StudyMed医師国家試験

血栓なのに出血する―DICの検査値を「消費」で読み解く

第109回医師国家試験 I問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第109回 I問題 第33問

播種性血管内凝固〈DIC〉でみられるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.PT延長
  2. b.APTT延長
  3. c.血小板増加
  4. d.赤血球増加
  5. e.白血球減少

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はDICの検査所見を問う問題だ。暗記で解くこともできるけれど、「全身で凝固が起こり、材料が使い果たされる」という病態を理解すれば、どの検査がどう動くかは自然に導ける。そこから考えていこう。
医学生医学生
DICは敗血症や急性前骨髄球性白血病、常位胎盤早期剝離などで起こると血液内科の講義で習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。そうした基礎疾患を背景に、全身の血管内で凝固系が持続的・過剰に活性化される。細い血管に微小血栓が多発し、その過程で血小板と凝固因子が大量に消費される。これを消費性凝固障害という。さらに血栓を溶かそうとして二次的に線溶が亢進する。
医学生医学生
血栓ができているのに出血もする、というのがずっと不思議でした。
ドクタードクター
そこがDICの核心だ。血栓で臓器障害が起き、同時に止血材料の枯渇と線溶亢進で出血する。一見矛盾する症状が同時に出るんだ。では、凝固因子が消費されると凝固時間の検査はどうなるかな。
医学生医学生
因子が足りなくなるので、固まるのに時間がかかる。PTもAPTTも延長します。
ドクタードクター
正解。PTは外因系と共通系、APTTは内因系と共通系を反映するから、多くの因子が消費されれば両方延びる。この2つが答えだ。ただ補足すると、PTのほうがDICの凝固因子低下を鋭敏に反映しやすく、診断基準にもPTが入っている。APTTは初期には活性化された凝固因子の影響で延長しなかったり、むしろ短縮したりすることもあって、診断基準の項目には含まれていない。
医学生医学生
CBTの問題集ではAPTTは正常のこともあると書いてあって、迷うところでした。進行すれば延長する所見、という理解でいいですか。
ドクタードクター
それでいい。消費性凝固障害の結果としてみられる所見だ。では血小板増加は?
医学生医学生
血栓の材料として使われるので、減少ですよね。逆なので誤りです。
ドクタードクター
その通り。血小板減少はDICの最も基本的な所見で、診断基準の主要項目だ。臨床では絶対値だけでなく、前日より急に下がってきたという経時的な変化もDICを疑う手がかりになる。
医学生医学生
赤血球増加もなさそうです。出血すれば貧血になりますし。
ドクタードクター
そうだね。もう一つ、フィブリンが張った細い血管を赤血球が通るときに機械的に壊されて、破砕赤血球を伴う溶血が起こることもある。病理実習や血液像の実習で破砕赤血球を見たことはあるかな。
医学生医学生
ヘルメット細胞の写真を見ました。あれもDICで出るんですね。じゃあ白血球減少はどうでしょう。敗血症なら減ることもありそうですが。
ドクタードクター
鋭い引っかけポイントだ。確かに重症敗血症では白血球が減ることがあるし、急性白血病なら増えも減りもする。でもそれは基礎疾患による変化で、DICそのものの所見ではない。DICの病態と直接結びつく血球は血小板だけだと整理しておこう。
医学生医学生
選択肢にないもので、ほかにDICで動く検査は何がありますか。
ドクタードクター
フィブリノゲンは消費されて低下、FDPとDダイマーは線溶亢進で上昇、アンチトロンビンは活性化凝固因子と結合して消費され低下する。凝固活性化マーカーのTATや可溶性フィブリンは上昇だ。ただし感染症に伴うDICでは、フィブリノゲンが急性期反応で正常から高値のこともある。
医学生医学生
基礎疾患によって検査の出方も違うんですね。
ドクタードクター
そう、線溶の程度で病型が分かれる。敗血症ではPAI-1が増えて線溶が抑えられ、血栓による臓器障害が目立つ線溶抑制型。急性前骨髄球性白血病や大動脈瘤、前立腺癌では出血が目立ち、FDP・Dダイマーの著増やフィブリノゲンの著減がみられる線溶亢進型になりやすい。
医学生医学生
治療はヘパリンですか。
ドクタードクター
最も大事なのは基礎疾患の治療だ。そのうえで病型に応じて、ヘパリン類やアンチトロンビン製剤、トロンボモジュリン製剤による抗凝固療法、血小板や新鮮凍結血漿の補充を考える。急性前骨髄球性白血病ではレチノイン酸による原疾患の治療が凝固異常の改善にもつながる。
医学生医学生
ICUで実習したとき、敗血症の患者さんの血小板とDダイマーを毎日チェックしていた理由がわかりました。
ドクタードクター
まさにその視点だよ。数字の羅列ではなく、「消費」と「線溶」という病態の動きとして検査値を追えるようになろう。

