退院カンファレンスの「誰が何をする?」―在宅を支える多職種の役割分担
第109回医師国家試験 H問題 第30問
国試問題にチャレンジ
78歳の男性。脳梗塞で入院中である。急性期リハビリテーションを終えて片麻痺が残っている。前立腺肥大による排尿障害があり尿道カテーテルを留置中である。同居している息子夫婦は共働きで日中は独居となる。自宅への退院を予定しており多職種での退院カンファレンスを行った。 退院後の医療と介護の計画で適切なのはどれか。
- a.薬剤師が訪問して内服薬を処方する。
- b.介護福祉士が尿道カテーテルの交換を行う。
- c.医療ソーシャルワーカーがケアプランを作成する。
- d.介護支援専門員〈ケアマネジャー〉が昼食を介助する。
- e.作業療法士が患者の自宅でリハビリテーションを実施する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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ドクター
医学生
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医学生
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医学生
ドクターまとめ
在宅療養は多職種の連携で成り立っており、それぞれの職種が担える業務には法的な線引きがあります。処方は医師のみが行え、薬剤師は訪問して服薬指導や残薬管理を行います。尿道カテーテルの交換は医行為であり、医師または医師の指示を受けた訪問看護師が行い、介護福祉士は行えません。ケアプランの作成はケアマネジャーの業務で、MSWは病院での退院支援や連絡調整を担い、食事介助などの身体介護は介護福祉士や訪問介護員が担当します。片麻痺が残る患者に対し、作業療法士が自宅を訪問してADL訓練や住環境調整を行う訪問リハビリテーションは適切な計画であり、こうした役割分担を理解することが、退院カンファレンスで実効性のある在宅支援を組み立てる土台になります。
解答・解説
正解はeです
状況の整理
・78歳男性。脳梗塞の急性期治療とリハビリテーションを終え、片麻痺が残存している → 自宅での日常生活動作(ADL)の維持・向上のため、退院後も継続したリハビリテーションが必要である。 ・前立腺肥大症による排尿障害で尿道カテーテルを留置中 → 定期的なカテーテル交換や尿路感染の管理など、医療的処置が在宅でも必要となる。 ・同居の息子夫婦は共働きで、日中は独居となる → 日中の食事・排泄・移動などの介護を担う外部の介護サービスが必要である。 ・自宅退院に向け、医師、看護師、リハビリテーション職、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどによる多職種の退院カンファレンスが開かれている。
設問の考え方
本問は個別の病態判断よりも、在宅医療・介護に関わる各職種が「法的に何をしてよいのか」「本来どのような役割を担うのか」を正しく理解しているかを問うている。各選択肢について、(1)その行為が医行為(医師または医師の指示を受けた有資格者でなければ行えない行為)にあたるか、(2)その職種の本来業務か、を確認すると判断しやすい。 本例は65歳以上であり、脳梗塞後の要介護状態に対しては原則として介護保険のサービスが優先して利用される。要介護認定を受けたうえで、ケアマネジャーがケアプランを立て、訪問診療・訪問看護・訪問リハビリテーション・訪問介護(ホームヘルプ)・通所サービスなどを組み合わせて在宅生活を支えることになる。その中で、作業療法士が自宅を訪問してリハビリテーションを行うことは、職種の業務として適切であり、片麻痺が残る本例のニーズにも合致する。
選択肢考察
- ×a. 薬剤師が訪問して内服薬を処方する。
処方(処方箋の交付)は医師(歯科医師)にのみ認められた行為であり、薬剤師が処方することはできない。在宅では訪問診療を行う医師が処方し、薬剤師はその処方箋に基づいて調剤する。薬剤師が患者宅を訪問して薬を届け、服薬状況の確認、残薬の整理、副作用のチェック、服薬方法の指導などを行うことは可能であり、介護保険では居宅療養管理指導、医療保険では在宅患者訪問薬剤管理指導として制度化されている。「訪問」は正しいが「処方する」が誤りである。
- ×b. 介護福祉士が尿道カテーテルの交換を行う。
