いである。

  5. ×e.  エリスロポエチン

    エリスロポエチン(EPO)は赤血球造血を調節する主要なホルモンである。主に腎皮質の尿細管周囲の間質細胞で産生され、組織の酸素不足を感知する低酸素誘導因子(HIF)の働きによって産生が増える。骨髄の赤芽球系前駆細胞(後期の赤芽球系前駆細胞〈CFU-E〉など)の受容体に結合し、増殖・分化を促す。慢性腎臓病ではEPOの産生が低下して腎性貧血となり、遺伝子組換えEPO製剤などの赤血球造血刺激因子製剤(ESA)やHIF-PH阻害薬で治療する。

造血因子と作用する血球系統

・エリスロポエチン(EPO):赤血球系。主に腎臓で産生。 ・トロンボポエチン(TPO):巨核球・血小板系。主に肝臓で産生。造血幹細胞の維持にも関与する。 ・G-CSF:好中球系。 ・M-CSF:単球・マクロファージ系。 ・GM-CSF:顆粒球系と単球・マクロファージ系の両方。 ・インターロイキン5(IL-5):好酸球系。 ・幹細胞因子(SCF)、IL-3:未分化な前駆細胞に広く作用する。

赤血球造血の材料と欠乏による貧血

・鉄:ヘム合成 → 欠乏で小球性低色素性貧血(鉄欠乏性貧血)。 ・葉酸・ビタミンB12:DNA合成 → 欠乏で大球性の巨赤芽球性貧血。 ・エリスロポエチン:増殖・分化のシグナル → 産生低下で正球性正色素性の腎性貧血。 ・そのほか、ヘム合成ではビタミンB6(δ-アミノレブリン酸合成酵素の補酵素)が必要で、その障害は鉄芽球性貧血の原因となる。銅も鉄の利用に関わる。

臨床での造血因子製剤の使い分け

・G-CSF製剤:化学療法後の好中球減少、末梢血幹細胞の動員、一部の先天性好中球減少症など。 ・ESA(エリスロポエチン製剤など)・HIF-PH阻害薬:腎性貧血。 ・TPO受容体作動薬:免疫性血小板減少症(ITP)、再生不良性貧血など。

POINT

・赤血球造血に必要なもの:エリスロポエチン(増殖・分化の刺激)、葉酸とビタミンB12(DNA合成)、鉄(ヘム合成)。 ・G-CSFは好中球系の造血因子であり、赤血球造血には関与しない。 ・欠乏による貧血:鉄 → 鉄欠乏性貧血、葉酸・B12 → 巨赤芽球性貧血、EPO → 腎性貧血。 ・EPOは腎臓、TPOは主に肝臓で産生される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。