まとめ

DICは敗血症、悪性腫瘍、産科疾患などを背景に全身の血管内で凝固が過剰に活性化され、微小血栓の形成と、血小板・凝固因子の消費、二次線溶の亢進を生じる病態です。このため血小板減少、PT延長、進行例でのAPTT延長、フィブリノゲン低下、FDP・Dダイマー上昇、アンチトロンビン低下がみられ、PTは診断基準にも含まれる一方、APTTは初期には延長しないこともあります。赤血球や白血球の増減はDIC自体の所見ではなく、出血や破砕赤血球を伴う溶血による貧血、基礎疾患による白血球数の変化として理解します。線溶抑制型・線溶亢進型といった病型の違いや、基礎疾患の治療が最優先であることもあわせて押さえると、検査値を病態から読み解く力が身につき、救急・集中治療の現場で役立ちます。

解答・解説

正解はa, bです

播種性血管内凝固(DIC: disseminated intravascular coagulation)は、敗血症、固形癌、急性白血病(特に急性前骨髄球性白血病)、常位胎盤早期剝離などの産科疾患、外傷・熱傷といった基礎疾患を背景に、全身の血管内で凝固系が持続的かつ過剰に活性化される病態である。 凝固の活性化により全身の細小血管に微小血栓が多発し、その過程で血小板と凝固因子が大量に使われてしまう。これを消費性凝固障害という。さらに、できた血栓を溶かそうとして線溶系が二次的に活性化される(二次線溶)。その結果、血栓による臓器障害(腎・肺・中枢神経など)と、止血因子の枯渇・線溶亢進による出血症状という、一見相反する症状が同時に起こる。 この病態から検査所見を考えると、次のようになる。 ・血小板: 消費されて減少する ・凝固因子: 消費されて低下し、凝固時間(PT、APTT)が延長する ・フィブリノゲン: 消費されて低下する(ただし感染症に伴うDICでは急性期反応で正常〜高値のこともある) ・FDP(フィブリン・フィブリノゲン分解産物)、Dダイマー: 線溶亢進により上昇する ・アンチトロンビン(AT): 活性化凝固因子と結合して消費され低下する したがって、選択肢のうちDICでみられるのはPT延長とAPTT延長である。血球のうち明確に変化するのは血小板(減少)であり、赤血球や白血球の増減はDICそのものの特徴ではない。

選択肢考察

  1. ○a.  PT延長

    PT(プロトロンビン時間)は外因系と共通系(第VII、X、V、II因子とフィブリノゲン)の働きを反映する検査である。DICでは凝固因子が微小血栓の形成で消費されるため、PTは延長する。PTはAPTTより鋭敏にDICの凝固因子低下を反映しやすく、DICの診断基準でもPT比(またはPT延長)が評価項目に含まれている。