尿道カテーテルの挿入・交換は、無菌操作を要し尿道損傷や感染の危険を伴う医行為であり、介護福祉士は行えない。在宅では訪問診療の医師が行うか、医師の指示(訪問看護指示書)を受けた訪問看護師が行う。介護職が行えるのは、蓄尿バッグにたまった尿を捨てるといった、医行為に該当しないとされる範囲の援助に限られる。なお、介護福祉士は一定の研修を経れば喀痰吸引や経管栄養を医師の指示の下で実施できるが、尿道カテーテルの交換はその対象に含まれない。
- ×c. 医療ソーシャルワーカーがケアプランを作成する。
介護保険の居宅サービス計画(ケアプラン)は、要介護認定を受けた後に、本人や家族の依頼を受けた介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するのが原則である(制度上は本人・家族が自ら作成することも認められている)。医療ソーシャルワーカー(MSW)は病院などに所属し、入院患者の経済的・社会的問題の相談、退院支援、介護保険申請の援助、ケアマネジャーや地域の事業所との連絡調整などを担うが、ケアプランの作成者ではない。
- ×d. 介護支援専門員〈ケアマネジャー〉が昼食を介助する。
ケアマネジャーの業務は、利用者の心身の状態や生活環境の評価(アセスメント)、ケアプランの作成、サービス事業者との連絡調整、サービス担当者会議の開催、実施状況の確認(モニタリング)と計画の見直しである。食事介助などの直接的な身体介護を行う立場ではない。日中独居となる本例の昼食介助は、ケアプランに訪問介護(ホームヘルプサービス)を組み込み、介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)が担うのが適切である。通所介護(デイサービス)を利用して施設で昼食をとる方法もある。
- ○e. 作業療法士が患者の自宅でリハビリテーションを実施する。
作業療法士は、医師の指示の下で、食事・更衣・排泄・入浴などのADLや家事などの応用的動作の訓練を行う専門職である。片麻痺が残る本例では、実際の生活の場である自宅でのADL訓練、自助具の選定、手すりや段差解消などの住環境整備の助言が在宅生活の継続に直結する。作業療法士(あるいは理学療法士、言語聴覚士)が自宅を訪問して行う訪問リハビリテーションは、介護保険の居宅サービスとして提供されており(医療保険で提供される場合もある)、主治医の指示に基づいて実施される。職種の業務としても、本例のニーズとしても適切である。
在宅療養を支える主な職種と役割
・医師(在宅医・かかりつけ医): 訪問診療、処方、医療処置。訪問看護指示書の交付や、訪問リハビリテーション・訪問薬剤管理指導の指示を行い、在宅医療全体の起点となる。 ・訪問看護師: 医師の指示の下で、カテーテル管理・交換、褥瘡処置、点滴、服薬管理、健康状態の観察、家族への指導などを行う。 ・薬剤師: 処方箋に基づく調剤、訪問による服薬指導・残薬管理・副作用確認。処方はできない。 ・理学療法士(PT): 起居・歩行など基本動作の訓練。 ・作業療法士(OT): ADL・家事など応用的動作の訓練、自助具、住環境の調整。 ・言語聴覚士(ST): 言語障害、構音障害、摂食嚥下障害の訓練。 ・介護支援専門員(ケアマネジャー): アセスメント、ケアプラン作成、サービス調整、モニタリング。 ・介護福祉士・訪問介護員: 食事・排泄・入浴などの身体介護、調理・掃除などの生活援助。医行為は原則行えない(研修を受けた上での喀痰吸引・経管栄養は例外)。 ・医療ソーシャルワーカー(MSW): 病院における退院支援、社会資源の紹介、経済的問題の相談、関係機関との連絡調整。
介護保険利用の流れ
市町村へ申請 → 要介護認定(訪問調査と主治医意見書をもとに介護認定審査会で判定)→ 要介護度に応じて月ごとの支給限度額が決まる → その範囲内でケアマネジャーが本人・家族と相談してケアプランを作成 → 各サービス事業者がサービスを提供する。65歳以上(第1号被保険者)は原因を問わず、40〜64歳(第2号被保険者)は脳血管疾患などの特定疾病による場合に利用できる。
退院カンファレンス
入院中に病院側と在宅側(在宅医、訪問看護師、ケアマネジャーなど)の関係者が集まり、病状、必要な医療処置、ADL、介護力、住環境などの情報を共有して、退院後の医療と介護の計画を調整する会議である。
POINT
・処方は医師のみ。薬剤師は訪問して服薬指導・管理を行うことはできるが処方はできない。 ・尿道カテーテル交換は医行為であり、医師または医師の指示を受けた看護師が行う。介護福祉士は行えない。 ・ケアプランはケアマネジャーが作成する(MSWではない)。 ・食事介助などの身体介護は介護福祉士・訪問介護員が担う(ケアマネジャーではない)。 ・作業療法士などによる訪問リハビリテーションは、医師の指示の下で介護保険の居宅サービスとして提供される。
