頸管を越えて届く細い器具―形を見れば分かる子宮内膜細胞診
第109回医師国家試験 I問題 第19問
国試問題にチャレンジ
女性生殖器から細胞診の検体を採取するために用いる器具の写真を別に示す。 これらの器具を用いて検査する共通の部位はどれか。

- a.卵巣
- b.卵管
- c.子宮体部
- d.子宮頸部
- e.腟
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
子宮内膜細胞診では、先端を外筒に収めたまま子宮頸管を通過させ、子宮腔内で操作する細長い器具を用い、内膜ブラシ・エンドサイト・ソフトサイトによる擦過法と、増淵式吸引チューブによる吸引法があります。一方、子宮頸部細胞診はヘラ・綿棒・サイトブラシ・サーベックスブラシで外子宮口周囲を擦過し、腟は病変部を直視下で擦過、卵巣・卵管は摘出標本の捺印細胞診や腹腔洗浄細胞診で評価するため、器具の形から検査部位を判断できます。内膜細胞診は不正性器出血のある閉経前後の女性などに行われ、妊娠中は禁忌です。感度が十分でないため、陰性でも体癌を疑う所見があれば組織診で確定することが重要です。部位ごとの採取法の違いを理解しておくことは、婦人科外来で適切な検査を選び、見逃しを防ぐ基盤になります。
解答・解説
正解はcです
問われていること
写真に示された細胞採取器具が、女性生殖器のどの部位の細胞診に共通して使われるかを問う問題である。
器具の特徴から考える
写真の器具は、いずれも細長い棒状・管状で、先端部分を外筒(シース)に収めたまま腟から子宮頸管を通過させ、子宮腔内に到達してから先端を出して操作する構造をもつ。具体的には、先端のブラシやループを回転させて内膜表面をこすり取る擦過器具(内膜ブラシ、エンドサイト、ソフトサイトなど)と、チューブを子宮腔に挿入して注射器で陰圧をかけ細胞を吸い取る吸引器具(増淵式吸引チューブ)である。 これらは「子宮頸管を越えて子宮腔に届く長さと細さ」「頸管の細胞を拾わないための外筒」を備えている点が共通しており、目的は子宮内膜の細胞を採取すること、すなわち子宮体部の細胞診(子宮内膜細胞診)である。 一方、子宮頸部細胞診では、外子宮口付近の扁平上皮と円柱上皮の境界(扁平円柱上皮境界、SCJ)を広く擦過できるよう、ヘラ(スパーテル)、綿棒、サイトブラシ、サーベックスブラシなど、先端が平たい・扇状・短いブラシ状の器具が使われ、外筒は不要である。器具の形態の違いを知っていれば、子宮体部が共通の検査部位と判断できる。
選択肢考察
- ×a. 卵巣
卵巣は腹腔内の臓器であり、腟から挿入する器具で細胞を採取することはできない。卵巣腫瘍の細胞診は、手術で摘出した腫瘍の割面や表面をスライドガラスに押し当てる捺印細胞診(タッチスメア)や、腹水・腹腔洗浄液の細胞診として行われる。写真の器具の対象ではない。
- ×b. 卵管
卵管も腹腔内にあり、内腔は非常に細いため、経腟的な器具で細胞を採取する検査は一般に行われない。細胞診を行う場合は、卵巣と同様に摘出標本を用いた捺印細胞診や腹腔洗浄細胞診による。写真の器具の対象ではない。
- ○c. 子宮体部
写真の器具はいずれも子宮内膜細胞診用である。擦過法では内膜ブラシ、エンドサイト、ソフトサイトなどを、吸引法では増淵式吸引チューブを用いる。擦過器具は先端を外筒に収めたまま頸管を通過させ、子宮腔内に入ったことを挿入長で確認してから先端を出し、軸やループを回転させて内膜を擦過する。吸引法ではチューブを子宮腔内に入れ、注射器の内筒を引いて陰圧をかけ、内膜細胞を吸引する。いずれも子宮体部(子宮内膜)の細胞を得るための器具であり、これが共通の検査部位である。
- ×d. 子宮頸部
子宮頸部細胞診では、綿棒、木製スパーテル、プラスチック製のヘラ、サイトブラシ、サイトピック、サーベックスブラシなどを用い、腟鏡で頸部を露出して外子宮口周囲(SCJを含む)を擦過する。頸部は腟から直視できる位置にあるため、子宮腔まで到達させる長い器具や外筒は必要ない。写真の器具とは形態も用途も異なる。
- ×e. 腟
腟の細胞診は、腟鏡診で腟壁に病変(びらん、潰瘍、腫瘤など)を認めたときに、その部位を綿棒やヘラで擦過して行う。直視下で採取できるため、子宮腔用の器具は用いない。
子宮内膜細胞診の位置づけ
子宮内膜細胞診は、子宮体癌(子宮内膜癌)の検出を目的とした検査である。子宮頸癌検診のような集団スクリーニングとしての有効性は確立しておらず、主に不正性器出血のある女性、特に閉経前後〜閉経後の女性に対して行われる。
採取法
・擦過法:内膜ブラシ、エンドサイト、ソフトサイトなど。頸管の細胞が混入しないよう先端を外筒に収納したまま頸管を通過させ、子宮腔に到達後に先端を出して回転させ、内膜を擦過する。 ・吸引法:増淵式吸引チューブを子宮腔に挿入し、接続した注射器で陰圧をかけて細胞を吸引する。
注意点
・妊娠中(またはその可能性がある場合)は流産の危険があるため禁忌である。 ・子宮穿孔、感染、出血などの合併症がありうる。 ・閉経後女性では頸管狭窄のため器具が挿入できないことがある。 ・子宮内膜細胞診の感度は子宮頸部細胞診に比べて低い。細胞診が陰性でも、経腟超音波での内膜肥厚や持続する出血など体癌を疑う所見があれば、子宮内膜組織診(内膜生検・内膜全面掻爬)による組織学的評価を行う。確定診断は組織診による。
部位別の細胞採取法の整理
・子宮頸部:ヘラ、綿棒、サイトブラシ、サーベックスブラシ等で外子宮口周囲を擦過 ・子宮体部:内膜ブラシ、エンドサイト、ソフトサイト(擦過)、増淵式吸引チューブ(吸引) ・腟:病変部を綿棒・ヘラで擦過 ・卵巣・卵管:摘出標本の捺印細胞診、腹水・腹腔洗浄細胞診
POINT
・先端を外筒に収め、頸管を越えて子宮腔内で操作する細長い器具は子宮内膜細胞診用である。 ・子宮内膜細胞診は擦過法(内膜ブラシ、エンドサイト、ソフトサイト)と吸引法(増淵式吸引チューブ)がある。 ・子宮頸部細胞診はヘラ・綿棒・サイトブラシ・サーベックスブラシで外子宮口周囲を擦過する。 ・内膜細胞診は妊娠中禁忌。感度が十分でないため、体癌を疑えば組織診で確定する。
