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「芽」がつく食材の落とし穴―ジャガイモの新芽に潜むソラニン

第109回医師国家試験 I問題 第31問

国試問題にチャレンジ

第109回 I問題 第31問

食中毒の原因となるのはどれか。

  1. a.たらの芽
  2. b.青いトマト
  3. c.芽キャベツ
  4. d.発芽した大豆
  5. e.ジャガイモの新芽

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、身近な植物性食品のうち、自然毒による食中毒を起こしうるものを選ぶ問題だ。選択肢にはどれも「芽」や「青い」といった、なんとなく危なそうな言葉が並んでいる。言葉の印象に惑わされず、実際に毒素を含むものはどれかを考えよう。
医学生医学生
衛生学の講義で、ジャガイモの芽は危ないと習いました。でも、発芽した大豆や芽キャベツも「芽」なので少し迷います。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だね。まず整理しておくと、食中毒は原因によって細菌性、ウイルス性、寄生虫、化学物質、自然毒に分けられる。自然毒はさらに、フグ毒や貝毒などの動物性と、キノコや有毒植物などの植物性に分かれる。今回問われているのは植物性自然毒だ。
医学生医学生
植物性自然毒の中で一番身近なのが、ジャガイモということですか。
ドクタードクター
その通り。家庭や学校で特に起こりやすいのがジャガイモによる食中毒なんだ。芽とその付け根、日光に当たって緑色になった皮、十分に育っていない小さな芋には、ソラニンやチャコニンというグリコアルカロイドが多く含まれる。だからジャガイモの新芽が正解だ。
医学生医学生
公衆衛生の実習で、小学校の調理実習で集団発生した事例を見ました。家庭菜園や学校で育てた小さな芋が原因だったと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。栽培した芋は未熟で小さいものが混じりやすく、皮ごと調理されることもあるから集団発生につながりやすい。症状は、食べてから数十分〜半日ほどで悪心・嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状が出て、頭痛やめまいを伴うこともある。
医学生医学生
加熱すれば毒は壊れないんですか。
ドクタードクター
そこが大事なポイントで、グリコアルカロイドは熱に比較的強く、通常の加熱調理では十分に分解されない。だから芽は付け根ごと深くえぐり取り、緑色の皮は厚めにむくことが予防の基本になる。保存も光の当たらない冷暗所が望ましい。
医学生医学生
では青いトマトはどうでしょう。未熟な実という点ではジャガイモと似ている気がします。
ドクタードクター
いい比較だ。未熟なトマトにもトマチンというアルカロイドが含まれるけれど、含有量は少なく、ふつうの量を食べて食中毒になることはまずない。ピクルスや揚げ物の食材として使われているし、食中毒の原因食品としては扱われていないんだ。
医学生医学生
芽キャベツは、名前に「芽」がつくだけで、発芽とは関係ないですよね。
ドクタードクター
その通り。芽キャベツはアブラナ科の野菜で、茎の脇にできる小さな結球を食べるもの。発芽で毒が生じるわけではない。発芽した大豆も、いわゆる大豆もやしとして日常的に食べられていて、発芽で有害物質が増えることはない。
医学生医学生
たらの芽も春の山菜の天ぷらでおなじみですね。山菜で食中毒、というとニュースで聞いた気がしますが。
ドクタードクター
たらの芽自体は問題ない。山菜で起こる食中毒の多くは、有毒植物を食用の山菜と取り違えることによるものだ。たとえばトリカブトをニリンソウと、バイケイソウ類をウルイと、スイセンをニラやノビルと、イヌサフランをギョウジャニンニクと誤認する例がある。
医学生医学生
トリカブトは薬理学でアコニチンを習いました。不整脈で亡くなることもあるんですよね。
ドクタードクター
そう。植物性自然毒による食中毒は件数こそ多くないけれど、死亡例の多くを占めるのが特徴だ。イヌサフランならコルヒチン中毒になる。救急外来で山菜を食べた後の嘔吐や不整脈を診たら、何をどこで採って食べたかを具体的に聞くことが診断の第一歩になるよ。

まとめ

ジャガイモの芽やその付け根、緑化した皮、未熟な小さい芋にはソラニンやチャコニンなどのグリコアルカロイドが多く含まれ、植物性自然毒による食中毒の代表的な原因となります。摂取後数十分〜半日で悪心・嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状や頭痛・めまいが出現し、毒素は加熱で分解されにくいため、芽と緑色部分をしっかり取り除くことが予防の基本です。たらの芽、青いトマト、芽キャベツ、発芽した大豆は通常の摂取で食中毒の原因とはなりません。一方、山菜と有毒植物(トリカブト、スイセン、イヌサフランなど)の誤認による中毒は致死的となりうるため、植物性自然毒全体の知識として押さえておく必要があります。身近な食品に潜む危険を知ることは、救急診療での問診や地域の公衆衛生指導にも直結します。