  2. ○b.  APTT延長

    APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は内因系と共通系(第XII、XI、IX、VIII、X、V、II因子とフィブリノゲン)の働きを反映する。DICが進行して多くの凝固因子が消費されるとAPTTも延長する。ただし、DICの初期には血中に活性化された凝固因子が存在するためAPTTが延長しなかったり、むしろ短縮したりすることがあり、APTTは診断基準の項目には含まれていない。それでも、消費性凝固障害の結果としてみられる所見であり、本問では正解とされる。

  3. ×c.  血小板増加

    DICでは微小血栓の形成に血小板が使われるため、血小板数は消費性に減少する。血小板減少はDICの最も基本的な所見の一つで、診断基準の主要項目である。経時的な血小板数の急な低下も、DICを疑う重要な手がかりとなる。増加ではないので誤り。

  4. ×d.  赤血球増加

    DICで赤血球が増加することはない。むしろ出血症状を伴えば失血による貧血が進む。また、フィブリンが析出した細小血管を赤血球が通過する際に機械的に壊されると、破砕赤血球を伴う溶血(細小血管障害性溶血性貧血)がみられることもある。いずれも赤血球減少の方向であり、誤り。

  5. ×e.  白血球減少

    白血球数はDICの病態そのものとは直接関係せず、DICの所見ではない。白血球数の変化は基礎疾患によって決まる。例えば、重症敗血症では白血球が減少することがあり、急性白血病では増加も減少も起こりうるが、いずれもDICによる変化ではない。

DICの主な基礎疾患

・感染症: 敗血症(特にグラム陰性桿菌) ・悪性腫瘍: 急性前骨髄球性白血病(APL)などの急性白血病、前立腺癌・膵癌・胃癌などの固形癌 ・産科疾患: 常位胎盤早期剝離、羊水塞栓症など ・その他: 重症外傷、熱傷、大動脈瘤、劇症肝炎など

病型(線溶の程度による分類)

・線溶抑制型: 敗血症に多い。線溶を抑えるPAI-1(プラスミノゲンアクチベータインヒビター1)が増加し、血栓が溶けにくく臓器障害が目立つ。Dダイマーの上昇は比較的軽度。 ・線溶亢進型: APL、大動脈瘤、前立腺癌などに多い。出血症状が目立ち、FDP・Dダイマーが著増、フィブリノゲンが著減、α2プラスミンインヒビター(α2PI)が著減、プラスミン-α2PI複合体(PIC)が著増する。 ・線溶均衡型: 固形癌に多く、両者の中間。

DICで用いられる主な検査

・血小板数(低下) ・FDP、Dダイマー(上昇) ・フィブリノゲン(低下) ・PT(延長) ・アンチトロンビン(AT)(低下) ・凝固活性化マーカー: トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、可溶性フィブリン(SF)、プロトロンビンフラグメント1+2(上昇) ・線溶活性化マーカー: PIC(上昇) 診断には、旧厚生省DIC診断基準、急性期DIC診断基準(日本救急医学会)、日本血栓止血学会DIC診断基準2017年版などのスコアリングが用いられ、基礎疾患によって使い分ける。旧厚生省基準は基礎疾患・出血症状・臓器症状と、血小板数、FDP、フィブリノゲン、PT比を点数化するもので、APTTは含まれていない。

治療の原則

基礎疾患の治療が最も重要である。そのうえで、病型に応じて抗凝固療法(ヘパリン類、アンチトロンビン製剤、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤など)、補充療法(濃厚血小板、新鮮凍結血漿)を行う。APLに伴うDICではレチノイン酸(ATRA)による原疾患治療が凝固異常の改善にもつながる。

POINT

・DICは基礎疾患を背景にした全身性の凝固活性化で、微小血栓と消費性凝固障害、二次線溶を生じる ・検査所見: 血小板減少、PT延長(進行例ではAPTTも延長)、フィブリノゲン低下、FDP・Dダイマー上昇、AT低下、TAT・SF上昇 ・早期DICではAPTTが延長しないこともある ・赤血球・白血球の増減はDIC自体の所見ではない(出血や溶血があれば貧血) ・治療の基本は基礎疾患の治療

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。