解答・解説

正解はeです

本問は、日常的に口にする植物性食品のうち、自然毒による食中毒を起こしうるものを選ぶ問題である。 食中毒は原因によって、細菌性、ウイルス性、寄生虫性、化学物質によるもの、自然毒によるものに大別される。自然毒はさらに、フグ毒(テトロドトキシン)や貝毒などの動物性自然毒と、キノコや有毒植物などの植物性自然毒に分けられる。 植物性自然毒のなかで、家庭や学校で特に発生しやすいのがジャガイモによる食中毒である。ジャガイモの芽やその付け根、日光に当たって緑色に変色した皮の部分、さらに十分に育っていない小さな芋には、ステロイドアルカロイド配糖体であるソラニンやチャコニン(グリコアルカロイド)が多く含まれる。 選択肢のうち、たらの芽・青いトマト・芽キャベツ・発芽した大豆は、いずれも通常の調理・摂取量で食用とされている食材であり、食中毒の原因として問題となるものではない。したがって、ジャガイモの新芽を選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  たらの芽

    ウコギ科のタラノキの若い芽で、春の代表的な山菜として天ぷらなどで広く食べられている。食中毒の原因食品とはされていない。なお、山菜採りでは有毒植物(トリカブト、バイケイソウなど)を食用の山菜と取り違えることによる食中毒が毎年報告されており、問題になるのは誤認による有毒植物の摂取である。

  2. ×b.  青いトマト

    未熟な緑色のトマトで、ピクルスや揚げ物などの食材として利用される。未熟果にはトマチンというアルカロイドが含まれるが、含有量は少なく、通常の量を食べて食中毒を起こすことはまずない。食中毒の原因として扱われる食品ではない。

  3. ×c.  芽キャベツ

    キャベツの仲間(アブラナ科)で、茎の脇にできる小さな結球を食用とする野菜である。名前に「芽」が付くが、発芽によって毒素が生じるものではなく、食中毒の原因とはならない。

  4. ×d.  発芽した大豆

    大豆を発芽させたもので、大豆もやしとして日常的に食べられている。発芽によって有害物質が増えることはなく、栄養価が高い食材とされる。食中毒の原因ではない。

  5. ○e.  ジャガイモの新芽

    ジャガイモの芽と芽の付け根、および光に当たって緑化した皮の部分には、ソラニンやチャコニンといったグリコアルカロイドが高濃度に含まれる。これらを摂取すると、数十分から半日程度で悪心・嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状のほか、頭痛やめまいなどが出現する。グリコアルカロイドは熱に比較的強く、通常の加熱調理では十分に分解されないため、芽や緑色部分は厚めに取り除く必要がある。家庭菜園などで収穫された未熟で小さな芋にも多く含まれ、学校での栽培・調理実習による集団発生の報告がある。

食中毒の病因物質による分類

・細菌性: 感染型(カンピロバクター、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオなど)と毒素型(黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌など) ・ウイルス性: ノロウイルスなど(患者数では最多を占めることが多い) ・寄生虫: アニサキスなど(事件数では上位) ・化学物質: ヒスタミン(赤身魚の不適切な保存による)など ・自然毒: 動物性(フグのテトロドトキシン、二枚貝の麻痺性・下痢性貝毒など)と植物性(キノコ、有毒植物)

主な植物性自然毒

・ジャガイモ: ソラニン、チャコニン(芽、緑化した皮、未熟な芋) ・毒キノコ: ツキヨタケ(シイタケ・ヒラタケと誤認)、クサウラベニタケなど ・トリカブト: アコニチン(ニリンソウなどと誤認)。不整脈を起こし致死的となりうる ・バイケイソウ類: オオバギボウシ(ウルイ)などと誤認される ・スイセン: ニラやノビルと誤認される ・イヌサフラン: ギョウジャニンニクなどと誤認され、コルヒチン中毒を起こす 植物性自然毒による食中毒は、事件数としては多くないものの、致死例の多くを占める点が重要である。

ジャガイモ中毒の予防

・芽は付け根を含めて深くえぐり取る ・緑色になった皮は厚くむく ・未熟な小さい芋は避ける ・保存は冷暗所で行い、光に当てない

POINT

・ジャガイモの芽・緑化した皮・未熟な芋にはソラニン、チャコニンが含まれ、食中毒の原因となる ・症状は悪心・嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状と、頭痛・めまい ・グリコアルカロイドは加熱で分解されにくく、芽と緑色部分の除去が予防の基本 ・植物性自然毒の食中毒は、山菜と有毒植物(トリカブト、スイセン、イヌサフランなど)の誤認による例も重要

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。